解の巡回                                 戻る

 異なる3個のものを並べ替えるという変換は、全部で6個ある。

 例えば、正三角形ABC
            

の各頂点に一つずつ配置されている3点 A、B、C の並べ替えを考えると、

    (1) 0°の回転 (2) 120°の回転 (3) 240°の回転
   
 
(4) Aによる対称 (5) Bによる対称 (6) Cによる対称
   

の6通りあるということである。

 しかしながら、 6個ある変換も、実は2つの変換で全てが記述される。 すなわち、

   (2)のように、 A→B、B→C、C→A と移される変換を a
   (4)のように、 A→A、B→C、C→B と移される変換を b

とすると、

 (1) は、 a3(=aaa) または b2 などで、恒等変換 e と表す。
 (3) は、 a2 など
 (5) は、 a2b など
 (6) は、 ba など

 これらの6個の要素からなる集合 G={ e 、a 、a2 、b 、ba 、a2b } は群をなし、

    各要素を6乗すると、恒等変換になる

という性質をもつ。このような性質を持つものは、上記以外に次の例が有名である。

 G’={ F1(x) 、F2(x) 、F3(x) 、F4(x) 、F5(x) 、F6(x) }

ただし、
    

とする。この集合も群をなし、上記の群 G と同型になる。

  F1=F22=F32 、 F4=F23 、 F5=F32 、 F6=F232

と実際に計算してみると、その不思議な構造に驚かされる。この群の場合もやはり、

    各要素を6乗すると、恒等変換になる

という性質をもつ。( F5 が一番大変で、F52=F4 、F54=F5 、F56=F1 である!)

 私が高校1年のとき、このような問題を体験し、何かしらの数学の息吹を感じたことが思
い出される。大学入試でも、このような構造を問題とする例が散見される。

 1997年度 早稲田大学 理工学部 の入試問題

 3次方程式 x3−3x+1=0 ・・・ (*) について、次の問いに答えよ。

(1) (*)の解で 1 より大きなものは、ただ1つであることを示せ。

(2) (*)の解で 1 より大きなものを α とし、β=α2−2、γ=β2−2 とする。

   このとき、 γ<β<α であることを示せ。

(3) β、γ は(*)の解であることを示せ。


 この問題の意味するところが何かを考えずとも、解くこと自体は易しい。

(解) (1) F(x)=x3−3x+1 とおくと、 x>1 のとき、 F’(x)=3x2−3>0 なので、

      F(x)は単調に増加する。ここで、 F(1)=−1<0 、 F(2)=2>0 より、

      (*)の解で 1 より大きなものは、ただ1つである。

    (2) (1)より、1<α<2 なので、α−β=α−α2+2=(2−α)(α+1)>0

      よって、 β<α が成り立つ。

       同様にして、 β−γ=α2−2−β2+2=(α−β)(α+β)

      ここで、α+β=α+α2−2=(α+2)(α−1)>0 で、α−β>0 なので、

      β−γ>0 すなわち γ<β が成り立つ。

      以上から、 γ<β<α が成り立つ。

    (3) αは、(*)の解なので、 α3−3α+1=0 すなわち α3=3α−1

      このとき、 β3−3β+1=(α2−2)3−3(α2−2)+1
                      =α6−6α4+9α2−1
                      =(3α−1)2−6α(3α−1)+9α2−1
                      =9α2−6α+1−18α2+6α+9α2−1
                      =0

      となるので、βは、(*)の解である。同様にして、β3=3β−1 なので、

        γ3−3γ+1=(β2−2)3−3(β2−2)+1=0

      よって、 γは、(*)の解である。 (終)

 この問題の意味するところは、(*)の3つの解 α 、 β 、γ が、関数 G(x)=x2−2 に
より、 β=G(α) 、γ=G(β) 、α=G(γ) と巡回する というユニークな構造を
持っているということである。(→ 参考 : 「掲示板の話題」 )

 実際に、 G(γ)=γ2−2=(β2−2)2−2=β4−4β2+2=β(3β−1)−4β2+2
           =−β2−β+2=−(β+2)(β−1)=−α2(α2−3)=−α4+3α2
            =−α(3α−1)+3α2=α

となり、関数 G(x)=x2−2 により、 α → β → γ → α → ・・・ と巡回する。

          

 このような問題は、古くは東北大学(1970年度)にも出題されたらしい。当HPがいつもお世
話になっているS(H)さんに発見していただきました!S(H)さんに感謝します。

 F(x)=x3−3x+1 とおき、3次方程式 F(x)=0 の1つの解を α とする。

(1) F(α2−2) の値を求めよ。
(2) 2次方程式 x2−αx+1=0 の1つの解をβとするとき、β3+β-3 の値を求
   めよ。


(解)(1) α3−3α+1=0 より、 α(3−α2)=1

      したがって、 1/α=3−α2 より、 α2−2=1−1/α

      このとき、 F(α2−2)=F(1−1/α)
                    =(1−1/α)3−3(1−1/α)+1
                    =1−3/α+3/α2−1/α3−3+3/α+1
                    =−1/α3+3/α2−1
                    =−(α3−3α+1)/α3=0

(2) β2−αβ+1=0 より、 β(α−β)=1 なので、 β-1=α−β

  よって、 β+β-1=α である。このことから、

    β3+β-3=(β+β-13−3(β+β-1)=α3−3α=−1 となる。  (終)


 この話題がそのものズバリに、平成21年度の前期入試 神戸大学で出題された。
(平成21年3月29日付けで、S(H)さんにご教示いただきました。)

 F(x)=x3−3x+1 、G(x)=x2−2 とし、方程式 F(x)=0 について考える。
このとき、以下のことを示せ。

 (1) F(x)=0 は絶対値が2より小さい3つの相異なる実数解をもつ。
 (2) α が F(x)=0 の解ならば、G(α)も F(x)=0 の解となる。
 (3) F(x)=0 の解を小さい順に α1 、α2 、α3 とすれば、
      G(α1)=α3 、G(α2)=α1 、G(α3)=α2
   となる。


(コメント) 大学入試問題に出題されるということは、やはり、この話題は試験問題として適
      切で、表面的には平凡だが、実は、興味ある面白いテーマということでしょうね!

(解)(1)は、y=F(x) のグラフを書けば即答だろう。

       

      上のグラフより、明らかに、方程式 F(x)=0 は、

        絶対値が2より小さい3つの相異なる実数解をもつ。

   (2) 条件より、 F(α)=α3−3α+1=0

      このとき、 F(G(α))=G(α)3−3G(α)+1
                    =(α2−2)3−3(α2−2)+1
                    =α6−6α4+12α2−8−3α2+6+1
                    =α6−6α4+9α2−1
                    =α2(α2−3)2−1
                    =(α3−3α+1)(α3−3α−1)=0

      よって、 G(α)も方程式 F(x)=0 の解となる。

   (3)もグラフを描けば、一目瞭然だろう。

       

    上のグラフより、明らかに、G(α1)=α3 、G(α2)=α1 、G(α3)=α2 (終)

 次も、やはり早稲田大学理工学部の入試問題(2006年度)である。

 上記では、関数 G(x)は2次関数であったが、このようなユニークな構造を持つものは、
2次関数に限らずに分数関数でも存在することが知られている。下記の早稲田の問題は、
この分数関数の場合を問う問題になっている。

 n=1、2、・・・ に対して、 x の整式 P(x)=x3−nx2−(2n+12)x−8 を考

える。以下の問いに答えよ。

(1) 3次方程式 P(x)=0 の正の実数解はただ1つであることを示せ。

(2) t が P(x)=0 の解であるとき、 P(−4/(t+2)) を求めよ。

(3) P(x)=0 の正の実数解を α とするとき、P(x)=0 の最小の実数解 β

  を α で表せ。さらに、  を求めよ。

 どうも、早稲田大学理工学部は、この種の問題がお好きらしい...。

(解)(1) P’(x)=3x2−2nx−(2n+12) において、 P’(0)=−(2n+12)<0

    よって、方程式 P’(x)=0 は異符号の解を持つ。

     このとき、正の解を p とすると、関数 P(x)は、x=p で極小となる。

    すなわち、 0≦x≦p において、関数 P(x)は単調に減少し、

            p≦x において、関数 P(x)は単調に増加する。

     ここで、P(0)=−8<0 で、さらに、十分大なる x においては、P(x)>0 なの

    で、中間値の定理により、3次方程式 P(x)=0 の正の実数解はただ1つである。

  (2) 題意より、 t3−nt2−(2n+12)t−8=0 が成り立つ。このとき、

    P(−4/(t+2))
   =(−4/(t+2))3−n(−4/(t+2))2−(2n+12)(−4/(t+2))−8
   =−8{8+2n(t+2)−(n+6)(t+2)2+(t+2)3}/(t+2)3
   =−8{t3−nt2−(2n+12)t−8}/(t+2)3=0

  (3) (2)より、方程式 P(x)=0 の解のうち2つは、α と −4/(α+2) である。

    3次方程式の解と係数の関係から、残りの解を γ とすれば、

        α+{−4/(α+2)}+γ=n より、

      γ=−{α2−(n−2)α−2(n+2)}/(α+2)

     ここで、 α3−nα2−(2n+12)α−8=0 より、

            α3=nα2+(2n+12)α+8  なので、

    γ=−{α3−(n−2)α2−2(n+2)α}/(α+2)α
      =−{nα2+(2n+12)α+8−(n−2)α2−2(n+2)α}/(α+2)α
      =−(2α2+8α+8)/(α+2)α
      =−2(α+2)2/(α+2)α
      =−2(α+2)/α

    明らかに、 −4/(α+2)<0<α である。

     また、 {−4/(α+2)}−γ=−4/(α+2)−{−2(α+2)/α
                        =(2α2+4α+8)}/(α+2)α>0

    より、 γ<−4/(α+2) が成り立つ。

   よって、方程式 P(x)=0 の最小の実数解は、γで、 β=−2(α+2)/α

     ここで、 γ<0 で、 α+{−4/(α+2)}+γ=n より、 

        α=4/(α+2)+(−γ)+n>n なので、

      n → ∞ とすれば、 α → ∞ である。

      よって、このとき、 β=−2(1+2/α) →  −2  となる。 (終)

 この問題の3つの解 α 、 β 、γ についても、関数 G(x)=−4/(x+2) により、

    β=G(α) 、γ=G(β) 、α=G(γ) と巡回する

ことが分かる。 実際に、G(γ)=−4/(γ+2)=−4/{−2(α+2)/α+2}=α
より明らかだろう。

         

 さて、ここで興味あることは、このようなユニークな構造を持つ関数 G(x)の存在である。入
試問題では天下り式に与えられてしまって、そのユニークさが気づきにくい表現になっている
が、数学的には、

 「なぜ、このような形でG(x)を与えると、所要の性質を持つのだろうか?

という1点に大いに興味・関心が湧くところである。

 平成20年11月12日付けで、S(H)様より、このテーマに関連する話題が提供された。

 早稲田大学理工学部の問題では、数学的現象の結果を用いて出題しているので、あま
り考えずとも解けてしまうという虚しさが存在するということで、もう少し考えて実りがありそ
うな問題に改良されたとのことである。

 3次方程式 x3−3x+1=0 の解を α とするとき、次の問いに答えよ。

  (1) (3α2+5α+7)/α の最小多項式 p(x) を求めよ。

 p(x)=0 の解を、α1、α2、α3 とするとき、

  (2) α2 を、α1 の2次式 F(α1) で表せ。

    同様に、α3=F(F(α1))、α1=F(F(F(α1))) も示される。

  (3) α2 を、α1 の1次分数式 G(α1) で表せ。

    同様に、α3=G(G(α1))、α1=G(G(G(α1))) も示される。

  (4) Q[x]/(p(x)Q[x]) は体であることを示せ。

  (5) Q[x]において、(p(x)Q[x]) は極大イデアルであることを示せ。

  (6) p(x)=0 の判別式Dを求めよ。

  (7) より高次の方程式で、(2)のような巡回群 G が作用し、解の軌道 G(α1
    が全てを尽くすような具体例をあげ、それらを証明せよ。

 (補足) 3次方程式  の解を α として、上記の
     設問(1)(3)に答えよ。


(閑話休題)

 3次方程式 3−3x+1=0 は角3θの3等分の方程式 

     3−3x−2a=0 (ただし、 a=cos3θ)

から得られることに気がつく。

 すなわち、2a=−1 すなわち cos3θ=−1/2 より、角3θ=120°の3等分の方

程式が x3−3x+1=0 で与えられる。このとき、

 a=cos3θ=4cos3θ−3cosθなので、方程式は、x3−3x−8cos3θ+6cosθ=0
と書ける。

 因数定理により、上式の左辺は、x−2cosθ で割り切れるので、因数分解すると、

          (x−2cosθ)(x+2cosθ・x+4cosθ−3)=0

 解の公式により、   x+2cosθ・x+4cosθ−3=0 の解は、

      x=

となる。ここで、三角関数における単振動の合成の公式を用いると、x=2cos(120°±θ)

と表されるので、角の3等分方程式 x3−3x+1=0 の解は、θ=40°を代入して、

         2cos40° 、 2cos80° 、 2cos160°

で与えられる。 解 α は、1より大きい正の実数解なので、 α=2cos40°である。

 このとき、β=2cos80°=2cos(2×40°)=2(2cos240°−1)=α2−2

   γ=2cos160°=2cos(2×80°)=2(2cos280°−1)=β2−2

と書ける。 ここで、

γ2−2=4cos2160°−2=2(2cos2160°−1)=2cos320°=2cos40°=α

も成り立つ。

 この事実から問題文中で突然、関数 G(x)=x2−2 を考えたことの必然性は理解される
と思うが、この関数が生み出される、もっと深遠なる計算が、S(H)さんの問いかけをみると、
あるようにも感じ、また、きっとあるだろうという確信につながっていく。

 上記の計算では、三角関数の性質が有効に働いたが、一般の方程式に応用できる可能
性はほとんどない。

 一般の異なる3つの実数解を持つ3次方程式については、下記のように求めればよいとい
うことをS(H)さんよりご教示いただいた。S(H)さんに感謝いたします。

例 3次方程式 x3−3x+1=0 の解の1つを α とおくと、代数学における体論の結果を
  用いて、3次方程式の解はすべて有理数体に α を添加した体Q(α)の要素となる。

 そこで、他の解を x = Aα2+Bα+C とおく。α は、等式 α3−3α+1=0 を満たす。
また、α は、等式 −Aα2−Bα+x−C=0 を満たす。

   この2つの等式は、α を共通解として持つので、シルベスターの消去法を用いて、

     

 これより、次の等式を得る。

3−3(2A+C)x2+(9A2−3B2+3C2+3AB+12CA)x

          −A3+B3−C3−3A2B−9CA2−6C2A−3ABC+3B2C=0

3−3x+1=0 と係数比較して、

   2A+C=0 、 9A2−3B2+3C2+3AB+12CA=−3
   −A3+B3−C3−3A2B−9CA2−6C2A−3ABC+3B2C=1

 C=−2A を他の2式に代入して整理すると、

    A2−AB+B2=1 、 A3+B3+3A2B−6B2=1

ここで、A、B を整数と限定すると、上式を満たす A 、 B は、 A=1  、 B=0 のみであ
る。 このとき、 C=−2 である。

 参考として、上記の連立方程式を図示すれば下図のようになる。

   

 以上から、 α2−2 も3次方程式の解となる。

 この話題について、当HPがいつもお世話になっているらすかるさんが、一般的な公式を
作られた。(平成20年11月16日付け) らすかるさんに感謝いたします。

 異なる3実数解を持つ一般の3次方程式で解を巡回させる二次関数を生成する式を作っ
てみた。

 異なる3実数解を持つ3次方程式 x3+px2+qx+r=0 において

   

   

   

    

とおくと、G(x)=ax2+bx+c が解の巡回関数となる。

 x3−3x+1=0 つまり、 p=0 、q=−3 、 r=1 のときは、 s=9 、−9 で、

    s=9 のとき、 G1(x)=−x2−x+2
    s=−9 のとき、 G2(x)=x2−2

となる。 G1 は、G2 の逆回りである。

 すなわち、 G1(γ)=−γ2−γ+2
             =−(β2−2)2−(β2−2)+2
             =−β4+4β2−4−β2+2+2
             =−β(3β−1)+3β2=β

        G1(β)=−β2−β+2
             =−(α2−2)2−(α2−2)+2
             =−α4+4α2−4−α2+2+2
             =−α(3α−1)+3α2=α

        G1(α)=−α2−α+2
             =−(γ2−2)2−(γ2−2)+2
             =−γ4+4γ2−4−γ2+2+2
             =−γ(3γ−1)+3γ2=γ

(コメント) 連立方程式を解くのに、整数解という条件を付けたが、一般的にはどのように
      解くべきか、しばらく思案していました。グラフ描画ソフトを用いて安直に解を求め
      たわけだが、手計算で本当は求めたい...。

例 3次方程式 x3+x2−2x−1=0 つまり、 p=1 、q=−2 、 r=−1 のとき、

  らすかるさんの公式を用いると、 s=7 、−7 で、

    s=7 のとき、 G1(x)=−x2−x+1 、s=−7 のとき、 G2(x)=x2−2

例 3次方程式 x3+(p−2)x2−(p+1)x+1=0 において、G(x)=−x2+(−p+1)x+2


 広島工業大学 大川研究室さんからのコメントです。(平成22年10月3日付け)

 簡単のため、f (x) を有理係数既約多項式とします。これが適当な有理係数多項式 又は、
分数式 g (x) によって、f の一つの解 α から他の解が、α、g (α)、g (g (α))、・・・で得られ
る(狭義の解の巡回)ためには、Galois 理論より、f の判別式が平方数になる事が必要です。

 特に、f が3次(以下)の場合は、必要十分になります。g が多項式の時は、らすかるさんが
示されている通りです。

 逆に、g が一次分数関数で、解の巡回が成立するのは、n ≦ 3 となります。この点、以前ら
すかるさんから尋ねられました。その時私は上記の事を知っていましたが、Galois 理論 を持
ち出すのも大げさなので、異なる三実根を持つ事が必要とだけ答えておきました。


 空舟さんからのコメントです。(平成28年2月24日付け)

 3次方程式 F(x)=x3+px2+qx+r=0 の解 a、b、c に対して、Q(√D)係数で他の解を与える式
b=g(a)、c=g(b) として、らすかるさんが既に上記で公式を与えていますが、短めに導出できる
別の式として、次のようなものを見つけたので紹介します。

 s = (a-b)(b-c)(c-a) = (b-c)(-a2+(b+c)a-bc)= (b-c)(-2a2-pa+r/a) より

 b = g(a) = {(b+c)+(b-c)}2 = {(-a-p)-sa/(2a3+pa2-r)}/2

[原理的に] b=g(a) となる有理式gが与えられれば、定理 Q[a]=Q(a) により gは2次の多項式
で一意的に書けます。

 (Ax+B)/(Cx+D) = Px2+Qx+R とおけば、A、B、C、Dの斉次連立一次方程式として、分母分
子定数倍を除いて一意的に書けると思います。

 きっとそこに紹介されているのと同じものが得られるのではと思います。最初からまっすぐ
にgは1次分数式として得る考え方は、なかなか思いつかないです。


 S(H)さんからのコメントです。(平成28年2月26日付け)

 らすかるさん創作の公式の4次方程式版が創作出来れば願います。


 空舟さんからのコメントです。(平成28年2月27日付け)

 3次式では一般にはQ係数では不十分で判別式の平方根√Dを要した。それに相当して、
4次式では、u、v、w (いわゆる分解方程式の解)を使う。

 u、v、w は、次の Q(p,q,r,s) 係数の3次方程式の解として表せる。

z3+(8q-3p2)z2+(-64s+16pr+16q2-16p2q+3p4)z-64r2+(64pq-16p3)r-16p2q2+8p4q-p6=0

 F(y)=y4-py3+qy2-ry+s=0 の解を a、b、c、d とおくと、

{u,v,w}={(2a+2b-p)2=(2c+2d-p)2,(2a+2c-p)2=(2b+2d-p)2,(2a+2d-p)2=(2b+2c-p)2}

の関係である。この u、v、w を使って、

B = -12pu-32r+16pq-4p3
C = u2+(24q-6p2)u-64s+32pr+16q2-24p2q+5p4
D = -pu2+(-12r-4pq+2p3)u+32ps+(-16q-4p2)r+4p3q-p5
A = 3u2+(16q-6p2)u-64s+16pr+16q2-16p2q+3p4

 g(x) = -(16ux3+Bx2+Cx+D)/A

とおくと、F(y)=0 の1つの解 y=a に対して、y=g(a) が別の解を与える。B、C、D、E、g の式で、
u の代わりに v、w とおいたものが残りの解を与える。


 S(H)さんから、新たな問題の提供があった。1997年度 早稲田大学 理工学部 の入
試問題を模倣してとのことである。

 4次方程式 x4−4x2+2=0 ・・・(*)の解を α とするとき、次の問いに答えよ。

(1) 関数
       

  により得られる3つの数

     G(α) 、 G2(α)=G(G(α)) 、 G3(α)=G(G(G(α)))

  は何れも(*) の解になることを示せ。

   また、特に、 G4(α)=G(G(G(G(α))))=α となることを示せ。

(2) A=<σ>とするとき、群Aのαを通る軌道の元を具体的に求めよ。(何個在る?)



 (*) の解を実際に計算すると、

   、 、 、

の4個である。

 このとき、 α2=β2 、 γ2=δ2 、 α2+γ2=4 、 β2+δ2=4 より、

 β2=α2 、 γ2=4−α2 、δ2=γ2=4−α2  が成り立つ。

 このとき、
      

     

     

     

(コメント) G(x)の式は複雑過ぎて、その出生の秘密は不明ですが、美しい関係を導いて
      いるのは感動的ですね!


 FNさんからのコメントです。(平成23年10月4日付け)

 この頁では主に3次方程式の解の巡回について考えられている。4次方程式はほとんど
取り上げられてない。ただ1つあるのは上記の問題である。

 G(x)は有理数係数ではない複雑な形であり、解答もただ計算するしかなく面白く思えない。
やはり、G(x)は有理数係数であるべきだ。有理数係数のG(x)を作ってみよう。

 まず、言葉を定めておきます。f(x)が有理数係数の4次式で、f(x)=0 が重解をもたないと
する。(実際に意味があるのは、f(x)が既約なときであるので、これを仮定してもよい。)

 また、G(x)を有理数係数の3次以下の整式とし、f(x)=0 の1つの解をαとするとき、f(x)=0
の解がα、G(α)、G2(α)、G3(α)であり、かつ、G4(α)=αが成り立つとき、G(x)はf(x)=0 の
解の巡回関数であるという。

 巡回関数は一般には存在しません。というか、ほとんどの場合存在しません。なお、G(x)
が有理数係数であることを仮定しないなら、いつでも6個存在します。このことは次のように
してわかります。

 f(x)=0 の解を、a、b、c、dとする。G(a)=b、G(b)=c、G(c)=d、G(d)=a を満たす3次式を求
めるのは「連立方程式の回避」の例3の3次式版で、実際に求めるのは面倒ですが、一意
的に存在することはすぐわかります。(ラグランジュの補間公式)

 解の巡回は、a→b→c→d 以外に、a→c→b→d とかいろいろあります。a、b、c、d の円
順列だから、3!=6通りあり、それぞれで巡回関数が1つ決まります。

 ということで、G(x)は有理数係数を仮定しないと面白くありません。上記の例と同じく、

  f(x)=x4-4x2+2=0

で考えます。そこの解答にもあるように、この方程式は簡単に解けます。解は、

 a(=)、b(=)、−a、−b

になります。bをaの有理数係数の整式で表すことを考えます。

 a2=2+ より、=a2-2 、 ab= より、b=/a=(a2-2)/a=a-2/a

4-4a2+2=0 より、 2=- a4+4a2 で、aで割って、2/a=-a3+4a

これを代入して、 b=a-(-a3+4a)=a3-3a

 以上から、G(x)=x3-3x が巡回関数であると予想されます。というか、もし、巡回関数が存
在するなら、G(a)=b となるのはこれしかありません。

 これが実際に巡回関数であることをを証明してください。そして、実質的には、これ以外に
ないことも示してください。「実質的には」というのは、G(x)が巡回関数なら、-G(x)も巡回関
数であるのはすぐわかるので、この2つしかないということです。問題の形で書きます。

(1) 4次方程式 x4−4x2+2=0 ・・・(*)の一つの解をαとし、G(x)=x3−3x

 とする。このとき、α、G(α)、G2(α)、G3(α)は(*)の解であり、しかも、すべて

 異なるから、これらが(*)の解のすべてである。また、G4(α)=αが成り立つ。

 これを証明せよ。また、この性質をもつ有理数係数の3次以下の整式G(x)をすべ

 て求めよ。


 これは、巡回関数があるケースでした。巡回関数はないのが普通ですから、ないケース
を問題としてあげておきます。

(2) 4次方程式 x4−2=0 は巡回関数を持たないことを証明せよ。

(3) 4次方程式 x4−5x2+6=0 は巡回関数を持たないことを証明せよ。

(4) 4次方程式 x4−6x2+6=0 は巡回関数を持たないことを証明せよ。


 (2)は簡単です。(3)もあまり難しくないでしょう。(4)は、(2)(3)と比べて難しいと思います。
(4)は、(1)と似た形になりますが、結果は異なります。(4)は、私は今のところ、体の拡大に
関する理論を使った証明しかできません。できれば高校数学の範囲で証明したいところで
す。(1)も、(2)(3)(4)と同様の形で書いておきます。

(1)’ 4次方程式 x4−4x2+2=0 は巡回関数を持つことを証明しそれを求めよ。


 空舟さんからのコメントです。(平成23年10月7日付け)

 言われてみればその通りですね!有理数係数の有理数範囲で既約な4次方程式で一般
的な考察を少ししました。

 x を、そのような4次方程式 F(x)=0 の1つの解だとした時、1、x、x2、x3 は有理数範囲で
独立となります。さもなければ、x を解とする有理数係数の3次以下の方程式が存在してし
まいます。この事実は、G(x)について、かなり考察しやすくしてくれます。

 もし1つの解 x の3次式 G(x) もまた解となるならば、別の解 x’に対する G(x’) も解です。
なぜなら、F(G(x))は、F(x)の剰余をとることで、x の3次式となりますが、1番目の解に対して
この式の値が、0 になることから、この3次式は恒等的に 0 でなければいけません。
 従って、このとき、F(x)=0 ならば、F(G(x))=0 が成り立ちます。

 次に、G(x)が解をどのように移すかについて検討します。

 G(x)が恒等的に x でない限り、G(x≠x が成り立ちます。解は4つしかないので、解 x に対
して、G2(x)、G3(x)、G4(x)のどれかは x に戻ります。

 G3(x)=x とすると、G(a)=b、G(b)=c、G(c)=a と仮定できて、G3(x)がdになり得なくなり矛盾
します。(もう少し考察できそうですがうまくできませんでした。)

 (1)について、解を、±a、±b と表記します。b=G(a)=a3-3a がすでに確認されています。
別の解は、それぞれ、-a、-G(a)と書けます。上の考察からそれ以外には書けません。ここ
から、G(b)=-a を直接計算して確認すれば解決しますが、なんとか計算せずに示せたらと
思います...。

    FNさんからのコメントです。(平成23年10月7日付け)

    確かに、G(b)=-a を直接計算しないで出したい気はしますね。一般に、有理数係数の
   既約な4次式f(x)について、f(x)=0 の解を a、b、c、d としたとき、G(a)=b を満たす有理
   数係数の3次以下の整式が存在すれば、G(x)は巡回関数であるか、G2(a)=a になって
   しまうかのどちらかですが、これを、G2(a)を計算しないでできるかということになります。
   無理かもしれません。


 (4)について、解は、±√(3±)となります。√(3+)=x として、√(3-) を x の3次
式で表現することを考えます。

 √(3-)=(3-)/・ √(3+) となります。ということは、(6x-x3)/ は √(3-)
になりますが、これは有理数係数ではありません。しかし、係数に、p+q を許しても、元
の方程式は既約ということを考えると、係数に、p+q を許しても他の3次式では表現でき
ない、すなわち有理数係数では表現できないと結論されます。

    FNさんからのコメントです。(平成23年10月7日付け)

    証明できているように思いますが、係数体QをQ()に拡大して考えたということにな
   るように思います。体の拡大とかGalois理論の入口とかを表に出してしまう方がいいか
   もしれません。Galoisの基本定理はなんとか理解したという水準なのでなかなか難しい
   ですが。

    Galois理論の言葉を使えば、有理数係数の既約な4次方程式 f(x)=0 について、これ
   が巡回関数をもつことは、有理数体Qに、f(x)=0 の1つの解 a を付加した体K=Q(a)が
   QのGalois拡大で、そのGalois群が位数4の巡回群になることです。

    位数4の巡回群の真の部分群は、位数2の群が1つあるだけなので、Kの中間体は、
   2次体が1つあるだけでかなり単純です。3次方程式の巡回関数より、4次方程式の巡
   回関数の方が簡単なようです。


 解を表示すれば、巡回関数はかなり考察しやすいことがわかりました。
  ・解がとてもややこしい形の場合にもなんとかなるかどうか
  ・逆に巡回関数を与えて元の方程式を得ることができるか
 このあたりも気になる所ですが最近数学に時間を使いすぎている気がするので私は一旦
保留しようと思います。

    FNさんからのコメントです。(平成23年10月7日付け)

    私は今のところ、解を求めて、それを使って巡回関数を求めることしかできてません。
   しかも、4次方程式の解き方をよく知らないので、双2次ぐらいしか解けません。

    G(x)=x3-3x について、G4(x)-x (81次式)を、Maxima を使って因数分解したら、4次の
   既約因子として、x4-4x2+2 の他に x4-5x2+5 がありました。3次の巡回関数の場合も
   G(x)からf(x)を求めることについていくらか考えましたが、あまりわかりませんでした。相
   当難しいと思われます。


(コメント) 空舟さん、FNさんの考察に感謝します。

 当HPがいつもお世話になっているHN「ぽっぽ」さんからのコメントです。
                                     (平成23年10月10日付け)

 皆さまが議論されていることと的外れなことを言ってるかも知れませんが、投稿させてくだ
さい。

  4次関数 f(x)=x4-px2+q=0 が巡回関数を持つための必要十分条件は、

  p2q-4q2 が平方数になることである。


 また、このとき、巡回関数 G(x)=p/√(p2q-4q2)x3-(p2-2q)/√(p2q-4q2)x
が得られる。

 このことは計算するだけなので、簡単に示せます。また、これを利用すれば、巡回関数
G(x)=x3-3x を持つ4次方程式は、x2-4x+2=0、x2-5x+5=0 のみになることが容易に分か
ります。(完全に手計算なので、どこかで計算ミスをしていたらごめんなさい。)

 FNさんからのコメントです。(平成23年10月10日付け)

 確かに上記の公式通り、そうなるようです。だけど、とてもではないが「簡単に示せます」と
いう水準ではないと思います。少なくとも私にとって...。巡回関数の候補者として、G(X)を
求めることはできました。G(G(X))を計算する気力はありません。

 十分性はともかく、必要性は計算だけでは無理だろうと思っていたのですが、異なる4個
の数 a、b、c、d に対して、g(a)=b、g(b)=c、g(c)=d、g(d)=a を満たす3次以下の整式 g(x)
が一意的であることから必要性も言えそうです。

 G(G(x))を計算するより、4個の解を、a、b、-a、-b としたとき、G(a)=b を満たすG(x)を作っ
たのと同様にして、G(b)=-a となるようなのを作って、同じになるのを確認する方が多少楽
なのかなという気はしますが、やはり実行する気力はありません。できれば、ぽっぽさんの
解答を書いてもらえませんか。

 ぽっぽさんからのコメントです。(平成23年10月10日付け)

 明日から学校の試験が始まり、英検が来週に控えてるので簡単に書かせて下さい。

 {G(a)=b、G(b)=-a、G(-a)=-b、G(-b)=a}⇔{G(a)=b、G(b)=a、G(a)=-G(-a)、G(b)=-G(-b)}

なので、これを計算すると、G(x)=p/√(p2q-4q2)x3-(p2-2q)/√(p2q-4q2)x が、ただ一
つに定まることが分かります。

 これを計算するにあたって、G(a)=-G(-a)、G(b)=-G(-b) ならば、x2の係数と定数項はそ
れぞれ 0 になることが言えるので、後は解と係数の関係を使えば簡単になります。

 FNさんからのコメントです。(平成23年10月10日付け)

 「これを計算すると」の部分が欲しかったのですが、やはり自分でやらないといけませんね。
また、後日やってみます。

 攻略法さんからのコメントです。(平成23年10月11日付け)

 ぽっぽさんの「これを計算すると」についての考察です。

 4次方程式 f(x)=x4+ax2+b=0 が異なる4つの解 α、β、-α、-β を持つとする。3次関数

G(x)=px3+qx によって、g(α)=β、 g(β)=-α、 g(-α)=-β、 g(-β)=α となるならば、

 g(α)=pα3+qα=β、g(β)=pβ3+qβ=-α、g(-α)=-pα3-qα=-β、g(-β)=-pβ3-qβ=α

よって、 pα3+qα=β ←式1  、pβ3+qβ=-α ←式2

まず、p は、β・式1-α・式2より、

   pα3β+qαβ-(pαβ3+qαβ)=β2-(-α2) すなわち、 pαβ(α22)=α22

 よって、 p=(α22)/{αβ(α22)}

また、f(x)は4つの解 α、β、-α、-β を持つので、f(x)=(x-α)(x-β)(x+α)(x+β)=0

展開して、 x4-(α22)x2+α2β2=0 より、係数を比較して、

   α22=-a 、α2β2=b ←式3、 式4

式3、 式4より、{αβ(α22)}22β2{(α22)2-4α2β2}=b(a2-4b)  なので、

  p=±{-a/√(b(a2-4b))}

次に、qは、β3・式1-α3・式2より、

   pα3β3+qαβ3-(pα3β3+qα3β)=β44 すなわち、 qαβ(α22)=α44

 よって、 q=(α44)/{αβ(α22)}

式3、 式4より、α44=(α22)2-2α2β2=a2-2b なので、q=±{(a2-2b)/√(b(a2-4b))}

 以上から、例えば、巡回関数 G(x)=a/√(a2b-4b2)x3-(a2-2b)/√(a2b-4b2)x などが得
られる。

(コメント) 巡回関数を与えられたぽっぽさん、攻略法さんに感謝します。


 FNさんからのコメントです。(平成23年10月11日付け)

 ぽっぽさんのやり方は、多分、攻略法さんのやりかたと似たようなものなのでしょう。私も一
応やりました。x4-4x2+2=0 のときと基本的に同じやり方です。

  4次関数 f(x)=x4-px2+q=0 が巡回関数を持つための必要十分条件は、

  p2q-4q2 が平方数になることである。


 また、このとき、巡回関数 G(x)=p/√(p2q-4q2)x3-(p2-2q)/√(p2q-4q2)x

が得られる。このことは計算するだけなので、簡単に示せます。

(証明) D=p2-4q とおく。x2=(p±√D)/2 だから、f(x)=0 の解は、

  a=√((p+√D)/2) 、b=√((p-√D)/2) 、-a 、-b

である。 a2=(p+√D)/2 より、√D=2a2-p さらに、a4-pa2+q=0 より、q/a=-a3+pa

 このとき、ab=√((p2-D)/4)=√((p2-p2+4q)/4)=√q より、b=(√q)/a

 また、 √q√D=m とおくと、 1/√q=√D/m=(2a2-p)/m

以上より、 b=(√q)/a=q/a・1/√q=(-a3+pa)・(2a2-p)/m=(-2a5+3pa3-p2a)/m

        ={-2a(pa2-q)+3pa3-p2a}/m=(pa3+2qa-p2a)/m=p/m・a3-(p2-2q)/m・a

これは、上のG(x)で、x=a とおいたものになっている。同様にして、-a を b で表してみる。

  b2=(p-√D)/2 より、 √D=p-2b2 で、また、 b4-pb2+q=0 より、 q/b=-b3+pb

 ab=√q より、 -a=-(√q)/b で、√q√D=m より、 1/√q=√D/m=(p-2b2)/m

 -a=-(√q)/b=-q/b*1/√q=-(-b3+pb)(p-2b2)/m=(-2b5+3pb3-p2b)/m

これは、bをaで表したときの1行目の終りの式のaをbに変えたものと同じであり、あとは、b

がf(x)=0の解であることを使うだけだからG(b)になる。

 だから、G(x)は、G(a)=b、G(b)=-a をみたすが、明らかに、G(-a)=-b 、G(-b)=a も満たす

から、この4条件を満たす3次以下の整式はこれしかない。従って、巡回関数が存在するた

めには、これが有理数係数でなければならない。そのための必要十分条件は、m が有理数

であること、即ち、 qD=q(p2-4q) が有理数の平方であることである。巡回関数は、G(x)

と-G(x)だけである。  (証終)


 FNさんからの続報です。(平成23年10月15日付け)

(2) 4次方程式 x4−2=0 は巡回関数を持たないことを証明せよ。

 この方程式は、実数解aと虚数解bを持つ。だから、巡回関数があれば、虚数bが実数aの
有理数係数の整式で表されることになるがこれはありえない。

 だから、これは次の形で成り立つ。

(2A) 有理数係数の方程式 f(x)=0 が実数解と虚数解を持てば、f(x)は巡回関数を
   持たない。


従って、f(x)=0 が巡回関数を持つ可能性があるのは、解が4個とも実数であるか、4個とも
虚数であるかのどちらかである。

(3) 4次方程式 x4−5x2+6=0 は巡回関数を持たないことを証明せよ。

 もし、これが巡回関数をもてば、の有理数係数の整式でかけることになり矛盾。

 これを一般化すれば次のようになる。

(5) 有理数係数の4次式 f(x) が可約であれば、f(x)は巡回関数を持たない。ただし、
  f(x)が有理数係数の1次式4個の積になる場合を除く。


 ただし書きの場合は、巡回関数が6個あることは以前に書いたことからわかる。(5)の証
明はそんなに難しくありません。

 ということで、f(x) が既約な場合だけを考えればよい。f(x)=0 の解の1つをαとし、K=Q(α)
とおく。K/Qが4次の巡回拡大だから、そのGalois群は、位数4の巡回群である。これは真の
部分群として、位数2の巡回群を1つだけ持つ。この部分群に対応する部分体は、Q上2次の
体である。それは、Q(√m) (mは整数) の形であるが、m>0であるらしい。

 このことは、f(x) が双2次のときは、ぽっぽさんの結果からすぐわかります。

(証明) f(x)=x4-px2+q のとき巡回関数が存在するなら、q(p2-4q) は有理数の平方である。

D=p2-4q<0 とすると、q(p2-4q)>0 より、q<0 となるが、このとき、p2-4q>0 となって

矛盾。従って、D=p2-4q>0 (D=0 のときは重解をもつので巡回関数はない)。

 α2=(p+√D)/2 より、√D=2α2-p はKに属し、Q(√D)が2次の部分体である。

 以上から、 D>0 より、m>0  (証終)

 一般の場合は簡単ではないようです。京大大学院の入試問題で出題されています。

京都大学大学院の平成21年度の入試問題の数学Uの1

 Kを虚2次体とする。すなわち、K=Q(√(-d))で、d は正の有理数である。このとき、
Qの4次の巡回拡大で、Kを含むものが存在しないことを示せ。ただし、L/Qが巡回拡
大であるとは、L/QがGalois拡大であって、Galois群 Gal(L/Q)が巡回群となっている
ことをいう。(Qは有理数体)


 ところで、京大院(もちろん理学研究科数学専攻修士課程)は、平成21年度から4年続けて
有理数体上の4次のGalois拡大に関する問題を出題しています。非常に狭い範囲からの連
続出題でびっくりします。

 空舟さんからの続報です。(平成23年10月17日付け)

 A、B、Cを有理数として、方程式 x4+Ax2+Bx+C=0 を解くときに、その3次分解方程式が
有理解を持つような時、その解は、

    x=p√m±√(c+q√m) 、 -p√m±√(c-q√m)

の形で表されます。±の順番に、a1、a2、b1、b2 と名づけておきます。

 f(a1)=b2 となる3次関数を考えました。a1、a12、a13 は、

   1 、√m 、√(c+q√m) 、√m√(c+q√m)

の線形結合で書け、お互いは元の方程式が既約なら線形独立です。

 ある有理数Sがあって、√(c2-q2m)=S√m と書ける時、b2も変形によって、上記の線形
結合で書かれます。具体的には、

  -p√m+(q/S)√(c+q√m)-(c/Sm)√m√(c+q√m)

です。以上から、b2 は、1、a1、a12、a13 の線形結合で一意的に表されます。

 Maxima を使って具体的に求めました。その結果、(長い式ですが、)

f(x)={1・[(5m2p3-cmp)qS+(4cmp-5m2p3)q2+2cm25-2c3p]
    +x・[-(-6m24-2cmp2)S+mq3-(2m24+3cmp2-c2)q]
     +x2・[mpqS-mpq2-2cmp3+2c2p]
      +x3・[-2mp2S-(c-2mp2)q]}/{mq2+4m24-4cmp2}

を得てくれました。このf(x)について、f(a1)=b2、f(a2)=b1、f(b2)=a2、f(b1)=a1を確認できまし
た。

 θ=2π/15 とします。15倍角の式を考えることで、x=tanθに関する方程式が得られます。
(cosθ+i・sinθ)15=1 において、虚部を取り出して、(cosθ)15 で割りました。3等分点や5等
分点を与える方程式で因数分解できます。

  x(x2-3)(x4-10x2+5)(x8-92x6+134x4-28x2+1)

 この最後の因数は、偏角が±(1,2,4,7)θの点を与えます。従って、x=α が解ならば、
x=2α/(1-α2) も解となります。(しかし部分巡回です)

 x2=y2/(y2-1) とおくと、y=sinθに関する方程式を得られます。

  256y8-448y6+224y4-32y2+1=0

 今度は少し変形を加えることで、4y2=Yとおいた4次方程式: Y4-7Y3+14Y2-8Y+1=0 が得
られますが、Y=4(sinθ)2 から、F(Y)=Y(4-Y) は巡回関数となるはずです。

 適当にいじってみると、例えば、x=1-4(cosθ)2 とすれば、方程式 x4+5x3+5x2-5x-5=0
について、f(x)=-x2-2x は巡回関数となるはずです。

 ちなみに、θ=2π/7 について同様のことをすると、「S(H)さんからの話題」の冒頭付近に
書いてある2つの6次方程式と同じ式を得ました。

 ガウスのあの4次方程式についても、(レムニスケートの5等分点に関するらしいので)、上
のように、方程式導出の過程から他の解を有理式で表現できたのではないかと想像しまし
た。

 FNさんからのコメントです。(平成23年10月17日付け)

 4次方程式の解の求め方をきちんとやったことがないという水準ですから、とても理解でき
ません。かなりかかるでしょうが(年単位かな)、いつかやってみようと思います。Maxima の使
い方も勉強した方がいいようです。


 空舟さんからのコメントです。(平成24年2月5日付け)

 「x4 + 52x3 - 26x2 - 12x + 1」で検索すると、楕円関数論入門の文献に当たりました。今回
の投稿に一部引用すること失礼します...。

 「ガウスのあの4次方程式についても、(レムニスケートの5等分点に関するらしいので)、方
程式導出の過程から他の解を有理式で表現できたのではないかと想像しました。」について、
具体的に知ることができました。

 レムニスケート関数 sn(u) を、レムニスケート r2=cos2θ の弧長 u における点(x,y)での

  signal(x)・√(x2+y2) と定義されています。(x の符号に合わせた r の値)

sn(u)=r のとき、 u=∫0 dt/√(1-t4) ということだと思われます。

 さて、文献に、加法定理からn倍公式が導出できる様子があり、結果によると、

  sn(u)=s 、 sn’(u)=s’ 、 x=s4 とおくと、 s’2=1-x 、sn(2u)=2ss’/(1+x)

  sn(3u)=s(3-6x-x2)/(1+6x-3x2)

  sn(4u)=4ss’(1+x)(1-6x+x2) / (1+20x-26x2+20x3+x4)

  sn(5u)=s(5-2x+x2)(1-12x-26x2+52x3+x4)/(1-2x+5x2)(1+52x-26x2-12x3+x4)

となるそうです。ここに、F(x)=1-12x-26x2+52x3+x4 が現れます。

 sn(5u)=0 とおいたときを考えると、F(x)=0 の解は、x={sn(u)}4 以外に、

{sn(2u)}4=16x(1-x)2/(1+x)4 等もあります。

 (1+x)4≡16x+32x2-48x3=16x(1-x)(1+3x) から、F(x)=0 の別の解の表示 (1-x)/(1+3x) を

得ます。

 {sn(3u)}4、{sn(4u)}4 もF(x)=0 の解ですが、{sn(2u)}4、{sn(u)}4 とそれぞれ同じになります。

 さて、文献に、複素関数としてのレムニスケート関数という項があり、

  sn(a+ib)={sn(a)sn’(b)+i・sn’(a)sn(b)}/{1-sn(a)2・sn(b)2}

と定義されるようです。特に、 sn(ib)=i・sn(b) であり、 sn(5u)=0 のとき、sn(5iu)=0

 {sn(iu)}4 も F(x)=0 の解ですが、これは、{sn(u)}4 と同じ。

 そこで、sn(au+biu) の形を考えると、

 {sn(u+iu)}4={(1+i)ss’/(1-s4)}4=(1+i)4・x(1-x)2/(1-x)4 = -4x/(1-x)2

 上の結果を利用して、

  {sn(2u+2iu)}4={-4(1-x)/(1+3x)}/{1 - (1-x)/(1+3x)}2=-(1-x)(1+3x)/4x2

というふうに、F(x)=0 の残りの解が表されました。結局、sn(5u)=0 となる4つの解は、

 {su(u)}4 = x

 {su(2u)}4 = (1-x)/(1+3x)

 {su(u+iu)}4 = -4x/(1-x)2

 {su(2u+2iu)}4 = -(1-x)(1+3x)/4x2


とまとめることができました。

 なお、{sn(2u+iu)}4 等は、x={sn(u)}4 の有理式にならないようです。

 ここで、 sn(2u+iu)=...=s{2(1-x2)+i(1-6x+x2)}/(1-2x+5x2) となります。これの4乗を計算さ
せてみますと、(x の9次式)/(x の8次式) ですが、F(x)=1-12x-26x2+52x3+x4=0 とした場合、
なんとxが消えて、2i+1 になります。

 これは、sn(5u) の式の分子にあるF(x)以外の因数 (5-2x+x2) の零点です。


(コメント) ガウスの与えた4個の有理式解の根拠が明確になりましたね!感動しました。
      空舟さんに感謝いたします。


 S(H)さんからのコメントです。(平成24年2月6日付け)

 空舟さん、有難う御座います

 x4 + 52x3 - 26x2 - 12x + 1 = 0 については、非虚は、即ち、実は参考図の如く、随分以
前に模索しております。 x=x4 と置換すると、x4 + 52x3 - 26x2 - 12x + 1 = 0 で、ガウス
4次方程式の出生の秘話は突き止めていないこともないのです。

 「驚くべき証明を見つけたがそれを書くには余白が狭すぎる」
 「(Marvelous Proof Which This Margin Is Too Narrow To Contain,略称MPMN)とは数学に
 おける証明の手法のひとつだが、それを完全に説明するには余白が狭すぎる。」

の模倣犯になり、直前の (式は見かけによらぬもの)

 (-191 - 312ζ + 729ζ2 + 14ζ3)/4=(1 + 2ζ + ζ2)/(1 - 14ζ + ζ2)=-(1-ζ)(3ζ+1)/(4ζ2

について、資料に、Q[x]/<あの4次式> は体故、逆元の存在は自明と片付けられるでしょう
が、私が逆元を本当に求めて具現した発想で、(1 + 2ζ + ζ2)/(1 - 14ζ + ζ2) について
(1 - 14ζ + ζ2)の逆元を本当に求めて獲たものに、(1 + 2ζ + ζ2)を乗じて、それを3次以
下の多項式で表現して下さい。

 -(1-ζ)(3ζ+1)/(4ζ2) についても同様なことを為して下さい。

 上は、飯高先生が「MA3D5 Galois theory」の27頁近傍の証明付きの命題群が証明で分
かったと了解しがちの學生に具体例で具現できるかを親心を発露され原石の學生に投げか
けられた問題です。


 当HPの掲示板「出会いの泉」に、平成20年11月18日付けで、GAI さんは、次の結果を
提示された。

 2次方程式 x2+px+q=0 において、関数 G(x)=−x−p が解の巡回関数

 GAI さんの計算が示されていないが、多分次のようにして求められたのだろう。

(解) 2次方程式の異なる2つの解を α 、β とする。また、求める巡回関数は、1次関数

 として、 G(x)=ax+b とおく。このとき、題意より、G(α)=β、G(β)=α なので、

  aα+b=β 、 aβ+b=α  が成り立つ。

 よって、辺々引いて、 a(α−β)=β−α で、α≠β より、 a=−1

このとき、 b=α+β で、解と係数の関係より、 α+β=−p なので、 b=−p

 以上から、求める関数は、 G(x)=−x−p  (終)


 上記の計算は、行列を用いた方が一般化しやすそうだ。

(別解) aα+b=β 、 aβ+b=α  より、

        

 よって、

  

これより、 G(x)=−x−p  (終)

 この手法を次の問題にも適用してみよう

例 3次方程式 x3−3x+1=0 の巡回関数を求めよ。

(解) 明らかに、3次方程式 x3−3x+1=0 は3つの異なる実数解 α 、β 、γ を持

 つ。そこで、求める巡回関数は、2次関数として、 G(x)=ax2+bx+c とおく。

  G(α)=β 、G(β)=γ 、G(γ)=α より、

  aα2+bα+c=β 、 aβ2+bβ+c=γ 、 aγ2+bγ+c=α

これらの関係式を、行列を用いて表すと、

    

 このとき、Van der Monde(ファンデルモンデ)の行列式の理論から、

   
であるので、



 ここで、3次方程式 x3+px+q=0 の判別式は D=−4p3−27q2 であるので、
                                        ( → 参考 : 「判別式」)

3次方程式 x3−3x+1=0 の判別式は、 D=−4(−3)3−27=81 となる。

 (α−β)2(β−γ)2(γ−α)2=D=81 より、(α−β)(β−γ)(γ−α)=±9
らすかるさんの公式中の「s」は、判別式の平方根 (α−β)(β−γ)(γ−α)

 また、解と係数の関係から、

  α+β+γ=0 、 αβ+βγ+γα=−3 、 αβγ=−1 なので、

 α2+β2+γ2=(α+β+γ)2−2(αβ+βγ+γα)=6
 α3+β3+γ3=(α+β+γ)(α2+β2+γ2−αβ−βγ−γα)+3αβγ=−3
 α2β2+β2γ2+γ2α2=(αβ+βγ+γα)2−2αβγ(α+β+γ)=9

ところで、

 (α−β)(β−γ)(γ−α)=αβ2+βγ2+γα2−α2β−β2γ−γ2α において、

   αβ2+βγ2+γα2+α2β+β2γ+γ2α
  =(β+γ)α2+(β2+γ2)α+βγ(β+γ)
  =(β+γ)α2+(β2+3βγ+γ2)α+βγ(β+γ)−3αβγ
  =(α+β+γ)((β+γ)α+βγ)−3αβγ
  =(α+β+γ)(αβ+βγ+γα)−3αβγ=3

 以上から、 (αβ2+βγ2+γα2)−(α2β+β2γ+γ2α)=±9
         (αβ2+βγ2+γα2)+(α2β+β2γ+γ2α)=3

   よって、 αβ2+βγ2+γα2=(±9+3)/2=6、−3
         α2β+β2γ+γ2α=(3−(±9))/2=−3、6

また、 (α+β+γ)(α−β)(β−γ)(γ−α)
   =(α+β+γ)(αβ2+βγ2+γα2−α2β−β2γ−γ2α)
   =α2β2+αβγ2+γα3−α3β−αβ2γ−γ2α2
       +αβ3+β2γ2+βγα2−α2β2−β3γ−βγ2α
         +αβ2γ+βγ3+γ2α2−α2βγ−β2γ2−γ3α
   =αβ3+βγ3+γα3−α3β−β3γ−γ3α

ところで、(α2+β2+γ2)(αβ+βγ+γα)
 =α3β+α2βγ+γα3+αβ3+β3γ+β2γα+γ2αβ+βγ3+γ3α
 =αβ3+βγ3+γα3+α3β+β3γ+γ3α+α2βγ+β2γα+γ2αβ

より、αβ3+βγ3+γα3+α3β+β3γ+γ3α
 = (α2+β2+γ2)(αβ+βγ+γα)−(α2βγ+β2γα+γ2αβ)
 = (α2+β2+γ2)(αβ+βγ+γα)−αβγ(α+β+γ)

なので、(αβ3+βγ3+γα3)−(α3β+β3γ+γ3α)=0
   (αβ3+βγ3+γα3)+(α3β+β3γ+γ3α)=−18

   よって、 αβ3+βγ3+γα3=−9 、α3β+β3γ+γ3α=−9

 以上から、(α−β)(β−γ)(γ−α)=9 のとき、

    a=−(6+3)/9=−1 、b=−(6−(−3))/9=−1 、c=−(−9−9)/9=2

  (α−β)(β−γ)(γ−α)=−9 のとき、

    a=−(6+3)/(−9)=1 、b=−(−3−(−3))/(−9)=0 、
    c=−(−9−9)/(−9)=−2

 したがって、求める巡回関数 G(x) は、

    G(x)=−x2−x+2  または、  G(x)=x2−2

となる。 (終)

(コメント) 巡回関数を求める方法・・・シルベスターの消去法や判別式による解法など、い
      ろいろあるんですね!でも、上記の計算は、3変数なので何とか見通しよく計算で
      きましたが、4変数以上になると、多分パニックでしょうね...そんな予感!

       曲のイントロ当てクイズみたいに、S(H)さんからは、上記の計算が始まる前か
      ら出だしの雰囲気で、多分「Van der Mondeの行列式を使うのかな?」と当て
      られてしまいました!S(H)さんの先見の明には脱帽です...。

       多分、上記のような計算を、3次方程式 x3+px2+qx+r=0 に適用すれば、
      らすかるさんの示された公式が得られるものと推察されます。

 上記では、巡回関数は、2次関数として計算したが、1次分数関数とした場合は、どのよ
うに計算で求めるのだろうか?いろいろ興味は尽きない。

例 3次方程式 x3−3x+1=0 の巡回関数を求めよ。

(解) 明らかに、3次方程式 x3−3x+1=0 は3つの異なる実数解 α 、β 、γ を持

  つ。そこで、求める巡回関数は、1次分数関数として、

      
  とおく。

   G(α)=β 、G(β)=γ 、G(γ)=α より、

    bα+c=β(α+a) 、 bβ+c=γ(β+a) 、 bγ+c=α(γ+a)

  よって、−βa+αb+c=αβ 、−γa+βb+c=βγ 、−αa+γb+c=γα

  これらの関係式を、行列を用いて表すと、

      

 解と係数の関係から、 α+β+γ=0 、 αβ+βγ+γα=−3 、 αβγ=−1

 なので、α2+β2+γ2=(α+β+γ)2−2(αβ+βγ+γα)=6
 
 よって、
     
 より、
     

 ここで、3次方程式 x3−3x+1=0 の判別式

  D=(α−β)2(β−γ)2(γ−α)2=−4(−3)3−27=81 より、

    (α−β)(β−γ)(γ−α)=±9

前述の2次関数の場合と同様の計算から、
 
 (α−β)(β−γ)(γ−α)=9 のとき、αβ2+βγ2+γα2=(9+3)/2=6

 (α−β)(β−γ)(γ−α)=−9 のとき、αβ2+βγ2+γα2=(−9+3)/2=−3

 このとき、 a=−(6+3)/9=−1 または a=−(−3+3)/9=0

 また、(α−β)(β−γ)(γ−α)=9 のとき、α2β+β2γ+γ2α=(3−9)/2=−3

 また、(α−β)(β−γ)(γ−α)=−9 のとき、α2β+β2γ+γ2α=(3+9)/2=6

 このとき、 b=−(−3+3)/9=0 または b=−(−3−6)/9=1

 また、α2β2+β2γ2+γ2α2=(αβ+βγ+γα)2−2αβγ(α+β+γ)=9

 なので、 c=−9/9=−1

  以上から、求める巡回関数は、1次分数関数として、

        または   

で与えられる。

(コメント) これらの関数は、奇しくも冒頭で考察した関数 F4(x) と F5(x) ですね!
      何か関係があるんですかね?

       F42=F5 、 F52=F4 が成り立つ位しかなさそう...な雰囲気と嘆いていると
      き、GAIさんが、G’={ F1(x) 、F2(x) 、F3(x) 、F4(x) 、F5(x) 、F6(x) }の
      乗算表を作られた。(平成20年11月21日付け)

         F1 F2 F3 F4 F5 F6
        F1 F1 F2 F3 F4 F5 F6
        F2 F2 F1 F4 F3 F6 F5
        F3 F3 F5 F1 F6 F2 F4
        F4 F4 F6 F2 F5 F1 F3
        F5 F5 F3 F6 F1 F4 F2
        F6 F6 F4 F5 F2 F3 F1

  対角線上でない所に 「F1」が出現する場所が、「F4」、「F5」 の組合せであることと、
 何か関係があるのでしょうかとGAIさんは疑問を呈された。

 上記の表で、F45=F1 ということから、F43=F442=F45=F1 ということが分かる。

同様にして、 F53=F1 が成り立つ。

 F2 、F3 、F6 が全て位数が 2 なのに対して、F4 、F5 の位数が 3 であることが、きっと
この話題では、重要なのでしょう!(← ガロア理論から)


 ところで、3次方程式 x3−3x+1=0 の巡回関数を、2次関数として、

     G(x)=−x2−x+2  または、  G(x)=x2−2

という結果を得たが、この結果を用いると、巡回関数を、1次分数関数とした場合は、次の

ようにして得られるようだ。これは必然だろうか?はたまた単なる偶然だろうか?

   x3−3x+1=0 より、 x3=3x−1 なので、 x2=(3x−1)/x

  よって、 x2−2=(3x−1)/x−2=(x−1)/x

   また、 x3−1=3x−2 なので、 x2+x+1=(3x−2)/(x−1)

   したがって、

  −x2−x+2=−(3x−2)/(x−1)+3=(−3x+2+3x−3)/(x−1)=1/(1−x)

  が得られる。


 この手法を用いると、早稲田の入試問題 :

 n=1、2、・・・ に対して、 x の整式 P(x)=x3−nx2−(2n+12)x−8 を考

える。3次方程式 P(x)=0 の解 t に対して、−4/(t+2) も P(x)=0 の解


であることから、1次分数関数としての巡回関数

    

を得たが、これに対応する2次関数としての巡回関数も求められそうだ。

 実際に、簡単な計算で、

    

また、上記の1次分数関数の逆回りの関数

    

については、2次関数

    

が得られる。

(コメント) 2次関数と1次分数関数は1対1に対応するという確信が実感に変わりました!
      S(H)さんも述べていますが、これらの関数のうち1つでも分かれば後は芋ズル
      式に求められることに感動しました。上記の計算にナイーブな部分があって、「も
      しかしたら、2次関数は存在しないかも?今流行の言葉を借りれば、「対応の破
      れ」かな?」という場面に遭遇しましたが、単なる私の計算ミスでした。上記のよ
      うに完全対応していることを示すことができて、安心しました!

 上記の3次方程式 x3−nx2−(2n+12)x−8=0 の解の巡回関数について、2次関
数とした場合と1次分数関数とした場合で大きくその性格が異なることが、S(H)さんから
指摘された。(平成20年11月23日付け)

 すなわち、2次関数とした場合の巡回関数には、3次方程式に含まれるパラメーター「n」
が含まれるのに対して、1次分数関数とした場合は、全く含まれないということだ。まるで、
3次方程式の巡回関数で、1次分数関数は方程式には依存しないという「孤高の存在」で
あるかのようだ。

 S(H)さんの指摘があるまでは、何となく「スッキリ!」という認識のみで、深くは考えな
かったが、やはり、それなりの理由がありそうで、「さもありなん!」という感じだ。

 このことについて、S(H)さんから出題された問題で考えてみよう。

問 題 3次方程式 x3+nx2−(n+3)x+1=0 
                     (
n は有理数 (n≧−3/2 と仮定してもいいらしい。)

 の解の巡回関数として、1次分数関数としたとき、それは、方程式に含まれるパラ

 メーター n に無関係に定まることを示せ。



 F(x)=x3+nx2−(n+3)x+1 とおくと、F(x)は連続で、

    F(0)=1>0 、 F(1)=−1<0

より、3つの異なる実数解 α 、β 、γ を持つ。

 もちろん、このことは、3次方程式の判別式

  D=(α−β)2(β−γ)2(γ−α)2=(n2+3n+9)2>0

からも分かる。(→参考 : 「判別式」 )

  s=n2+3n+9(>0) とおく。

 求める巡回関数を、1次分数関数として、

      
とおく。

   G(α)=β 、G(β)=γ 、G(γ)=α より、

 bα+c=β(α+a) 、 bβ+c=γ(β+a) 、 bγ+c=α(γ+a)

よって、

 −βa+αb+c=αβ 、 −γa+βb+c=βγ 、 −αa+γb+c=γα

  これらの関係式を、行列を用いて表すと、

      

 解と係数の関係から、α+β+γ=−n 、αβ+βγ+γα=−n−3 、αβγ=−1

 なので、α2+β2+γ2=(α+β+γ)2−2(αβ+βγ+γα)=n2+2n+6
 
 よって、
     
 より、
     
 ここで、

  (α−β)(β−γ)(γ−α)=s のとき、

   αβ2+βγ2+γα2=(n2+3n+3+s)/2=(2s−6)/2=s−3
   α2β+β2γ+γ2α=(n2+3n+3−s)/2=−6/2=−3

  (α−β)(β−γ)(γ−α)=−s のとき、

   αβ2+βγ2+γα2=(n2+3n+3−s)/2=−6/2=−3
   α2β+β2γ+γ2α=(n2+3n+3+s)/2=(2s−6)/2=s−3

 よって、 (α−β)(β−γ)(γ−α)=s のとき、  a=−(s−3+3}/s=−1
       (α−β)(β−γ)(γ−α)=−s のとき、 a=−(−3+3}/s=0

 また、 (α−β)(β−γ)(γ−α)=s のとき、  b=−(−3+3}/s=0
       (α−β)(β−γ)(γ−α)=−s のとき、 b=−(−3−s+3}/s=1

 さらに、α2β2+β2γ2+γ2α2=(αβ+βγ+γα)2−2αβγ(α+β+γ)
     =(−n−3)2−2n=n2+4n+9

 なので、 c=−(n2+4n+9−n)/s=−1

  以上から、求める巡回関数は、1次分数関数として、

        または   

で与えられる。

(コメント) 綺麗にパラメーターが消失しましたね!感動的です...。


 これまでの計算では、方程式から巡回関数を求めたが、逆に、巡回関数を既知として方
程式を求めることは可能だろうか?S(H)さんのアドバイスを参考に考えてみた。

例 1の3乗根で虚数であるものの一つを ω とすると、 ω2+ω+1=0 が成り立つ。

 ここで、 α=1+ω 、β=ω+ω2(=−1) 、γ=1+ω2(=) に対して、

   G(x)=ω・x

とおくと、 G(α)=β 、G(β)=γ 、G(γ)=α が成り立つ。

 このとき、α+β+γ=1+ω+ω+ω2+1+ω2=0

  αβ+βγ+γα=(1+ω)(ω+ω2)+(ω+ω2)(1+ω2)+(1+ω2)(1+ω)
              =−(1+ω)−(−ω)+(−ω)(−ω2
              =−1−ω+ω+1=0

  αβγ=(1+ω)(ω+ω2)(1+ω2)=ω3(1+ω)3=(−ω23=−1

以上から、3つの数 α、β、γ は、3次方程式 x3+1=0 の解となる。

      

 ここで、らすかるさんの公式を用いると、3次方程式 x3+1=0 の巡回関数は、

     G1(x)=ωx  または  G2(x)=ω2

で与えられる。

 このような計算をしていると、巡回関数の意味するところが実感として伝わってくるような
気がする。

 解の巡回は、代数方程式の根の置換の特別な場合である。これらの一般論は、ラグラン
ジュやガロアなどによって考察され、ガロア理論という美しい理論になっている。


 3次方程式 X3+X2−2X−1=0 を因数定理を用いて求めることは難しいが、−2 と
−1 の間、−1と 0 の間、1と 2 の間にそれぞれ一つずつ解を持つことは、簡単な計算
で分かる。

 この方程式については、次のように明解に解かれる方法が知られている。
                                   (→参考 : 「3次方程式の解」)

 Yを複素数として、 X=Y+1/Y とおく。これを、3次方程式に代入して、分母を払い整
理すれば、

     Y6+Y5+Y4+Y3+Y2+Y+1=0

となる。両辺に、Y−1 を掛ければ、 Y7−1=0 となる。

 したがって、Y は、(1と異なる)1 の7乗根である。

1 の7乗根は、ζ=exp(2nπi/7)  (n=1、2、3、4、5、6  i は虚数単位) と書ける。

このとき、X=Y+1/Y=ζ+ζ−n=2cos(2nπ/7) となる。

n=1、2、3、4、5、6 を代入して異なるものを求めれば、3次方程式の解は、

   −2cos(π/7) 、−2cos(3π/7) 、2cos(2π/7)

となる。
          

 3次方程式の3つの解 α 、β 、γ は、上記の計算から、

   α=2cos(2π/7) 、 β=−2cos(π/7) 、 γ=−2cos(3π/7)

とおくと、 α=ζ+ζ6 、 β=ζ3+ζ4 、 γ=ζ2+ζ5 と書ける。

 この3つの数を、1の7乗根 ζ を用いて、次のように構成してみよう。

 有理数体 に、ζを添加した体 (ζ)において、その自己同型写像 τ を、

     τ(ζ)=ζ3

で定義する。このとき、 α=ζ+τ3(ζ) とおくと、 α=ζ+ζ6 で、

 τ3(α)=τ2(τ(α))=τ2(ζ3+ζ4)=τ(ζ2+ζ5)=ζ6+ζ=α

で、 β=τ(α)=ζ3+ζ4 、 γ=τ(β)=τ2(α)=ζ2+ζ5  とおく。

 このとき、 α+β+γ=ζ+ζ6+ζ3+ζ4+ζ2+ζ5=−1

  αβ+βγ+γα
 =(ζ+ζ6)(ζ3+ζ4)+(ζ3+ζ4)(ζ2+ζ5)+(ζ2+ζ5)(ζ+ζ6
 =ζ4+ζ5+ζ2+ζ3+ζ5+ζ+ζ6+ζ2+ζ3+ζ+ζ6+ζ4
 =2(ζ6+ζ5+ζ4+ζ3+ζ2+ζ)=−2

  αβγ=(ζ+ζ6)(ζ3+ζ4)(ζ2+ζ5
      =(ζ4+ζ5+ζ2+ζ3)(ζ2+ζ5
      =ζ6+ζ2+1+ζ3+ζ4+1+ζ5+ζ=1

 より、3つの数 α、β、γ は、3次方程式 x3+x2−2x−1=0 の解となる。

 このとき、 α2=(ζ6+ζ)2=ζ5+2+ζ2=γ+2 より、 γ=α2−2
        β2=(ζ3+ζ42=ζ6+2+ζ=α+2 より、 α=β2−2
        γ2=(ζ2+ζ52=ζ4+2+ζ3=β+2 より、 β=γ2−2

 以上から、解の巡回関数として、 G(x)=x2−2 とおくと、

      G(α)=γ 、G(γ)=β 、G(β)=α

が成り立つ。

(コメント) このことが、S(H)さんが仰るところの、「巡回関数の真実」なのでしょうか?


 上記で述べられていることをFNさんがまとめられ、新しい問題を創作された。
                                      (平成23年1月31日付け)

 G(x)=x2−2 とする。方程式 x3−3x+1=0 の1つの解を α とするとき、
β=G(α)、γ=G(β) とすれば、α、β、γが、この方程式の3つの解である。

 方程式 x3+x2−2x−1=0 についても同じことが成り立つ。


 G(x)=1/(1−x) とし、方程式 x3+ax2−(a+3)x+1=0 の1つの解を α と
するとき、β=G(α)、γ=G(β) とすれば、α、β、γ が、この方程式の3つの解
である。



 これに関連して、次を証明してください。

(1) G(x)=x2−2 とし、既約な方程式 x3+ax2+bx+c=0 の1つの解を α とする。
 β=G(α)、γ=G(β) とするとき、α、β、γ が、この方程式の3つの解である。
  これが成り立つのは、( a , b , c )=( 0 , −3 , 1 )、(1 , −2 , −1 ) に限る
 ことを証明せよ。

(2) G(x)=1/(1−x) とし、方程式 x3+ax2+bx+c=0 の1つの解を α とする。
 β=G(α)、γ=G(β) とするとき、α、β、γ が、この方程式の3つの解である。
  これが成り立つのは、b=−a−3、c=1 のときに限ることを証明せよ。


 少し表現を変えます。(平成23年2月1日付け)

 「巡回関数が、G(x)=x2−2 であるような有理数係数の3次方程式を求めよ。」というの
がもともとの趣旨です。うまく表現できなくて、上のようにしたのですが、不必要に難しくなり
ました。

(1A) G(x)=x2−2 とする。方程式 x3+ax2+bx+c=0 の異なる3つの解 α、β、γ
   が β=G(α)、γ=G(β)、α=G(γ) を満たすとき、( a , b , c )=( 0 , −3 , 1 )、
   (1 , −2 , −1 ) に限ることを証明せよ。

 実質的には、α=G(γ)のあるなしだけですが、これがないと面倒です。(2)もこの形に変
えてもいいですが、(2)の場合は、β=G(α)、γ=G(β)から、α=G(γ)が容易に出るので
もとのままでもかまいません。(1A)より(2)の方が易しいと思います。

 G(x)として、適当に有理数係数の2次式を与えた場合、それを巡回関数とする有理数係数
の3次方程式があるか、となると多くの場合は存在しないと思います。

 あっても、高々2個です。G(x)=x2−4 とか、G(x)=x2−8 では2個あるようです。1個あ
るケースがあるかどうかはわかりません。

 (2)の G(x)=1/(1−x) は GGG(x)=x を満たしますが、これを満たすG(x)についてはG(x)
を巡回関数とする有理数係数の3次方程式が無限にある可能性はあると思います。

 GGG(x)=x を満たさないG(x)については、1つもないような気がします。


 攻略法さんが、FNさんの問題(1A)を解かれた。(平成23年2月2日付け)

(解) 巡回関数が、G(x)=x2−2 なので、

  G2(x)=G(G(x))=G(x2−2)=(x2−2)2−2 、G3(x)=G(G(G(x)))={(x2−2)2−2}2−2

 となるが、3回置換すると元に戻るので、 {(x2−2)2−2}2−2=x

  よって、 x8−8x6+20x4−16x2−x+2=0

 因数分解をすれば、 (x3+x2−2x−1)(x+1)(x−2)(x3−3x+1)=0  (終)


 FNさんからのコメントです。(平成23年2月2日付け)

 正解です。G(x)を一般の2次式としても、G3(x)は8次式で、G3(x)−x は G(x)−x で割り切
れ、残りは6次式。だからG(x)を巡回関数とする3次方程式は高々2個。


  (補足) FNさんより補足です。(平成23年2月3日付け)

    G(x)を有理数係数の2次式とする。G3(x)−x は G(x)−x で割り切れる。

   これは、G(x)−x=0 が異なる解をもつときは簡単に証明できますが、重解をもつとき
   は成り立つとは思うのですが、今のところ私は証明できてません。証明できますか?

    これは成り立つとして...、G3(x)−x を G(x)−x で割った商である6次式について、

     (ア) 既約である    (イ) 既約な3次式2つの積になる   (ウ)その他

   のどれかですが、(ウ)はないような気がします。どうでしょうか。

    (イ)の場合は、G(x)は2つの3次方程式の巡回関数になる。

   これは証明できると思います。証明してください。

    さらに、(ア)のとき、6個の解について、解の巡回の現象は起こるでしょうか。

   G(x)=x2 のときは、6次式は、x6+x5+・・・+x+1 となり、解の巡回の現象は起こ
   ります。一般にはどうでしょうか。(平成23年2月10日付けで、FNさんが補足)


    F(x)=0 を有理数係数の既約な3次方程式とする。G(x)、g(x)がF(x)=0の巡回関
   数で、G(x)は2次関数、g(x)は1次分数関数とする。G(x)とg(x)の関係は次の通りです。

    F(x)をG(x)で割った商をQ(x)、余りをR(x)とすると、Q(x)は1次式、R(x)は1次以下で、

   g(x)=−R(x)/Q(x) である。

    これは、0=F(α)=G(α)Q(α)+R(α) から、G(α)=−R(α)/Q(α) が出ることか
   らわかります。

    既約な3次方程式のガロア群は、3次の対称群S3であるか、3次の交代群A3(位数
   3の巡回群)のどちらかで普通は、S3です。解の巡回が起こるのは例外的にA3になる
   場合です。

    このとき、Q(α)=Q[α] が分解体になり、他の解がαの有理数係数の2次式でかけ
   ることになるので、2次式である巡回関数のほうが自然です。

    しかし、2次式である巡回関数が解に対してのみ、G3(α)=αを満たすのに対して、
   1次分数関数である巡回関数は、式として、g3(x)=x を満たすので、こちらの方が優
   れている場合もあると思います。前に、g3(x)=x を満たさない1次分数関数が巡回関
   数になることはないように思いますと書きましたが、これは証明できます。


    (追記) 平成23年2月6日付け

      攻略法さんが、

       G(x)を有理数係数の2次式とする。G3(x)−x は G(x)−x で割り切れる

     について、実際に割り算を実行することにより示された。

     (解) G(x)=px2+qx+r とすると、

       G(G(G(x)))−x
      =G(G(px2+qx+r))−x
      =G(p(px2+qx+r)2+q(px2+qx+r)+r)−x
      =p{p(px2+qx+r)2+q(px2+qx+r)+r}2
                      +q{p(px2+qx+r)2+q(px2+qx+r)+r}+r−x
      =(px2+qx+r−x){ p66+p5(3q+1)x5+p4(3pr+3q2+4q+1)x4
               +p3(6pqr+2pr+q3+5q2+3q+1)x3
               +p2(3p22+3pq2r+6pqr+3pr+2q3+3pq2+3q+1)x2
               +p(3p2qr2+p22+4pq2r+4pqr+2pr+q3+q2+2q+1)x
               +(p33+2p2qr2+2p22+pq2r+3pqr+pr+q2+q+1) }

    (コメント) すごい因数分解ですね!確認するのに躊躇してしまうほどです。

      ただ、G(x)=y として、 G(G(x))−x=G(y)−x を、G(x)−x=y−x で割るときに
     組立除法を適用すれば、

       G(G(x))−x=(py+px+q)(y−x)+px2+qx+r−x
              =(py+px+q)(G(x)−x)+G(x)−x
              =(py+px+q+1)(G(x)−x)

     なので、 G(G(x))−x は、G(x)−x で割り切れることが分かります。

      このことを続けていけば、命題は明らかなような...予感!


     攻略法さんの解に対して、FNさんからのコメントです。(平成23年2月7日付け)

      なるほど。実際に割り算をするという手がありますね。大きめのカレンダーあたり
     を用意しておけば手計算でも不可能ではないかもしれません。異なる2つの解を持
     つときは容易なので、重解を持つときに挑戦しましたが挫折しました。

      方針を変えてやってみたらできました。異なる2つの解を持つときを含めての証明
     です。

       G(x)を有理数係数の2次式とする。G3(x)−x は G(x)−x で割り切れる

     (証明) G(p)=p のとき、 G3(p)=G(G(G(p)))=G(G(p))=G(p)=p なので、
         G(x)−x=0 の解は、G3(x)−x=0 の解である。

      従って、 G(x)−x=0 の解が異なる2つの数 p、q であれば、G3(x)−x=0 も
       p、q を解に持つので、(x−p)(x−q)で割り切れ、だから、G(x)−x で割り切れる。

      あとは、G(x)−x=0 が重解 p を持つときを考えればよい。

      g(x)=G3(x)−x とおく。g(p)=0 は証明できているので、g’(p)=0 を示す。

          G(x)−x=a(x−p)2 より、 G’(x)=2a(x−p)+1

      従って、 G(p)=p 、G’(p)=1

      ここで、 g’(x)=G’(GG(x))G’(G(x))G’(x)−1 より

          g’(p)=G’(p)G’(p)G’(p)−1=1−1=0

      よって、G3(x)−x は、(x−p)2 で割り切れるので、G(x)−x で割り切れる。(証終)


      FNさんによれば、もっと一般に次の形で成り立つように思われるとのこと。

       G(x)がn次式(n≧1)で、mが自然数であるとき、

         G(x)−x は、G(x)−x で割り切れる


      (コメント) G(x)=y とおくと、組立除法により、商をQ(x)として、

         Gm+1(x)−x=G(y)−x=(y−x)Q(x)+G(x)−x

        なので、 Gm+1(x)−x=(G(x)−x)Q(x)+G(x)−x と書ける。

         よって、数学的帰納法により、命題が成り立つことが分かる。


      (追記) この話題について、次のようなWebページが知られている。

        G(x)の係数の範囲について、

         1. 実数係数の場合
         2. 整数係数の多項式が係数の場合
         3. G(x)が正則関数の場合
         4. 可換な整域の要素が係数の場合

       (コメント) 奥行きのある話題なんですね!


 G(x)=x2−4、x2−8 も同様の状況になります。しかし、普通は6次式の因数分解なんか
できません。Maximaを使ってやりましたが、そのようなものを使わないで、G(x)=x2−4、
2−8 のケースとかを解けるでしょうか。

 また、G(x)=x2−2 の場合で、G(x)を巡回関数とする3次方程式は、あるとして2つ、即ち
3+x2−2x−1=0 か x3−3x+1=0 しかないことはわかったのですが、これらが確か
に、G(x)を巡回関数とすることは、「解の巡回」に書いてあるような議論以外で示せるでしょう
か。G(x)=x2−4 とかの場合の3次方程式が、実際に、G(x)を巡回関数とするかどうかの確
認はしていません。

 これら以外に、G(x)を巡回関数とする3次方程式が存在するようなG(x)をみつけて下さい。
また、G(x)を巡回関数とする3次方程式がただ1つ存在するケースはあるでしょうか。なさそ
うな気がするのですが、証明できるでしょうか。

 私は(2)の方が簡単かと思ったのですが、(1A)のほうが先なのはやや意外でした。


 攻略法さんが、FNさんの問題(2)を解かれた。(平成23年2月3日付け)

(解) β、γをαで表すと、β=G(α)=1/(1−α)、γ=G(β)=1/(1−β)=(α−1)/α

   ちなみに、 G(γ)=G(G(β))=1/(1−G(β))=α である。

    ここで、 αβγ=α{1/(1−α)}{(α−1)/α}=−1

   解と係数の関係より、 αβγ=−c なので、 c=1

    α+β+γ=α+1/(1−α) + (α−1)/α={−α3+3α−1}/{α(1−α)}

   解と係数の関係より、 α+β+γ=−a

    よって、−α3+3α−1=−a・α(1−α) より、−α3−aα2+(a+3)α−1=0

   また、α3+aα2+bα+c=0 で、c=1 より、 α3+aα2+bα+1=0

    よって、 (a+b+3)α=0 ・・・ 式(1)

   また、 αβ+βγ+γα

      =α{1/(1−α)}+{1/(1−α)}{(α−1)/α}+{(α−1)/α}α

      =(−α3+3α2−1)/{α(1−α)}

   解と係数の関係より、 αβ+βγ+γα=b

    よって、−α3+3α2−1=bα(1−α) より、−α3+(b+3)α2−bα−1=0

   α3+aα2+bα+1=0 なので、 (a+b+3)α2=0 ・・・ 式(2)

    よって、式(1)と式(2)が成り立つのは、 a+b+3=0 のときとなる。  (終)


 FNさんからのコメントです。(平成23年2月3日付け)

 正解です。もう少し簡単にできると思います。でも、やはり(1A)と同様に、α=G(γ)も書い
ておくべきでした。まずこれを示します。攻略法さんが書かれていますので省略します。

(別解) β=G(α) より、β=1/(1−α) で、分母を払って、 βーαβ=1

同様にして、 γーβγ=1 、αーγα=1

この3式を加えて、 α+β+γ−(αβ+βγ+γα)=3

即ち、 −a−b=3 より、 b=−a−3

 3式をかけて、 β(1−α)γ(1−β)α(1−γ)=1

αβγ=−c で、 (1−α)(1−β)(1−γ) は、F(x)=x3+ax2+bx+c とおいたときの

F(1) であるから、F(1) =1+a+b+c

 a+b=−3 だから、 F(1) =c−2

従って、 −c(c−2)=1 より、 (c−1)2=0  すなわち、 c=1 (終)

 ※ (1A)より(2)の方が難しいかもしれません。


 FNさんからの続報です。(平成23年2月12日付け)

 2次関数 G(x) を巡回関数とする場合について、行き詰ってしまいましたから、1次分数関
数を巡回関数とする場合を考えてみます。

 g(x) を有理数係数の1次分数関数 g(x)=(ax+b)/(x+c) とし、f(x) を有理数係数の既
約な3次式 f(x)=x3+px2+qx+r とし、f(x)=0 の解を α、β、γ とする。

  g(α)=β、g(β)=γ、g(γ)=α

がなりたつとき、g(x) は、f(x)=0 の解の巡回関数である、或いは、簡単に、g(x) は、f(x)

の巡回関数であるという。

 g(x) が与えられたとき、「g(x)がf(x)の巡回関数である」ようなf(x)が存在するかどう
か、存在するときは、どのようなf(x)であるか


を考える。

 (1) g(x) が f(x) の巡回関数であるとき、g3(x)=x であることを証明せよ。

   ※ g3(x)=x とは、式として等しいこと、即ち、恒等的に等しいことをいう。以下同じ。
    そして、g3(x)=g(g(g(x))) を意味する。

 (2) g(x) が g3(x)=x を満たすための必要十分条件を、a、b、c の式で表せ。

 これは、次の(2A)と同じです。そして、(2A)の方が多少計算が楽なのと、Cayley-Hamilton
の定理が使えるので、やや有利かと思います。

 (2A) 2次の正方行列
                

   に対して、A3=kE (Eは単位行列で、kは定数)になるための必要十分条件を、
   a、b、c の式で表せ。


    攻略法さんが解かれました。(平成23年2月15日付け)

      a2+ac+c2+b=0 とのことです。


    FNさんからのコメントです。(平成23年2月15日付け)

     正解です。本当は論証の過程が欲しいところですが...。
    「A3 が単位行列の定数倍 ⇒ kが存在して、A2+kA+k2E=O
    はうまく証明できるでしょうか。


 (3) g(x) が g3(x)=x を満たすとき、g(x) が f(x) の巡回関数であるような f(x)
   は存在するか。


 (3)は難しいと思います。私はできてません。g3(x)=x を満たす一部の関数に対する次の
形ならできます。

 (3W) g(x)=−k2/(x+k) のとき、g(x) が f(x) の巡回関数であるような f(x) をす
    べて求めよ。



  攻略法さんが解かれた(2)の結果を用いて、(3W)における g(x) が与えられる。
                                      (平成23年2月15日付け)

  すなわち、 a2+ac+c2+b=0 より、a=0 のとき、b=−c2

     よって、 g(x)=−c2/(x+c)  である。


 「解の巡回」の中で出てきている、1次分数関数による巡回関数は、(3W)において、

k=−1 、k=2 としたとき、及び、その逆関数です。


  (3W)について、攻略法さんが解かれました。(平成23年2月15日付け)

 (解) g(x)=−k2/(x+k) とすると、 β=g(α)=−k2/(α+k)

   γ=g(β)=−k2/(β+k)=−k2/{−k2/(α+k)+k}=−k(α+k)/α

  解と係数の関係より、

   αβγ=α・{−k2/(α+k)}・{−k(α+k)/α}=k3=−r

  β=g(α) より、β=−k2/(α+k) の分母を払って、 kβ+αβ=−k2

  同様にして、γ=g(β)、 α=g(γ) より、kγ+βγ=−k2 、 kα+γα=−k2

   この3式を加えて、

  k(α+β+γ)+(αβ+βγ+γα)=−3k2 すなわち、 −kp+q=−3k2

   よって、 q=kp−3k2 より、 f(x)=x3+px2+(kp−3k2)x−k3  (終)


    FNさんからのコメントです。(平成23年2月15日付け)

   多分正解なのだろうと思います。私もやったのは確かなので、どこかに書いていると思
  うのですが、すぐには見つかりません。


 HN「りらひい」さんが解の巡回について考察されました。(平成24年6月20日付け)

 上記の内容に興味をもちまして、私なりに計算してみました。ひょっとしたらもうすでに誰か
が導出しているかもしれませんが、そのときは「かぶってるよ」と軽く流してくださって結構で
す。わたしは工学系の者で、ガロア理論などは全くわかりません。ここでの計算は高校生レ
ベルの計算を強引におし進めたものです。

 まずは、FNさんの問題(2)と(3W)は攻略法さんが解いていますので、ここでは、その(2)の
結果から始めて(3)を解こうと思います。

(3) g(x)が g3(x)=x を満たすとき、g(x)がf(x)の巡回関数であるようなf(x)は存在する
  か。


 結果の式を対称で美しくするために、あらかじめ d=-c とおいておきます。即ち、
g(x)=(ax+b)/(x-d) です。g(g(x))=x が成り立つ条件が a=d なので、そうならないように以下で
は a≠d とします。(2)の結果から、 g(g(g(x)))=x が成り立つ場合には、b=-a2+ad-d2 が成り
立ちます。

  α=g(γ)=(aγ+b)/(γ-d)、 α=g(γ)=g(g(β))=(dβ+b)/(β-a)
  β=g(α)=(aα+b)/(α-d)、 β=g(α)=g(g(γ))=(dγ+b)/(γ-a)
  γ=g(β)=(aβ+b)/(β-d)、 γ=g(β)=g(g(α))=(dα+b)/(α-a)

 解と係数の関係から、

   -p = α+β+γ = α+g(α)+g(g(α)) = α+(aα+b)/(α-d)+(dα+b)/(α-a)

 q = αβ+βγ+γα = αg(α)+g(α)g(g(α))+g(g(α))α
  = α(aα+b)/(α-d)+(aα+b)/(α-d)・(dα+b)/(α-a)+(dα+b)/(α-a)α

 -r = αβγ = αg(α)g(g(α))= α(aα+b)/(α-d)・(dα+b)/(α-a)

 p の式をつかうと、q と r の式からαを消去して、p であらわすことができます。

 q = 3(-a2+ad-d2)-(a+d)p = 3b-(a+d)p 、r = a3+d3+adp = -(a+d)b+adp

 よって、 f(x)=x3+px2+{3(-a2+ad-d2)-(a+d)p}x+a3+d3+adp  (終)

(3W)は以上の結果に a=0、d=-k を代入したものとなります。


 (上記のまとめ) 任意の実数 a、d、p (a≠d) に対して、 b=-a2+ad-d2 とおく。

    f(x)=x3+px2+{3b-(a+d)p}x+a3+d3+adp 、g(x)=(ax+b)/(x-d)

とおくと、 f(x)=0 の解は、g(x) によって巡回する。ここで、次に、

    h(x)={1/(a-d)}{x2+(d+p)x-2b-ap}

を考えます。
(唐突に、h(x) を定義していますが、f(α)=0 を用いて、g(α) を変形すると、h(α) の式を得ることができます。)

 f(α)=0 を用いて計算すると、以下の式が成り立つことがわかります。

  h(α)=g(α)=β 、h(h(α))=g(g(α))=γ 、h(h(h(α)))=α

よって、 f(x)=0 の解は、h(x) によっても巡回することがわかります。


 りらひいさんからの続報です。(平成24年6月22日付け)

 3次方程式の解の巡回に関して私が計算したことの続きです。

 上記には、一般の3次方程式の解に対する2次式の巡回関数が一般形で書かれています
が、ここでは分数式の一般形も示したいと思います。

 (上記のまとめ) 任意の実数 a、d、p (a≠d) に対して、 b=-a2+ad-d2 とおく。

    f(x)=x3+px2+{3b-(a+d)p}x+a3+d3+adp 、g(x)=(ax+b)/(x-d)

    h(x)={1/(a-d)}{x2+(d+p)x-2b-ap}

とおくと、 f(x)=0 の解は、g(x) および h(x) によって巡回する。

 f(x)=x3+px2+qx+r の解の巡回関数を求める。ここでやりたいことは、 a、d、b を p、q、r を
用いて表し、それを g(x)、h(x) に代入しようというだけである。

 まず、 u=a+d 、 v=ad とおく。

q = 3b-(a+d)p = 3b-pu 、r = -(a+d)b+adp = -bu+pv 、b = -(a+d)2+3ad = -u2+3v

 整理すると、 u(p2-3q) = 9r-pq 、v(p2-3q)2 = p3r+q3-9pqr+27r2 、b(p2-3q) = 3pr-q2

 ここで、p2-3q=0 の場合は、u、v が定まらないので、この流れでは議論できない。
ここから先は、p2-3q≠0 の場合を考える。

 u=(9r-pq)/(p2-3q) 、v=(p3r+q3-9pqr+27r2)/{(p2-3q)2} 、b=(3pr-q2)/(p2-3q)

 a、d は、t2-ut+v=0 の解である。u、v を代入して、両辺に、p2-3q をかければ、

 (p2-3q)t2-(9r-pq)t+(p3r+q3-9pqr+27r2)/(p2-3q)=0

 この2次方程式の判別式をDとおく。すなわち、

 D=(9r-pq)2-4(p3r+q3-9pqr+27r2)=p2q2-4p3r-4q3+18pqr-27r2

(すると D は3次方程式 f(x)=0 の判別式でもあることに気付く。)

 最初の条件で、a≠d というものを課しているので、D=0 の場合には、この方法では議論
できない。しかし、D≠0 の場合には、a、d=(9r-pq±√D)/{2(p2-3q)}

 これを、g(x)、h(x) に代入すれば、 f(x)=0 の解の巡回関数が求まる。

g(x)={(9r-pq±√D)x+2(3pr-q2)}/{2(p2-3q)x-(9r-pq-(±√D))}

h(x)={(p2-3q)/(±√D)}x2+{1/2}{(2p3-7pq+9r)/(±√D)-1}x+{1/2}{(p2q+3pr-4q2)/(±√D)-p}

 この h(x) は上記のらすかるさんの式と一致しています。(s=-(±√D) としたものになっています。)

 ここまでやって残っているのは、p2-3q=0 の場合と D=0 の場合である。

 p2-3q=0 の場合  このとき、f(x)=(x+p/3)3+r-(p/3)3 となるので、f(x)=0 の解は、

  α=-p/3+{(p/3)3-r}1/3 、β=-p/3+{(p/3)3-r}1/3・ω 、γ=-p/3+{(p/3)3-r}1/3・ω2

 これから、1次式の巡回関数が簡単に求まり、

  ω(x+p/3)-p/3=ωx+(ω-1)p/3 または ω2(x+p/3)-p/3=ω2x+(ω2-1)p/3

 p2-3q≠0 かつ D=0 の場合  このとき、 f(x)=0 は2重解とそれとは異なる1つの解を

もつので、α=β≠γ とする。h(α)=β、h(β)=γ、h(γ)=α となる巡回関数 h(x) がある

と仮定すると、β=α から、γ=h(β)=h(α)=β となり、これは β≠γ と矛盾する。

よってこの場合には巡回関数は存在しない。

 以上で、一般の f(x)=0 に対する g(x)、h(x) が計算できたと思います。

 最後に、2次式が与えられたときにそれが巡回関数となるような3次方程式を求めます。

今回使うことのまとめ: 任意の実数 a、d、p (a≠d) に対して、b=-a2+ad-d2 とおく。

 f(x)=x3+px2+{3b-(a+d)p}x-(a+d)b+adp 、h(x)={1/(a-d)}{x2+(d+p)x-2b-ap}

とおくと、f(x)=0 の解は、h(x) によって巡回する。

 h(x)=Ax2+Bx+C が解の巡回関数となるような3次方程式 f(x)=0 を求める。

A≠0 で考えることにする。

 A=1/(a-d) 、B={1/(a-d)}(d+p) 、C={1/(a-d)}(-2b-ap) 、b=-a2+ad-d2

 これを解くと、S=B2-2B-7-4AC とおくと、次のようになる。

 a=(-B+1±√S)/(2A) 、d=(-B-1±√S)/(2A) 、p=(3B+1-(±√S))/(2A) 、

 b=(-B2+B+2+2AC±B√S)/(2A2)

 また、a+d=(-B±√S)/A 、ad=(B2-B-4-2AC-(±√S))/(2A2)

 これらを f(x) の式に代入すると、

 f(x)=x3+{(3B+1-(±√S))/(2A)}x2+{(B2+2B-1+2AC±(-B-1)√S)/(2A2)}x
                             +(B2-B-2+ABC-AC±(-B-AC)√S)/(2A3)

 これで、f(x)=0 の形が求まった。f(x) について、複号が上のものを、f1(x) とおき、下のも
のを f2(x) とおく。計算すると、以下の式が成り立っていることが示される。

  h(h(h(x)))-x = A6・f1(x)・f2(x)・{h(x)-x}

 以上が、2次式 h(x) を与えたときに、その関数により解が巡回する3次方程式 f(x)=0 の
形である。

 この結果から、A、B、C が有理数で、S=B2-2B-7-4AC が有理数の平方数ならば、有理数
係数の3次方程式 f(x)=0 が存在することがわかる。

 たとえば、FNさんが示されている(平成23年2月1日付け)を見てみると、

 h(x)=x2-2 --> S=1
 h(x)=x2-4 --> S=9
 h(x)=x2-8 --> S=25

となり、確かに、Sが平方数となっている。これを一般化すれば、a=1、b=0 のときは、

c=-k2+k-2 とすることで、 h(x)=x2-k2+k-2 ---> S=(2k-1)2

とできる。私が、3次方程式の解の巡回について今までに計算したことは以上となります。


 GAI さんが、解の巡回について考察されました。(平成24年6月29日付け)

 3次方程式 x3+px2+qx+r=0 の異なる3実根α、β、γに対し、次の2次式 G1、G2 が解の
巡回をなす。即ち,

  G1(α)=β、G1(β)=γ、G1(γ)=α
  G2(α)=γ、G2(γ)=β、G2(β)=α

(例) (x-1)(x-2)(x-3)=x3-6x2+11x-6 に対し、

   G1(x)=-(3/2)x2+(11/2)x-2  、G2(x)=(3/2)x2-(13/2)x+8

 これは係数が分数となるので、2次式の係数が整数になるものを集めてみました。ここに、
s1=sqrt(3次式の判別式)の値を表しています。

s1= 7 、p=-20 、q=-9 、r=-1
  G1(x)=-61x2+( 1233 )x+( 286 )  、G2(x)= 61x2+(-1234 )x+(-266 )

s1= 7 、p=-9 、q= 20 、r=-13
  G1(x)=-3x2+( 22 )x+(-22 )  、G2(x)= 3x2+(-23 )x+( 31 )

s1= 7 、p=-9 、q= 20 、r= 1
  G1(x)=-3x2+( 13 )x+( 5 )  、G2(x)= 3x2+(-14 )x+( 4 )

s1= 7 、p=-8 、q= 19 、r=-13
  G1(x)=-x2+( 5 )x+(-2 )  、G2(x)= x2+(-6 )x+( 10 )

s1= 7 、p=-7 、q= 14 、r=-7
  G1(x)=-1x2+( 4 )x+( 0 )  、G2(x)= x2+(-5 )x+( 7 )

s1= 7 、p=-6 、q= 5 、r=-1
  G1(x)=-3x2+( 16 )x+(-4 )  、G2(x)= 3x2+(-17 )x+( 10 )

s1= 7 、p=-6 、q= 5 、r= 13
  G1(x)=-3x2+( 7 )x+( 14 )  、G2(x)= 3x2+(-8 )x+(-8 )

s1= 7 、p=-5 、q= 6 、r=-1
  G1(x)=-x2+( 3 )x+( 1 )  、G2(x)= x2+(-4 )x+( 4 )

s1= 7 、p=-4 、q= 3 、r= 1
  G1(x)=-x2+( 2 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+(-3 )x+( 2 )

s1= 7 、p=-3 、q=-4 、r=-1
  G1(x)=-3x2+( 10 )x+( 8 )  、G2(x)= 3x2+(-11 )x+(-5 )

s1= 7 、p=-3 、q=-4 、r= 13
  G1(x)=-3x2+( 1 )x+( 17 )  、G2(x)= 3x2+(-2 )x+(-14 )

s1= 7 、p=-2 、q=-1 、r= 1
  G1(x)=-x2+( 1 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+(-2 )x+( 0 )

s1= 7 、p=-1 、q=-2 、r= 1
  G1(x)=-x2+( 0 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+(-1 )x+(-1 )

s1= 7 、p= 0 、q=-7 、r=-7
  G1(x)=-3x2+( 4 )x+( 14 )  、G2(x)= 3x2+(-5 )x+(-14 )

s1= 7 、p= 0 、q=-7 、r= 7
  G1(x)=-3x2+(-5 )x+( 14 )  、G2(x)= 3x2+( 4 )x+(-14 )

s1= 7 、p= 1 、q=-2 、r=-1
  G1(x)=-x2+(-1 )x+( 1 )  、G2(x)= x2+( 0 )x+(-2 )

s1= 7 、p= 2 、q=-1 、r=-1
  G1(x)=-x2+(-2 )x+( 0 )  、G2(x)= x2+( 1 )x+(-2 )

s1= 7 、p= 3 、q=-4 、r=-13
  G1(x)=-3x2+(-2 )x+( 14 )  、G2(x)= 3x2+( 1 )x+(-17 )

s1= 7 、p= 3 、q=-4 、r= 1
  G1(x)=-3x2+(-11 )x+( 5 )  、G2(x)= 3x2+( 10 )x+(-8 )

s1= 7 、p= 4 、q= 3 、r=-1
  G1(x)=-x2+(-3 )x+(-2 )  、G2(x)= x2+( 2 )x+(-2 )

s1= 7 、p= 5 、q= 6 、r= 1
  G1(x)=-x2+(-4 )x+(-4 )  、G2(x)= x2+( 3 )x+(-1 )

s1= 7 、p= 6 、q= 5 、r=-13
  G1(x)=-3x2+(-8 )x+( 8 )  、G2(x)= 3x2+( 7 )x+(-14 )

s1= 7 、p= 6 、q= 5 、r= 1
  G1(x)=-3x2+(-17 )x+(-10 )  、G2(x)= 3x2+( 16 )x+( 4 )

s1= 7 、p= 7 、q= 14 、r= 7
  G1(x)=-x2+(-5 )x+(-7 )  、G2(x)= x2+( 4 )x+( 0 )

s1= 7 、p= 8 、q= 19 、r= 13
  G1(x)=-x2+(-6 )x+(-10 )  、G2(x)= x2+( 5 )x+( 2 )

s1= 7 、p= 9 、q= 20 、r=-1
  G1(x)=-3x2+(-14 )x+(-4 )  、G2(x)= 3x2+( 13 )x+(-5 )

s1= 7 、p= 9 、q= 20 、r= 13
  G1(x)=-3x2+(-23 )x+(-31 )  、G2(x)= 3x2+( 22 )x+( 22 )

s1= 7 、p= 20 、q=-9 、r= 1
  G1(x)=-61x2+(-1234 )x+( 266 )  、G2(x)= 61x2+( 1233 )x+(-286 )

s1= 13 、p=-8 、q= 17 、r=-5
  G1(x)=-x2+( 4 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+(-5 )x+( 6 )

s1= 13 、p=-7 、q= 12 、r=-5
  G1(x)=-x2+( 5 )x+(-1 )  、G2(x)= x2+(-6 )x+( 8 )

s1= 13 、p=-5 、q= 4 、r= 5
  G1(x)=-x2+( 2 )x+( 4 )  、G2(x)= x2+(-3 )x+( 1 )

s1= 13 、p=-4 、q= 1 、r= 1
  G1(x)=-x2+( 3 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+(-4 )x+( 2 )

s1= 13 、p=-2 、q=-3 、r= 5
  G1(x)=-x2+( 0 )x+( 4 )  、G2(x)= x2+(-1 )x+(-2 )

s1= 13 、p=-1 、q=-4 、r=-1
  G1(x)=-x2+( 1 )x+( 3 )  、G2(x)= x2+(-2 )x+(-2 )

s1= 13 、p= 1 、q=-4 、r= 1
  G1(x)=-x2+(-2 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+( 1 )x+(-3 )

s1= 13 、p= 2 、q=-3 、r=-5
  G1(x)=-x2+(-1 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+( 0 )x+(-4 )

s1= 13 、p= 4 、q= 1 、r=-1
  G1(x)=-x2+(-4 )x+(-2 )  、G2(x)= x2+( 3 )x+(-2 )

s1= 13 、p= 5 、q= 4 、r=-5
  G1(x)=-x2+(-3 )x+(-1 )  、G2(x)= x2+( 2 )x+(-4 )

s1= 13 、p= 7 、q= 12 、r= 5
  G1(x)=-x2+(-6 )x+(-8 )  、G2(x)= x2+( 5 )x+( 1 )

s1= 13 、p= 8 、q= 17 、r= 5
  G1(x)=-x2+(-5 )x+(-6 )  、G2(x)= x2+( 4 )x+(-2 )

s1= 19 、p=-8 、q= 15 、r=-7
  G1(x)=-x2+( 6 )x+(-2 )  、G2(x)= x2+(-7 )x+( 10 )

s1= 19 、p=-7 、q= 10 、r= 7
  G1(x)=-x2+( 3 )x+( 5 )  、G2(x)= x2+(-4 )x+( 2 )

s1= 19 、p=-5 、q= 2 、r= 1
  G1(x)=-x2+( 4 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+(-5 )x+( 3 )

s1= 19 、p=-4 、q=-1 、r= 11
  G1(x)=-x2+( 1 )x+( 6 )  、G2(x)= x2+(-2 )x+(-2 )

s1= 19 、p=-2 、q=-5 、r=-1
  G1(x)=-x2+( 2 )x+( 4 )  、G2(x)= x2+(-3 )x+(-2 )

s1= 19 、p=-1 、q=-6 、r= 7
  G1(x)=-x2+(-1 )x+( 5 )  、G2(x)= x2+( 0 )x+(-4 )

s1= 19 、p= 1 、q=-6 、r=-7
  G1(x)=-x2+( 0 )x+( 4 )  、G2(x)= x2+(-1 )x+(-5 )

s1= 19 、p= 2 、q=-5 、r= 1
  G1(x)=-x2+(-3 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+( 2 )x+(-4 )

s1= 19 、p= 4 、q=-1 、r=-11
  G1(x)=-x2+(-2 )x+( 2 )  、G2(x)= x2+( 1 )x+(-6 )

s1= 19 、p= 5 、q= 2 、r=-1
  G1(x)=-x2+(-5 )x+(-3 )  、G2(x)= x2+( 4 )x+(-2 )

s1= 19 、p= 7 、q= 10 、r=-7
  G1(x)=-x2+(-4 )x+(-2 )  、G2(x)= x2+( 3 )x+(-5 )

s1= 19 、p= 8 、q= 15 、r= 7
  G1(x)=-x2+(-7 )x+(-10 )  、G2(x)= x2+( 6 )x+( 2 )


 空舟さんからのコメントです。(平成28年2月20日付け)

 最近、2つの解から残りの解を表すようなパターンを考察しました。

例えば、x4-7x2-3x+1=0 の異なる2つの解をa、bとすると、

c = (2a2b2-b2+9ab+3b-4a2+3a+11)/(3a-3b)
d = (-2a2b2+4b2-9ab-3b+a2-3a-11)/(3a-3b)

が残りの2つの解を与えるような関係です。数値的には

x1=-2.3549452992924、x2=-0.6832248251727、x3=0.2205863862587、x4=2.817583738206

位で、c(x1,x2) = x3、c(x2,x3) = x1、c(x3,x4) = x1、d(x1,x2) = x4、d(x2,x3) = x4、d(x3,x4) = x2
などの関係になっていると思います。


(追記) 「come back」と題して、GAI さんからの投稿です。(平成28年10月9日付け)

 整数係数の3次方程式の異なる3根(p,q,rとする)に対し、2p2-1、2q-1、2r-1 が再び元の
方程式の3根になるという。このとき、この3次方程式は?


 りらひいさんが考察されました。(平成28年10月9日付け)

 32x3-12x2-23x+3=0 または、 4096x3+1152x2-1992x+119=0


(コメント) 32x3-12x2-23x+3=0 の解は、 p=−3/4、q=1/8、r=1

    このとき、2p2−1=1/8=q、2q−1=−3/4=p、2r−1=1=r で、元の方程式
   の根になる。

 4096x3+1152x2-1992x+119=0 の解は、−7/8、1/16、17/32 で同様。


(追記) S(H)さんから、「も解」の問題が今年度出たよ!との情報を得て興味があったので
    まとめてみた。S(H)さんに感謝します。(平成29年3月10日付け)

 早稲田大学 基幹理工・創造理工・先進理工学部(2017)

 3次の整式 F(x)=x3+x2+px+q (ただし、p≠q、q≠0)、および
G(x)=−1/(x+1)が次の条件(*)を満たすとする。

(*) F(x)=0 の任意の解αに対して、G(α)もF(x)=0 の解である。

次の問いに答えよ。

(1) p、qの値を求めよ。
(2) F(x)=0 は、−2<x<2の範囲に3つの実数解を持つことを示せ。
(3) F(x)=0 の任意の解を2cosθとするとき、2cos2θ、2cos3θも解である
   ことを示せ。
(4) 2cosθ(0<θ<π)がF(x)=0 の解であるとき、θの値を求めよ。


(解)(1) F(x)=0 の任意の解αに対して、F(α)=α3+α2+pα+q=0

 ここで、α=−1 と仮定すると、−p+q=0 で、p≠q に矛盾。よって、 α≠−1

  同様に、α=0 と仮定すると、q=0 で、q≠0 に矛盾。よって、 α≠0

   

 G(x)のグラフと条件(*)より、F(x)=0 は、相異なる3つの解

    α、−1/(α+1)、−(α+1)/α

を持つとしてよい。

 解と係数の関係より、 −q=α(−1/(α+1))(−(α+1)/α)=1  よって、 q=−1

 また、 p=−α/(α+1)+1/α−(α+1)

       =(−α2+α+1−α3−2α2−α)/(α(α+1))

       =(−α3−3α2+1)/(α(α+1))

ここで、α−1/(α+1)−(α+1)/α=−1 より、α3+α2−α−α2−2α−1=−α2−α

    すなわち、 α3+α2−2α−1=0

 このとき、 p=(−2α2−2α)/(α(α+1))=−2

(2) (1)より、 F(x)=x3+x2−2x−1 で、F(x)は連続関数である。このとき、

  F(−2)=−1<0、F(−1)=1>0、F(0)=−1<0、F(1)=−1<0、F(2)=7>0

  よって、中間値の定理より、 −2と−1の間、−1と0の間、1と2の間に解を持つ。

  以上から、F(x)=0 は、−2<x<2の範囲に3つの実数解を持つ。

(3) F(x)=0 の任意の解をα=2cosθとすると、 α3+α2−2α−1=0

  2cos2θ=4cos2θ−2=α2−2

  ここで、 α3+α2−2α−1=0 より、 (α2−2)(α+1)=−1 なので、

 α2−2=−1/(α+1)  条件(*)より、2cos2θ=α2−2 も F(x)=0 の解である。

  同様にして、 2cos3θ=8cos3θ−6cosθ=α3−3α=−α2−α+1

  このとき、

(−α2−α+1)α−(−(α+1))=−α3−α2+α+α+1=−α3−α2+2α+1=0

より、 −α2−α+1=−(α+1)/α と書けるので、2cos3θ=−α2−α+1 も
F(x)=0 の解である。

(4) 2cosθ(0<θ<π)がF(x)=0 の解であるとき、(3)より、 2cos2θ、2cos4θ
   も解となる。

  このとき、(3)より、 2cos4θ=2cos3θ すなわち、 cos4θ−cos3θ=0

 和積の公式より、 −2sin(7θ/2)・sin(θ/2)=0

  0<θ<πにおいて、 0<θ/2<π/2 より、 sin(θ/2)≠0

 よって、 sin(7θ/2)=0 で、 0<7θ/2<7π/2 より、 7θ/2=π、2π、3π

 したがって、 θ=2π/7、4π/7、6π/7


(注) x3+x2 - 2x - 1 = 0 の解が、G(x)=x2 - 2 で巡回することは、x に関する恒等式

  (x2 - 2)3+(x2 - 2)2 - 2 (x2 - 2) - 1=(x3+x2 - 2x - 1)(x3 - x2 - 2x+1)

からも示すことができる。ちなみに、3つの解は、

    2cos (2π/7) 、2cos (4π/7) 、2cos (8π/7)(=2cos (6π/7))

とも書けるが、解の巡回が成立する場合、(一般に n 次で) 解は必ず三角関数の簡単な式
で表すことが出来る。


(追記) 解の巡回について、HN「period」さんよりご投稿いただきました。
                                        (令和元年5月4日付け)

 解の巡回について、ガロア理論を用いて決着を付けましたのでご報告いたします。
(→Period−Mathematics

 以前何度かこちらに書き込んだことがあるのですが、未だに見覚えのある名前が見受けら
れて安心感を感じますね。みなさんお元気のようで。

 一つ気になっていることがあって、「解の巡回が成立する場合、(一般に n 次で) 解は必ず
三角関数の簡単な式で表すことが出来る。」という意味深な記述がありますが、これは私の
中では、「巡回拡大はアーベル拡大なのでクロネッカー・ウェーバーの定理より実数解は(円
分体の指数2の中間体に含まれるため)三角関数で書ける」という風に解決しているのです
が、これは、このような議論を想定して書かれた記述なのでしょうか?

 なお、5次方程式については、「別の例」のところで扱いました。


   以下、工事中