複素数の底力                               戻る

 一見して難しそうな平面幾何の問題も、複素数を利用することにより簡明に示される場合
がある。このページでは、そのような体験をまとめていきたいと思う。

 特に、回転や拡大・縮小に関係する場面において、複素数は絶大な力を発揮する。

 複素数 z は、虚数単位 i (i2=−1)を用いて、 z=a+bi (a、bは実数) と表される。

 a は複素数 z の実部と言われ、 a=Re(z) と表す。
 b は複素数 z の虚部と言われ、 b=Im(z) と表す。

 複素数 z=a+bi に、(a,b)という座標を持つ点を対応させることにより、ガウス平面(複
素数平面とも言われる。)が定められる。横軸は、実軸、縦軸は虚軸と言われる。

     

 複素数 z の絶対値は、 |z|= で定義される。|z|は、原点Oと点 z の距
離のことである。

 複素数 z の偏角θは、 arg z で表される。2πの整数倍を無視すれば、ただ1通りに定
まる。


問題 z1=1+i、z2=1+i のとき、複素数 z1/ z2 の絶対値と偏角を求めよ。

(解) |z1|=2、|z2|= なので、 |z1/ z2|=2/

 arg(z1)=π/3、arg(z2)=π/4 なので、

  arg(z1/ z2)=π/3−π/4=π/12  (終)


 複素数 z の共役複素数は、=a−bi で定義される。点 z と点 は、実軸に関して線
対称で、
      |z|2=z

      z が実数 ⇔ z=

      z が純虚数 ⇔ z+=0

が成り立つ。


 ガウス平面において、2点 z1、z2 を通る直線上の点 z は、

  z=mz1+nz2 (m+n=1)

と表される。

 mn>0のとき、点 z は内分点で、mn<0のとき、外分点となる。

特に、2点 z1、z2 を結ぶ線分z12の中点は、 (z1+z2)/2 で表される。


例 △z123 の重心は、 (z1+z2+z3)/3 で表される。


 実際に、△ABCにおいて、A(α)、B(β)、C()とし、線分ABの中点P()、線分BC

の中点Q()、線分CAの中点R()をとる。

   

 =(αβ)/2 で、AQとCPの交点をG()とすると、

 =k(αβ)/2=(k/2)α+k(β/2)

 Gは、A(α)とQ(β/2)を結ぶ直線上にあるので、 k/2+k=1 より、 k=2/3

  よって、 =(αβ)/3

 同様にして、BRとCPの交点をG’(g’)とすると、 g’=(αβ)/3 となり、G=G’

 よって、△ABCの3中線は1点Gで交わり、Gは重心となる。

 A(1)、B(2)、C(3)のとき、平行移動して、A’(α)、B’(β)、C’()とすると、

  α13 、β23

△A’B’C’の重心は、 (αβ)/3=(12−23)/3 となるので、平行移動して、

 △z123 の重心は、 (12−23)/3+3(z1+z2+z3)/3 で表される。


 直線の方程式の応用として、次のメネラウスの定理も有名だろう。


メネラウスの定理  △ABCにおいて、A(α)、B(β)、C()とする。

 直線AB上の点P()、直線BC上の点Q()、直線CA上の点R()をとるとき、

  3点P、Q、Rが一直線上にあるための必要十分条件は、

    (AP/PB)(BQ/QC)(CR/RA)=-1

(注) APBP、・・・ 等は有向線分のため、「=-1」となる。

   

(証明)(必要であること)

 (AP/PB)=s 、(BQ/QC)=t 、(CR/RA)=u とおくと、

 Pは、ABを s : 1 に分ける
 Qは、BCを t : 1 に分ける
 Rは、CAを u : 1 に分ける

ので、 =(α+sβ)/(s+1) 、=(1/(t+1))β 、=(u/(u+1))α

 このとき、 α=((u+1)/u) 、β=(t+1) を第一式に代入して、

   =((u+1)/(u(s+1)))+(s(t+1)/(s+1))

 3点P、Q、Rが一直線上にあるので、 (u+1)/(u(s+1))+s(t+1)/(s+1)=1

すなわち、 u+1+us(t+1)=u(s+1) より、 stu=-1 となる。

 よって、 (AP/PB)(BQ/QC)(CR/RA)=-1 が言える。

(十分であること) 直線AB上の点P()、直線BC上の点Q()、直線CA上の点R()を
          とるとき、

  (AP/PB)(BQ/QC)(CR/RA)=-1

が成り立つとする。2点Q、Rを通る直線が、直線ABと交わる点をP’(p’)とする。

AP’/P’B)=s’ とおくと、(必要であること)の証明から、 s’tu=-1 となる。

 よって、 s=s’ となり、P=P’ から、3点P、Q、Rが一直線上にある。  (証終)


 ガウス平面において、複素数の積が回転と相似拡大を表すので、煩雑な回転等の問題が
楽になる。

 i を掛ける ・・・ 原点中心、90°の回転を表す。

例 1×i=i 、i×i=−1 、−1×i=−i 、−i×i=1

 このことから、 1に i を掛ける ・・・ 1を原点中心、90°の回転で、i に移る。
           i に i を掛ける ・・・ i を原点中心、90°の回転で、−1 に移る。
          −1に i を掛ける ・・・ −1 を原点中心、90°の回転で、−i に移る。
          −i に i を掛ける ・・・ −i を原点中心、90°の回転で、1に移る。

 したがって、以上から、 (−1)×(−1)=1 が説明される。


 α=(1+i)/2を掛ける ・・・ 原点中心、60°の回転を表す。


 ω=(−1+i)/2を掛ける ・・・ 原点中心、120°の回転を表す。


 ガウス平面において、3点 1、ω、ω2 を考える。3点で、正三角形1ωω2が作られる。

     

 ω−1 の絶対値は、 で、偏角は、5π/6 である。

 ω2−ω の絶対値は、 で、偏角は、3π/2 である。

 1−ω2 の絶対値は、 で、偏角は、π/6 である。


 したがって、複素数 (ω−1)(ω2−ω)(1−ω2) の絶対値は、3 で、偏角は、

  5π/6+3π/2+π/6=2π+π/2

となり、 (ω−1)(ω2−ω)(1−ω2)=3i は純虚数となる。


 z=(ω−1)(ω2−ω)(1−ω2) が純虚数であることは、次のようにしても分かる。

すなわち、 =(ω2−1)(ω−ω2)(1−ω)=−(ω−1)(ω2−ω)(1−ω2)=−z

より、z+=0 となって、z は純虚数である。


 上記と同様のことが、単位円周上の任意の3点 α、β、γ (反時計回り) についても

  複素数 z=(α−β)(β−γ)(γ−α)/(αβγ)

は、純虚数であることが示される。

     

 実際に、

 z=(α−β)(β−γ)(γ−α)/(αβγ)

  =(α−β)(β−γ)(γ−α)=(1−β)(1−γ)(1−α)

 よって、 =(1−α)(1−β)(1−γ)=(β−α)(γ−β)(α−γ)

 すなわち、 =−(α−β)(β−γ)(γ−α)=−z より、 z+=0 となって、

z は純虚数である。


 同様にして、単位円周上の任意の4点 α、β、γ、δ (反時計回り) について

  複素数 z=(α−β)(β−γ)(γ−δ)(δ−α)/(αβγδ)

は、実数であることが示される。

     

 実際に、

 z=(α−β)(β−γ)(γ−δ)(δ−α)/(αβγδ)

  =(α−β)(β−γ)(γ−δ)(δ−α)

  =(1−β)(1−γ)(1−δ)(1−α)

 よって、

 =(1−α)(1−β)(1−γ)(1−δ

  =(β−α)(γ−β)(δ−γ)(α−δ)

 すなわち、 (α−β)(β−γ)(γ−δ)(δ−α)=z より、

z は実数である。


 複素数と絶対値によって、基本的な図形が得られる。

○ |z−α|=|z−β| ・・・ 線分αβの垂直2等分線

○ |z−α|=r ・・・ 中心α、半径 r の円

○ |z−α|=n|z−β| (nは実数) ・・・ 線分αβを n : 1 に内分・外分する点を
                             直径の両端とする円(アポロニウスの円)

○ (α−γ)/(β−γ)=i ・・・ ∠αγβ=90°の直角2等辺三角形αγβ


 読者のために、練習問題を残しておこう。

問題 異なる複素数 α、β、γ について、(α−β)2+(β−γ)2=0 が成り立つとき、
   △αβγの形状を求めよ。

(解) (α−β)/(γ−β)=±i より、∠αβγ=90°の直角2等辺三角形αβγ (終)


 単位円上の異なる3点 z1、z2、z3 について、△z123 が正三角形であるための必要
十分条件は、
        1+z2+z3=0

 実際に、△z123 が正三角形ならば、平行四辺形z12(−z1)z3 から、z1+z2+z3=0
は明らか。

 逆に、z1+z2+z3=0 とする。ここで、z1=1 としても一般性を失わない。

 z2=cosθ+i・sinθ 、z3=cosφ+i・sinφ とおくと、条件より、

 cosθ+cosφ=−1 、 sinθ+sinφ=0

 cos2φ+sin2φ=1 より、 (cosθ+1)2+sin2θ=1 すなわち、 cosθ=−1/2

 このとき、 cosφ=−1/2 も成り立つ。

 したがって、 △z123 は正三角形となる。


 単位円上の異なる3点 z1、z2、z3 について、z1+z2+z3=0 のとき、△z123 が正三
角形となることは次のようにも示される。

 実際に、△z123 の外心は、原点Oで、(z1+z2+z3)/3=0 から、原点Oは重心でも
ある。

 よって、△z123 において、外心と重心が一致するので、△z123 は正三角形となる。


 一般に、次の公式も知られている。

 ガウス平面上の異なる3点 z1、z2、z3 について、△z123 が正三角形であるための必
要十分条件は、
        α2+β2+γ2−αβ−βγ−γα=0

 これを示せという問題が、大阪教育大学(2021)で出題されている。

 実際に、△z123 が正三角形であるための必要十分条件は、

  (γ−β)/(α−β)=(α−γ)/(β−γ)

 すなわち、 α2+β2+γ2−αβ−βγ−γα=0 である。


 ks さんからご投稿いただきました。(令和4年9月14日付け)

 トレミーの不等式

 異なる4点が左回りにA(α)、B(β)、C(γ)、D(δ)とあるとき、

  AB・CD+AD・BC≧AC・BD

が成り立つ。

 特に、四角形ABCDが円に内接するとき、等号が成立する。それは、トレミーの定理と呼
ばれる。(→ 参考:「プトレマイオスの定理」)

 初等幾何的証明もありますが、ガウス平面を利用しても証明されます。、

 |x|+|y|≧|x+y|を使って、

|α−β||γーδ|+|αーδ||βーγ|

≧|(α−β)(γーδ)+(αーδ)(βーγ)|

=|αγ−αδーβγ+βδ+αβーαγーδβ+δγ|

=|αβーαδ+δγーβγ|

=|α(βーδ)+γ(δーβ)|

=|(αーγ)(βーδ)|=|αーγ||βーδ|

 よって、与式が示された。


 ks さんからのコメントです。(令和4年9月16日付け)

 等号が成り立つ

⇔ (α−β)(γーδ)=k(αーδ)(βーγ)

⇔ (α−β)(γーδ)/(αーδ)(βーγ)=k (実数)

⇔ 偏角を取ると、0ではなく、180°の場合になる

⇔ arg((α−β)(γーδ)/(αーδ)(βーγ))=π

⇔ arg(α−β/αーδ)+arg(γーδ/γーβ)=π

⇔ ∠DAB+∠DCB=π (対角の和がπ)

⇔ A、B、C、Dは同一円周上の点


 相異なる4つの複素数 α、β、γ、δ に対して、2つの線分αβ、γδの位置関係を考
える。

(1) αβ、γδ が平行 ⇔ (α−β)/(γ−δ)は実数

(2) αβ、γδ が垂直 ⇔ (α−β)/(γ−δ)は純虚数

 上記のことは、 α−β と γ−δ の偏角を考えれば明らかだろう。


(追記) 令和4年9月24日付け

 ガウス平面上の異なる3点A、B、Cについて、△ABCが正三角形となる場合を問う問題
が、青山学院大学 理工(2018)、立教大学 理(2020)等で出題されている。

問題  ガウス平面上の異なる3点A(z)、B(z2)、C(z3)について、△ABCが正三角形と
    なるような z の値をすべて求めよ。

(解) 条件から、z≠z2 、z≠z3 なので、 z≠0、1、−1 である。

・Bを中心に、辺BCをπ/3回転してBAとなる場合

 (z−z2)/(z3−z2)=cos(π/3)+i・sin(π/3)

・Bを中心に、辺BAをπ/3回転してBCとなる場合

 (z3−z2)/(z−z2)=cos(π/3)+i・sin(π/3)

 以上の2つの場合は、一つの式にまとめられる。すなわち、

  (z3−z2)/(z−z2)=cos(±π/3)+i・sin(±π/3)=1/2±i・(/2)

 よって、 −z=1/2±i・(/2) より、 z=−1/2±i・(/2)  (終)


 ks さんからのコメントです。(令和4年9月24日付け)

ブラマグプタの定理(→ 参考:「ブラマグプタの定理」)

 円Oに内接する四角形ABCDで、AC⊥BDのとき、対角線の交点Pを通る線分Lが
CDと垂直のとき、LとABとの交点MはABの中点である


   


 円に内接してなくても似た定理が成り立つ。

 PA=PD、PB=PC のとき、四角形ABCDで、AC⊥BD のとき、対角線の交点Pを通
る線分LがCDと垂直のとき、LとABとの交点MはABの中点である

(証明) Pを原点とし、A(α)、B(β)とおくと、PA、PBを回転して、C(βi)、D(-αi)となる。

 このとき、M((α+β)/2) である。

 CD方向は、(β+α)i なので、PMはCDに垂直である。  (証終)


 この結果を使うと、四角形ABCDが円に内接する場合が次のように示される。

(証明) PA、PBの直線上に、PA’=PD、PB’=PC となるようにA’、B’をとれば、線分A’B’

 の中点M’について、PM’はCDと垂直になる。

 一方、△PAB∽△PDC なので、PA/PD=PB/PC 即ち、PA/PA’=PB/PB’である。

 よって、AB とA’B’ は平行となり、直線PM’は、ABの中点Mを通る。  (証終)



  以下、工事中!