・ 日常の中の曲率                 S.H氏

 日常生活で数学を意識することはあまりないが、車を運転する人は否応にも数学を意識
する瞬間がある。それは、急カーブを曲がるときだ。

 カーブのある瞬間は、半径が R の円周上を動いている。その半径を曲率半径という。曲
率半径の逆数は、曲率と言われる。

           

 急なカーブの前では、下記のような標識が立っていて運転者に速度の減速を促す。

                 

 日本の道路は、道路構造令に基づいて造られている。その第15条には曲線半径(数学
でいう曲率半径のこと)のことが述べられている。(一部抜粋)

 車道の屈曲部のうち緩和区間を除いた部分(以下「車道の曲線部」という。)の中心
線の曲線半径は、当該道路の設計速度に応じ、次の値以上とするものとする。

  設計速度(km/h) 曲線半径(m)
120 710
100 460
80 280
60 150
50 100

 この表によれば、一般道路(最高速度60km/h)では、曲線半径150m以上、高速道路
(最高速度100km/h)では、曲線半径460m以上で設計されているということである。た
だ、地形によっては、「R=300」ということもあり、その場合は、「かなりの急カーブ」という
ことで、80km/h程度に減速しないと、安全にカーブを曲がるのも辛いことになる。

 乾いた道路とタイヤの摩擦係数を、0.5 として、「R=300」のカーブで、どれくらいまで
スピードが可能か計算してみよう。

 公式  (速度)2=(重力加速度)×(曲線半径)×(摩擦係数) に代入して、

       

 これを時速に直すと、大体 138km/h くらい。これは臨界速度なので、これよりスピー
ドを出すとカーブを曲がりきれず道路外に飛び出すことも考えられる。

 曲線半径からどれくらいの時速でカーブを曲がればよいのか、上記の表は一つの指針を
与えてくれる。日本では、曲線半径でカーブのきつさを表しているが、外国の標識では「速
度の上限」を示しているものもあるようだ。



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