・角の2等分                       S.H氏

 「角の2等分」と聞いて、直ぐに、その作図方法が頭に描ける人は、かなり幾何が好きな人
である。
 

 中学・高校で習う「角の2等分」は、上図のように、頂角O が分かっている場合に限られて
いる。

(作図方法)

 頂角Oを中心として、適当な半径で円弧を描き、2直線との交点を、E、F とする。次に、2
点E、F を中心として、適当な同じ半径で円弧を描き、その交点をGとする。
 このとき、2点O、G を結ぶ直線が求めるものである。

 ところが、最近、次のような問題に遭遇した。

問題  頂角を持たない角を2等分せよ。

   「頂角を持たない」という条件なので、上図のように、
  AB、CDを延長して頂角を作図してから、通常の「角
  の2等分」の作図をするのは邪道であろう。

   この問題に対して、次のような作図方法があること
  を、最近知った。

   結果が分かれば、その証明は容易である。
  「作図の心構え」に従って、作図すればよい。


(作図方法)  2つの線分AB、CDに交わる直線を適当に引き、交点を、P、Q とする。

解析 ・・・ 角の2等分線が引けたものとする。このとき、この2等分線上には、△OPQ の
      内心と傍心が存在する。よって、この2点を作図すれば、求める直線が得られる。

作図 ・・・  2点P、Q において、角の2等分線を引き、それらの交点を、R、Sとおく。このと
      き、2点R、S を結ぶ直線を引けばよい。

 

証明 ・・・ 四角形PSQR は、∠SPR=∠SQR=90°なので、円に内接する四角形である。
 三角形の外角の性質と、円周角の定理により、
 x+∠OQR=∠SRQ=∠SPQ  、 y+∠OPR=∠SRP=∠SQP
よって、 x =∠SPQ−∠OQR=∠SPQ−∠PQR
 y =∠SQP−∠OPR=∠SQP−∠QPR
したがって、
 x − y =(∠SPQ−∠PQR)−(∠SQP−∠QPR)
=(∠SPQ+∠QPR)−(∠PQR+∠SQP)
=∠SPR−∠SQR= 0   (∠SPR=∠SQR=90°より)
よって、 x = y

以上から、2点R、S を結ぶ直線RSは、2つの線分AB、CDのなす角を2等分する。


(参考文献:野口健助 著 平面画法入門(日刊工業新聞社))


(追記) 令和6年12月9日付け

 上記では、直線PQを引き、それぞれの内角、外角の2等分線の交点から内心、外心を作
図し、その2点を通る直線が、求める角の2等分線であることを示している。

 同様に、直線AC、BDを用いれば、内心と内心、内心と傍心、傍心と内心、傍心と傍心の
作図からも得られる。内心・傍心については高校レベルの話であろう。

 頂角Oなしで、内心・傍心によらない直接的に求める方法も考えられる。

  線分AB上に任意に点Pをとり、Pより線分CDに垂線
 PHを下ろす。Pにおける線分ABの垂線と線分CDの交
 点をKとおく。∠KPHの2等分線と線分CDの交点をM
 遠く。Mにおける線分CDの垂線と線分PKとの交点を
 Qとおくと、Qは、線分AB、CDのなす角の2等分線上に
 ある。

  同様の操作を線分AB上の点P’で行い、点Q’を得れ
 ば、直線QQ’が求める角の2等分線となる。

(単に、∠PQMの2等分線を引いてもよい。)


(コメント) △PMQが2等辺三角形になるところが面白いですね!しかも、点Qは、線分AB、
     CDに接する円の中心になります。

 次のように、直接、角の2等分線を得る方法もある。

  線分AB上に任意に点Pをとり、Pより線分CDに平行
 線PQを引く。

  ∠BPQの2等分線上に任意に点Hをとり、PHに垂直
 な直線を引き、線分AB、CDとの交点をそれぞれN、M
 とおく。

  線分MNの中点をKとおき、Kにおいて線分MNに垂
 直な直線を描けば、これが求める角の2等分線となる。


 もちろん、素朴に頂角Oを作図して、角の2等分線を引いてもよい。

  線分AB、CD上に任意に点P、Qをとり、P、Qにおけ
 る垂線上に等距離にP’、Q’をとる。

  P’、Q’において、線分AB、CDに平行な直線m、n
 を引き、その交点をRとする。

  Rにおける角の2等分線が求めるものである。


 また、2等辺三角形を巧妙に用いて求める方法もある。

  線分AB上に任意に点Pをとり、Pにおける垂線が線
 分CDと交わる点をQとする。Qにおける線分CDの垂
 線上に、QP=QRとなる点Rをとる。

  線分PRと線分CDの交点をSとおき、Sにおける垂
 線が線分PQと交わる点をMとおく。

 このとき、Mは求める角の2等分線上の点となる。

  同様の操作を線分AB上の点P’で行い、点M’を得
 れば、直線MM’が求める角の2等分線となる。


 次の作図方法も面白い。

  線分AB上に任意に点Pをとり、Pにおける垂線が線
 分CDと交わる点をQとする。また、点Pから線分CDに
 垂線PRを引く。

  ∠QPRの2等分線が線分CDと交わる点をSとおく。

  このとき、∠APS=∠CSPなので、線分PSの垂直2
 等分線を引けば、これが求める角の2等分線となる。




  以下、工事中!


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