楕円に内接する円
楕円のグラフは、円のグラフを横方向に一定倍率で拡大縮小したものである。
(楕円の方程式については、こちらを参照)
このグラフに、下図のような半径 r の円を内接させたい。
中心をどこにおいたら、正しく作図できるのだろうか?
これについて、次の公式が知られている。
(証明) 点P(m,n)における楕円の接線の方程式は、
すなわち、 b2mx+a2ny=a2b2
また、O’(c,0)とすると、点P(m,n)における円の接線の方程式は、
(m−c)(x−c)+ny=r2
すなわち、 (m−c)x+ny=r2+(m−c)c
2つの接線の方程式は一致するから、
b2m/(m−c)=a2n/n=a2b2/(r2+(m−c)c)
すなわち、 b2m/(m−c)=a2=a2b2/(r2+(m−c)c)
後者の等式から、b2=r2+(m−c)c より、mc=b2−r2+c2
同様に、前者の等式から、b2m=a2(m−c)
よって、 b2(b2−r2+c2)=a2(b2−r2+c2−c2)=a2(b2−r2) より、
b2c2=a2(b2−r2)−b2(b2−r2)=(a2−b2)(b2−r2)
これより、
が示された。
(別解) 楕円 b2x2+a2y2=a2b2 と 円 (x−c)2+y2=r2 を連立して、y を消去すると、
(a2−b2)x2−2ca2x+a2(c2+b2−r2)=0
2次方程式が重解を持てばよいので、判別式をDとすると、
D/4=c2a4−(a2−b2)a2(c2+b2−r2)
=a2b2c2−(a2−b2)a2(b2−r2)=0
より、 b2c2−(a2−b2)(b2−r2)=0
したがって、
(コメント) S(H)さんが示された指針を参考に、別解を得ました。双対曲線を用いた解法で
はありませんが、高校生レベルの解法としては最善かつ自然と思われます。解答の
ヒントを与えていただいたS(H)さんに感謝します。上記の共通接線による解法は少
し遠回りでした!
(追記) 令和6年12月10日付け
HP読者のHN「K.O.」さんより、本ページについてご意見をいただいた。具体的な問題
について考察し、その返答としたい。
楕円 x2/4+y2=1 の内部に接する x 軸上に中心を持つ円を作図したい。
円の半径を r とすると、上記の公式から、円の中心の x 座標は、√(3(1−r2)) で与え
られる。r=0.9 の場合にGrapes で描画させたものが下図である。接しているかな?
例 楕円 x2/16+y2/9=1 の内部に接する x 軸上に中心を持つ円を作図したい。
円の半径を r とすると、上記の公式から、円の中心の x 座標は、√(7(1−r2/9)) で
与えられる。r=2.9 の場合にGrapes で描画させたものが下図である。接しているかな?
楕円に内接する円の特別な場合として曲率円が考えられる。(→参考:日常の中の曲率)
![]() |
この場合について、上記の公 式を当てはめれば、次の美しい 公式が得られる。 曲率円の半径 r は、 ![]() で与えられる。 |
証明は明らかであろう。OO’=a−r なので、平方して整理すると、 (ar−b2)2=0 が
得られる。 よって、 ar−b2=0 から、上式が求められる。
(追記) 令和6年12月11日付け
HN「K.O.」さんから、本ページの問題の類題が平成25年度の東京工業大学で出題され
ている旨、ご教示いただいた。(令和6年12月10日付け)
問題5 a、b を正の実数とし、円C1:(x−a)2+y2=a2 と楕円C2:x2+y2/b2=1 を考
える。
(1) C1がC2に内接するための a、b の条件を求めよ。
(2)(3)は(略)
曲率円の半径は、 a=b2 で与えられ、また、公式
から、 a2b2=(1−b2)(b2−a2) より、 a2=b2(1−b2) が成り立つ。
a=b2 を代入して、 2b2=1 から、 b=1/ となる。
したがって、 0<b<1/ のとき、 a2=b2(1−b2)
幾何的に考えて、 b≧1/ のとき、 a=1/2
が求める a、b の条件となる。
(コメント) 「幾何的に考えて」が少し気持ち悪いので、代数的にきちんと計算してみよう。
(解) (x−a)2+y2=a2 に x2+y2/b2=1 を代入して、(1−b2)x2−2ax+b2=0
b=1 のとき、a=1/2 で、(x−1/2)2+y2=1/4 は、 x2+y2=1 に点(1,0)で内
接する。
b≠1 とすると、2次方程式 (1−b2)x2−2ax+b2=0 が得られる。
軸の方程式は、 x=a/(1−b2)
判別式をDとおくと、D/4=a2−b2(1−b2)=0 から、軸の方程式は、x=b2/a となる。
F(x)=(1−b2)x2−2ax+b2 とおくと、 F(0)=b2>0 である。
軸の位置で場合分けをする。
・ 0<b2/a<1 のとき、解が 0<x<1 にある。このとき、F(1)=1−2a>0 である。
このとき、 b2<a<1/2 から、 0<b<1/ で、 a2=b2(1−b2) である。
・ b2/a=1 のとき、解が x=1 となるためには、F(1)=1−2a=0
このとき、a=1/2 で、b2=a=1/2 から、b=1/
b>1/ のとき、(x−a)2+y2=a2 が x=1 で x2+y2/b2=1 に接することから、
a=1/2 となる。
以上から、 0<b<1/ のとき、 a2=b2(1−b2)
b≧1/ のとき、 a=1/2 (終)
が求める a、b の条件である。
(コメント) 楕円 b2x2+a2y2=a2b2 に 円 (x−c)2+y2=r2 が内接するとき、
連立して、y を消去すると、(a2−b2)x2−2ca2x+a2(c2+b2−r2)=0
軸の方程式は、 x=ca2/(a2−b2) なので、楕円と円が2点で接するためには、
0<ca2/(a2−b2)<a すなわち、 ca<a2−b2 のとき、
判別式D=0 から、 b2c2=(a2−b2)(b2−r2) が成り立つ。
ca≧a2−b2 のとき、楕円と円は1点(a,0)で接する。
このとき、 ca2/(a2−b2)=a から、 ca=a2−b2
(a2−b2)x2−2ca2x+a2(c2+b2−r2)=0 の x に a を代入して、
(a2−b2)a2−2ca3+a2(c2+b2−r2)=0
すなわち、 a2−b2−2ca+c2+b2−r2=0 から、 r2=(a−c)2 より、 r+c=a が
成り立つ。
以下、工事中!