意外なところに正三角形                 戻る

 次の図形をご覧下さい。
      

 1枚の正方形の左右に正三角形が張り出しています。このとき、上図のように2つの頂点
を結んでできる交点(R)は、正三角形(△RBC)の1つの頂点になります。

 いろいろな道具(数学上の公式等)を用いると、その証明は簡単にできますが、中学校3年
レベルで(しかも、初等幾何で!)解答しようとすると、思いのほか難しいようです。

 「易しい(?)問題は易しく、図形の問題は図形で!」というのが私の信条ですが、ここは敢
えて批判を覚悟して、強引に証明したいと思います。

(解 1 )・・・・・ 三角関数を用いる方法(正方形の1辺の長さを、2 とする。)

   点 R より、辺 AD に垂線 RH を下ろす。このとき、

   ∠RDH=(180°−∠PAB−∠BAD)/2=(180°−60°−90°)/2=15°

よって、
  

したがって、△RBC は、底辺の長さが 2 の二等辺三角形で、高さは、

よって、△RBC は、正三角形となる。


 上記では簡便に加法定理を用いてRHの長さを求めているが、全然中学生的ではない。
相似比を利用した解答も可能である。別解を、two‐wellさんから頂いた。
                                      (平成16年3月10日付け)

左図において、AB=2 とすると、

  PS=HD=1、AS= である。

△PSD∽△RHD より、+2 : 1=1 : RH

 よって、RH=2−

           以下(解 1 )と同様にして、△RBC は、正三角形となる。

(解 2 )・・・・・ 座標幾何を用いる方法(正方形の1辺の長さを、2 とする。)

 B(0,0) を原点とし、BC を X 軸、BA を Y 軸とする。このとき、

  A(0,2) 、C(2,0) 、D(2,2) 、P(−,1) 、Q(2+,1)

となる。直線 PD 、直線 QA の方程式は、それぞれ

  Y=(2−)X−2+2 、 Y=−(2−)X+2

である。これらを連立して、交点 R の座標を求めれば、 ( 1 ,

 したがって、△RBC は、正三角形となる。

(解 3 )・・・・・ 図形を用いる方法(直接的な証明でないところが、少し心苦しい!)

     

 冒頭の図において、△RAD が、底角が 15°の二等辺三角形であることは明らか。その

三角形の1つの頂点として、点 R が唯一つ存在する。

 ところで、△RBC が、正三角形と仮定すると、上図のような計算から、△RAD は、底角が

15°の二等辺三角形になる。

以上から、冒頭のように定まる点 R を用いた△RBC は、正三角形でしかあり得ない。

(このような証明の気持ちの悪さは、実は、当ホームページの

  お茶の時間 クイズ&パズル 「正方形を重ねる

においても経験される。)

 もう少し直接的な証明で、初等幾何を用いた中学3年レベルの証明がないかどうか、現在、
思案中である。もし、証明を発見された方、よかったら塾長宛メールをお願いします。

(参考ホームページ:飛行船すうがく 「小学生に説明するには難しい問題」)

(追記) soup&bread さんから、初等幾何的証明をお教えいただいた。まさに私の欲して
    いた証明方法で、思わず、その巧妙さに感動してしまった。おかげさまで、何となく残っ
    ていた証明の気持ちの悪さを払拭することができ、気分は爽快である。soup&bread
    さんに感謝いたします。

 soup&bread さんによれば、中学時代に通っていた塾で類似の問題に出会ったことがあ
るとか。soup&bread さんも、その解法の巧妙さに、「ズルい!」って思われたそうです。

 それでは、soup&bread さんの解答を一部補足して紹介したいと思います。

  図の設定は、上記の通りとする。

  辺AD上に正三角形EADを描く。(解1)と同様な計算をして、
∠EBA=15°である。

  線分BE上に、点Fを、∠BAF=15°であるようにとる。

  このとき、明らかに、△ABF≡△ADR なので、AF=AR と

 なる。さらに、∠FAR=60°なので、△AFRは正三角形となる。

 よって、FA=FR、∠AFB=∠RFB(=150°)、BF共通

 により、△ABF≡△RBF となり、AB=RB である。

  同様にして、DC=RC も示される。

  従って、△RBCは、正三角形となる。

(コメント) soup&bread さんの解答でも、「意外なところに正三角形」が本質的に用いら
      れているわけで、まさに、このページのタイトルの趣旨にあった解法ですね!

(追記) H.T さんから、円周角の性質を用いる初等幾何的証明をメールで頂いた。
                                      (平成17年6月17日付け)

 お教えいただいた証明は、中学生的で技巧的なところは全くなく、非常に素直な解答に、
思わず感動してしまった。 H.T さんに感謝いたします。

 それでは、H.T さんの解答を一部補足して紹介したいと思います。

△RADの底角は、15°なので、∠DRQ=30°

また、∠DBQ=∠DBC−∠QBC
        =45°−15°=30°

  よって、∠DRQ=∠DBQ

  したがって、4点 D、R、B、Q は同一円周上。

 3点 D、B、Q を通る円はただ一つ定まり、3

 点から等距離にある点 C がその円の中心と

なる。

  したがって、 BC=RC が成り立ち、同様にして、BC=RB もいえる。

  以上から、△RBCは正三角形となる。


(追記) さらに、H.T さんから、上記の解の改良版(角度を用いない方法)をメールで頂い
     た。(平成17年6月24日付け)

 上図において、 点 C を中心として、B、D、Q を通る円が一つ書ける。ADは、この円の接

線となる。ここで、△APDと△DAQは合同な二等辺三角形なので、∠ADR=∠DQR

 よって、接弦定理が成り立ち、Rはこの円周上の点になる。

したがって、 RC=BC が成り立つ。同様にして、RB=BC なので、△RBCは正三角形。


(コメント) 冒頭の解析的証明に比べて、とても分かりやすい証明になっています。いろいろ
      な証明があることに我ながら感動しています。H.T さんに感謝いたします。

(追記) 当HPがいつもお世話になっているHN「らすかる」さんから「ほとんど自明」という感
    じの証明方法を得たというメールを頂いた。(平成17年6月26日付け)

 △CQBは二等辺三角形で、PDとBQは平行。

△DCQをBQの垂直二等分線(Cを通る)に関し

て対称移動すると、QはBに移り、CQの垂直二

等分線と直線PDの交点である点Dは、CBの垂

直二等分線と直線PDの交点である点Rに移る。

 従って、△DCQ≡△RCBなので、△RCBは正三角形となる。


(コメント) 線対称ということを使うと鮮やかですね!見てすぐ理解でき、十分初等的な証明
      だと思います。らすかるさんに、感謝いたします。

(追記) 平成17年10月10日付けで、H.H さんから、1年半ぶりにメールを頂いた。昨日
    久々にこの問題について考えてみたところ、急に証明を思いつかれたとのことである。

 H.H さんの証明を掲載する前に、まずは謝罪から。

 上記の(解 1)では相似比を利用した解答も可能であるということで、two‐well さんからの
別解(平成16年3月10日付け)を載せたが、実は、H.H さんからも別解と同様のものを頂
いていた。(平成16年2月9日付け) その際は、(解 1)と同趣旨ということで掲載を見あわ
せたが、別解を載せた以上、H.H さんの別解についても触れなければいけなかったと反省
しています。この件について、当HPへのアップが遅れたことを、H.H さんにお詫びしなけれ
ばならない。誠に申し訳ないです。

 頂いた証明は、趣旨を損なわない範囲で多少加筆・修正させていただきました。ご了承く
ださい。

(証明) 左図のように辺AD上に正三角形ADSを

 作る。このとき、△RADは二等辺三角形なので、

 線分SRは辺ADの垂直二等分線となる。

 よって、線分ABと線分SRは平行。

 さらに、∠SAR=75°、∠ASR=30°より、

 ∠SRA=75°である。    

 よって、△SARは二等辺三角形となり、SA=SR となる。ここで、SA=AD=AB なので、

AB=SR が成り立つ。

 以上から、四角形SABRは平行四辺形となり、SA=RB 即ち、RB=BC が言える。

同様にして、SD=RC 即ち、RC=BCとなり、RB=BC=RC が成り立つ。

 したがって、△RBCは正三角形である。(証終)


(コメント) なるほど!辺AD上に正三角形を作るところは、「意外なところに正三角形」の趣
      旨に合致する解法ですね。平行四辺形の性質を利用した証明で、中学生にとって
      も分かりやすい素晴らしい証明だと思います。H.H さんに感謝いたします。


(追記) 当HP読者のHN「南東亜北西」さんから「私も考えてみました。」というメールを頂い
     た。(平成28年9月22日付け)

(証明の概略) 底辺をBCとする正三角形の頂点SがRと一致することを導きます。

 直角二等辺三角形BCDをCを中心に60度回転させます。DはQに移動し、BはSに移動

します。∠CQA=45°なので、SはAQ上にあります。同様に、SはPD上にある事も言えま

す。よって、Sは、AQとPDの交点であるRと一致し、△RBCは正三角形となります。


(コメント) なるほど、簡明な証明ですね!南東亜北西さんに感謝します。


 KSさんから新しい視点をご教示いただきました。(平成28年9月22日付け)

 長方形ABCDの外側に、ABとADを一辺とする正三角形をつくる。外側の点をP、Qとする

と、△PQCは正三角形となる。

 実際に、辺PQ、辺PC、辺QCを含む三角形が合同であることからわかります。


 カルピスさんからのコメントです。(平成28年9月22日付け)

 あ、ホントだ。本日は「秋分の日」。これを『秋分の大三角形』と呼ぼう♪


(コメント) そこにも正三角形が作れるんですね!PC=QC、∠PQC=60°からも明らか
      ですね。KSさんに感謝します。


 KSさんからの続報です。(平成28年9月23日付け)

 四角形の内側に折っても小さな正三角形が生まれる。四角形を平行四角形にしても成り
立つ。


 KSさんからの続報です。(平成28年9月24日付け)

 任意の△ABCに対し、辺の外側に正三角形をつくり、その中心を結ぶと正三角形が
できる


 また、有名なモーリ―の定理では、

 三角形の3つの内角の3等分線の、辺に近い2つずつの交点は、正三角形の頂点を
なす



 DD++さんからのコメントです。(平成28年9月24日付け)

 前半は、ナポレオンの定理ですね。


 KSさんからの続報です。(平成28年9月26日付け)

 三角形ABCのAB、ACの辺をもつ正三角形を外側につくり、その頂点をD、Eする。
AD、AEを持つ平行四辺形をつくり、交点をFとする。この時、FBCは正三角形になる。
 ただし、角Aは60度でないとする。


 意外性からいうと、モーリーの定理のように、最初に正三角形を作図しないで、結果として
正三角形が生まれるようなものは、他にありませんでしょうか?