基本の作図                               戻る

 私自身、以前は定木・コンパスを用いて、いろいろな図形を作図・描画したものだが、描
画ソフトを使うようになって、その便利さから、定規・コンパスを用いる機会はほとんどなく
なってしまった。

 描画ソフトは確かに速く綺麗に正確に希望する図を描画してくれるが、自身で書いていな
いせいか心持ちよそよそしい。電卓同様、原理原則が分かっている人が使えば時間の短
縮になり重宝するが、原理原則が分からなくても描けてしまうところに両刃の剣になる危険
性をはらんでいる。

 そこで、このページでは、基本の作図をいくつか取り上げて、その原理原則を明確化し、
まとめてみることにした。

 描画ソフトで作図を学んだ世代が、「なぜ、このような作図が可能なのか?」という疑問を
持たれたときの道標にでもなれば幸いである。

・・・ 正5角形の作図 ・・・ 線分の等分割  ・・・ 角の2等分
・・・ 正方形  ・・・ 定点通過の平行線 ・・・ 四分円の内接円 
・・・ 星型  ・・・ 円弧の連続曲線  ・・・ 円の接線
10 ・・・ 高さが既知の三角形 11 ・・・ 円の4分割 12 ・・・ 長方形の辺の中点
13 ・・・ 平行線 14 ・・・ 反転  15 ・・・ 円の接線2
16 ・・・ 線分の中点  17 ・・・ 2:1の分点  18 ・・・ 線分の等倍 
19 ・・・ 円の中心  20 ・・・ 円の接線3  21 ・・・ 放物線の焦点・軸
22 ・・・ 2点を結ぶ線分  23 ・・・ 線分の垂線  24 ・・・ 角の移動 
25 ・・・ 円に接する円  26 ・・・ 正方形2 27 ・・・ 正方形3
28 ・・・ 周の長さ2pの三角形 29 ・・・ 楕円に接する円  30 ・・・ 楕円の接線
31 ・・・ 半円に内接する円 32 ・・・ 線分 a/b の作図  33 ・・・ 線分の和差積商参考
34 ・・・ 内接する正三角形 35 ・・・ 線分 ab の作図 36 ・・・ 線分 √ab の作図
37 ・・・ 正方形の復元 38 ・・・ 楕円の中心と軸 39 ・・・ 放物線の法線 
40 ・・・ 正方形4            



線分の等分割

  等分割したい線分ABに対して、左図のように

 線分ACを引く。コンパスを使用して、線分AC上

 を任意の長さで等分割する。

 線分BDを結び、各等分点から線分BDに平行な線分を引き、線分ABとの交点を求める。

 これが、求める等分点である。



(追記) 平成24年2月26日付け

 社団法人日本数学会が、国公私立48大学の5934人を対象に行ったテストの結果、

  「平均の意味」 ・・・ 正答率 76%
  「奇数と偶数を足すと奇数になる理由」 ・・・ 正答率 34%
  「定木とコンパスを使って線分を3等分する方法」 ・・・ 正答率 8%
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

という結果であったという。正答率8%の「線分の3等分」も、方法を1回経験していれば易し
いと思うのだが、経験していなければ、上記の発想を個人の力で捻出するのは難しいかもし
れない。


正方形

   正方形の一辺ABが与えられている。点B

  を中心に任意半径の円を描き、線分 AB と

  の交点をPとする。この円と同じ長さの半径

  でPを中心とする円弧で点Q、点Qを中心と

  する円弧で点Rをそれぞれ定める。任意の

  長さで、点Q、Rを中心として円弧を描き、点

  Sを定める。線分BS上にAB=BCとなるよ

  うに点Cを定める。

 線分ABの長さを半径、点A、Cを中心として点Dを定める。

 このとき、四角形ABCDが求める正方形である。

 (線分の端点で垂線を引くとき、正三角形の性質が巧妙に使われている。)


上記の方法に比べてエレガントさに欠けるかもしれないが、次のような作図手順も捨て難い。

   正方形の一辺ABが与えられている。線分

  ABの垂直二等分線を描き、AB=PQとなる

  ように点Qをおく。点Qを中心に半径APの円

  弧を描く。この円弧と点Bを中心、半径ABの

  円弧との交点をCとする。同様にして、点Dを
 定める。

  このとき、四角形ABCDが求める正方形で
 ある。

 (もしかしたら、こちらの方が多くの方が思いつ
  かれる方法ではないかと推察される。)

(追記) 令和4年10月20日付け

 与えられた線分ABに対して、端点Aで垂線を立てる作図は、基本的な問題だろう。最近、
上記とは異なる引き方があることを知った。

(方法1)

  線分ABの垂直2等分線上に任意に点Cをとる。Cを

 中心として、半径CBの円弧を描く。Bを中心として、半

 径CBの円弧を描き、点Dを定める。同様にして、点E、

 Fを定めるとき、線分AFがちょうど線分ABの垂線となる。

(証明) BFは、円Cの直径なので、 ∠BAC=90°となる。  (証終)


(方法2)

  Bを中心として半径BAの円弧を描き、その周上

 に任意に点Cをとる。Cを中心とし半径CAの円弧

 を描き、円Bとの交点をDとおく。

 Aを中心とし半径ADの円弧を描き、円Cとの交点

 をEとおく。

 このとき、AEが求める垂線である。

(証明) △CADは、CA=CDの2等辺三角形なので、 ∠CAD=∠CDA

 また、AD=AE で、Cは円の中心なので、 ∠CAD=∠CAE

 以上から、 ∠CDA=∠CAE なので、接弦定理より、線分AEは、点Aを接点とする円B

の接線となる。したがって、AB⊥AE が示された。  (証終)


定点通過の平行線

   線分と点Pが与えられている。点Pを中心に

  任意半径の円を描き、線分との交点をAとす

  る。この円と同じ長さの半径でAを中心とする

  円を描き、線分との交点をBとする。

 点Aを中心として半径BPの円を描き、先の円との交点をCとする。

 このとき、線分PCが求めるものである。

 (平行四辺形の性質が巧妙に使われている。)


四分円の内接円

 四分円OABが与えられている。∠AOB

の二等分線OSを描き、弧ABとの交点をT

とする。Tより接線を描き、線分OAの延長

線との交点をPとする。∠OPTの二等分線

と線分OSとの交点Qが求める円の中心で

ある。

(いつも目分量で描いていて、適当に誤魔化していました...f(^_^) )

 上記では円の中心を求めるために、角の二等分線が2本作図されたが、振り返ってみる
と、あまり賢明な方法とは言えない。次のように作図することも可能である。

   四分円OABが与えられている。点Aを中心とし半

  径OAの円弧を描く。同様に点Bを中心とし半径OA

  の円弧を描き、交点をSとする。点Sを中心とし半径

  OAの円弧を描き、線分OSとの交点をPとする。線

  分OSと弧ABのの交点をTとし、Tを中心に半径OP

  の円弧を描く。線分OSとの交点をQとする。

 このとき、点Qが求める円の中心である。

(手順がずいぶんスッキリしました...f(^_^) )

 この解法を得るには、作図における解析を用いる。求める円の半径は、(−1)OA
である。


星型

   円Oが与えられている。直径ABとその垂線OCを

  作図する。OBの中点Mを中心とし半径CMの円弧

  を描き、OAとの交点をNとする。

   Cを中心とし半径CNの円弧を描き、円Oとの交点

  をPとする。弧CPの長さで、円周を5等分する。

 このとき、5等分点P、Q、R、S、Cを結べば、星型が得られる。

 この作図の理論的背景は、こちらを参照。


円弧の連続曲線

  当HPの掲示板に、HN「しん」さんという
 方から書き込みがあった。

   Rの出し方についての質問です。例え
  ば、R5というのはφ10 の半分と聞きま
  した。なぜこのような表示のしかたをする
  のかが分かりません。 また、板にこのR
  5の曲線を錐(きり)を使って削る場合、
  何φの錐で削ればいいのでしょうか?
  数学的に分 かりやすく証明できるもの
  でしょうか?


 錐を使って板を削るということが想像でき

ません(錐は穴をあける道具?)が、曲線を

いくつかの円弧の集まりと考えれば、左図

のような形で作図できると思います。

 Rは、英語の Radius (半径)の頭文字をとったもの。Rの数値の大きい方がカーブ形状
は浅くなります。道路標識でも用いられ、運転者にはカーブのきつさが分かって重宝します。

 上記のような説明で、HN「しん」さんの質問の趣旨に合致しているかどうか全く自信があり
ません。


円の接線

 円周上の任意の点で接線を引く場合、最初に思いつく方法は、接点と中心を結ぶ半径に
垂直な直線を描くというものであろう。

 これに対して、次の方法はとても斬新である。

Hにおける接線が与えられているものとする。

直径KH上の点Kと円周上の任意の点Aを結

び、その延長線とHにおける接線の交点をP

とする。

 線分HPの中点をMとすれば、線分AMが求

める接線となる。

(証明) ∠HAK=∠R より、∠HAP=∠R  よって、点Mは3点H、A、P を通る円の中心
    となる。このとき、∠MAH=∠MHA が成り立つ。接弦定理より、∠MHA=∠HKA
     ゆえに、∠MAH=∠HKA となり、接弦定理の逆により、MAはAにおける接線とな
    る。
     実際に、直角三角形LHAにおいて、∠HKA=∠HLA、∠HLA+∠HAL=∠R
     よって、∠MAH+∠HAL=∠R より、半径OA⊥MA なので接線といえる。


高さが既知の三角形

 3辺の与えられた三角形を作図することは、三角形が存在する限り、易しい。それでは発
想を変えて、与えられた長さを高さとする三角形を作図するにはどうしたらよいであろうか?

  今、与えられた高さを、5、7、8 とし、この長さを
 3辺とする三角形を描く。△ABCの面積に注意して

  (1/2)AK・BC=(1/2)BL・CA=(1/2)CM・AB

 すなわち、BC:CA:AB=1/AK:1/BL:1/CM

  よって、高さと辺の長さは反比例する。

  したがって、求める△PQRは、
 左図のように作図すれば求まる。

  ここで、GHはQHの垂線であり、
 GH=5 とする。赤線上の点Pに
 ついて、PGとQHは平行で、青線
 も互いに平行とする。


円の4分割

   ここでは、円の中心が与えられているものとして考える。
  (→ 参考 : 円の中心(コンパスのみでの作図))

   定木とコンパスを用いて、円を4分割することは易しい。ここ
  では、コンパスのみを使って円を4分割する方法を考える。

 (この問題は、ハンドルネーム tappon さんという方からいただ
  いたものである。)

 まず、与えられた円周上に、任意に1点 A をとる。A を中心として、円周上に半径OAに等し
い点 C、Dをとる。今度は、C、Dを中心として、円周上に半径OAに等しい点をとる。この操作
を続けて、円周上を6等分する。

  A、B を中心として、線分 CD の長さに等しい円弧を描き、
 その交点を E とする。

  さらに、A を中心として、線分 OE の長さに等しい円弧を
 描き、その交点を F、G とする。

  このとき、4点 A、B、F、G がちょうど円周を4等分してい
 る。


(コメント: コンパスのみで、円周が4等分できるなんて実に
      驚きです!)


長方形の辺の中点

   定木とコンパスを用いて、長方形の辺の中点を作図
  することは易しい。

   ここでは、定木のみを使って長方形の辺の中点を作
  図する方法を考える。

   (この問題は、ハンドルネーム tappon さんという方
    からいただいたものである。)

  辺CDを適宜延長し、点Pをとり、対角線ACとBD

 の交点Oと結び、辺ADとの交点をQとする。線分

 CQと対角線BDとの交点をRとし、線分PRの延長

 線と対角線ACとの交点をSとする。このとき、線分

 DSの延長線と辺BCの交点Mが、辺BCの中点と

 なる。

 ちょっと、作図の方法が複雑なので、作図の解析をしておきます。
  長方形ABCDにおいて、一般性を失うことなく、

 AB=2、BC=2m としてよい。

  また、左図において、

     PD=n 、 QD=x 、 RK=y 、

     SL=z  、 DK=s 、 LC=t

  とおく。

 まず、△PQD ∽ △PON において、 x : m = n : n+1 なので、 x = mn/(n+1)

△DRK ∽ △DON において、 y : m = s : 1 なので、 y = ms

△CRK ∽ △CQD において、 y : x = 2−s : 2 なので、 2y = x(2−s)

 x = mn/(n+1) 、 y = ms を代入して整理すると、 s=2n/(3n+2) で、

 y=2mn/(3n+2) となる。

また、△CSL ∽ △CON において、 z : m = t : 1 なので、 z = mt

△PRK ∽ △PSL において、y : z = n+s : n+2−t なので、(n+2−t)y = z(n+s)

 s=2n/(3n+2) 、y=2mn/(3n+2) 、z = mt を代入して整理すると、

t=2/3 で、z=(2/3)m となる。

 このとき、線分DSの傾きは、 (2−t)/z=2/m となり、この結果、線分MCの長さは、m

に等しくなる。

 よって、点Mは、線分BCの中点となる。

(コメント:定木だけでは不可能では?と思ったのですが、意外にも作図が出来るんですね!
      本当に驚きです。)

(平成16年11月15日追記) 上記の作図では、7回定木を使っているが、tappon さんに
                  よれば、わずか5回定木を使うだけで十分とのことである。

 以下の作図方法は、tappon さんにご教示いただいた。
   辺CDを適宜延長し、点Pをとり、点Bと結び、辺ADと

  の交点をQとする。線分CQと対角線BDとの交点をRと

  し、線分PRの延長線と辺BCの交点をMとすると、点M

  が辺BCの中点となる。

 (コメント) とても簡明な方法で、驚き!です。最初信じられない方法だったので、紙に書
       いて確かめてみたところ、まさに中点が求まっていました。

 作図の解析は以下のようになります。

  長方形ABCDにおいて、一般性を失うことなく、 AB=2、BC=2m としてよい。

 また、上図において、 PD=n 、 QD=x 、 RK=y 、 KC=z  とおく。

 まず、△PQD ∽ △PBC において、 x : 2m = n : n+2 なので、 x = 2mn/(n+2)

△DRK ∽ △DBC において、 y : m = 2−z : 2 なので、 y = m(2−z)/2

△CRK ∽ △CQD において、 y : x = z : 2 なので、 y = xz/2

 x = 2mn/(n+2) 、 y = m(2−z)/2 、 y = xz/2 より、 z=(n+2)/(n+1) で、

 y=mn/(n+1) となる。

 このとき、線分PRの傾きは、 (n+2−z)/y=(n+2)/m となり、この結果、線分MCの

長さは、m に等しくなる。 よって、点Mは、線分BCの中点となる。


 また、tappon さんによれば、上記では長方形の外部を有効に使って作図しているが、多
少手数がかかるものの長方形の内部だけを用いて作図することも可能とのことである。

 以下の作図方法も、tappon さんにご教示いただきました。

  対角線ACとBDの交点をOとし、Oを通る任意の線分PQ

 を描く。四角形ABQPの対角線の交点をRとし、線分DRと

 線分PQの交点をSとおく。直線ASと線分QDの交点をTと

 し、直線OTと辺CDの交点をMとおく。

  このとき、点Mは、辺CDの中点である。

 ちょっと、作図の方法が複雑なので、座標幾何の考えで作図の解析をしておきます。

 O(0,0)、A(−m,1)、B(−m,−1)、C(m,−1)、D(m,1) とおく。

また、P(k,1)、Q(−k,−1)とおくと、直線AQの式は、y=(2/(k−m))(x+m)+1

直線BPの式は、y=(2/(k+m))(x+m)−1 なので、点R(−(m2+k2)/(2m),−k/m)

直線DRの式は、y=(2(k+m)/(k2+3m2))(x−m)+1 なので、

点S(−k(m2−2mk+k2)/(k2+2mk−3m2),−(m2−2mk+k2)/(k2+2mk−3m2))

したがって、直線ASの式は、y=(2/(k−3m))(x+m)+1 となり、

        直線QDの式は、y=(2/(k+m))(x−m)+1 であるので、

両者を連立して、点Tの y 座標を求めると、0 となる。

 このことは、直線OTと辺CDの交点Mが、辺CDの中点になることを示す。


(コメント : 証明はできても、どうしてこのような作図方法を思いつくのか、全く見当がつき
       ませんね!「スゴい!」の一語に尽きます。)


(追記) 上記の作図では、9回定木を使っているが、わずか6回定木を使うだけで十分であ
    ることが確認されたので、その報告です。 (平成16年11月17日付け)

  対角線ACとBDの交点をOとし、辺AB上の任意の点Pと

 点Dを結び、対角線ACとの交点をQとおく。線分BQと線分

 POの交点をRとし、直線ARと辺BCの交点をMとおく。

  このとき、点Mは、辺BCの中点である。

 作図の解析は以下のようになります。

 チェバの定理により、
               

メネラウスの定理により、
                 
 よって、
        

 このことから、Sは線分BOを、2 : 1 に内分する点である。

 △ABCにおいて、点Oは辺ACの中点であるので、Sは△ABCの重心となる。

  したがって、中線ASと辺BCの交点であるMは、辺BCの中点となる。


平行線
  定木とコンパスを用いて、直線外の1点から直線に平
 行な直線を作図することは易しい。
                   (→定点通過の平行線

  ここでは、定木のみを使って、平行線 が与え
 られたとき、直線外の1点Pから直線に平行な直線を作
 図する方法を考える。

 (この問題は、ハンドルネーム「tappon」さんという方か
  らいただいたものである。)

 点Pを通り、平行線 と2点B、Cで交わる直線を任意に引き、その直線上の任意の
点をAとおく。
  さらに、点Aを通り、平行線 と2点D、Eで交わ
 る直線を任意に引く。

  このとき、線分BEと線分CDの交点をKとし、直線AK
 と直線 との交点をMとすると、Mは線分CEの中点で
 ある。

  線分AMと線分PEの交点をLとし、直線CLと線分AE
 の交点をQとおくと、線分PQは、直線 に平行となる。

 ちょっと、作図の方法が複雑なので、作図の解析をしておきます。

 チェバの定理より、
              

で、2直線 は、平行だから、
                       
が成り立ち、したがって、
                  

となる。 これより、CM=ME で、Mは、線分CEの中点となる。

 さらに、チェバの定理より、
                  
が成り立ち、
         
なので、
        

が成り立つ。 このことから、線分PQは、直線  すなわち 直線  に平行となる。


反転
  半径 r の円Oに対して、 OP×OQ=r2 が成り立つとき、
 点Qは、円Oに関して、点Pと対称であるという。

  このとき、点Pに点Qを対応させることを、反転という。
 円Oを、反転円、中心Oを反転の中心、r2 を反転度という。

  「反転」の文字通りの意味は、「置き換え」ということである。

 点Pが円Oの外部にあるとき、点Qをコンパスのみを用いて作図することは易しい。
  点Pを中心として半径OPの円弧を描き、円Oとの交点を
 A、Bとする。

  2点A、Bのそれぞれを中心として半径 r の円弧を描くとき、
 その交点が求める点Qを与える。

 ここで、作図の解析をしておこう。
   △PAOと△AOQは二等辺三角形で、相似である。

  よって、 OP : OA = OA : OQ が成り立つ。

   したがって、 OP×OQ=OA2=r2 なので、

  点Qは、円Oに関して、点Pと対称になる。

 上記では、点Pが円Oの外部にあるときを考えたが、点Pが円Oの内部にあるときは次の
ように作図すればよい。
  OP’=n・OP(P’は円の外部の点)となるように、n を適
 宜決める。

  上記の作図方法により、Q’を決め、 OQ=n・OQ’ に
 より点Q を決めれば、点Qが求める点となる。

  実際に、OP・OQ=(1/n)OP’・n・OQ’=OP’・OQ’
 から明らかであろう。

 19世紀の終わり頃、ア・アドラーにより、コンパスのみを用いるという作図問題に、反転が
利用された。例えば、端点のみが与えられた線分の中点を求める場合、

              

一見すると、定木・コンパスを用いないと作図できないかのような気がするが、反転を用いる
と、定木なしでコンパスのみで中点を作図することが可能となる。

     

 これは、 AP=2AB 、AP×AQ=AB2 より、AQ=(1/2)AB が成り立つことから明ら
かであろう。

(参考文献:コストフスキー 著 松野 武 訳 コンパスによる作図 (東京図書))


円の接線2
   定木とコンパスを用いて、円外の1点Pから円Oに
  接線を作図することは易しい。

   作図の方法を確認しておこう。

  OPを直径とする円を描き、円Oとの交点を求める。

 その交点と点Pを結べば、それが求める接線となる。

 上記の方法では、コンパスが有効に用いられたが、コンパスを利用する作図方法よりも
定木のみを利用する作図の方が実用上大切である。

 そこで、上記の接線の作図を、定木のみを用いた場合について考察をしようと思う。

 いま、下図のように、接線が引けたものとする。
  このとき、△AOQ ∽ △POA で、

    OP×OQ=OA2

 が成り立つので、点Qは、点Pと円Oに関して対称で
 ある。( → 参考 : 反転

 この性質に注目すれば、反転の理論からも接線を求めることは可能である。

 上図には、もっと大切な性質が隠れている。

 △AQPにおいて、AMは∠PAQの二等分線であり、ANは∠PAQの外角の二等分線に
なっている。

 このとき、 AQ : AP = QM : MP 、 AQ : AP = NQ : NP  が成り立つ。

すなわち、 QM : MP = NQ : NP  より、

       NQ : QM = NP : PM 

が成り立つ。

 このような関係を満たす1直線上の点列 P,Q ; M,N は調和点列であるという。

このとき、次の事実が知られている。

 円Oに円外の1点Pから直線Lを引き、その交点をM、Nとおく。M,N ; P と調和点列とな
る点をQとおく。点Pを中心として、直線Lを回転させると、点Qの軌跡は、直線となる。

 この直線Lを円Oに関する点Pの極線といい、点Pを極点という。

さらに、次の事実が知られている。

 円Oに関する点Pの極線は、PとOを結ぶ直線に垂直である。

したがって、上図において、点列 P,Q ; M,N は調和点列であり、OPとABは垂直なので、

直線ABが円Oに関する点Pの極線となる。

 よって、このような極線を定木のみで作図することが可能であれば、接線の作図も可能と
なる。
 ところで、左図において、チェバの定理とメネラウスの定理を用
いて、
       BQ : QC = BP : PC

が成り立ち、4点P,Q ; C,B は調和点列となる。

 左図により、その作図方法が理解される。

 

 上図では、素朴な方法で接線を作図しているが、図からも分かるように、もっと簡単な作
図方法が存在する。(読者の皆さんは、図をじっと眺めて、考えてみてください。)

(参考文献:スモゴルジェフスキー 著 安香満恵・矢島敬二 訳 定木による作図
                                              (東京図書))


(追記) 平成23年9月24日付け

 当HPの読者のSさんより、関連する話題をメールで頂いた。
   円Oの外部の点Pより、中心を通る直線を引き、

  PA=1、PB=a とする。上記の方法で、接線PT

  が作図出来るとき、 PT=√a が成り立つ。

  (証明は、方べきの定理より明らかだろう。)

 与えられた線分の長さ(a)より、√aを作図する方法は、いろいろ考えられるが、

      


 上図において、b=1 と考えれば、作図方法は明らかだろう。


線分の中点
  定木とコンパスを用いて、線分の中点を求めることは易
 しい。(→参考:線分の等分割

  それでは、左図のような円が与えられたとき、線分ABの
 中点を定木のみを用いて作図することはできるだろうか?

  (この問題は、ハンドルネーム tappon さんという方から
   いただいたものである。)


   答えは、可能である。

   円の中心は直径を2等分することを利用して、直径に
  平行な直線が作図できることに気がつけばよい。


 円Oの任意の直径をPQとし、直線PB上に任意に点Rを
とる。

線分BQと線分ROの交点をSとし、直
線PSと線分QRの交点をTとすると、
直線BTは、直径PQに平行である。

 同様にして、直径PQに対して、直線
QA上の任意の点Uから点Vが作図で
きる。

 このとき、直線AVは、直径PQに平行
である。

 また、円Oの任意のPQとは別の直径
をWXとし、直線XA上の任意の点Yから
点Zが作図できる。

 このとき、直線AZは、直径WXに平行
である。

  同様にして、点Bを通り、直径WXに
 平行な直線が作図できる。

 このとき、求める点Mは平行四辺形
ADBCの対角線の交点である。


2:1の分点
          世の中に、作図の結果、2:1に分ける点となる場合はたくさんある。ただ、
         とっさに「そのような点を作図せよ。」と言われたら、世の多くの人は、線分
         を3等分して、2:1に内分する点を指し示すことだろう。
                                        (参考:線分の等分割

 しかしながら、一番有名な「2:1に分ける点」は、多分、三角形の重心である。
  △ABCにおいて、

 辺AB、BCの中点をそれぞれM、Nとするとき、

 線分ANとCMの交点が、重心Gである。

  重心Gは、中線ANを、2:1に内分する。

  左図では、定木・コンパスを用いて、中点を作図し
 ているが、もちろん、コンパスのみを用いて作図可能
 である。したがって、重心Gもコンパスのみで作図可
 能である。( → 参考 : 反転

 重心以外に、「2:1に分ける点」の作図例をまとめてみよう。
   B=30°の直角三角形ABCにおいて、斜辺ABの垂直二
  等分線が辺BCと交わる点をNとおくと、

   Nは、辺BCを、2:1に内分する。

   △ABCにおいて、
  辺ACの延長上に、AC=CMとなる点Mをとる。

   辺ABの中点NとMを結び、辺BCとの交点をPとおく。

   このとき、
         Pは、辺BCを、2:1に内分する。

   △ABCにおいて、
  辺ABの中点をMとし、線分MCの中点をNとおく。

   直線ANと辺BCとの交点をPとおく。

  このとき、
        Pは、辺BCを、2:1に内分する。

   平行四辺形ABCDにおいて、
  辺BC、CDの中点をそれぞれM、Nとおく。

   線分AM、ANと対角線BDとの交点を、それぞれP、Qと
  おく。

  このとき、
        P、Qは、対角線の3等分点である。


線分の等倍

 円の4分割で用いられた方法を応用すれば、線分の等倍がコンパスのみで作図すること
ができる。
  左図を眺めれば、明らかであろう。

  点Bを中心として半径ABの円を描き、円周を6等
 分する方法により点Cが求められる。

  このとき、線分ACは線分ABの2倍になっている。

 同様にして、線分ABの3倍になる点Dが作図できる。


円の中心
   定木とコンパスを用いて、円の中心を求めることは易しい。

   任意に定木を用いて、弦AB、CDを引き、各線分の垂直二等
  分線を作図すればよい。

   そのときの交点が、求める円の中心となる。


 ここでは、コンパスのみを使って円の中心を求める方法を考える。

   円周上に任意に1点Aをとる。点Aを中心とする任
  意半径の円を描き、その交点をP、Qとする。

   2点P、Qを中心とし半径APの円弧をそれぞれ描
  き、その交点をB(もう一つは、A)とする。

   このとき、円Aに関して、点Bと対称な点Oを作図
  すれば、点Oが求める円の中心となる。
                    (→ 参考 : 反転

 ここで、作図の解析をしておこう。

 作図方法から、AO・AB=AP2 なので、明らかに、△APO ∽ △ABP である。

このとき、△ABPにおいて、AP=BP なので、OA=OP となる。

同様にして、△AQO ∽ △ABQ なので、OA=OQ となる。

したがって、点Oは、円周上の3点A、P、Qから等距離にある点なので、円の中心となる。


(追記) 平成20年5月19日付けで、当HPの掲示板「出会いの泉」に、HN「ほえほえ」さん
     から次のような書き込みがあった。

 小学四年の息子の参観日は、「教科書付録の紙の円盤と同じ大きさの円をコンパスで描
く」という授業だった。そこでは、円の半径を求めるために、紙の円盤を四分円に折って中
心を求め、そこから円周までの距離を半径として、円を描いていた。
                              (ふちをなぞる、は反則らしい...(^^;)

そこで疑問。これが紙でなく折れない鉄とかの円盤だったら、どうするのだろう、ということ。

小学四年なので、まだ平行の概念も垂直二等分線も習ってないし...。なにかいい方法
はあるのだろうか?


 この問いかけに対して、当HPがいつもお世話になっている、らすかるさんは、5月20日
付けで掲示板に、

 「ある直線のある点を通りその直線と垂直な直線」の作図が可能ならば、円内に長方形
が描けて、対角線の交点が求める円の中心である。

と書き込まれている。多分、らすかるさんの意味するところは下図の通りかな?

            

 私の「小学四年生」向けに考えた方法は、重力を利用するもの。イメージ図は下図。それ
で正確に中心が求められるのかと突っ込まれれば、おとなしく引き下がるしかない解法だ
が...。
   (ほえほえさんの息子さんからは、「紐でとめるのは穴があいてないと難しいんじゃな
    い?」とツッこまれてしまったそうである。(ヤハリ...。)「セロテープを使えばきっと
    大丈夫」とフォローしていただいたそうで感謝します。エ〜と、私の場合の想定は、ア
    ロンアルファなどの瞬間接着剤や、ごく微量の粘着物質を使うものです...。)

               

  この操作を、円内の別な点でも行い、2つの直線の交点が円の中心となる。

 小学四年生向けということなので、「反転」を用いることを避けたが、「ほえほえ」さんの問
いかけに厳密に答えるとすれば、上記で述べた「反転による円の中心の作図」が正解手順
となるだろう。

(追記) 平成20年5月22日付け

 その後いろいろな方からアイデアを頂戴したのでまとめておきたい。

 出題者の「ほえほえ」さんから....

 友達から円盤を借りてきて下図のように直線上に並べ、直径を求める。同じ操作を、円を
少し回転させて行う。2つの直径の交点が円の中心となる。

   


 当HPがいつもお世話になっている「KyamWeb」さんから....

 三角定規の直角の部分を円周にあてがい、斜辺以外の2辺と円周との交点を結ぶと直径
が得られる。この操作をあてがう場所を変えて行い、2つの直径の交点が円の中心となる。

        

 当HPがいつもお世話になっている「カルピス」さんから....

 円周上に異なる3点をとって、三角形の外接円の中心を辺の垂直2等分線を引いて求め
る。


(コメント) いずれも描く人の予備知識に応じた方法で、「アリ」だろう。


円の接線3 (円の中心を用いないで、円周上の任意の点で接線を引く)

 平成17年5月20日、当HPがいつもお世話になっているHN「らすかる」さんより、メール
を頂戴した。そこには、斬新な円の接線の作図方法が書かれていた。

 一週間程前(5月14日)に円の接線を引く面白い方法を考えられたとのことで、この方法
を多くの方に役に立つように記録として残してほしいというらすかるさんの思いが当HPのこ
のページに託された。

 当HPの「円の接線」では、円の中心が本質的な役割を果たしていた。らすかるさんの考
案された方法は、円の中心が分からなくても作図が可能で、しかも、たった2回コンパスを
利用するだけである。
(作図方法)

  与えられた円Oとその周上
 の点をAとする。

 (1) 円Oの円周上の任意の
   点Bを中心として点Aを通
   る円を描き、円Oとのもう
   一つの交点をCとする。

 (2) 点Aを中心として点Cを
   通る円を描き、円Bとのも
   う一つの交点をDとする。

 (3) 点Dと点Aを結ぶ直線が
   求める接線となる。

 ここで、確かに接線となることを確認してみよう。(証明は易しい!)
∠BCA=θ とおくと、
∠BOA=2θ である。

 また、△ABCは二等辺三角
形なので、∠BAC=θである。

 よって、
  ∠ABC=180°−2θ
より、 ∠ADC=90°−θ
  ここで、△ADCは二等辺三
 角形なので、
   ∠ACD=90°−θ

 よって、∠DAC=2θとなる。

∠BAC=θ なので、
  ∠BAD=2θ−θ=θ

 以上から、∠BCA=∠BAD
が成り立ち、接弦定理により、
線分ADは、円Oの点Aにおけ
る接線となる。


(コメント) とてもスッキリした作図方法ですね!
      ところで、証明には使われていませんが、△OABと△ADCが相似になることにも
      実は心惹かれるものがありました。何かしらの新作問題が作れそうです。
      このような機会を与えていただいた、らすかるさんに感謝いたします。


放物線の焦点・軸

   定木とコンパスを用いて、任意に与えられた放物線の
  焦点と軸を作図する方法を考える。


   (この方法は、ハンドルネーム tappon さんという方に
   お教えいただいたものである。)

 放物線に対して、任意に平行な2直線 AB、CD
を引く。それらの中点を M、N とし、直線MNと放
物線との交点を E とする。

 点 E において、直線ABと平行な直線EXを引く
と、それは、点 E における接線となる。

 直線MNに垂直な線分PQを任意に引き、その
垂直2等分線RYは、放物線の軸となる。

 点 E における接線に関して、直線MNと対称な
直線を引き、直線RYとの交点を、F とおくと、点F
は、放物線の焦点となる。
  

(解析) 簡単のため、放物線の方程式を y=x2 とする。
    この放物線に任意に直線 y = mx + n を引く。このときの、交点の x 座標は、
    2次方程式 x2 − mx − n = 0 の解となる。この2つの解を、α、β とおくと、
    解と係数の関係から、 α + β = m となる。
      したがって、線分AB、CDの中点M、Nの x 座標は、2直線AB、CDが平行
    ならば、同じ値となり、直線MNは、放物線の軸に平行となる。
      点 E の取り方から、直線EXは放物線の接線となる。
    軸に平行な直線MNに垂直な線分PQの垂直2等分線は、明らかに、放物線の
    軸となる。
      軸に平行な入射光線MEは、放物線の性質から、点 E で反射して、焦点 F
    を通る。この性質を利用して、放物線の焦点が作図される。

2点を結ぶ線分

 2点を結ぶ線分を定木で引くとき、いつも疑問に思うことがある。与えられた定木という
のは、どんなに遠くに離れた2点でも1回の操作で直線が引けてしまうほどのものなのか
と。(多分、幾何学の世界の定木の定義からすると、定木というものはそういうものなの
だろう!)
 与えられた2点を結びたいのに、定木の長さが足りないということは、現実の世界では、
しばしば直面することである。普通だったら、適当に2点間に定木をおいて、目分量で引
いてしまっている方が多いと思われるが、ここでは、コンパスを活用して引こうと思う。

 1回の操作で線分が引けないほど、ある程度離れた2点A、Bが与えられているものと
する。
 ここで用いるコンパスは、幾何学における定義からすれば、任意半径の円弧が引ける
はずであるが、これも現実的ではない。2つの場合に分けて考えよう。

 2点A、Bを中心とする円弧が交わる場合コンパスで描ける円弧の半径が距離ABの半分
                              以上の場合

        2点A、Bを中心とする円弧(同一半径)の交点
  を、P、Q とする。

   次に、2点P、Qを中心とする円弧(同一半径)
  の交点を、S、T とする。

   直線STと直線ABは同一の直線である。

   2点S、Tを、1回の操作で線分が引けないと
  きは、上記の操作を繰り返して、1回の操作で
  線分が引けるまで、2点間の距離を縮めること
  が出来る。

   このように、直線AB上に分点をいくつか作図
  して、それらを結ぶことにより、線分ABを作図
  することができる。

 2点A、Bを中心とする円弧が交わらない場合コンパスで描ける円弧の半径が距離ABの
                                 半分より小さい場合


   この場合は、上記のような作図が不可能なので別な方策が必要となる。

      2点A、Bから交わる2直線を任意に引き、交
  点を、P とする。

   次に、AP、BP の中点を、M、N とする。

   線分MNを引き、それと平行に直線ABを引け
  ばよい。

   線分MNが引けない場合は、3等分点、4等分
  点...を考えればよい。

   線分AP、BPが引けない場合は、2点A(B)、P
  に対して、上記の操作を行えばよい。

線分の垂線

 定木とコンパスを用いて、直線外の1点から直線に垂線
を引くことは易しい。

 ここでは、定木のみを使って、直線外の1点Pから直線
に垂線を下ろす方法を考える。

 ただし、直線上に中心を持つ円が与えられ、点Pは、円
の外部にあるものとする。
 与えられた円の直径をABとし、線分PA、PBと円
との交点を、それぞれ S、T とする。

 2点AとT、BとSを結び、その交点をQとおく。

 このとき、直線PQは、与えられた直線 の垂線
となり、点Hは、そのときの垂線の足である。
   

 この作図法は、三角形の3垂線は1点で交わるという性質を利用している。

 上記では、点Pは、円の外部にあるものとしたが、内部にある場合は次のように考えれば
よい。

  円外に任意に点Qをとり、上記のように垂線を引くこと
 が出来る。

  同様にして、もう1本垂線を引くことが出来る。
 このとき、平行線で述べた方法により、円内の
点Pより垂線を引くことが出来る。
     

(コメント) いつもお世話になっているらすかるさんから、この話題についてメールを頂い
      た。(平成17年7月6日付け)

     上記では、与えられた線分を円の直径上にあるものと仮定したが、らすかるさん
    によれば、円がどこに与えられていても垂線が引けるそうだ。(方法は結構複雑ら
    しい。)それどころか、円とその中心がどこかに一つ与えられているだけで、コンパ
    スと定木で作図出来るものは全て、定木だけで作図出来るとのことである。

     これについては、今後の研究課題としよう。(→ 参考:「定木による作図」)


角の移動

 定木、コンパスを用いて、与えられた角を、任意の位置に移すことは易しい。

     
 それでは、コンパスのみを用いて作図するには、どうしたらよいのだろうか?

いま、平面上に3点A、B、Cが与えられていて、∠BACを任意の位置に移動させたい。

              

 平面上の任意の点を、A’とし、さらに、A’B’=ABとなる点が与えられているものとする。
このときは、下図のように作図すればよい。

            

 上記の作図の根拠は、 △ABC≡△A’B’C’ である。

 上記では、A’B’=ABとなる点B’をあらかじめ仮定したが、B’も任意の位置にあるとき
は、どう作図すればよいのだろうか?


円に接する円

   左図のように、半円の中に同半径の半円が
  接している。

   このとき、2つの小半円に外接し、大半円に
  内接する円は、次のように作図される。
 大半円の直径を1辺とする正方形を描き、
正方形の頂点と2つの小半円の中心A、B
を結ぶ線分の交点をCとする。

 このとき、点Cが求める円の中心となる。
  

 ここで、作図の解析をしておこう。

 求める円が右上図のように作図できたものとする。

 直角三角形CAOにおいて、三平方の定理より、 r2+(2r−x)2=(r+x)2

 よって、x=2r/3 となる。このとき、 AO=r、CO=4r/3、CA=5r/3 なので、

直角三角形CAOは、辺の比が、3:4:5 の三角形となる。

同様に、直角三角形CBOも、辺の比が、3:4:5 の三角形となる。

 以上から、求める円の中心は、上図のような作図で得られる。

 ところで上記では小半円の半径は等しいと仮定したが一般の場合はどうなるであろうか?

          

 求める円の半径は、解析的手法で求められる。

△CAOと△CBOにおいて余弦定理を用いて、

   

  が、求める円の半径である。

 実際に、△CAOにおいて、CA=r+x 、AO=s 、OC=r+s−x なので、

    cos∠AOC=((r+s−x)2+s2−(r+x)2)/(2(r+s−x)s)

同様に、△CBOにおいて、CB=s+x 、BO=r 、OC=r+s−x なので、

    cos∠BOC=((r+s−x)2+r2−(s+x)2)/(2(r+s−x)r)

∠AOC+∠BOC=π なので、 cos∠AOC=−cos∠BOC

よって、  r((r+s−x)2+s2−(r+x)2)=−s((r+s−x)2+r2−(s+x)2

      r(r+s)2−2rx(r+s)+rx2+rs2−r3−2r2x−rx2

    =−s(r+s)2+2sx(r+s)−sx2−sr2+s3+2s2x+sx2

  2x(r(r+s)+r2+s(r+s)+s2)=r(r+s)2+rs2−r3+s(r+s)2+sr2−s3

したがって、

 4x(r2+rs+s2)=(r+s)3−(r−s)(r2−s2

           =(r+s)((r+s)2−(r−s)2

           =4rs(r+s)

 これより、
          
が成り立つ。

 この解析的手法で求めた円を幾何的に作図する方法はあるのだろうか?

 この件に関して、当HPがいつもお世話になっているHN:らすかる さんから、上記の作図
方法が完成した旨、メールをいただいた。(平成17年8月9日付け)

 いただいた作図方法は、上記の場合の自然な一般化になっており、とても鮮やかなもの
で、思わず感動してしまった!らすかるさんに感謝いたします。

   左図のように、大半円の直径を1辺と
  する正方形を2つ描き、下方の正方形の
  辺の中点をPとする。

   直線PBと正方形との交点をQとおく。

   また、線分AQと直線PFとの交点をC
  とする。

   このとき、点Cが求める円の中心となる。


  (コメント) 私がそうであったように、多分
        読者の方も、このような単純な
        作図で本当に所要のものが得
        られているかどうか、半信半疑
        だろうと思う。
        (らすかるさん、失礼!)

    ここで、作図の解析をして、本当に求
   める点が得られることを確認しよう。


  (解析)  求める円が左図のように作図
       できたものとし、直線ACの延長
       と正方形との交点をQとする。

    △ABCにおいて、余弦定理より、

     
                       となるので、

           すなわち、
                  
 このとき、
         
より、
             
が成り立つ。

 そこで、OB= r に注意して上図のように、DE=OP であるように点Pをとれば、上式は、

         

が成り立つことを意味する。

 よって、2つの直角三角形BEQとBOPにおいて、 △BEQ∽△BOP となり、

3点P、B、Q は1直線上にあることが分かる。

 また、上記の三角比の値を用いて、

         
         

であるので、
         

が成り立つ。

 よって、
        

が成り立つことから、2つの直角三角形FHCとFOPにおいて、 △FHC∽△FOP となり、

3点P、F、C は1直線上にあることが分かる。

 以上から、上記の作図方法をとれば、所要のものが得られることが分かった。(終)


(追記) 平成19年5月20日付け

 5月19日付けで広島在住のSさんから平成16年9月23日以来のメールを頂いた。その
ときは、VISUAL BASICをツールにしてプログラムを作られているとのことであったが、今、
円のグラフに関心をもっておられるとのことで、次のような問題を提起された。

1. 大きな円があり、その中に内接円を描いていく。一つの場合は同心円で同じ半径のも
  のを描けばいいし、二つ、三つの場合もできる。四つの場合もどうにかできる。
   ここで、任意の個数の円を描く場合に、それぞれの円の中心座標と中心の座標の一
  般式はあるのだろうか?あるとすればどうなるのだろう?

2. 半円の直径上に中心を持つ2つの内接円を描き、その後、その隙間に内接円を次々
  と描いていく場合のそれぞれの円の中心座標と中心の座標の一般式はどうなるのだろ
  うか?



(コメント) 1.2.については、江戸時代の和算家(関孝和や建部賢弘など)がかなり研究
      していて、多分文献を探すと参考になる記述があると思います。文献としては、
      「日本の幾何 何題解けますか」が有名でしょう。
       特に、2.については、N個目の内接円を描いたとき、その中心からもとの半円
      の直径に下ろした垂線の長さがN個目の内接円の直径のN倍になるという性質
      を上手く使うと、Sさんの希望が叶いそうですね!

 上記で計算したように、1個目の円の半径 x は、

           

であった。この円の中心Cから直径に下ろした垂線の長さ Y について

          Y=2x  (←垂線の長さが内接円の直径に等しい)

になっているかどうか実際に調べてみよう。

 ヘロンの公式を用いて、

 (△ABC)2=rsx(r+s+x)=x((r2+rs+s2)x+rsx)=x2(r+s)2

また、 △ABC=(r+s)Y/2 でもあるので、

    Y2=4x2  すなわち、 Y=2x

が成り立つ。

 1個目の円については、上記のようにヘロンの公式を用いて簡単に示すことができたが、
2個以上の場合は少し難しいように思う。(同様の手法が使えない!)

   左図のように、円が順次内接するとき、その
  内接円の半径や上記の性質を証明するには、
  「反転」の性質を利用すると比較的平易な計算
  で求められる。

   反転を用いずに、この計算を手計算で行う
  ことは非常に辛い!!また、座標による計算
  も膨大すぎて手に負えない...予感!

 円 C の半径は、
               (→ 参考:「曲率の真実(反転)」)


 円 C から直線ABに下ろした垂線の長さは、上記の半径の 2n 倍である。
                           (→ 参考:「曲率の真実(靴屋のナイフ)」)


(補足) 下図のような図形は、アルキメデスにより、アルベロス(靴屋のナイフ)と呼ばれた。

  アルキメデスは、円 C1 の半径を求めている。

  また、垂線の長さと直径の関係は、パッポスに
 より発見された。

(追記) 平成19年11月18日付け

 11月17日付けで広島在住のSさんからメールを頂いた。

 上記で得られた結果より、円 C の中心 ( x , y ) の座標は、

   x=(2r3+5r2s+4rs2)/(r2+2rs+2s2

   y=2s(r+s)2/(r2+2rs+2s2

で与えられる。ただし、直線ABを x 軸とし、半円の直径のA側の端点を原点とする。

 このとき、パソコンを用いて、その円を描画させると微妙にズレてしまうという。

 どこに間違いがあるのだろうか?ということだった。

 実際に、グラフ描画ソフトを用いて描かせてみたものが下図である。r=2、s=1 として、

    

 確かに、ズレていますね!...でも、これは、パソコンの計算の誤差からくるものと私は
判断したのですが、真相は如何に?


(追記) Meltyさんからのコメントです。(平成28年3月15日付け)

 お久しぶりです。「質問に対する回答(18)」に関する投稿以来、3年ぶりとなります。

 さて、上記の「ズレの真相は如何に?」とのことですが、円Cの中心の座標に誤りがあるた
め、ズレが生じています。

<x座標> 上方の正方形が2つ連なった図を利用すると、DHに相当します。

   DH=DF+FH=2r+\frac{rs(r-s)}{r^2+rs+s^2}=\frac{r(r+s)(2r+s)}{r^2+rs+s^2}

   すなわち、 x=(2r3+3r2s+rs2)/(r2+rs+s2

< y座標> 同図のCHに相当し、CH=\frac{2rs(r+s)}{r^2+rs+s^2}

  すなわち、 y=2rs(r+s)/(r2+rs+s2

となります。図の状況をdesmosで作図してみました。一助となれば幸いです。


(コメント) 中心の座標が違っていたとは...。Meltyさんに感謝します。


正方形2

 長方形の面積と等積の正方形を作図することは、それほど需要はないかもしれないが、
その作図に至る方法論にはとても興味がある。

 当HPの「作図問題における円の役割」において、円を用いた相加平均と相乗平均の関
係の証明で、下図を利用した。

  この図を解析すると、長方形の面積と等積の正
 方形を作図するには、次のように行えばよいこと
 が分かる。
長方形ABCDに対して、頂点Aを中心とし、
半径ABの円弧を描き、辺ADの延長との交
点をEとする。

線分EDの中点をOとし、Oを中心、ODを半
径とする円を描き、直線ABとの交点をF、P
とする。

このとき、AFを1辺とする正方形を描けば、
その正方形が求めるものである。

 証明は、上図の上半円図からも明らかであろうが、方べきの定理を用いる方法もある。

 長方形ABCDの面積は、AB×AD(=ab) である。

方べきの定理より、AE×AD=AF×AP が成り立つ。

ところで、 AB=AE 、 AF=AP である。

 よって、 AB×AD=AE×AD=AF×AP=AF2 が成り立つ。

以上から、正方形AFHGの面積と長方形ABCDの面積は等しい。


(追記) 平成23年9月24日付け

 当HPの読者の方、Sさんより関連する話題をメールで頂いた。

   左図において、AB=c、BC=b、FG=a とする。

  四角形ABGEを正方形とするとき、ab=c2 である。

   この性質を利用すると、2数の相乗平均から一方

  の数を作図する方法が得られる。

 a、c が与えられた場合の 長さ b(>a) の作図方法

  BFの延長とAEの延長の交点をDとすれば、AD=b である。

 b、c が与えられた場合の 長さ a(<b) の作図方法

  AEの延長上にAD=b となるように点Dをとり、BDとEGの交点をFとすれば、FG=a で
 ある。


正方形3

 横・縦の長さがそれぞれ a、b (ただし、a>bとする。)の長方形の面積と等積の正方形
を作図するには、 の長さが作図できればよい。正方形2においては、方べきの定理
を用いてそれを求めた。

 ここでは、次の式変形を利用して作図する方法を考える。

        (a+b)2−(a−b)2=4ab

 この式を図形的に考えれば、次のような3辺を持つ直角三角形を考えることができる。

         

 この直角三角形の作図を目標に考えると、次のような作図方法が得られる。

    

 Bを中心とした半径 b の円弧を描き、辺BCとの交点をEとおく。さらに、Eを中心とした半
径 a+b の円弧を描き、辺CDの延長との交点をFとおく。線分CFの中点をGとすると、線
分CGの長さがちょうど求める正方形の一辺の長さとなる。後は、H、I を作図すればよい。


周の長さ2pの三角形

 周の長さが 2p で内角の一つが定角である三角形の作図を考えてみよう。これは、「円
外の1点からの接線の長さは等しい」という事実を用いて解決される。

    点Oを中心として、半径 p の円を描
   き、2直線との交点をP、Qとおく。

    点Pでの垂線と∠Oの2等分線との
   交点をRとする。Rより、OPの平行線
   を引き円との交点をSとする。

    Sにおける円の接線と2つの線分OP、
   OQとの交点をそれぞれA、Bとおく。

           このとき、△OABの周の長さは、2p で、求める三角形が得られた。

 実際に、 2p=OP+OQ=(OA+AP)+(OB+BQ)
                 =(OA+AS)+(OB+BS)=OA+AB+OB である。


楕円に接する円

 円に接する円を作図することは易しい。

   左図のように、定円 O に対して円外
  の点 P および円内の点 Q に対して、
  点 O を通る直線を引くとき、円 O との
  交点が定まるので半径も定まる。

   このことから左図のように作図できる。

   これに対して、楕円に接する円を作図
  するにはどうしたらいいのだろう。

 円のように簡単には描けないと予想されるので、まず解析をしてみよう。

       


 上図のように楕円上の点Pにおいて接線を引き、その接線に垂直で接点を通る直線(法
線)が引ければ、その直線上の任意の点から楕円に接する円を作図することは易しい。

 しかし、ここでいくつかの問題点があげられる。

 (1) 楕円上の任意の点で接線は作図できるのだろうか?

 (2) 楕円上の接点Pを与えてから点Qを論じているが、これは考える順番が逆ではな
   いか?(すなわち、楕円外の任意の点Qから点Pを求めてはいない!)

 (1)の問題点は、次のような楕円の驚くべき性質により解決される。

      


 楕円の焦点 F、F’の位置が分かっている場合、x 軸上にはない楕円上の任意の
点Pにおける法線は、∠FPF’の2等分線である。


 もちろん、点 P における接線は、∠FPF’の外角の2等分線でもある。
                            (→参考:いろいろな曲線の中の楕円の項)

 この事実から、焦点の位置が分かれば接線を引くことは易しい。

 上記の事実を証明してみよう。

(証明)
  左図のように、点 P にお
 ける接線に2つの焦点 F、
 F’より垂線を下ろし、その
 足をそれぞれ H、H’とする。

  楕円の離心率を e として、
 焦点 F、F’の座標は、

  F(ae,0)、F’(−ae,0)

 と書ける。

  点 P の座標を、(x1,y1
 とおく。

 このとき、楕円の準線は、 x=a/e 、x=−a/e なので、 −a/e<x1<a/e すなわち、

       a−ex1>0 、 a+ex1>0

が成り立つ。このことから、点と直線の距離の公式を用いて、

   FH=k(a−ex1) 、 F’H’=k(a+ex1)  (ただし、k は定数)

と書ける。ところで、

   PF2=(x1−ae)2+y12=(a−ex12  なので、 PF=a−ex1

また、 PF+PF’=2a より、 PF’=a+ex1 となる。

 以上から、  PF : PF’= FH : F’H’  が成り立つ。

直角三角形 PFH と直角三角形 PF’H’ において、対応する2辺の比が等しいので、

        直角三角形 PFH ∽ 直角三角形 PF’H’

となる。 よって、 ∠FPH=∠F’PH’ となり、点 P における法線は、∠FPF’を2等分す

ることが示された。 (証終)


(追記) 平成19年7月5日付け

 上記では、解析幾何的に証明したが、次のように初等幾何的にも証明できるようだ。

  左図において、

  FP+F’P=FR+F’R≦FQ+F’Q

  等号成立は、P=Q のときに限る。

 よって、点Pは、FQ+F’Q の長さの最小値
を与える。

 このとき、接線に関してFと対称な点GとF’を
結ぶ直線上に点Pがある。

 このことから、∠FPH=∠F’PQ が成り立ち、点 P における法線は、∠FPF’を2等分
することが示された。

 さて、楕円の方程式
               

が与えられれば解析的に焦点 F、F’の座標は求められる。従って、a 、b が作図可能な値
ならば、その焦点も作図可能である。

 それでは、楕円のグラフだけが与えられていて、その方程式が与えられていない場合に、
楕円の焦点を作図することは可能であろうか? ただし、長軸、短軸は与えるものとする。

      


 次のように作図すれば、それは容易だろう。

      


 上図のように、 a2−b2=(a+b)(a−b) を面積に持つ長方形(水色)が作図される。

 このとき、楕円の焦点の x 座標は、その長方形の面積の平方根であるので、正方形2

おける方法により長方形と同じ面積をもつ正方形が作図され、求める楕円の焦点の x 座標

は、その正方形の対角線の長さとなる。この長さを用いて、2つの焦点が作図される。

      


 以上で、問題点(1)は完全に解決した。

(コメント) ここでは、楕円上に任意の点を与えて、その点を接点とする接線を作図する場
      合、焦点を求めることにより考えたが、もちろん焦点を意識せずに接線を作図する
      方法も存在する。その方法は、楕円の接線で述べられる。

 さて、問題点(2)の解決に向けて準備をしよう。

 次の驚くべき性質が知られている。この性質を活用すると、問題点(2)も解決できそうだ。

 下図のように、楕円
               

上の2点 P、Q で平行な接線を引く。このとき、この2接線と接し、かつ、楕円にも接する円
の中心を C とするとき、
              OC = a + b

が成り立つ。
     


(証明) 下図のように、接線PSと x 軸との交点をA、直線CRと x 軸との交点をBとし、点
    Oから接線PSに下ろした垂線の足をH、点Rから x 軸に下ろした垂線の足をK、点
    Cから x 軸に下ろした垂線の足をLとする。

  


 このとき、 △AOH ∽ △OCL より、 AO : OH = OC : CL なので、

      OC=AO×CL/r  (ここで、r は円Cの半径で、OH=r であることに注意)

また、 △RBK ∽ △CBL より、 RB : RK = CB : CL なので、RB=t として、

      CL=((t+r)/t)RK

よって、 OC=((t+r)/tr)AO×RK が成り立つ。

 ここで、
           

が成り立つ。 実際に、楕円
                   

上の点P(m,n)における接線の方程式は、 mx/a2+ny/b2=1 なので、

       A(a2/m,0)  (ただし、 b22+a22=a22 )

である。また、この接線と原点との距離は、r に等しいから、
                                    
両辺を平方して、整理すると、
                   a4(r2−b2)=r22(a2−b2

よって、  a4/m2=r2(a2−b2)/(r2−b2) である。

 これより、
         

同様に、点R(m,n)における法線の方程式は、 a2nx−b2my=(a2−b2)mn なので、

       B((a2−b2)m/a2,0)  (ただし、 b22+a22=a22 )

である。楕円に内接する円の性質から、
                        
よって、
      (a2−b2)(b2−t2)/b2=(a2−b222/a4

 より、 b22=a4(b2−t2)/(a2−b2) なので、 n2=(a22−b22)/a2 に代入して、

       n2=(a22−b4)/(a2−b2

 これより、
        

したがって、これらを、OC=((t+r)/tr)AO×RK に代入して整理すると、

      OC2=((t+r)/t)2(a22−b4)/(r2−b2) ・・・・・(*)

ところで、直角三角形OLCにおいて、三平方の定理より、  OC2=OL2+CL2

ここで、 OL=OB+BL=OB+((t+r)/t)BK なので、

        
また、
        

よって、 OC2=OL2+CL2 に代入して整理すると、(←かなり計算が大変!)

      

上記の(*)を上式に代入して整理すると、(←かなり計算が大変!)

   a22(b4+2b2tr+t22)=b22(b4+2b2tr+t22) より、 at=br

このとき、 t=br/a を(*)に代入して整理すると、 OC2=(a+b)2

 すなわち、 OC=a+b が成り立つ。  (証終)

(コメント) 結果は簡明なのに、そこに至るまでの計算がとてもハードですね!もっと初等
      的というか簡明な証明がないものでしょうか?(簡明な証明を発見された方は、
      こちらまでご教示ください。)

       それにしても、証明途中で得られた比例式 at=br すなわち、

        (内接円の半径):(外接円の半径)=(短軸の長さ):(長軸の長さ)

       は、とても美しい関係ですね!

(参考文献:深川英俊、ダン・ペドー 著 日本の幾何−何題解けますか? (森北出版))

 この事実を用いて、問題点(2)は半分程度解決される。

  左図において、楕円

      

 の中心Oから半径 a+b の

 円を描き、その円周上の任

 意の点をQとする。

  点Qと点Oを結び楕円との

 交点をAとし、点Aを通る x

 軸の垂線と補助円

     x2+y2=a2 

との交点をBとする。半径OBに垂直な直径をC、Dとし、その点で引いた接線と x 軸との交

点をそれぞれE、Fとする。2点C、Dよりそれぞれ x 軸に垂線を引き、楕円との交点をG、H

とする。このとき、直線EG、FHは線分OQに平行な楕円の接線となる。点Qを中心として、

2つの接線に接する円を描くと、その円は楕円と点Pで接する。


(コメント) 楕円外の任意の点を求める円の中心としたかったが、上記では、OQ=a+b
      という制約付きの任意の点である。その意味で、半分程度の解決と判断した。

(補足) 平成19年7月3日付け

  


 楕円の方程式を、 x2/25+y2/9=1 とし、接点 P(−4,9/5)とする。

 このとき、接線の方程式は、 y=(4/5)x+5 なので、接線が x 軸の正の向きとなす角
を θ (0<θ<π/2)とおくと、

     tanθ=4/5

が成り立ち、簡単な計算から、  cosθ=5/ 、 sinθ=4/ である。

 ところで、 上記で求めた公式に代入して、 r=25/ 、 t=15/ より、

  OB=16/ 、 BK=9/ なので、 OK=25/

 また、 RK=12/ なので、円 C と楕円の接点 R の座標は、

  R(25/,12/

 となる。このことは、 R( a・cosθ b・sinθ ) と書けることを意味する。

 この事実は、一般的に成り立つらしい。

(オーストラリアのクィーンズランド大学のカペル博士が発見された!)

 実際に、上図において、
               
なので、
     

よって、 ∠OAP=θ とすると、

        

である。いま、点R( x , y )とすると、 x = OB+BK

 ここで、
      
で、また、
     
より、
    

したがって、
       

また、
   

 以上から、接線と x 軸の正の向きとのなす角を θ とすると、

 平行な2接線と円に接する楕円上の接点の座標は、R(a・cosθ,b・sinθ)

と書けることが示された。


(コメント) この事実を用いると、平行線が与えられれば、瞬時に接点Rが求められ、点R
      で法線を描けば、簡単に円が作図できますね!

 実際に、接点の座標の形から、次のように所要の円が作図される。

    


 楕円上の任意の点 P における接線 L が x 軸と交わる点を A とする。原点を通り、Lに
平行な直線を L0 とする。直線 L0 と楕円の補助円との交点をQ とし、Qから x 軸に下ろ
した垂線と楕円との交点をR とする。(この点 R が求める接点となる。)

 楕円の焦点 F、F’について、∠FPF’の2等分線をSR とし、直線 L0 との交点を C とす
る。(この点 C が求める円の中心となる。)

 点 C を中心とし、半径CR の円を描けば、これが求める円となる。


楕円の接線

 楕円に接線を描くことは難しそうに思えるが、円の接線と同様に比較的簡単である。この
方法は、楕円に接する円でも用いられた。

   左図のように、楕円
                

  の補助円 x2+y2=a2 が作図される。

   楕円上の任意の点 P に対して、補助
  円上の点 Q が定まる。

   半径 OQ に垂直な円の接線を引き、

  x 軸との交点を R とする。

 このとき直線 PR は求める接線となる。

 y 軸方向の縮小変換を考えれば、この事実は明らかだが、解析的な証明を与えておこう。

(証明) 点 P(m,n)とおくと、 b22+a22=a22 が成り立つ。

    また、点 Q(m,n’)とおくと、 m2+n’2=a2 が成り立つ。

    点 Q における接線の方程式は、 mx+n’y=a2 である。 よって、R(a2/m,0)

    2点 P、R を通る直線の方程式は、 nx−(m−a2/m)y−a2n/m=0

     すなわち、 mnx−(m2−a2)y=a2

    ここで、 b22+a22=a22 より、 b2(m2−a2)=−a22 なので、

              b2mnx−b2(m2−a2)y=a22

    よって、  b2mnx+a22y=a22n  すなわち、 b2mx+a2ny=a22

     これは、点P(m,n)における接線の方程式

                mx/a2+ny/b2=1

    を与えている。 (証終)


 この公式の応用として、次の問題を考えてみよう。

問 題  平面上の2点A( 1 , 0 )、B( 2 , 0 )を焦点とする楕円に、原点を通る

     直線 L : y=mx が接するとき、楕円の方程式は、m を用いてどう書ける

     だろうか。


 興味ある問題なので、計算してみた。対称性から、m>0 として考えることにする。

 楕円の中心は、点( 3/2 , 0 )なので、全体を x 軸方向に −3/2 だけ平行移動して考

える。 このとき、O’( −3/2 , 0 )、A’( −1/2 , 0 )、B’( 1/2, 0 ) となる。

 求める楕円の長軸の長さを K(=2a)とすると、楕円の方程式は、

     

と書ける。ただし、4a2−4b2=1 である。

 この楕円の補助円の方程式は、 x2+y2=a2 である。

 点O’( −3/2 , 0 )を通る直線が、円 x2+y2=a2 に接するとき、その接点の座標

( x1 , y1 )は、連立方程式 (−3/2)x1=a2 、 x12+y12=a2 を解くことにより得られ

る。実際に解くと、
            

である。この点を y 軸方向に b/a 倍した点が、直線 L と楕円との接点となる。すなわち、

            

このとき、直線 L の傾き m について、
                        
となる。これを a について解き直せば、
                       
となる。このとき、

           

 このことから、m の値が分かれば楕円の方程式は確定する。

 例えば、m=1 に対して、その楕円を求めて図示すると下図のようになる。

         


 接点 P の座標も m の関数として表される。実際に、上記の結果から、

         

となる。

 また、上記の点Pを x 軸方向に3/2だけ平行移動させれば、当初の接点( x ,y )の座標

    

が得られる。


 楕円に接する直線の条件として、次の公式が知られている。

 直線 : Ax+By+C=0 が、楕円 : x2/a2+y2/b2=1 に接するための
必要十分条件は、
             a22+b22=C2
である。


(証明) 直線と楕円を y 軸方向に a/b 倍の拡大縮小を行って、

     直線 aAx+bBy+aC=0  と 円 x2+y2=a2 を得る。

     これらが接するための必要十分条件は、
                               
     これより、
            a22+b22=C2  (証終)

 このとき、次のような面白い性質が示される。

楕円
    

に対して、原点を中心とし半径 r の円を考
え、その円周上に、2点

  P( a , y0 ) 、 Q( −r , 0 ) をとる。

  このとき、

直線PQが楕円に接するための条件は、

      r = a + b

 である。

(証明) 直線PQの方程式は、 y0x−(a+r)y+y0r=0 なので、楕円に接するためには、

      a202+b2(a+r)2=y022

    r2=a2+y02 なので、 b2(a+r)2=y04

    よって、 b(a+r)=y02=r2−a2=(r−a)(a+r) より、

       b=r−a  すなわち、 r=a+b  (証終)


半円に内接する円

  今まで適当に書いてきたものと言えば、多分
 漢字の「凹凸」をあげる方もおられよう。
               (参考:筆順について

  それと同様のものとして、半円に内接する円
 もそうではないだろうか?なぜかしら今まで厳
 密に作図しようという気が起きなかった。
                 (...不思議!?)

 当HPの「意外な所に2等辺三角形」における性質を用いると、厳密に内接円が描かれる。

 半円周上に任意に点Pをとり、点Aを中心として半径APの円弧を描く。直径ABとの交点
をQとする。正方形RHQSを作図することにより、内接円の中心Sが求められる。


線分 a/b の作図

 当HPの掲示板「出会いの泉」に、平成20年8月3日付けで、HN「Oxia」さんが書き込ま
れた話題を、一部内容を修正・補足して、まとめたいと思う。

  長さ a 、b および 1 の線分が与えられているもの
 とする。

  このとき、線分の長さ b/a は、線分BRから、

        線分の長さ a/b は、線分CQから、

 求められる。相似三角形の性質から明らかだろう。


  この話題について残された課題は、長さ a 、b の線
 分だけを与えて、長さ 1 の線分が求められないかとい
 うことである。

  果たして、このことは可能なのだろうか?


線分の和差積商

 当HPの掲示板「出会いの泉」に、FNさんが次のような書き込みをされた。
                                      (平成22年4月23日付け)

 「コンパスと定木で作図できるものは、すべてコンパスのみで作図できる」というモール・マ
スケローニの定理
がある。もちろん、例えば線分を引くことはできないから、端点を決定でき
れば線分が書けたものとみなすのでしょう。

 ここでは、コンパスのみを用いての作図方法を考えることにする。

 与えられた距離の2倍を作った方法(ABからAP)と同様にして、3倍、4倍、・・・・は作図で
き、反転によってその逆数倍が作図できる。従って有理数倍は作図できる。

 自然数 n に対して、√n 倍はどうやって作図するのだろうか。正三角形の作図から、
の作図は容易で、「基本の作図」の「円の4分割」の手法を用いて、 の作図もできる。
n=5 も同様にできそうで、すべての n についてできそう...。

 もっと基本的なのが、

 1 長さ a 、b が与えられたとき、 a+b を作図すること
 2 長さ a 、b 、c が与えられたとき、 ab/c を作図すること


であるが、簡単にはできそうにない。どうすればいいのだろうか?


 この問いかけに対して、FNさんご自身からのレポートです。(平成22年4月24日付け)

 上記の問いを解決したわけではないが、a>b のとき、a−b の作図ができればどちらも
できることが分かった。以下では、差の作図が可能として考えたものである。

 長さ a が与えられたとき、その有理数倍は作図できる。(確認済み)

1 a=b のときは、2a だから、a>b としても一般性を失わない。
 
 このとき、有理数 k をとって、a>kb とできる。
                   (a/b>k>1 となる有理数 k をとればよい)
 ka>a>kb>b だから、ka−b、a−kb は作図できる。

 よって、その差も作図できる。

 即ち、 ka−b−(a−kb)=(k−1)(a+b) は作図できる。

 従って、その有理数倍である a+b も作図できる。

2 まず、√(ab) が作図できることを示す。

 a−b が作図できるから、2(a−b) も作図でき、その中点も作図できる。

 従って、A、Bとその中点Mがあって、AM=BM=a−b とできる。

 A、Bから半径 a+b の円を書いて交点をCとする。△AMCは直角三角形になるから三平

 方の定理より、 (a−b)2+CM2=(a+b)2 なので、CM=2√(ab)
 
 従って、√(ab) が作図できる。また、反転によって、a と r から r2/a が作図できる。

 よって、c と √(ab) から、ab/c が作図できる。

 ※なお、2から、長さ a、b、1 が与えられたとき、

    a×b は、ab/1 として、 a÷b は、a・1/b として作図できる。


 FNさんの問いかけに対して、当HPがいつもお世話になっているHN「らすかる」さんが、
「a−b の作図方法」を考えられた。(平成22年4月26日付け)

補題0 : 2点の中点は作図可能

 “反転”により可能である。

補題1 : 円外の点から円への接線を引くことは可能接点が作図できるという意味

 円の中心と円外の点との中点をとって、その中点を中心として円外の点を通る円を描け
ば、元の円との交点が接点となる。

補題2 : ある長さの倍の長さは作図可能

   正三角格子は作れるので、円の外部にあって、円に最も近
  い正三角格子点から円に接線を引けば、接点までの距離は、
  円の半径の倍になる。

補題3 : 円周の4分割は可能

 補題2で作った半径の倍の長さを使えば可能である。

本題 ・・・ 説明しやすいように座標平面上で考えることにする。

 原点を中心とする単位円を描き、点A( a , 0 ) をとると、反転により、点B(1/ a , 0 )

がとれる。原点と点Bから、点C(−1/ a , 0 )がとれる。点Aと点Cの中点をとって、2点A

とCを通る円を描けば、単位円との交点の一つは点D( 0 , 1 )となる。

 補題3により、点Dから点E( 1 , 0 )がとれる。

 以上の操作により、「ある円の中心と外部の点を結ぶ線分と円との交点」が作図できたの

で、a−b が作図できることになる。 (終)


 上記について、FNさんからの補足です!(平成22年4月26日付け)

 OA=a とし、O を中心として半径 b の円C1に関して、Aを反転した点をB、Oに関するB

の対称点をC、ACを直径とする円と円C1の交点をDとする。このとき、ODがACと垂直であ

る。(←これがポイントですね!)

 即ち、補題3により、長さ a の線分と垂直な方向に長さ b の線分をとることができる。

 従って、a−b が作図できる。(逆方向に回せば、a+b も作図できる。)

※OD⊥ACが簡単に示せるように、b=1 とした座標で書いてあったようですね。最初は、
 b はどこにあるんだろうとか思ってしまいました。

 これで、長さ a、b から長さ a+b、a−b、√(ab) が書けて、長さ a、b、1 から ab、a/b
が書ける。定木とコンパスで描ける図形に関する基本的な定理を認めれば、コンパスだけ
で書ける図形が、定木とコンパスで描ける図形と同じになることの証明はそんなに難しくな
さそうです。


(コメント) FNさん、らすかるさんに感謝します。


 FNさんが別解を考えられました。(平成22年5月7日付け)
(一部文言等を修正させていただきました。)

 長さ b の線分(もちろん端点のみ)の2倍は作図可能なので、ABの中点をMとして、

AM=BM=b とできる。A、Bから半径 a の円を描いて、その交点をCとする。

△AMCは直角三角形であるから、三平方の定理より、CM=√(a2−b2) となる。

長さ a も描けるので、上記の操作と同様にして、√(2a2−b2) も描くことができる。

CM=√(a2−b2) を描いた図において、Cを中心として半径 √(2a2−b2) の円を描き、

さらに、Mを中心として半径 a の円を描く。その2つの円の交点のうち直線CMに関してA

の側にある点をDとする。

 このとき、△CDMにおいて、

   CD=√(2a2−b2)、 CM=√(a2−b2) 、 DM=a

なので三平方の定理が成り立ち、∠CMD=90°である。

従って、D、A、M、Bは一直線上にあり、AD=a−b 、BD=a+b である。

  

(コメント) なるほど!簡明ですね。FNさんに感謝します。


内接する正三角形

 当HP読者のK.S.さんより、任意の三角形(正方形)に内接する正三角形の作図方法を
ご教示頂きました。(平成23年10月5日付け)

 任意の△ABCの2辺の上に2頂点R、Qを取り、△ABCに内接する正三角形△PQRをと
る。直線CPと辺ABとの交点Dをとり、DFをPRに平行、DEをPQに平行にとれば、△DEF
は内接した正三角形となる。(正方形を三角形に内接することも同様に可能です。)

     


(コメント) 相似拡大を利用した作図ですね!K.S.さんに感謝します。


線分 ab の作図

 長さ a 、b および 1 の線分が与えられているものとする。このとき、線分の長さ ab は、
次のように作図できる。相似三角形の性質から明らかだろう。

    


正方形の復元

 平面上に4点A、B、C、Dがあり、それらはある正方形の4辺のそれぞれの上にある1点で
ある。このとき、この正方形を復元することは大いに興味を引きつける題材と言えるだろう。

 出典:デュードニー 「現代的なパズル」(1926年)

   

 作図のポイントは、合同な直角三角形を見いだすことである。

  

 題意より、4点A、B、C、Dは、ある正方形の辺上にあるので、BD=AE、BD⊥AE となる
ように点Eをとれば、Eもまた正方形の辺上の点である。

 後は、直線CEを引き、直線CEに平行で点Aを通る直線を引く。さらに、直線CEに垂直で、
点B、Dを通る直線をそれぞれ引けば、正方形が復元できる。これらは全て定木、コンパス
で作図可能である。


 当HP読者のHN「UIN」さんからのコメントです。(平成28年1月13日付け)

 図の点Eが点Cと重なる時は復元できるのですか?これらを除外する条件が抜けているよ
うですが、無限に描けた時は復元と考えるのでしょうか?


(コメント) 確かに、4点の位置関係によっては、「点Eが点Cと重なる時」もあり得ますね。
      そのときは正方形の復元は出来ないようです。


楕円の中心と軸

 円の中心は、互いに平行でない2つの弦の垂直2等分線の交点として求められる。楕円
に対して同じことをやっても楕円の中心は求められない。

  

 楕円の中心を求めるには、どうすればいいのだろうか?

 楕円の弦で平行なものを2つ描き、その中点を結ぶ弦を引き、その中点が楕円の中心と
なる。
 

 上記では、座標軸が明記されていたが、楕円だけ明記されいて、座標軸が明記されてい
ないときはどうだろう。楕円の中心は、上記のようにして求められる。

  

 このとき、楕円の中心を中心として楕円と4点で交わる円を描く。それらの交点と楕円の
中心を結ぶ2つの隣り合う線分の角の2等分線を描くと、それが丁度、軸を表す。

  


放物線の法線

 放物線の任意の点Pで接線を引き、その接線に接点Pで直交する直線を引けば、それが
法線となる。

 よって、法線の作図を考える場合、その意味合いから、接線をまず描いて、それから法線
を描くと、普通考えるかもしれないが、実は、接線を描く必要はなく、法線を作図することが
出来る。

 そのためには、次の放物線の性質を用いる。この性質は、ホイヘンスにより注目された
ものとして知られているらしい。

 放物線 y=ax2 上の点P(X,aX2)における法線の方程式

   y=−(1/(2aX))x+aX2+1/(2a)

と、y軸との交点Qの座標は、

   Q(0,aX2+1/(2a))

となる。このことは、放物線の任意の点とその点における法線とy軸との交点との高低差は

x の値によらず、一定(=1/2a)になることを示す。

 この性質を利用して、放物線の法線を作図してみよう。

例 a=1/2 として、放物線 y=(1/2)x2 上の点P(−2,2)における法線は次のように作
  図できる。

   この場合の2点P、Qの高低差は、1となるので、

     

 上図の青色の実線が点Pにおける法線である。高低差が分かっているので、法線の作図
は非常に簡単なものになる。


正方形4

 令和4年1月31日付けで、当HPがいつもお世話になっているHN「S(H)」さんから、面白
サイトをご紹介いただいた。その中で、ベリースライムさんの【正方形化】に興味を持った。

 どんな三角形からも面積が等しい正方形を作図できる

(作図方法)  △ABCの底辺BCの長さを a 、高さを h とする。辺BCのC方向に、

 CD=h/2 となる点Dをとり、線分BDの中点をMとおく。

 さらに、Mを中心として半径BMの円弧を描き、Cにおける線分BDの垂線との交点をEと
おく。

 後は、線分CEを1辺とする正方形を描くと、この正方形の面積は、△ABCの面積と同じ
になる。
   
(解析) △ABC=ah/2 である。

 △EMCにおいて、 ME=(a+h/2)/2 なので、三平方の定理から、

 EC2={(a+h/2)/2}2−{(a+h/2)/2−h/2}2=ah/2

 このことから、三角形の面積と正方形の面積は等しい。



  以下、工事中