連立方程式の回避                         戻る

 新学習指導要領で、中学校での連立方程式の扱いが軽減されて以来、高校に入ってか
ら苦労する人が絶えない。数学の高校程度の問題は、最後は連立方程式の問題に帰着
されることが多いので、簡単な2元1次連立方程式しか練習してきていない場合は、その
連立方程式の多様さに圧倒されて計算が進まず、高校での学習内容の習得に支障をき
たす場合が多い。

 連立方程式の解法があやしい人は、より簡単な1元1次方程式(例 2x=1/2)の解法
そのものがあやしい場合が多い。連立方程式は、1元の方程式の積み重ねとして存在し
ているので、連立方程式の解法を確かなものとするためには、基本となる1次方程式、2
次方程式の習熟が急務だろう。連立方程式は、ある一定時期に集中して学習すると効果
が出ると思われるが、最近の指導要領では、「現地調達方式」ということで、新しい概念を
学びながらの学習となるので、定着率は芳しくない。

 そこで、このページでは、普通は連立方程式を用いて解かれる問題を連立方程式を回
避して解く方法など、学習者の負担が軽減できるような話題について整理しようと思う。

例1 ・・・ 部分分数分解

 部分分数分解それ自体は、単純な計算であるが、数列における和の計算や分数関数の
積分などで大活躍するように、習得すべき必須の技法と言えるだろう。

 教科書等では、部分分数分解は次のように解かれている。

         

とおき、分母を払って整理すると、  2(A+B)x−A+B=1

 よって、 A+B=0 、 −A+B=1 より、 A=−1/2 、 B=1/2

したがって、
         

と部分分数分解される。

 これに対して、次のような解法はどうであろうか?

 1=(1/2){(2x+1)−(2x−1)} なので、両辺を (2x+1)(2x−1) で割って、

         

を得る。

(コメント) この別解のポイントは、部分分数分解される分数の分子を、分母の因数を用い
      て如何に表せるかを見いだすことである。そこに気がつけば、わざわざ連立方程
      式を持ち込むまでもなく答えは暗算で求められる。


 当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんが例1について考察された。
                                       (平成23年9月9日付け)

 部分分数分解について

  ※へヴィサイドの方法

   

 の両辺に 2x+1 をかけると、 1/(2x-1)=A+B(2x+1)/(2x-1)

  x=-1/2 を代入すると、 -1/2=A+B・0/(-2) より、 A=-1/2

 同様に、両辺に 2x-1 をかけると、 1/(2x+1)=A(2x-1)/(2x+1)+B

  x=1/2 を代入すると、 1/2=A・0/2+B より、 B=1/2

(コメント) う〜む、上手い!


練習問題  次の式が、xについての恒等式であるとき、定数A、B、Cの値を求めよ。

    x2/{(x+1)(x+2)(x+3)}=A/(x+1)+B/(x+2)+C/(x+3)

(解) 与式の両辺に x+1 をかけると、 x2/{(x+2)(x+3)}=A+B(x+1)/(x+2)+C(x+1)/(x+3)

   x=-1 を代入すると、 (-1)2/{((-1)+2)((-1)+3)}=A+B・0/1+C・0/2 より、 A=1/2

   同様に、両辺に x+2 をかけると、 x2/{(x+1)(x+3)}=A(x+2)/(x+1)+B+C(x+2)/(x+3)

   x=-2 を代入すると、 (-2)2/{((-2)+1)((-2)+3)}=A・0/(-1)+B+C・0/1 より、 B=-4

   同様に、両辺に x+3 をかけると、 x2/{(x+1)(x+2)}=A(x+3)/(x+1)+B(x+3)/(x+2)+C

   x=-3 を代入すると、 (-3)2/{((-3)+1)((-3)+2)}=A・0/(-2)+B・0/(-1)+C より、 C=9/2
                                                   (終)

 攻略法さんからの続報です。(平成23年9月24日付け)

 上記の練習問題について、ラグランジュの補間公式より、

 f(x)=f(-1)(x+2)(x+3)/{((-1)+2)((-1)+3)}+f(-2)(x+1)(x+3)/{((-2)+1)((-2)+3)}
                                +f(-3)(x+1)(x+2)/{((-3)+1)((-3)+2)}

   =f(-1)(x+2)(x+3)/2 -f(-2)(x+1)(x+3) +f(-3)(x+1)(x+2)/2

 両辺を、(x+1)(x+2)(x+3) で割ると、

  f(x)/{(x+1)(x+2)(x+3)} = {f(-1)/2}(x+1) +{-f(-2)}/(x+2) +{f(-3)/2}/(x+3)

  f(x)=x2 なので、f(-1)=1、f(-2)=4、f(-3)=9 より、

   x2/{(x+1)(x+2)(x+3)} = (1/2)/(x+1) +(-4)/(x+2) +(9/2)/(x+3)

(コメント) ラグランジュの補間公式の斬新な使い方ですね!感動しました。


 FNさんからのコメントです。(平成23年9月24日付け)

 なるほど!ラグランジュの補間公式は、このタイプの問題に使えますね。逆に言えば、こ
のようにしてラグランジュの補間公式が作られたということでもあります。

 f(a)=A、f(b)=B、f(c)=C を満たす2次関数を求めよ。

(解) f(x)=p(x-b)(x-c)+q(x-c)(x-a)+r(x-a)(x-b) とおく。

  f(a)=A より、 A=p(a-b)(a-c) なので、 p=A/((a-b)(a-c))

 同様にして、q=B/((b-c)(b-a)) 、r=C/((c-a)(c-b))

  これでラグランジュの補間公式が得られた。  (終)

 f(x)=p(x-b)(x-c)+q(x-c)(x-a)+r(x-a)(x-b) より、

  f(x)/((x-a)(x-b)(x-c))=p/(x-a)+q/(x-b)+r/(x-c)

となり、上の練習問題と同じになります。


 攻略法さんからの続報です。(平成23年9月25日付け)

問題(オイラーの分数式)

  分数式 a/{(a-b)(a-c)}+b/{(b-a)(b-c)}+c/{(c-a)(c-b)} の値を求めよ。

(解) 3点 (a,A)、(b,B)、(c,C) を通る2次関数は、ラグランジュの補間公式より、

f(x)={A/((a-b)(a-c))}(x-b)(x-c) +{B/((b-a)(b-c))}(x-a)(x-c) +{C/((c-a)(c-b))}(x-a)(x-b)

 f(x)を 1、x、x2 とすると、Aは、1、a、a2、Bは、1、b、b2、Cは、1、c、c2 となる。

 両辺の x2 の係数を比較すると、

    1/{(a-b)(a-c)}+1/{(b-a)(b-c)}+1/{(c-a)(c-b)} = 0

    a/{(a-b)(a-c)}+b/{(b-a)(b-c)}+c/{(c-a)(c-b)} = 0

    a2/{(a-b)(a-c)}+b2/{(b-a)(b-c)}+c2/{(c-a)(c-b)} = 1

を得る。  (終)

 一般に、g(x)=x とすると、 g(a)=a、g(b)=b、g(c)=c となる。

  f(x)=(x-a)(x-b)(x-c) として、g(x)をf(x)で割ったときの商をQ(x)、余りをR(x)とすると、

g(x)=f(x)Q(x)+R(x) と書ける。

 よって、 R(x)=g(x)-f(x)Q(x)=x-(x-a)(x-b)(x-c)Q(x)

このR(x)は、R(a)=a、R(b)=b、R(c)=c を満たす2次式以下の多項式になる。

 R(x)に、f(x)=(x-a)(x-b)(x-c) として、ラグランジュの補間公式を適用すると、

R(x)=a(x-b)(x-c)/{(a-b)(a-c)}+b(x-a)(x-c)/{(b-a)(b-c)}+c(x-a)(x-b)/{(c-a)(c-b)}

 両辺の x2 の係数を比較すると、

   a/{(a-b)(a-c)}+b/{(b-a)(b-c)}+c/{(c-a)(c-b)}

の値が得られる。

練習問題 (n=3の場合)

 3/{(a-b)(a-c)}+b3/{(b-a)(b-c)}+c3/{(c-a)(c-b)} の値を求めよ。

(解) g(x)=x3 を、f(x)=(x-a)(x-b)(x-c) で割ると、

 商が 1、余りが (a+b+c)x2-(ab+bc+ca)x+abc なので、

 R(x)=(a+b+c)x2-(ab+bc+ca)x+abc  よって、求める値は、a+b+c  (終)

(コメント) 私が高校1年のときに経験した問題です。因数分解と約分が大変でした!攻略
      法さんの別解に感動しました。

 攻略法さんからの続報です。(平成23年9月27日付け)

類題
(1) bc/{(a-b)(a-c)}+ca/{(b-c)(b-a)}+ab/{(c-a)(c-b)} の値を求めよ。
(2) (b+c)/{(a-b)(a-c)}+(c+a)/{(b-c)(b-a)}+(a+b)/{(c-a)(c-b)} の値を求めよ。

(解) f(x)=1として、

  1=(x-b)(x-c)/{(a-b)(a-c)} +(x-c)(x-a)/{(b-c)(b-a)} +(x-a)(x-b)/{(c-a)(c-b)}

 定数項を比較すると、1=bc/{(a-b)(a-c)}+ca/{(b-c)(b-a)}+ab/{(c-a)(c-b)}

 x の係数を比較すると、

   0=(b+c)/{(a-b)(a-c)}+(c+a)/{(b-c)(b-a)}+(a+b)/{(c-a)(c-b)}  (終)

類題
(1) abc/{(a-b)(a-c)}+abc/{(b-c)(b-a)}+abc/{(c-a)(c-b)} の値を求めよ。
(2) a(b+c)/{(a-b)(a-c)}+b(c+a)/{(b-c)(b-a)}+c(a+b)/{(c-a)(c-b)} の値を求めよ。

(解) f(x)=x として、

  x=a(x-b)(x-c)/{(a-b)(a-c)} +b(x-c)(x-a)/{(b-c)(b-a)} +c(x-a)(x-b)/{(c-a)(c-b)}

 定数項を比較すると、0=abc/{(a-b)(a-c)}+abc/{(b-c)(b-a)}+abc/{(c-a)(c-b)}

 x の係数を比較すると、

    -1=a(b+c)/{(a-b)(a-c)}+b(c+a)/{(b-c)(b-a)}+c(a+b)/{(c-a)(c-b)}  (終)


 FNさんからのコメントです。(平成23年9月25日付け)

 上記の一般の場合、即ち、次の形のオイラーの分数式を求めることを考えてみました。

 E(n)=a/{(a-b)(a-c)}+b/{(b-a)(b-c)}+c/{(c-a)(c-b)} を求めよ。

 既に、E(0)=E(1)=0、E(2)=1、E(3)=a+b+c は求められています。

 まず、E(n)は、a、b、c の対称式である。実際に、aとbを交換すると、

  b/{(b-a)(b-c)}+a/{(a-b)(a-c)}+c/{(c-b)(c-a)} となって、E(n)に等しい。

 bとc、cとa の交換も同様。

  次に、E(n)は、a、b、c の多項式である。

 即ち、E(n)の分母を(a-b)(b-c)(c-a)として通分したときの分子Aは、(a-b)(b-c)(c-a)で割
り切れる。

 実際に、A=-a(b-c)-b(c-a)-c(a-b)で、これを、a の多項式とみて、A(a)とおくと、
 A(b)=-b(b-c)-b(c-b)-c(b-b)=0 となって、Aは、a-bで割り切れる。
同様にして、b-c、c-a でも割り切れて、(a-b)(b-c)(c-a) で割り切れ、E(n)は、a、b、c の
多項式である。

 E(n)の次数は、n−2 である。ただし、n=0、1のときは、E(n)=0

E(n)の分母を(a-b)(b-c)(c-a)として通分したとき、分母の次数は3で、分子の次数は n+1
従って、E(n)の次数は、n+1-3=n-2 となる。ただし、n=0、1 のときは、分母が3次で、分子
が2次以下。それで分子が分母で割り切れるのは、分子=0 しかない。

 E(0)=E(1)=0 は求まった。E(2)は0次式、即ち、定数である。分母・分子のa2 の係数をみ
るとどちらも c-b。従って、E(2)=1。

 E(3)は1次式。a、b、c の対称式で1次のものは、a+b+c の定数倍しかない。分母の a2
の係数は c-b、分子の a3 の係数も同じ。従って、E(3)=a+b+c

 さて、問題はここから先です。E(4)は2次です。abがあれば、bc、ca も同じだけあります。
2、b2、c2 についても同じです。そして、これら以外はありません。だから、abとa2の係数
が決まれば終わりです。c=0 とおいてみます。分子は、ab(b3-a3)で、分母は、ab(b-a) と
なる。従って、a2+ab+b2 となって、a2、ab とも係数は1
 以上から、 E(4)=a2+b2+c2+ab+bc+ca である。

では、E(5)はどうなるでしょうか?


 FNさんからの続報です。(平成23年9月26日付け)

 n=4のときに使った c=0 と置く方法を、最初から使えば、n=2、3 のあたりも簡単になりま
す。一般のnについても、ある程度までわかります。

 n≧2のとき、E(n)が、a、b、c に関して n-2次の対称式であることは証明しました。しかも、
n-2次の同次式です。即ち、n-2次の項しかありません。

 分子が、n+1次の同次式で、分母が3次の同次式であることからわかります。

 E(n)に現れる項は、a(p+q+r=n、p、q、rは負でない整数)の形ですが、a、b、c に
関する対称式だから、p、q、r を入れ替えたものの係数は同じです。

 例えば、 a3・bc、b3・ca、c3・ab の係数は同じです。だから文字が2つ以下であるものに
ついては、c=0 とおいて調べることができます。

 c=0のとき、

   E(n)=an-1/(a-b)+bn-1/(b-a)=(an-1−bn-1)/(a-b)=an-2+an-3・b+・・・・+bn-2

従って、文字が2個以下である項の係数はすべて1であることがわかります。これより、
 E(2)=1 、E(3)=a+b+c 、E(4)=a2+b2+c2+ab+bc+ca となります。E(5)ではじめて文字が
3個の項 abc が現れます。この項を除けば係数は、すべて1ですから、

  E(5)=a3+b3+c3+a2b+ab2+b2c+bc2+c2a+ca2+kabc

となります。abcの項の係数は別の方法で求めるしかありません。どうすればいいのかわか
りません。


 当HPの読者のHN「空舟」さんからのコメントです。(平成23年9月26日付け)

 E(n)を c について k 回微分したものに、c=0 を代入することを考えます。第一項と第二
項は容易です。第三項は分子にcがあるので、k<n では、c=0 のとき、0となります。そ
の結果、 k!{an-1-k-bn-1-k}/(a-b) のような形になります。E(n)のうち c がつく項の係
数がすべて1になることがわかります。

 3次方程式については、1つの解をαとした時に、他の解をαの2次式で表す手順がある
ようです。(この掲示板のどこかで見ました)それについて、4次方程式の場合に同じことを
試みて、うまくいきませんでした。「S(H)さんからの話題」というページには4次方程式どころ
か、8次方程式について、同様な7次式を求めている結果が書いてあって、大変衝撃を受
けました。いったいどのように計算したのか興味があります...。


 FNさんからのコメントです。(平成23年9月26日付け)

 確かに証明できているようですね。私は証明としてきちんと書かないと理解できないので、
きちんと書いてみようと思います。有難うございました。


 FNさんからの続報です。(平成23年9月27日付け)

 E(n)=b/{(b-a)(b-c)}+a/{(a-b)(a-c)}+c/{(c-b)(c-a)} を求めよ。

について、n≧2 のとき、E(n)=Σap・bq・c

(ただし、Σは、p+q+r=n-2 を満たす負でない整数の組 (p,q,r)すべてについての和)

 空舟さんが書かれたことで十分とも言えますが、高校生にもわかるような形で証明を書き
ます。前に書いたことも含めて書きます。n=0、1は省略します。

(解) E(n)のcをxに変えたものを f(x) とおく。

  即ち、 f(x)=x/{(x-a)(x-b)}-a/(a-b)・1/(x-a)-b/(b-a)・1/(x-b)

 まず、f(x)は、n-2次の多項式である。(これは前に証明していますが...。)

  g(x)=(x-a)(x-b)f(x)とおくと、g(x)=x-a/(a-b)・(x-b)-b/(b-a)・1/(x-a)

 g(a)=g(b)=0 より、g(x)は、(x-a)(x-b)で割り切れ、g(x)は、n次式だから、

 f(x)は、n-2次の多項式

  0≦k≦n-2 である k について、f(x)のxの係数が、

 Σap・bq  (Σは、p+q=n-k-2 を満たす非負整数の組(p,q)すべての和)

であることを示せばよい。このΣは、n-k-2=m とおけば、am+am-1b+・・・・+bmであり、これは

    (am+1-bm+1)/(a-b) 即ち、(an-k-1-bn-k-1)/(a-b)

である。f(x)をk回微分して、x=0 とおくと、f(x)の xk の係数に、k!をかけたものになる。

 従って、証明すべきことは、f(x)を k 回微分して、x=0 とおいたものが、

    k!(an-k-1-bn-k-1)/(a-b)

となることである。

 x/{(x-a)(x-b)}を商の微分の公式を使って、k回微分すると、

 分母={(x-a)(x-b)}2k で、分子=xn-k・(xの整式)となる。(きちんとするなら数学的帰納法) 

 k≦n-2 であるから、x=0 を代入すると、0 になる。-an/(a-b)・1/(x-a)を k 回微分すると、

  -an/(a-b)・(-1)k・k!(x-a)-k-1

 x=0 を代入すると、 k!an-k-1/(a-b) で、-bn/(b-a)・1/(x-b)を k 回微分すると、

  -bn/(b-a)・(-1)k・k!(x-b)-k-1

 x=0 を代入すると、 k!bn-k-1/(b-a)

従って、f(x)を k 回微分して、x=0 とおくと、k!(an-k-1-bn-k-1)/(a-b) となる。  (終)

 FNさんからの続報です。(平成23年9月27日付け)

 E(n)=b/{(b-a)(b-c)}+a/{(a-b)(a-c)}+c/{(c-b)(c-a)} を求めよ。

 昨日の朝、書きこんだ時点では、一般の n について、E(n)を求めるのは無理だろうと思っ
ていました。E(5)やE(6)ぐらいはなんとかなるかなと思っていました。空舟さんによって完全
解決したのでもう意味はないのですが、昨日考えてE(5)やE(6)を求めることはできたので、
一応書いておきます。

 E(n)の a、b、c を 1 にしたいのですが、直接では、分母が0になります。(a=b=c=1とする
と、すべての項が1になるのでE(5)のkabcのkはわかる。E(6)も文字が3つの項は、a2bc
のタイプだけだから求めることができる)

 そこで、a=1+h、b=1-h、c=1 とおいて、h→0 の極限を求めるという方針にしました。このと

き、E(n)は、 {(1+h)n+(1-h)n-2}/(2h2) となります。

 これの、h→0 のときの極限を求めるのは、高校生の手頃な練習問題です。結果は、

   n(n-1)/2=2

となります。

 a、b、c のn-2次の単項式(係数が1のもの)の数は異なる3個の文字 a、b、c から重複を

許してn-2個とる重複組合せの数 3Hn-2=3+n-2-1n-2=n-2=2 です。上の結果 2

一致します。このことは、E(n)に現れるすべての単項式の係数が1である可能性を示唆します。

もちろん、弱い状況証拠程度で、証明には程遠いです。

 E(5)とE(6)の結果を書いておきます。3次、4次の単項式をすべて書くだけですが...。

E(5)=a3+b3+c3+a2b+ab2+b2c+bc2+c2a+ca2+abc

E(6)=a4+b4+c4+a3b+ab3+b3c+bc3+c3a+ca3+a22+b22+c22+a2bc+b2ca+c2ab

 上の高校生向きの練習問題を一般化します。分母の2は消しています。

 f(x) は2回微分可能とする。{f(a+h)+f(a-h)-2f(a)}/h2 の h→0 のときの極限を求
めよ。


これを高校数学の範囲でやってください。ロピタルの定理は使用禁止です。


 FNさんが上記の問題の解を与えられました。(平成23年10月3日付け)

 普通はロピタルの定理の真似をして、従って、コーシーの平均値の定理の真似をして証
明すると思います。あるいはテーラー展開の2階微分の項までの式を真似をしながら作っ
てもいいでしょう。それでいいのですが、そして、その方がいいのですが、ラグランジュの補
間公式を使った証明が載っていたので書いておきます。ちょっと面白いと思いました。

 ただし、f"(x)の存在の他に連続性も必要なので、本当は上の問題の解答としては不十分
です。

(解) a<b<c に対して、P(a)=f(a)、P(b)=f(b)、P(c)=f(c) を満たす2次以下の整式P(x)

  が一意的に存在する。ラグランジュの補間公式として具体的に与えられる。

 g(x)=f(x)-P(x)とおく。g(x)は2回微分可能で、g(a)=g(b)=g(c)=0 であるから、ロルの定理に

より、g’(s)=0、g’(t)=0  (a<s<b<t<c) を満たす s、t が存在する。

 従って、再びロルの定理により、g”(u)=0 (s<u<t) を満たす u が存在する。

 このとき、f”(u)=P”(u)

 ラグランジュの補間公式の形から容易にわかるように、

  P”(u)=2f(a)/{(a-b)(a-c)}+2f(b)/{(b-c)(b-a)}+2f(c)/{(c-a)(c-b)}

である。(P(x)は2次式だから、P”(x)は定数で、uを含まない) また、a<u<c

ここで、a,b,c を、a-h、a、a+h として適用すると、a-h<u<a+h で、

   f”(u)=P”(u)=2f(a-h)/{(-h)(-2h)}+2f(a)/{h(-h)}+2f(a+h)/(2hh)

          ={f(a+h)+f(a-h)-2f(a)}/(h2)

h→0 とすると、u→a だから、{f(a+h)+f(a-h)-2f(a)}/(h2)→f”(a)  (終)

(※最後のところで、f”(x)の連続性を使っている。)


練習問題  次の式が、xについての恒等式であるとき、定数A、B、Cの値を求めよ。

    4(x+2)/{(x+1)2(x+3)}=A/(x+1)2+B/(x+1)+C/(x+3)

(解) 与式の両辺に (x+1)2 をかけると、 4(x+2)/(x+3)=A+B(x+1)+C(x+1)2/(x+3)

   x=-1 を代入すると、 4・((-1)+2)/((-1)+3)=A+B・0+C・02/2 より、 A=2

   同様に、両辺に x+3 をかけると、 4(x+2)/(x+1)2=A(x+3)/(x+1)2+B(x+3)/(x+1)+C

   x=-3 を代入すると、 4・((-3)+2)/((-3)+1)2=A・0/(-2)2+B・0/(-2)+C より、 C=-1

   同様に、両辺に x+1 をかけると、 4(x+2)/{(x+1)(x+3)}=A/(x+1)+B+C/(x+3)

   x=0 を代入すると、 4・(0+2)/{(0+1)(0+3)}=A/1+B+C/3 より、

       A+B+C/3=8/38/3=A+B+C/3

   A=2、C=-1 を代入すると、 8/3=2+B-1/3 より、 B=1  (終)


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例1について考察された。
                                      (平成23年9月14日付け)

 上記で、1/((2x+1)(2x-1))の部分分数分解が取り上げられている。教科書では連立方程式
にするのが普通かもしれないが、分母の2つの因数の差が定数で分子も定数なら、ある程度
慣れれば暗算でいきなり結果を書くでしょう。

 連立方程式にしたなら、分母を払った式

    1=A(2x-1)+B(2x+1)

に、x=1/2、-1/2 を代入して、事実上連立方程式でない形にして、A、Bを求めるのが普通だ
と思います。

 ただ、このやりかたは、分母を 0 にする値を代入するので、幾分気持ちの悪さがあります。

当然教科書には書けません。もちろん正当化はできます。きちんと正当化できる用意は必要

です。答案に書く必要はありません。代入する値は、普通は分母を 0 にする値ですが、やや

こしい分数や無理数、さらには、虚数であっても、何が何でも分母を 0 にする値を代入するか

どうかです。

 1/(x3-1) を部分分数の和で表せ。

 1/(x3-1)=A/(x-1)+(Bx+C)/(x2+x+1) とおく。分母を払って、

    1=A(x2+x+1)+(Bx+C)(x-1)

  x=1 を代入して、 1=3A  より、 A=1/3

 (ここまでは誰がやっても同じです。)このあと、x=0、-1 あたりを代入すれば、無難です。

そして、多分その方が早い。しかし、意地でも、x2+x+1=0 の解、即ち、1の虚数立方根 ω

を代入したいという考え方もある。 1=(Bω+C)(ω-1) において、右辺を展開するようでは、

ωを代入する意味はありません。Bω+C=1/(ω-1) として、1/(ω-1) の計算にはいらなけ

ればいけません。

 1/(ω-1)=(ω2-1)/{(ω-1)(ω2-1)}=(-ω-2)/(ω32-ω+1)=(-2-ω)/3=-2/3-(1/3)ω

よって、係数比較して、 C=-2/3 、 B=-1/3 となる。


 やっぱり、x=0、-1 あたりを代入した方が早そうです。しかし、事実上連立方程式を回避し
たという意味で一定の意味はあるでしょう


 攻略法さんからのコメントです。(平成23年9月14日付け)

1/(ω-1) の有理化について

 共役なものがわかる場合  conj(ω)=ω2 より、(ω-1)(conj(ω)-1)=(ω-1)(ω2-1)

 共役なものがわからない場合

   x2+x+1=(x-1)Q(x)+R とすると、 1=(x2+x+1)/R-(x-1)Q(x)/R となる。

  x2+x+1=0 の1つの解を ω とすると、 1=-(ω-1)Q(ω)/R

   よって、 1/(ω-1)=-Q(ω)/R

 このことから、 (x2+x+1)÷(x-1) の商 x+2 余り 3 なので、 1/(ω-1)=-(ω+2)/3


 FNさんからのコメントです。(平成23年9月15日付け)

 攻略法さんの用いられた手法は、Euclidの互除法のようですね。次の例で考えます。

 1/((x2+x+2)(x2-2x-1))を部分分数に分けよ。

与式=(Ax+B)/(x2+x+2)+(Cx+D)/(x2-2x-1)とおく。分母を払って、

   (Ax+B)(x2-2x-1)+(Cx+D)(x2+x+2)=1

 x2-2x-1=0 の解αと x2+x+2=0 の解βを代入すればできますが、かなりの計算です。

 x=0、1、-1、2 とかを代入してもできますが、やはり、かなりの計算です。両方やってみま

したが、どちらが楽かは何とも言えません。

 数値代入をしないで、Euclidの互除法で直接やれば、もう少し簡単なようです。

 x2-2x-1 を A(x)、x2+x+2 を B(x)、Ax+B を P(x)、Cx+D を Q(x) とおけば、

   A(x)P(x)+B(x)Q(x)=1

を満たす P(x)、Q(x) を求めよという問題です。
(P(x)、Q(x)は1次以下とする。1つ見つかればよい。)

 「5x+8y=1 を満たす整数 x、y を(1つ)求めよ」という問題と同じです。これは、Euclidの互除

法でできることは知られています。係数が5と8ぐらいなら適当に捜せばできますが、もっと大

きい係数になれば、手順を踏むべきでしょう。手順に従ってやります。

 A(x)をB(x)で割ると、商は、1で、余りは、-3x-3=-3(x+1)

 A(x)=B(x)-3(x+1) これより、 x+1=(-1/3)A(x)+(1/3)B(x)・・・(*)

 B(x)をx+1で割ると、商は、xで、余りは、2

 B(x)=(x+1)x+2  これより、1=(1/2)B(x)-(x/2)(x+1)

 (*)を代入して、 1=(1/2)B(x)-(x/2)((-1/3)A(x)+(1/3)B(x)) より、

  1=A(x)(x/6)+B(x)(-x/6+1/2)

 よって、 P(x)=x/6 、 Q(x)=-x/6+1/2 より、

 1/((x2+x+2)(x2-2x-1))=(x/6)/(x2+x+2)+(-x/6+1/2)/(x2-2x-1)


 当HPがいつもお世話になっているHN「らすかる」さんからのコメントです。
                                      (平成23年9月15日付け)

 1/((x2+x+2)(x2-2x-1))を部分分数に分けよ。

について、

与式=(Ax+B)/(x2+x+2)+(Cx+D)/(x2-2x-1) の分母の2次の項の係数が、1:1なので、

A:C=1:-1 である。

 x/(x2+x+2)+(-x)/(x2-2x-1)=(-3x2-3x)/((x2+x+2)(x2-2x-1)) ・・・(1)

 3x2+3x+6=3(x2+x+2) だから、(1)を

x/(x2+x+2)+(-x+3)/(x2-2x-1) とすれば、定数項以外が消えて定数 6 が残る。

 よって、答えは、

 与式={x/(x2+x+2)+(-x+3)/(x2-2x-1)}/6=(x/6)/(x2+x+2)-(x/6-1/2)/(x2-2x-1)


 FNさんからのコメントです。(平成23年9月16日付け)

 なるほど、C=-A はすぐわかりますね。さらに、B、Dを 0 にすれば、分子の定数項を除い
たものが一方の分母の定数項を除いたものの定数倍になるということで簡単にできますね。

 多項式 f(x)とg(x)が公約数をもたないとき、f(x)P(x)+g(x)Q(x)=1 を満たす P(x)、Q(x)が存
在することはよく知られていますが、具体的に、f(x)、g(x)が与えられたとき、P(x)、Q(x)を求
めるのはかなり面倒と思われます。

 Euclidの互除法が普通だと思ったのですが、具体的な式でやれば、余りの係数が大きくな
って、分数がたくさんでてきて諦めました。やはり個々のケースでいろいろ考えた方がいいの
かもしれません。

 3次式にしてみました。

 f(x)=x3-3x+1、g(x)=x3+x2+6 のとき、f(x)P(x)+g(x)Q(x)=1 を満たす2次以下の整
式P(x)、Q(x)を(1つ)求めよ。


 今までの流れからすれば、上のような問題になりますが、分数係数であまりきれいじゃな
いので次の形にします。

(1) f(x)=x3-3x+1、g(x)=x3+x2+6 のとき、f(x)P(x)+g(x)Q(x) が自然数となるような
  整数係数の2次以下の整式P(x)、Q(x)を(1つ)求めよ。


 Euclidの互除法でもいいし、違う方法でもいいです。やってみてください。

 前の2次式の場合は、 f(x)=x2+x+2、g(x)=x2-2x-1で、P(x)=-x+3、Q(x)=x のとき、
f(x)P(x)+g(x)Q(x)=(x2+x+2)(-x+3)+(x2-2x-1)x=6 でした。この「6」は最小であると思われま
す。これは証明できるでしょうか。即ち、

(2) f(x)=x2+x+2、g(x)=x2-2x-1 とする。整数係数の整式P(x)、Q(x)に対して、
 f(x)P(x)+g(x)Q(x)=n (nは自然数) になれば、nは6の倍数である。


 私は証明できてませんが成り立ちそうな気がします。
(連立方程式の回避という話からは脱線してしまっていますが...。)


例2 ・・・ 2点を通る直線の方程式

 直線の方程式というと、生徒は直ぐに「y=ax+b」の形を思い出すくらい馴染みが十分あ
るらしい。直線の方程式で「ax+by+c=0」の形を思いつく生徒はそう多くはいない。

 2点を通る直線の場合は、y 軸に平行かどうかさえ注意すれば、「y=ax+b」の形は結構
有効である。傾き a を求めれば、後は1次方程式に帰着される。ところが、生徒にとっては
傾きの計算がとても苦手らしい。そもそも比の計算が出来ない人が最近多いように感じる。
この傾きの計算が十分習得されていないので、微分積分の基礎の部分「平均変化率から
微分係数の計算」が思うように出来ないようだ。かなりな進学校の生徒でさえ、定義による
微分係数の計算が出来ないと聞く。

 結局は、小学校で学ぶ「比の概念」に習熟しないまま数学を学んでいるのが実状なわけ
で、学習に支障をきたしている生徒の割合は以前よりも大幅に増加しているように感じる。

 これから述べることは、これらの改善策である。

 2点A(1,2)、B(4,6)を通る直線の方程式は、中学生・高校生的には普通次のよ
うに解かれるであろう。

 求める直線の方程式を、 y=ax+b とおく。2点A(1,2)、B(4,6)を通るので、

  a+b=2 、 4a+b=6    これらを解いて、 a=4/3 、 b=2/3 となるので、

求める直線の方程式は、 y=(4/3)x+(2/3) となる。


 もっとも、この問題は、傾きを最初に計算した方が、本当は易しい。

 2点A(1,2)、B(4,6)を結ぶ線分の傾きは、 (6−2)/(4−1)=4/3

よって、求める直線の方程式は、 y=(4/3)x+b とおける。

点A(1,2)を通ることから、 2=(4/3)+b より、 b=2/3

ゆえに、 求める直線の方程式は、 y=(4/3)x+(2/3) となる。


 このような解法に対して、私自身の方策としてはベクトル方程式の活用を是非推奨したい。

 2点A(1,2)、B(4,6)を通る直線のベクトル方程式は、実数を t として、

        (x,y)−(1,2)=t{(4,6)−(1,2)}

と書ける。  よって、  x−1=3t 、 y−2=4t  となる。

 これより、 t=(x−1)/3 、 t=(y−2)/4 なので、

 求める直線の方程式は、  (x−1)/3=(y−2)/4  となる。

(コメント) このベクトルを用いた解法は、連立方程式の回避になっていないのではと、い
      ろいろ意見を醸し出すかもしれない。


 当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんから別解を頂きました。
                                      (平成23年9月12日付け)
公式に数値を当てはめてみました。

 2点(x1,y1)、(x2,y2) を通る直線の方程式は、行列式

    

で表される。2点(1,2)、(4,6)を代入して、

    

より、 -4x + 3y - 2 = 0


例3 ・・・ 3点を通る放物線の決定

 現在の学習指導要領では、3元1次連立方程式は、数学 I の「2次関数」で学ぶ。しかし、
そこで学ぶものは、一般の3元1次連立方程式と言えるようなものではない。2次関数の一
般形の特殊性から、どうしても定数項が浮いてしまって、結局は、2元1次の連立方程式の
域を出ていないように感じる。

 3点A(1,−3)、B(−2,0)、C(3,15)を通る放物線の方程式を求める問題は、

通常、次のように解かれている。

 求める放物線の方程式を、 y=ax2+bx+c とおくと、3点A、B、Cを通ることから、

 a+b+c=−3 ・・・ (1)、 4a−2b+c=0 ・・・ (2)、 9a+3b+c=15 ・・・(3)

(2)−(1) より、 3a−3b=3  すなわち、 a−b=1 ・・・ (4)

(3)−(2) より、 5a+5b=15  すなわち、 a+b=3 ・・・ (5)

 よって、 (4)+(5) より、 2a=4 すなわち、 a=2 、 b=1 、 c=−6

 以上から、求める放物線の方程式は、 y=2x2+x−6 となる。

(コメント) 連立方程式が苦手な生徒は、まず、方程式の多さに圧倒され、どうしてよいか
      分からなくなるようだ。その意味で、定数項を引き算で消して中学校で学んだ2
      元1次の連立方程式の形に誘導する現行の教え方は一見理にかなっているよ
      うに見える。しかし、2次関数を離れた単元で、一般の3元1次連立方程式が現
      れた場合によく見受けられることだが、加減法をよく理解しないまま、式同士を
      闇雲に引き算して収拾がつかなくなってしまうことが度々ある。これも、3元1次
      連立方程式を特殊な場合のみに限定して教えている一種の功罪といえると思う。

 このような問題に対して、次のようなエレガントな解法が知られている。

 2点A(1,−3)、B(−2,0)を通る直線の方程式は、 y=−x−2 なので、

求める放物線の方程式は、 y=a(x−1)(x+2)−x−2 とおける。

この放物線が、点C(3,15)を通るので、 10a−5=15 より、 a=2

 したがって、求める放物線の方程式は、 y=2(x−1)(x+2)−x−2=2x2+x−6

(コメント) この解法だと、暗算でも求められるような予感...。


  (補足) 平成18年12月7日付けで、「magata」様より、「具体的に詳しい解法を教え
      ていただけないか」というメールを頂いた。ただ、メールの送信日が、平成18年
      1月23日で、ちょっと怪しさを感じたので、メールでの返信はせず、HP上で回答
      することにした。

    上記のエレガントな解法のポイントは、x 軸と2点(1,0)、(−2,0)で交わる放物
   線の方程式が、
              y=a(x−1)(x+2)

   と書けることだろう。あとは、この放物線を平行移動して、2点A(1,−3)、B(−2,0)
   を通るようにすればよい。

    その部分が、 y=a(x−1)(x+2) に −x−2 を加えたところである。

   (コメント) 一つの幾何的現象を代数的に数式化できるところがおもしろいですね!


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例3に関連する話題を考察された。
                                      (平成23年9月13日付け)

 3次関数の場合を考えてみよう。

 f(-1)=-12 、f(1)=-2 、f(2)=3 、f(3)=16 を満たす3次関数を求めよ。

 2次関数の場合を一般の形で書くと、

 1、x2、x3 を相異なる数とする。f(x1)=y1 、f(x2)=y2 、f(x3)=y3 を満たす2次以
下の関数 f(x) を求めよ。


 上記は、次のように解いたことになります。

 g(x1)=y1 、g(x2)=y2 を満たす2次以下の関数を1つ求める。2次関数でもいいが、普通

は、1次関数で求める。即ち、2点を通る直線である。

 h(x1)=0 、h(x2)=0 を満たす2次関数を1つ求める。h(x)=(x-x1)(x-x2) でいい。

そこで、 f(x)=g(x)+k・h(x) とおく。これは、f(x1)=y1 、f(x2)=y2 を満たす2次以下の関数

である。しかも、f(x1)=y1 、f(x2)=y2 を満たす2次以下の関数はすべてこの形で得られる。

(f(x)-g(x)を考えればすぐわかる)

 あとは、f(x3)=y3 を満たすように、k を決めればよい。(kは一意的に存在する。)

 3次関数の場合を、2次関数の場合と全く同じように解くなら次のようになります。

 まず、3次関数の場合を一般の形で書くと、

 1、x2、x3、x4 を相異なる数とする。f(x1)=y1 、f(x2)=y2 、f(x3)=y3 、f(x4)=y4
を満たす3次以下の関数 f(x) を求めよ。


 g(x1)=y1 、g(x2)=y2 、g(x3)=y3 を満たす3次以下の関数を1つ求める。普通は、2次関

数で求めるでしょうが、これは2次関数の場合を解くことになります。

(だから、それなりに一人前の問題です)

 h(x1)=0 、h(x2)=0 、h(x3)=0 を満たす3次関数を1つ求める。h(x)=(x-x1)(x-x2)(x-x3)

でいい。そこで、 f(x)=g(x)+k・h(x) とおく。以下同様である。


 この解法で、g(x) が求まったあとは問題ないですが、g(x) を求めるのが面倒です。だから、
2次関数のときの方法を忠実にまねるより中途半端にまねたほうがいいようです。

 g(x1)=y1 、g(x2)=y2 を満たす2次以下の関数を1つ求める。もちろん1次関数でよい。

h(x1)=0 、h(x2)=0 を満たす2次関数を1つ求める。h(x)=(x-x1)(x-x2) でいい。

(ここまで、2次関数の場合と全く同じです。従って、この方が2次関数のときの方法の忠実
な真似だとも言えます。ただし本質的な真似ではなく表面的な真似ですが。)

 f(x)=g(x)+k・h(x) とおいたのでは2次関数にしかならないので、定数 k の代わりに、1次

関数をとって、 f(x)=g(x)+(ax+b)h(x) とおく。

 これが、f(x3)=y3 、f(x4)=y4 を満たすように、a、b を定める。

 理論的には前者の方がいいでしょうが、実際に解くなら、後者の方がいいと思います。た
だし、前者は連立方程式の回避になりますが、後者はなりません。後者で解いておきます。

 多少表現は変えます。

 g(-1)=-12 、g(1)=-2 を満たす1次関数を求めると、 g(x)=5x-7

P(x)=f(x)-g(x) は、P(-1)=0 、P(1)=0 を満たす3次関数であるから

 P(x)=(ax+b)(x+1)(x-1) とかける。 すなわち、 f(x)=(ax+b)(x+1)(x-1)+5x-7

ここで、 f(2)=3 、f(3)=16 より、 (2a+b)・3+3=3 、(3a+b)・8+8=16 なので、

  2a+b=0 、3a+b=1

これを解いて、 a=1 、b=-2 より、 f(x)=(x-2)(x2-1)+5x-7=x3-2x2+4x-5

 一般に、連立方程式の回避にはあまりこだわらない方がいいようです。


(コメント) f(-1)=-12 、f(1)=-2 、f(2)=3 、f(3)=16 を満たす3次関数を求めよ。

とのFNさんの問題設定ですが、2次関数であれ、3次関数であれ、ラグランジュの補間公式
を用いれば、関数は一気に求められます。「ちょっと、銀行に行ってから〜」と思って、午後か
ら続きをやろうと考えていたら、攻略法さんに「ニュートンの多項式補間公式」で先を越され
てしまいました!(→ 参考:「関数の補間」)


 攻略法さんが例3について考察されました。(平成23年9月13日付け)

 3点A(1,−3)、B(−2,0)、C(3,15)を通る放物線の方程式を求めよ。

    

 より、 -60x2 - 30x + 30y + 180 = 0 なので、 2x2 + x - y - 6 = 0

 f(-1)=-12 、f(1)=-2 、f(2)=3 、f(3)=16 を満たす3次関数を求めよ。

    
 
を展開すれば求まると思います。

(コメント) 攻略法さんは、上記の行列式の計算を「厳しいですね。」と仰っていますが、実
      際にやってみると、そんなでもないです...f(^_^;)

 行列式の基本公式を用いて、 4(x - 1) - (2(x2 - 1) + y + 2 - (x3 - 1)) = 0

すなわち、 y=x3-2x2+4x-5 となる。


 攻略法さんは、上記の行列式の計算を回避するために、ニュートンの多項式補間公式を
使って解かれました。この考え方は、FNさんの解法の基本でもある。

題意より、 y0=f(x0)=f(-1)=-12  y1=f(x1)=f(1)=-2  y2=f(x2)=f(2)=3  y3=f(x3)=f(3)=16

これより、 f0(x)=c0=f(-1)=-12

       f1(x)=f0(x)+c1(x-x0)=(-12)+c1(x+1)

        (-12)+c1(x1+1)=y1 より、c1=5 なので、 f1(x)=-12+5(x+1)=5x-7

       f2(x)=f1(x)+c2(x-x0)(x-x1)=(5x-7) + c2(x+1)(x-1)

        (5x2-7) + c2(x2+1)(x2-1)=y2 より、c2=0 なので、 f2(x)=5x-7

       f3(x)=f2(x)+c3(x-x0)(x-x1)(x-x2)=(5x-7) + c3(x+1)(x-1)(x-2)

        (5x3-7) + c3(x3+1)(x3-1)(x3-2)=y3 より、c3=1 なので、

       f3(x)=x3-2x2+4x-5 ←求める3次関数

 ※数値計算としては、次のような表をつくって計算します。

 -1 -12 ← c0
     
(-2-(-12))/(1-(-1))=5 ← c1
  1 -2      
(5-5)/(2-(-1))=0 ← c2
     
(3-(-2))/(2-1)=5   (4-0)/(3-(-1))=1 ← c3
  2 3      
(13-5)/(3-1)=4
     
(16-3)/(3-2)=13
  3 16


 上記の計算を補足すると、

  f(x)=c0+c1(x-x0)+c2(x-x0)(x-x1)+c3(x-x0)(x-x1)(x-x2)+・・・ において、

   c0=c0[x0]=f(x0)=-12

   c1=c1[x0,x1]=(c0[x1]-c0[x0])/(x1-x0)={f(x1)-f(x0)}/(x1-x0) なので、

     c1=(-2+12)/(1-(-1))=5

   c2=c2[x0,x1,x2]=(c1[x1,x2]-c1[x0,x1])/(x2-x0) において、

     c1[x1,x2]=(3-(-2))/(2-1)=5  c1[x0,x1])=5

    より、 c2=(5-5)/(2-(-1))=0

   c3=c3[x0,x1,x2,x3]=(c2[x1,x2,x3]-c2[x0,x1,x2])/(x3-x0) において、

     c2[x1,x2,x3]=(c1[x2,x3]-c1[x1,x2])/(x3-x1)

              ={(16-3)/(3-2)-(3-(-2))/(2-1)}/(3-1)=4

     c2[x0,x1,x2]=0

    より、 c3=(4-0)/(3-(-1))=1

 以上から、 f(x)=-12+5(x+1)+(x+1)(x-1)(x-2)=x3-2x2+4x-5 となる。


 FNさんからのコメントです。(平成23年9月13日付け)

 攻略法さんがされていることは、連立方程式の回避をさらに進めて、方程式の回避ですね。
方程式を解くことすらやめていきなり答えを出そうということのようです。確かに問題によって
は、公式に代入して直接答えを出すのが適切です。しかし、問題が複雑になれば、当然に複
雑になります。行列式とかを使って一応書けたとして、それを具体的に書き下すとなると、か
なりの計算です。

 ニュートンの多項式補間公式というのは役に立ちそうですね。私が忠実な真似として書いた
のが、f2(x)を求めにいくやり方で、中途半端な真似として書いたのが、f1(x)を求めにいくやり
かたのようです。問題を適当に書いたので、f1(x)=f2(x)となってしまいました。

 ラグランジュの補間公式は、一発で答えをとりあえず書けますが、実際に手計算をやる気
力のある人はあまりいないのではないかと思います。少なくとも、私はやる気力はありませ
ん。ニュートンの多項式補間公式ならできそうです。これは方程式は避けてません。やはり
ある程度以上の問題で方程式を完全に避けると、計算が大変なことになるようです。


 FNさんからの続報です。(平成23年9月24日付け)

 f(-1)=-12 、f(1)=-2 、f(2)=3 、f(3)=16 を満たす3次関数を求めよ。

 これを、ラグランジュの補間公式でやってみました。

(解) (x-1)(x-2)(x-3)/(-24)・(-12)+(x-2)(x-3)(x+1)/4・(-2)
                          +(x-3)(x+1)(x-1)/(-3)・3+(x+1)(x-1)(x-2)/8・16

   =(x3-6x2+11x-6)/2-(x3-4x2+x+6)/2-(x3-3x2-x+3)+2(x3-2x2-x+2)

   =x3-2x2+4x-5  (終)

 私が適当に作った問題ですが、不思議に簡単な係数になって、以外と簡単にできました。
上のf(x)に1だけ足した次の問題だったら、かなり面倒だったでしょう。

 f(-1)=-11 、f(1)=-1 、f(2)=4 、f(3)=17 を満たす3次関数を求めよ。

 これなら、2行目の式は次のようになります。

  =(11/24)(x3-6x2+11x-6)-(1/4)(x3-4x2+x+6)-(3/4)(x3-3x2-x+3)+(17/8)(x3-2x2-x+2)

 あまりやりたくない式ですが、できないことはありません。ラグランジュの補間公式を具体
的な問題で使うことは一生に一度で十分です。以後使うことはないでしょう。もちろんラグ
ランジュの補間公式の理論的面白さを否定するものでは全くありません。

 未知数 0 個とか、f(x)=ax3+bx2+cx+d とおく未知数4個とかの両極端はあまりよくありま
せん。やはり中庸が妥当でしょう。

(コメント) 「過ぎたるは及ばざるが如し」ですかね...。


例4 ・・・ 多項式の整除問題(1)

 現行の学習指導要領では「数学II 」で学ぶ多項式の整除問題であるが、以前に比べて
その内容は相当に軽減されている。これからの学習の計算の基礎になる部分なのに、こ
んな軽い扱いでいいのかな?といつも疑問に思う。計算力をしっかり身につけるチャンス
なのに、教科書等の問題の絶対量は少なく、プリント等でいくつかを補充して、次の単元
に行かなければならないのが気にかかる。学習指導要領全体が「学習者の負担の軽減」
という流れになっており、複雑な計算を忌避する傾向になっていることは否めない。

 「整式」という言葉は最近使われなくなりつつある。「多項式」という言葉で統一すること
にしよう。

 多項式 P(x) を、x+1 で割った余りは −3、(x−1)2 で割った余りは 2x+3
であるという。このとき、多項式 P(x) を、(x+1)(x−1)2 で割った余りを求めよ。


 教科書的には通常、次のように解かれる。

 多項式 P(x) を、(x+1)(x−1)2 で割った余りは高々2次式なので、ax2+bx+c と

おかれる。即ち、商を Q(x) とおくと、

    P(x)=(x+1)(x−1)2Q(x)+ax2+bx+c

問題の条件から、   a−b+c=−3 、 2a+b=2 、 −a+c=3

これらを解いて、 a=−1 、b=4 、c=2 となるので、求める余りは、−x2+4x+2


 このような解法に対して、次のような鮮やかな別解が知られている。

 多項式 P(x) を、(x−1)2 で割った商をQ(x) とおくと、問題の条件より、

    P(x)=(x−1)2Q(x)+2x+3

と書ける。 商Q(x) を、x+1 で割った商をQ’(x)、余りを k とおくと、

    Q(x)=(x+1)Q’(x)+k

と書ける。 これを上式に代入して、

    P(x)=(x+1)(x−1)2Q’(x)+k(x−1)2+2x+3

剰余の定理から、 P(−1)=−3 であるので、 4k+1=−3 より、k=−1

 よって、求める余りは、 −(x−1)2+2x+3=−x2+4x+2

(コメント) 私自身、この別解を高校1年のときに知って非常に感動したことを今でも覚え
      ている。ただ、「商を割る」という発想が馴染めず苦労する人がいるかもしれない。

 「商を割る」という発想は、微分法における有名な公式 :

  多項式 P(x) を (x−α)2 で割った余りは、 P’(α)(x−α)+P(α)

 特に、多項式 P(x) が (x−α)2 で割りきれるための必要十分条件は、

        P’(α)=0 、 P(α)=0


に相通じるものがある。

 すなわち、 P(x)=(x+1)(x−1)2Q(x)+ax2+bx+c を (x−1)2 で割った余りは、

ax2+bx+c を (x−1)2 で割った余りに等しい。

 よって、  ax2+bx+c−(2x+3)=ax2+(b−2)x+c−3 が (x−1)2 で割りきれ

るので、   a+b+c−5=0 、 2a+b−2=0

 これより、 b=2−2a 、 c=a+3 なので、

     ax2+bx+c=ax2+(2−2a)x+a+3=a(x−1)2+2x+3

となる。

(コメント) このような面倒な計算と対比すれば、「商を割る」という発想がいかに素晴らし
      いものであるかが実感できるだろう。


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例4に関連する話題を考察された。
                                      (平成23年9月18日付け)

 多項式 P(x) を、x+1 で割った余りは −3、(x−1)2 で割った余りは 2x+3
であるという。このとき、多項式 P(x) を、(x+1)(x−1)2 で割った余りを求めよ。

                                              ・・・・・・・・・(A)
 整数における同じタイプの問題と対比させながら考えてみよう。

 整数Pを5で割ると余りは2、7で割ると余りは3であるという。このとき、整数Pを35
で割った余りを求めよ。
・・・・・・・・・(B)

 まず、(B)を考える。「整数Pを5で割ると余りは2」を式で書くと、 P=5Q+2

求めたいのは、Pを35で割った余りだから、 P=35X+Y の形の式が欲しい。

 そこで、Qを7で割った余りをRとして、 Q=7S+R とおく。これを代入して、

  P=5(7S+R)+2=35S+5R+2

 ここで、Pを7で割ると、余りは3だから、5R+2を7で割ると余りは3、即ち、5Rを7で割

ると余りは1となる。Rは、0、1、2、3、4、5、6 のどれかだから、順に調べると、R=3

 よって、求める余りは、 5R+2=17 である。

 「5で割ると余りは2」と「7で割ると余りは3」は、ほぼ対等であるが、(前者が1/5に絞るの
に対し後者は1/7に絞る。一般にきつい条件を使って式を書く方がいいので、後者から出発
する方が少し良かった)

 「x+1で割ると余りは、-3」と「(x-1)2で割ると余りは、2x+3」は対等ではない。当然、後者が
重要でこちらを使って式を書く。

 P(x)=(x-1)2Q(x)+2x+3 において、(x+1)(x-1)2 で割った余りを求めるから、Q(x)を x+1

で割った余りが必要になる。そこで、 Q(x)=(x+1)S(x)+R とおく。

 これを代入して、 P(x)=(x-1)2(x+1)S(x)+(x-1)2R+2x+3

 「x+1で割ると余りは、-3」は、P(-1)=-3 だから、上の式に、x=-1 を代入して...。

(以下、例4の解答と同じです。)

 数値代入という手があるから、こちらの方が易しいような気もするが、整数の方は有限個
を調べればいいので、この方が楽なのかもしれない。似たようなものなのでしょう。

 整数環に比べて、多項式環は取り扱い安い印象がある。余りを ax2+bx+c と置くなどと
いう安易な手があるから、下手なやりかたでもできてしまう。これが幸せなことか不幸せなこ
とかはわかりません。

 類題として次の問題を考えます。

 整式 P(x) を (x-1)(x+2) で割った余りは -x-2、P(x) を x-3 で割った余りは 15
である。このとき、P(x) を (x-1)(x+2)(x-3) で割った余りを求めよ。


 もちろん全く同じやり方でできます。では、次の問題を考えます。

 整式 P(x) を x-1 で割った余りは -3、x+2 で割った余りは 0、x-3 で割った余りは
15 である。このとき、P(x) を (x-1)(x+2)(x-3) で割った余りを求めよ。


 これが、上の問題とほぼ同じであることは容易に確認できるでしょう。(整式P(x)を x-1で割
った余りが-3、x+2 で割った余りが 0 のとき、P(x)を (x-1)(x+2) で割った余りを求めよ、とい
う問題が間にある)

 これが、次の問題とほぼ同じであることもすぐにわかるでしょう。

 f(1)=-3、f(-2)=0、f(3)=15 を満たす2次以下の整式 f(x) を求めよ。

 そして、これは例3と同じです。だから、例3と例4は親戚です。遠い親戚と考えるか、近い
親戚と考えるか、それが問題です。


 当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんからのコメントです。
                                      (平成23年9月22日付け)

問題 多項式 f(x) を、x−α で割った余りは f(α)、x−β で割った余りは f(β) と
   するとき、多項式 f(x) を、(x−α)(x−β) で割った余り ax+b を求めよ。


(解) f(x)を x-α で割った余りは、f(α) より、f(x)=(x-α)Q(x)+f(α) とおける。

  Q(x) を x-β で割ったとき、商を S(x)、余りを R とすると、Q(x)=(x-β)S(x)+R とおける。

よって、f(x)=(x-α){(x-β)S(x)+R}+f(α)=(x-α)(x-β)S(x)+(x-α)R+f(α)

 f(x) を x-β で割った余りは、f(β) より、 f(β)=(β-α)R+f(α)

 よって、 R=(f(β)-f(α))/(β-α) なので、余りは、

     {(f(β)-f(α))/(β-α)}(x-α)+f(α)

 となる。  (終)

(参考) これは、2点(α,f(α))、(β,f(β)) を通る直線の方程式に対応する。

(余談) 連立方程式なら、f(x)=(x-α)(x-β)Q(x)+ax+b とおいて、

 f(x) を x-α で割った余りは、f(α) より、 f(α)=aα+b

 f(x) を x-β で割った余りは、f(β) より、 f(β)=aβ+b

から、a、bを求めればよい。


 ところで、求めた余りの式(直線の方程式)は、

 {(x-α)/(β-α)}f(β) + {(x-β)/(α-β)}f(α) ←式1

と変形できる。同様にして、

問題 多項式 f(x) を、x−α で割った余りは f(α)、x−β で割った余りは f(β)、
   x−γ で割った余りは f(γ) とするとき、多項式 f(x) を、
   (x−α)(x−β)(x−γ) で割った余り ax2+bx+c を求めよ。


は、3点(α,f(α))、(β,f(β))、(γ,f(γ)) を通る放物線の方程式に対応する。

具体的に、a、b、c を求めてみる。

(解) f(x) を x-α で割った余りは、f(α)、f(x) を x-β で割った余りは、f(β) なので、

  f(x) を (x-α)(x-β) で割った余りは、上記の問題より、

    f(x)=(x-α)(x-β)Q(x)+{(f(β)-f(α))/(β-α)}(x-α)+f(α)

  Q(x) を x-γ で割ったとき、商を S(x)、余りを R とすると、Q(x)=(x-γ)S(x)+Rとおける。

 よって、 f(x)=(x-α)(x-β){(x-γ)S(x)+R}+{(f(β)-f(α))/(β-α)}(x-α)+f(α) より、

   f(x)=(x-α)(x-β)(x-γ)S(x)+(x-α)(x-β)R+{(f(β)-f(α))/(β-α)}(x-α)+f(α)

 f(x) を x-γ で割った余りは、f(γ) より、

   f(γ)=(γ-α)(γ-β)R+{(f(β)-f(α))/(β-α)}(γ-α)+f(α)

 よって、 R=f(α)/{(α-β)(α-γ)} +f(β)/{(β-α)(β-γ)} +f(γ)/{(γ-α)(γ-β)}

  これより、放物線の方程式が求まる。ところで、求めた余りの式(放物線の方程式)は、

  { (x-γ)(x-α)/{(β-γ)(β-α)} }f(β)+{ (x-β)(x-γ)/{(α-β)(α-γ)} }f(α)
                          +{ (x-α)(x-β)/{(γ-α)(γ-β)} }f(γ) ←式2

と変形できる。式1、式2は、ラグランジュの補間公式である。


 FNさんからのコメントです。(平成23年9月23日付け)

 「 {(f(β)-f(α))/(β-α)}(x-α)+f(α) は、2点(α,f(α))、(β,f(β)) を通る直線の方程
 式に対応する。」

について、例4のタイプで1番簡単な上記の問題と例2は同じになりますね。

(1) 2点 (1,3)、(2,5) を通る直線の方程式を求めよ。

(2) 整式 P(x) を x-1 で割ると余りは 3、x-2 で割ると余りは 5 である。

 整式 P(x) を (x-1)(x-2) で割ったときの余りを求めよ。

 (1)を連立方程式で解くのは中学生で、高校生以上なら邪道です。(2)は余りを ax+b とお
いて、連立方程式を解くのが普通です。だから、親戚ではあるけど、それほど近い親戚でも
ないようです。(2)を(1)に還元させることにより、方程式なしで解いてみます。

(解) まず、2点 (1,3)、(2,5) を通る直線の方程式を求める。

 傾きが2で、 (1,3)を通るから、 y-3=2(x-1) より、 y=2x+1

 だから、 f(x)=2x+1 とおくと、 f(1)=3 、f(2)=5

 また、剰余定理より、 P(1)=3 、P(2)=5  従って、 g(x)=P(x)-f(x) とおくと

  g(1)=P(1)-f(1)=3-3=0 、g(2)=P(2)-f(2)=5-5=0

 因数定理より、g(x)は、x-1、x-2 で割り切れるから、(x-1)(x-2)で割り切れる。

 g(x)=(x-1)(x-2)Q(x)とかける。P(x)=g(x)+f(x)であるから、P(x)=(x-1)(x-2)Q(x)+2x+1

 よって、求める余りは、2x+1  (終)

 普通に解くよりはるかに長くなっています。従って、実用性はありません。f(x)が求まったあ
との5行が、(1)と(2)の距離をあらわします。これはちょっと丁寧に書きすぎで、5行は3行ぐら
いになるでしょう。今は1次式ですが、次数が上がっても、(1)と(2)の距離は変わりません。
次数があがれば、近い親戚と言えそうです。


例5 ・・・ 多項式の整除問題(2)

 例1から例4まで、連立方程式からの回避策をいろいろ見てきたが、いつもそのような考
え方で上手くいくわけではないことを指摘しておかなければならない。

 このことを理解するには、次の問題を考えてみればよいだろう。

 関数 y=x4−3x2+2x のグラフ上の異なる2点で接する接線の方程式を求めよ。

 この問題に対して、「連立方程式の回避」を念頭に置くと次のような解になる。

 接点( t ,t4−3t2+2t )における接線の方程式は、

  y=(4t3−6t+2)(x−t)+t4−3t2+2t=(4t3−6t+2)x−3t4+3t2

 よって、 x4−3x2+2x=(4t3−6t+2)x−3t4+3t2  すなわち、

    x4−3x2−(4t3−6t)x+3t4−3t2=0

 この方程式は、x=t を重解として持つので、

    (x−t)2(x2+2tx+3t2−3)=0

 問題の条件から、 2次方程式 x2+2tx+3t2−3=0 は重解を持つ。

 よって、判別式をDとおくと、 D/4=t2−(3t2−3)=−2t2+3=0 より、t2=3/2

これを接線の式に代入して、 y=2x−9/4 となる。


 このような問題に対して上記のように解くよりも、次のように解く方が断然楽だろう!

 求める接線の方程式を、 y=mx+n とおくと、

    x4−3x2+2x=mx+n  すなわち、 x4−3x2+(2−m)x−n=0

は重解を2つ持つ。 それを、α、β とおくと、

   x4−3x2+(2−m)x−n=(x−α)2(x−β)2

と書ける。

 右辺=(x2−(α+β)x+αβ)2

    =x4−2(α+β)x3+(α+β+2αβ)x2−2αβ(α+β)x+α2β2

なので、両辺の係数を比較して、

   α+β=0 、 α+β+2αβ=−3 、 −2αβ(α+β)=2−m 、 α2β2=−n

 よって、 αβ=−3/2 より、 m=2 、 n=−9/4  より、

求める接線の方程式は、 y=2x−9/4 となる。

(コメント) 「どちらかの解法を選べ!」と言われたら、迷うことなく後者でしょう...


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例5について考察された。
                                      (平成23年9月11日付け)
 例5の2番目の解で、

     x4−3x2+(2−m)x−n=(x−α)2(x−β)2

としたあとについてです。4次方程式の解と係数の関係は普通は扱わないですが、解の和

と解の積についてはすぐわかるので、2α+2β=0 即ち、β=−α がでます。

 「解と係数の関係より」とも書きにくいので、「x3 の係数を比較して」と書くでしょうが...。

これで、 x4−3x2+(2−m)x−n=(x−α)2(x−β)2=(x2−α22=x4−2α22+α4

となり、 3=2α2 、2−m=0 、−n=α4

 これは、事実上、連立方程式ではなくなっています。これで、一応連立方程式の回避はで
きたと言ってもいいでしょう。

 4次関数の複接線の問題では、計算量に対する配慮から、x3 の項をなしにしてくれる場合
が多いように思います。そのときは、β=−α を出してから展開するほうがいいと思います。

(→ 関連話題


(追記) 令和2年8月3日付け

 小金澤 貴弘 著 「複接線定理」 数研通信 No.97(数研出版)において、次の定理が
紹介されている。

複接線定理  複接線を持つ4次関数 y=F(x) において、F'''(x)=0 となる値を
         x=γとすると、複接線の傾きは、F’(γ)である。

(証明) 複接線の方程式を y=mx+n とすると、題意より、

    F(x)=k(x−α)2(x−β)2+mx+n (k≠0) とおける。

このとき、 F’(x)=k{2(x−α)(x−β)2+2(x−α)2(x−β)}+m
           =2k(x−α)(x−β)(2x−α−β)+m

 F”(x)=2k{(x−β)(2x−α−β)+(x−α)(2x−α−β)+2(x−α)(x−β)}

 F'''(x)=2k{(2x−α−β)+2(x−β)+(2x−α−β)+2(x−α)+2(x−α)+2(x−β)}
     =12k(2x−α−β)

 よって、 F'''(x)=0 から、 γ=(α+β)/2 なので、 m=F’(γ)  (証終)


 この定理を、

 関数 y=x4−3x2+2x のグラフ上の異なる2点で接する接線の方程式を求めよ。

の複接線の問題に適用してみよう。

(解) y’=4x3−6x+2 、y”=12x2−6 、y'''=24x=0 から、 x=0

 よって、複接線の方程式 y=mx+n において、 m=2 であることが分かる。

 このとき、 x4−3x2+2x=2x+n すなわち、x4−3x2−n=0 は、異なる2つの2重解

を持ち、完全平方式となる。 x2=t とおくと、 t2−3t−n=0 は重解を持つ。

 よって、 判別式 D=9+4n=0 から、 n=−9/4

 以上から、複接線の方程式は、 y=2x−9/4 となる。  (終)


例6 ・・・ 三角形の外接円

 三角形の外接円を求める問題は、同一直線上にない3点から等距離にある点の計算な
ど、その応用は幅広い。

 平面上の3点A(1,0)、B(3,2)、C(−1,6)において、△ABCの外接円の方程
式を求めよ。また、△ABCの外心の座標を求めよ。


 教科書の場面場面でその解法は異なると思うが、だいたい次の2種類にまとめられるだ
ろう。

円の方程式の利用)  求める外接円の方程式を、 x2+y2+ax+by+c=0 とおく。

  3点A、B、C を通ることから、

       1+a+c=0 、 13+3a+2b+c=0 、 37−a+6b+c=0

 これらより、まず c を消去して、 6+a+b=0 、 18−a+3b=0

 よって、 a=0 、 b=−6 、 c=−1 となり、外接円の方程式は、

       x2+y2−6y−1=0

ここで、 x2+(y−3)2=10  より、 外心の座標は、(0,3) である。

距離の公式の利用)  求める外心の座標を、 (a,b) とすると、3点A、B、C から等

 距離にあるので、

       (a−1)2+(b−0)2=(a−3)2+(b−2)2=(a+1)2+(b−6)2

  よって、2式同士を組み合わせて、 a+b=3 、 a−b=−3

 これを解いて、 a=0 、 b=3 なので、外心の座標は、(0,3) となる。

 このとき、外接円の半径の平方は、 (0−1)2+(3−0)2=10

  よって、求める外接円の方程式は、 x2+y2−6y−1=0 である。


 上記では、3元、2元の違いはあるものの、結局はその解法を連立方程式の解法に帰着
させている。

 これに対して、次のような解法は如何だろうか?

 線分ABの垂直2等分線は、 y=−x+3 で、線分BCの垂直2等分線は、 y=x+3

 この2直線の交点が外心であるので、その座標は、(0,3) となる。

 このとき、外接円の半径の平方は、 (0−1)2+(3−0)2=10

  よって、求める外接円の方程式は、 x2+y2−6y−1=0 である。

(コメント) この別解も結局は連立方程式であるが、計算の負担は軽くなっていると思う。


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例6について考察された。
                                      (平成23年9月10日付け)
 例6において、

   解1(円の方程式の利用)
   解2(距離の公式の利用)
   解3(垂直2等分線の利用)

の3通りの解が示してあります。解1が円の方程式を x2 + y2 + ax + by + c = 0 (A) と置
くのに対して、解2、解3は、(x-a)2+(y-b)2=r2 (B) と置くのに相当します。解2でも、r は置
いてないし、解3は、a、bも置いてませんが...。

 (A)と(B)とどちらがいいかは状況によるので一概には言えませんが、一般に計算だけでや
るなら(A)、図形的な性質も使うなら(B)かなと思います。この問題なら(A)でいいように思いま
す。

 解1、2、3 ともに連立方程式の回避にはなってません。例3と似たような考え方で連立方
程式の回避ができます。そのためには、2点を通る円の方程式が必要です。

 そのために、まず、2点を通る円を1つ求めます。2点を直径の両端とする円が一番求め
やすいでしょう。

 ABを直径とする円は、中心がABの中点(2,1)で、半径は だから、(x-2)2+(y-1)2=2

即ち、x2+y2-4x-2y+3=0  次に、直線ABの方程式を求めます。y=x-1 即ち、x-y-1=0
(これは、2点A、Bを通る半径∞の円と考えることもできます。とすれば、2つの特殊解を求
めたと言えます)

 x2+y2-4x-2y+3+k(x-y-1)=0 が、2点A、Bを通る円であることはすぐにわかります。

また、2点A、Bを通る円がすべてこの形で得られることも容易にわかります。あとは、これ
が、Cを通ることから、k を決めれば終わりです。ただし、k がきれいな数にならなかったら
残務処理がやや面倒ですが...。

 C(-1,6) を通ることより、1+36+4-12+3+k(-1-6-1)=0 なので、 32=8k よって、 k=4

このとき、 x2+y2-4x-2y+3+4x-4y-4=0 より、 x2+y2-6y-1=0 即ち、x2+(y-3)2=10

 これは、連立方程式の回避にはなっています。解1でいいと思いますが...。


(コメント) 確かに、解1、2、3 ともに連立方程式の回避にはなってませんね!問題の特
      殊性に胡座をかいていました。FNさんの解は見事に連立方程式の回避にはなっ
      ています。FNさんに感謝します。


 FNさんからの続報です。(平成23年9月12日付け)

 連立方程式の回避にはなりませんが、2点を通る円ではなく、1点を通る円を使う方法も
あります。この方がいいような気もします。

 曲線 ( x - 1 )( x - a ) + y( y - b ) = 0 は円であり、かつ、点Aを通る。

これがBを通ることより、 2( 3 - a ) + 2( 2 - b ) = 0 より、 6 - 2a + 4 - 2b = 0

 すなわち、 a + b = 5

Cを通ることより、 -2( -1 - a ) + 6( 6 - b ) = 0 より、 2 + 2a + 36 - 6b = 0

 すなわち、 a - 3b = -19

これを解いて、 a = -1 、b = 6 なので、 ( x - 1 )( x + 1 ) + y( y - 6 ) = 0

 すなわち、 x2 + y2 - 6y - 1 = 0

本当は、

  点Aを通る円がすべて ( x - 1 )( x - a ) + y( y - b ) = 0 の形で書ける

ことも示しておく方がいいでしょう。

 x2 + y2 + px + qy + r = 0 において、x2 + px を x - 1で割ったときの商を x - a とし、
2 + qy を y で割ったときの商を y - b とおいたということです。あとは定数の処理だけで
すが、点Aを通ることから定数は、0 になります。

 図形的には、Aを一方の端とする直径のもう一方の端を D(a,b) と置いたということです。
それで、APとDPが垂直、即ち、内積=0 を式に書いたものです。

この考え方で、上記に書いた2点を通る円を使う方法も少し変えることができます。

 平面上の3点A(1,0)、B(3,2)、C(−1,6)において、△ABCの外接円の方程
式を求めよ。また、△ABCの外心の座標を求めよ。


 曲線 (x-1)(x-3)+y(y-2)=0 は円であり、かつ、2点A、Bを通る。これはもちろん、ABを直
径とする円ですが、そのことは不要です。単に、2点A、Bを通る1つの円であることだけで
十分です。あとは、直線ABの方程式を求めて以下同様にします。

 これは連立方程式の回避になっています。


 当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんから別解を頂きました。
                                      (平成23年9月12日付け)
公式に数値を当てはめてみました。

3点を通る円の方程式は、行列式

   

で表される。3点A(1,0)、B(3,2)、C(−1,6)を代入して、

   

より、 x2 + y2 - 6y - 1 = 0


 当HPがいつもお世話になっているHN「よおすけ」さんから別解を頂きました。
                                     (平成24年12月13日付け)

 座標平面上の3点A(1,0)、B(3,2)、C(−1,6)は、複素数平面上ではそれぞれ、
A(1)、B(3+2i)、C(-1+6i) に対応する。異なる3点A(α)、B(β)、C(γ)から等距離にある点を
zとすると、

   α×conjgα(β-γ)+β×conjgβ(γ-α)+γ×conjgγ(α-β)
z=--------------------------------------------------------
      conjgα(β-γ)+conjgβ(γ-α)+conjgγ(α-β)

※ 上式は、|z-α|2=|z-β|2、|z-α|2=|z-γ|2 を連立して解き、conjgzを消去して、zについ
  ての式に整理すれば得られます。

 ここで、1、3+2i 、-1+6i の共役複素数はそれぞれ 1、3-2i、-1-6i だから、それぞれ z の式
に代入して計算すれば、3点A、B、Cから等距離の点は、z=3i

 これは、座標平面では、点(0,3)に対応する。また、点(1)と中心点(3i)との距離は√10より、
半径は√10

 まとめて、外接円の方程式は、x2+(y-3)2=10 で、3点A、B、Cから等距離の点(外心)は、
(0,3)である。


 よおすけさんから、例6の話題について、練習問題を頂きました。
                                      (平成24年3月28日付け)

 3点A(-3,3)、B(2,-2)、C(-3,-7)を通る円の方程式を求めよ。

 とりあえず、自分の略解です。例6に倣えば、

  円の方程式 x2+y2+ax+by+c=0 が、点A、B、Cをそれぞれ通ることから、

   9+9-3a+3b+c=0 より、 -3a+3b+c=-18

   4+4+2a-2b+c=0 より、 2a-2b+c=-8

   9+49-3a-7b+c=0 より、 -3a-7b+c=-58

 これらを解けば、a=6、b=4、c=-12 となり、求める式は、 x2+y2+6x+4y-12=0

となります。実をいうと、この3点は・・・おっと、これは見ておられる方の練習問題とします。


 らすかるさんからのコメントです。(平成24年3月28日付け)

 ACの中点Mは、(-3,-2)で、AM=BM=CM=5 だから、 (x+3)2+(y+2)2=52


 よおすけさんからのコメントです。(平成24年3月28日付け)

 らすかるさん、ありがとうございます。先程言いかけたのは、この3点で作られる三角形は、

 AB=BC、∠B=90°の直角二等辺三角形で、ACがそのまま円の直径になります。


(コメント) まさに、数学は「図が命!」の典型例ですね。図を描くことにより、連立方程式の
      回避が瞬時に解決します。


例7 ・・・ 2直線の交点

 図形問題におけるベクトルの有効性は確かであるが、やはり、その解法にもいくつかの
分かれ目が存在する。

 例えば、大学入試センター試験にも頻出の次のような問題について検討してみよう。

 △ABCの辺ABを2:1の比に内分する点をD、辺ACを3:2に内分する点をEとし、
線分CDとBEの交点をPとする。直線APと辺BCの交点をFとするとき、
   (1) AP : PF     (2)  BF : FC
をそれぞれ求めよ。

              

 教科書を始めとして、通常は次のように解かれる。これは、ベクトルの一次独立を利用
する解法である。

学習指導要領において「ベクトルの一次独立」は学習内容には含まれず、教科書等でも参考・発展の扱いに
 なっている。したがって、教科書本文で堂々と「一次独立」という言葉は用いられず、「2つのベクトルは平行で
 ないから」という物言いになっている。


 以下の解答において、ベクトルを太字で表すことにする。

 AB=3 、AC=5 とおく。 BP : PE = s : 1−s 、CP : PD = t : 1−t と

おくと、 AP=(1−s)AB+sAE=3(1−s)+3s

 同様にして、 AP=tAD+(1−t)AC=2t+5(1−t)

 ここで、 、 は、零ベクトルでなく平行でもないので、

     3(1−s)=2t 、 3s=5(1−t)

2式を辺々加えて、 3=5−3t  より、  t=2/3   よって、 s=5/9

以上から、 AP=(4/9)AB+(5/9)AE

          =(4/9)AB+(5/9)×(3/5)AC

          =(4/9)AB+(1/3)AC

          =(7/9){(4/7)AB+(3/7)AC)}=(7/9)AF
 よって、
      (1) AP : PF = 7 : 2     (2)  BF : FC = 3 : 4

 一次独立を用いた上記の解法では、2変数 s,t に関する連立方程式が関わっている。
これに対して、共線条件や直線のベクトル方程式を用いると、連立方程式が回避できる
ことが知られている。

   BP : PE = s : 1−s  とすると、

  AP=(1−s)AB+sAE=(1−s)×(3/2)AD+s×(3/5)AC

 3点 C、P、D は同一直線上にあるので、  (1−s)×(3/2)+s×(3/5)=1

 よって、 s=5/9 なので、

        AP=(4/9)AB+(5/9)AE

          =(4/9)AB+(5/9)×(3/5)AC

          =(4/9)AB+(1/3)AC

          =(7/9){(4/7)AB+(3/7)AC)}=(7/9)AF
 よって、
      (1) AP : PF = 7 : 2     (2)  BF : FC = 3 : 4

 何れの解法も後半部分は同じであるが、前半部分のような式変形もあり得ることは是非
注目したいところである。

(コメント) チェバの定理、メネラウスの定理を用いれば、上記の比の計算は、もちろん暗
      算で求められる。

 チェバの定理から、 (2/1)(BF/FC)(2/3)=1 より、 BF/FC=3/4 ・・・ (2)

 メネラウスの定理から、 (AP/PF)(4/7)(1/2)=1 より、 AP/PF=7/2 ・・・ (1)

 また、「ギブスの三角形」における重心の概念を利用すれば、次のように鮮やかに解くこ
とができる。

   左図において、 (D,6)=(A,2)+(B,4)

              (E,5)=(A,2)+(C,3)

   と△ABCの各頂点に質量を負荷すれば、

    (F,7)=(B,4)+(C,3) より、

    BF : FC = 3 : 4 ・・・ (2) となる。

   同様に、 (P,9)=(A,2)+(F,7) より、

    AP : PF = 7 : 2 ・・・ (1) となる。

 でも、こんな風に簡単に求められても感動は得られない。苦労して計算した後、答えを確
認して合っているときの達成感は数学を学ぶ者の醍醐味です。こんな思いは、他教科では
経験できないよね!


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例7について考察されました。
                                      (平成23年9月20日付け)

 1番目〜3番目のどれかで解くのが普通でしょう。昔は初等幾何は今より多少多かったよ
うに思います。しかしメネラウスの定理やチェバの定理は知りませんでした。だから、1番目
や2番目のやりかたをしないなら、補助線を引いて三角形の相似でやっていました。今時、
流行らないですが、補助線を引くやり方でやってみます。

 Eを通って、CDに平行な直線を引いて、ABとの交点をGとする。

三角形の相似から、 AG : GD = AE : EC = 3 : 2

これと、 AD : DB = 2 : 1 より、 AG : GD = 6 : 4 、AD: DB = 10 : 5

 よって、 BP : PE = BD : DG = 5 : 4

以下は、普通にします。

解1や解2での S=5/9 が出た段階です。

 a:b=3:5、b:c=7:8 から、a:c を求めるのがさっとできれば、このやり方もあり?

もちろん、Dを通ってBEに平行な直線を引いてもできます。そのときは、CP: PD が出ます。

 メネラウスやチェバを使う方が機械的で簡単ですが、私はいまだにメネラウスやチェバが
そんなの自明でしょというほどにはわかってないので、解けるけど、なんとなくすっきりしな
いものがあります。メネラウスもチェバも自分で証明したことがありません。これがいけない
のかもしれません。

 ところで、メネラウスは1世紀ごろの人で、チェバは17〜18世紀の人だそうです。似たよ
うな定理で、むしろチェバの方がメネラウスよりやさしいくらいですが、1500年以上もあとの
発表というのが不思議です。


例8 ・・・ 放物線上の2点を通る直線

 放物線上の2点を通る直線の方程式を求める問題は基本的であり大切な問題であると私
は思う。一般的な解法は、連立方程式の問題に帰着させる方法だろう。

 放物線 y=2x2−4x−1 と直線 y=mx+n との交点の x 座標が 1 と 2 である
とき、直線の方程式を求めよ。


(解) 直線 y=mx+n が 2点(1,−3)、(2,−1)を通るので、

      m+n=−3 、 2m+n=−1

   これを解いて、 m=2 、 n=−5 なので、

   求める直線の方程式は、  y=2x−5 (終)

 この解に対して次のような考え方があることを、京都大学教授であられた岩井齊良先生
に教わった。

(解) 2数 1 と 2 を解に持つ2次方程式は、 (x−1)(x−2)=0 なので、

         x2−3x+2=0 より、 x2=3x−2

   よって、 2x2=6x−4 より、 2x2−4x−1=6x−4−4x−1=2x−5

   従って、求める直線の方程式は、 y=2x−5 (終)

この考え方を用いると、

  放物線 y=x2 上の点(α,α2)における接線の方程式は、x=α が重解なので、

     (x−α)2=0 より、 x2−2αx+α2=0 

  よって、 x2=2αx−α2 から、 y=2αx−α2 と簡単に求められる。

 この方法を知ると、「判別式を利用する方法」や「微分を利用する方法」で今まで求めて
きたことが、とても遠回りをしていたように感じる。

 一般に、 放物線 y=ax2+bx+c 上の点(α,aα2+bα+c)における接線の方程式が、

        y=(2aα+b)x−aα2+c

となることも、微分を使うまでもなく、ほとんど自明だろう!

例 放物線 y=−x2+2x+3 上の点(2,3)における接線の方程式を求めよ。

(解) 求める接線の方程式は、 (x−2)2=0 より、 x2−4x+4=0 

  よって、 x2=4x−4 から、 −x2+2x+3 =−4x+4+2x+3=−2x+7

  なので、接線の方程式は、 y=−2x+7 (終)


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例8について考察された。
                                      (平成23年9月15日付け)
 例8について、2点を通る直線は簡単に求まるので、あまり意味はないように思いました
が、そうでもなく実際に役に立つようです。

 放物線 y=2x2−3x−1 と直線 y=mx+n との交点の x 座標が、

   1+と 1−

であるとき、直線の方程式を求めよ。


 (1+)+(1−)=2 、(1+)(1−)=−1 だから、2数を解とする2次方程

式は、 x2−2x−1=0 である。だから、交点の x 座標は、 x2=2x+1 を満たす。

もちろん、交点は、 y=2x2−3x−1 を満たすから、x2=2x+1 を代入して、

 y=4x+2−3x−1=x+1

これは、2つの交点で成り立つから、直線全体で成り立つ。 よって、 y=x+1


 x+1 は、2x2−3x−1 を x2−2x−1 で割ったときの余りです。2次関数のときは、上の
やり方で十分ですが、3次以上になれば、割ったときの余りと考えた方がいいでしょう。

 3次曲線 y=x3+x2−5x−7 が直線 L と3点A、B、Cで交わっている。A、Bの x

座標がそれぞれ 1+ 、1− であるとき、直線 L の方程式及び3点A、B、C

の座標を求めよ。


 2数を解とする2次方程式は、 x2−2x−1=0 である。x3+x2−5x−7 を x2−2x−1

で割ると、商が x+3 で、余りが 2x−4 である。

 よって、L の方程式は、 Y=2x−4 で、Cの x 座標は、−3


 事実上これで終わりです。もう少し丁寧に書いた方がいいでしょうが...。もちろん、A、B、
Cの y 座標は3次式ではなく1次式に代入します。

 「x=1+ または x=1−」を「x2−2x−1=0」に置き換えたということです。
 「x=1+ のとき、x3+x2−5x−7 の値を求めよ。」などで使う手法と同じです。

(コメント) 解の指針がスッキリしましたね!FNさんに感謝します。


例9 ・・・ 極値が与えられた3次関数の決定(参考・・・「変曲点の性質」)

 例2における2点を通る直線の決定、例3における3点を通る放物線の決定などは、高校
数学で皆必ず洗礼を受ける計算問題の王道だろう。

 文字の個数が2つ程度なら許せるが、3つ以上になると「面倒だな!」ということが頭を過
ぎる。

 次の問題も、計算を上手く整理しながらやらないと大変だろう。

 3次関数 F(x)=ax3+bx2+cx+d で、x=−1 のとき極大値が 6 、x=3 のと
き極小値が−26 であるものを求めよ。


 教科書等では通常次のように解かれている。

(解)  F’(x)=3ax2+2bx+c において、 F’(−1)=0 、F’(3)=0 だから、

      3a−2b+c = 0  ・・・ (1)     27a+6b+c= 0  ・・・ (2)

   また、 F(−1)=6 、F(3)=−26 なので、

     −a+b−c+d = 6  ・・・ (3)   27a+9b+3c+d= −26  ・・・ (4)

 (4)−(3)より、 28a+8b+4c = −32  よって、 7a+2b+c= −8  ・・・ (5)

 (5)−(1)より、 4a+4b = −8   よって、 a+b = −2  ・・・ (6)

 (2)−(5)より、 20a+4b = 8   よって、 5a+b = 2  ・・・ (7)

よって、 (7)−(6)より、 4a=4    よって、 a = 1

このとき、 b = −3 で、また、 c = −9 、d = 1 なので、F(x)=x3−3x2−9x+1

この関数 F(x) は条件を満たす。 (終)

(コメント) 最後の一文「この関数 F(x) は条件を満たす。」は必ず必要な文言で、通常は
      もっと丁寧に増減表を書いて十分性を確認することが多い。

 上記の一般的な解法に対して、下記のような驚くべき解法が存在する。

その解法では、

  (変曲点における接線の傾き)=(極点を結ぶ直線の傾き)×(3/2)

という性質が用いられる。(証明は、「変曲点の性質」を参照)


(解) 求める3次関数の導関数は、 F’(x)=k(x+1)(x−3)=k(x2−2x−3)  (k>0)

  とおける。(← 「 k>0 」としているので、この場合、十分性の証明はいらない!)

 このとき、 F”(x)=2k(x−1)=0 より、 x=1 なので、

変曲点における接線の傾きは、  F’(1)=−4k となる。

 ここで、極点を結ぶ直線の傾きは、{−26−6}/{3−(−1)}=−8 なので、

  変曲点の性質から、  −4k=(−8)×(3/2)=−12 より、 k=3 となる。

よって、 F’(x)=3(x2−2x−3)=3x2−6x−9 となり、

   F(x)=x3−3x2−9x+d  (d は積分定数) とおける。

ここで、 F(−1)=6 より、 −1−3+9+d=6  よって、 d=1

 したがって、  F(x)=x3−3x2−9x+1  (終)

(コメント) 3次関数の決定なのに、文字が1つだけで済むとは経済的でいいですよね!
      ただ、この解法の弱点は、上記の性質を覚えているかにかかっている。もっと、
      3次関数の平易な性質を使って解けないものだろうか?

 この問いかけに対して、さらにエレガントな解法が存在することを最近知る機会があった。

 極値をもつ、どんな3次関数であれ、そのグラフは、均整の取れた長方形の中で、美しさ
を発露させている(下図)。 (→ 参考:「変曲点の性質」)

         

 この均整のとれた性質を用いて、問題:

 3次関数 F(x)=ax3+bx2+cx+d で、x=−1 のとき極大値が 6 、x=3 のと
き極小値が−26 であるものを求めよ。


を再考してみよう。

(別解) 求める3次関数 y=F(x) のグラフを、y 軸方向に−6だけ平行移動させると、その

    グラフは、x 軸と点( −1 , 0 )で接し、また、上記の性質から、

        (−1)+2+2+2=5  (← 2=(3−(−1))/2 )

    なので、x 軸と点( 5 , 0 )で交わる。

     よって、 F(x)−6=a(x+1)2(x−5)  すなわち、

            F(x)=a(x+1)2(x−5)+6

    とおける。これが、点( 3 , −26 )を通るので、

       a(3+1)2(3−5)+6=−26

    すなわち、  32a=32  より、 a=1

     したがって、 F(x)=(x+1)2(x−5)+6=x3−3x2−9x+1  (終)

(コメント) こちらの方が計算は平易ですね。積分しなくてもよい点が素晴らしいです。極大
      点、極小点が分かると、それと同じレベルにある x の値が簡単に求まるなんて、
      今まで気がつきませんでした。いろいろな問題に応用できそうですね!


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例9について考察された。
                                       (平成23年9月8日付け)

 上記で、2番目、3番目の解として、連立方程式を回避した解が書いてありますが、多分多
くの人が知らないだろうことを使っています。(私は知りませんでした...。)

 問題がごく基本的なものなので、牛刀割鶏の嫌いがあります。

 1番目の解でいいと思いますが、連立方程式を回避するなら、次のような解があります。

もう少し難しい問題になれば是非必要な方法です。使うのは次の2つです。

 (1) F’(x) を a から b まで積分すれば、 F(b)-F(a)

 (2) (x-a)(x-b) を、a から b まで積分すれば、 -(b-a)3/6

(別解) x=-1、3 で極値をもつから、 F’(x)=3a(x+1)(x-3)

これを、-1から3まで積分すれば、(1)より、F(3)-F(-1)=-26-6=-32

(2)によれば、 3a(-(3+1)3/6)=-32a で、-32a=-32 より、 a=1

 よって、 F’(x)=3(x+1)(x-3)=3x2-6x-9 より、 F(x)=x3-3x2-9x+k

 F(-1)=6 より、 k=1  ∴F(x)=x3-3x2-9x+1  (終)

練習問題  y=x3+ax2+bx+c が極大値と極小値をもち、その差が4であるための必要十分
       条件を求めよ。

(コメント) 面積の公式を使う点が斬新ですね!感動しました。


例10 ・・・ 円の接線

 円 (x−a)2+(y−b)2=r2 の周上の点 ( x0 , y0 ) における接線の方程式は、

      (x0−a)(x−a)+(y0−b)(y−b)=r2

で与えられる。したがって、接点の座標 ( x0 , y0 ) が与えられた円の接線の問題は易し
い。

 これに対して、円外の1点から引いた接線の問題は、教科書等では連立方程式を用いて
解いている場合がほとんどである。

 円 x2+y2=5 に、点 ( 1 , 3 ) から引いた接線の方程式を求めよ。

(解) 接点を、( x0 , y0 ) とすると、接線の方程式は、 x0x+y0y=5

   この接線が、点 ( 1 , 3 ) を通るので、 x0+3y0=5 ・・・ (1)

    また、点 ( x0 , y0 ) は、円上の点でもあるので、 x02+y02=5 ・・・(2)

   連立方程式(1)(2)を解いて、  ( x0 , y0 ) = ( 2 , 1 ) ( −1 ,2 )

    よって、接線の方程式は、 2x+y=5 、 −x+2y=5  (終)

(コメント) この解法の優れている点は、接線の方程式と同時に接点の座標が求められる
      点ですね!

 円と接線に関する問題においては、「点と直線の距離の公式」が非常に有効である。ただ、
現行の学習指導要領では、その解法に用いられる計算技法が未履修だったりして、教科書
本文には到底入れられない。多くの受験校では、3年次の数学演習の時間に教えられてい
るところである。

(解) 点 ( 1 , 3 ) を通る直線の方程式は、 y=m(x−1)+3 とおける。この直線が、

   原点中心、半径 の円 x2+y2=5 に接するので、

             

  分母を払って、両辺を平方して整理すると、 2m2+3m−2=0

   よって、 m = 1/2 、 −2 となり、接線の方程式は、

        y=(1/2)x+5/2 、 y=−2x+5  (終)

(コメント) この解法では連立方程式は回避されているが、接点を別途求める必要がある
      点が弱点であろう。

    ただ、次のような単純な式変形で接点が求められることに気がつけば、この弱点は
   何でもない!

     y=(1/2)x+5/2 より、 −1x+y=5 なので、接点の座標は、( −1 ,2 )

     y=−2x+5 より、 ・x+・y=5 なので、接点の座標は、( 2 ,1 )


 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、例10について考察されました。
                                      (平成23年9月30日付け)

 上記では、「点と直線の距離の公式」を用いて連立方程式を回避した解答が書いてある。
円の接線あるいはもう少し広く円と直線の関係する問題において「点と直線の距離の公式」
は非常に役に立つ。ところが、これは円だけで楕円や双曲線では使えない。楕円の場合の
同様の問題を考えてみよう。

 楕円 2x2+y2=5 に、点 (-1,5) から引いた接線の方程式を求めよ。

 方法としては、(1)接線の公式を使う  (2)判別式を使う  のどちらかが普通である。接線
の問題を扱う最も一般的な方法は微分であるが、この場合はすぐに(1)に合流する。(1)なら
接点を置くことになるから連立方程式になる。(2)なら接線を置くから連立方程式を回避する
こともできる。

 求める接線の傾きを m とおけば、接線は、 y-5=m(x+1)  すなわち、 y=mx+m+5 にな

る。これを 2x2+y2=5 に代入して、判別式 D=0 とおけば、m が求まって・・・・。

 このような解答を書いている参考書は今でもあるかもしれません。しかし、いい解答ではあ
りません。

 高校に入学した直後に、次のような問題に出会います。

 P=x2+3xy-2y2、Q=3x2-xy+y2 のとき、2P-3Q-3(P-Q) を計算せよ。

 何人かの生徒はただちに代入します。そして、あまりいいやり方ではないと教えられます。

 上の解答は、これに近いことをやっています。即ち、代入が早すぎます。単に、y=ax+bと
置く方がいい。もちろん、どこかでこれが (-1,5) を通ることを使う、即ち、b=a+5 を代入しま
すがそのタイミングは最初がいいとは限りません。

 「連立方程式の回避」で考えられていることは、与えられたいくらかの条件のうち、どの条
件を使って式を書くかということです。原則としては、強い条件を使って式を書き、他の条件
を使って未知数の数を減らしていくことになります。ただし、条件の間にそれほど明瞭な強
弱があるわけではないし、条件を式に表しにくいものもあります。条件を全く使わないで式を
書く場合もあります。

 方程式を立てるときに、未知数の数は普通は少ない方がいい場合が多いですが、必ずし
も常にそうなるわけではありません。未知数を減らせるけど、減らさないで書いて、適切な
タイミングで消去する方がいいこともあります。だから、連立方程式を回避しない方がいい
場合もあります。


 空舟さんからのコメントです。(平成23年9月30日付け)

 定点を通る円の接線はもっと幾何学的な解答が知られているので紹介します。

 円 x2+y2=5 に、点A( 1 , 3 ) から引いた接線の方程式を求めよ。

 (解) 左図において、△OPY∽△OAP である。

  このとき、OA=√10、OP= より、AP=

   よって、OY=OP2/OA=(√10)/2=(1/2)OA

  さらに、OP=AP より、 YP=OY=(1/2)OA

   以上から、接点の位置ベクトルは、

     (1/2)(1,3)±(1/2)(−3,1)

  即ち、接点は、(−1,2)、(2,1)で与えられる。

(接線の方程式は接点から容易に得ることができる!)

 この方法も、やはり円の場合にしか適用することができません。

 そこで、楕円の場合は、例えば、2x2+y2=5 のような場合なら、x=X とおくことで、(座標
平面を横向きに圧縮する)、円の場合に帰着することができます。

 そうなると、双曲線の場合も同様にできないか気になりました。計算してみた結果、うまく
円の接線に帰着できましたので紹介します。

 双曲線の式を、py2=qx2+1 とします。(圧縮するなら p や q はなくても良いです。)

 X=(1/√q)・(x/y) 、 Y=(1/q)・(1/y) という変換をすると、 X2+Y2=p/q2 となります。

(これは三角関数で媒介変数表示をすると構成しやすいです。)

 直線 (x,y)=(t,at+b) は、(X,Y)=(t/(at+b)√q,1/(at+b)q) となりますが、この時に、

XとYは、Y=(-a/b√q)X+1/bq という直線関係になります。

 「xy系で直線と双曲線が接している ⇔ XY系で対応する直線と円が接する」については
厳密な証明は考えてないです。(ただ直感的にそうなると思います。)

例 双曲線 5y2=x2+1 に点(1/3,1/3) から引いた接線を求めよ。

 上の変換を使うと、双曲線 5y2=x2+1 は、円 x2+y2=5 で、点(1/3,1/3)は点(1,3)になりま
す。(先に取り上げられたのと同じ円と点になるようにしました。)

 接点は、(-1,2)、(2,1) で、対応する接線はそれぞれ y=x/2+5/2、 y=-2x+5 です。

 これをXY系に戻すと、(実は、xy を XY に戻す変換は、XY を xy にする変換と同じになり
ます)接点は、(-1/2,1/2)、(2,1)で、対応する接線は、y=-x/5+2/5、 y=2x/5+1/5 と得ら
れました。

 実用性はあやしいですが(そもそも双曲線の接線を求める場面が少ないかな)、試行が上
手くいったように思ったので、ちょっと紹介しました。

(コメント) 空舟さん、ありがとうございます。円の場合に、接点を位置ベクトルの考えで求
      められたことに感動しました!


 FNさんからのコメントです。(平成23年10月 2日付け)

 空舟さんの方法を、少し一般化して考えてみました。座標変換 (x,y)→(X,Y) で、

   X=(ax+by+c)/(px+qy+r) 、 Y=(dx+ey+f)/(px+qy+r)

で与えられるものを考える。ただし、ベクトル (a,b,c)、(d,e,f)、(p,q,r) は1次独立とす

る。空舟さんの変換では、それぞれ (1/√q,0,0)、(0,0,1/q),(0,1,0) で1次独立。

 逆変換を真面目に計算してみたら、(X,Y)→(x,y) は同じ形の式で表され、(x,y)→(X,Y)
の係数を a、b、c、d、e、f、p、q、r と書くなら、(X,Y)→(x,y) は、

   {er-fq,cq-br,bf-ce;dr-fp,cp-ar,af-cd;dq-ep,bp-aq,ae-bd}

となりました。もとの変換の係数を並べた3次の正方行列を考えれば、逆の変換の行列は
余因子行列の転置行列のようです。

 従って、係数のベクトルの1次独立性は保たれ、同じ形の変換になります。

 F(X,Y)を X,Y に関するn次式とする。上の変換式を代入して分母を払えば、n次以下の
式である。これを、F0(x,y) とする。逆変換を考えることにより、F0(x,y) の次数が n より下
がることはなく、n 次式である。

 従って、この変換により、n次曲線はn次曲線にうつる。特に、直線は直線に、2次曲線は
2次曲線にうつる。曲線と曲線(直線)の交点は、当然、交点に移るが、逆変換があるから、
重複度も変わらない。従って接点は接点に移る。

 空舟さんの「直感的にそうなると思います。」は正しいようです。私は、このような変換を考
えたことがないので、直感は全くなく、本当なのかなと思って計算してみました。調べてみた
ら射影変換というもののようです。射影空間での線形変換のようなものだから、ほぼ自明と
いう話なのでしょう。私は射影幾何となると、条件反射で「わからん」ですませてきました。や
はり射影幾何を多少勉強する方がいいのかなという気がしてきました。


例11 ・・・ 算数の実力

 算数と数学の違いは、文字を使う使わないの違いだろう。文字を使わない算数なので、
その解法はこのページの趣旨に合致する計算が多い。

 (1) 過不足算

   キャンディを子供達に一人に5個ずつ分けると14個余り、一人8個ずつ分ける
  と4個足りないという。キャンディの個数と子供の人数を求めよ。


   方程式を用いれば、キャンディの個数を x 個、子供の人数を y 人として、

      5y+14=x 、 8y−4=x

  が成り立つので、これを解いて、 x=44 、 y=6 となる。

   これを過不足算で計算してみよう。

   キャンディの個数を3個増やした結果、その増加量は、14+4=18 である。

  子供の人数は同じなので、 18÷3=6 (人)である。

   このとき、キャンディの個数は、 5×6+14=44 (個) となる。


(コメント) 過不足の量を上手に利用しているところがスゴいです...。


 計算もいいが、図示すると簡明になりますね!(令和4年6月16日付け)

   

(考え方) まず、「5」を適当にいくつか並べ、余った数が14個と3個増やして4個足りない
      ことから、上図が得られる。

      したがって、子供の人数は6人で、キャンディの数は、8×4+7+5=44(個)


 FNさんが、例11について考察されました。(平成23年9月25日付け)

(1) 過不足算・・・キャンディを子供達に一人に5個ずつ分けると14個余り、一人8個
          ずつ分けると4個足りないという。キャンディの個数と子供の人数を
          求めよ。


 これを、小学校1、2年生がわかるように解いてみます。1桁の数の足し算、引き算と
2桁+1桁、2桁ー1桁の計算ができれば十分です。割り算は引き算の繰り返しで、掛け算
は足し算の繰り返しで代用します。

(答え) 1人に5こずつくばってある。なんにんいるかはわからない。

      5 5 5 ・・・・・・・ 5     14こあまっている

8こずつにするから、8−5=3こずつくばればよい。14こあるからひとりめのこどもに3こ
くばる。14−3=11で、11このこっているからふたりめのこどもに3こくばる。11−3=8
で、まだ8こあるから3にんめのこどもに3こくばる。

 8−3=5で、まだ5こあるので4にんめのこどもに3こくばると、5−3=2

 2こになってしまったのでもうくばれない。8こずつくばるには4こたりないのだから4こかり
てくる。かりたのをいれると2+4=6こある。6こあるから5にんめのこどもに3こくばる。

 6−3=3で、あとちょうど3こだから6にんめのこどもに3こくばればおしまい。

 だからこどもは6にん。6にんに8こずつくばったから、8+8+8+8+8+8=48こ
だけど、4こかりてきたのだから、キャンディは、48−4=44こ。  (おわり)


(コメント) 文字を使わず、とても分かりやすい説明だと思います。


(追記) 平成29年2月17日付け

 何人かの子供と何個かの菓子がある。1人に1個ずつ菓子をあげると11個余り、1人に
2個ずつあげると8個足りなくなるという。子供は何人いて、菓子は何個あるのだろう。

(解) 1人に1個ずつ菓子をあげて余った11個を再度一人ひとりに1個ずつあげると、8個

  足りなくなるので、子供の数は、11+8=19(人)。

  菓子の数は、 19+11=30(個)  (終)


(コメント) 数学を習ってしまうとどうしても方程式を立てがちであるが、こんなに柔軟に考え
      れば答えが分かるところが面白いですね!やはり、算数って好きです。


(追記) 令和4年6月16日付け

 今日は、過不足算の問題で一日遊ぼうと思う。過不足算では、いろいろな条件のもとどう
なるかということから状態を考えるという発想が大切である。

問題  子供に飴を配るとき、一人に10個ずつ配ると18個余り、一人に12個ずつ配ると
    10個足りない。子供の人数を求めよ。

(解) 18÷(12−10)+10÷(12−10)=14(人)  (終)


問題  お菓子を、決まった個数の箱に10個ずつ入れると6箱余った。箱の個数の3/4に
    8個ずつ入れ、他の箱には10個ずつ入れたら全部入った。箱の個数とお菓子の個
    数を求めよ。ただし、箱には規定個数をきっちり入れるものとする。

(解) 6×10÷(10−8)=30 なので、箱の個数は、 30÷(3/4)=40(個)

 お菓子の個数は、 10×(40−6)=340(個)  (終)


問題  碁石がいくつかある。この碁石を格子状に正方形に並べると、12個余るか、9個不
    足だという。碁石は全部で何個あるか?

(解) (12+9−1)/2=10 より、碁石の数は、 10×10+12=112(個)  (終)


問題  物を買うとき、一人600円出すと200円余り、一人500円出すと700円不足する。
    人数と物の値段を求めよ。

(解) 人数は、9人で、物の値段は5200円  (終)


問題  高いノートを12冊買うと40円不足し、1冊につき30円安いノートを15冊買うと50
    円余る。いくら持っているか?

(解) (30×11−10ー50)÷3=90 なので、 90×15+50=1400(円)  (終)


問題  社員を6人ずつ配置すると5人余る。8人ずつ配置すると1つの部署が3人、1つ
    の部署が0人となる。部署の数と社員の人数は?

(解) (3+6+5)÷2=7 なので、部署数は、9 で、

   社員数は、 9×6+5=59(人)  (終)


問題  りんごを一人に6個ずつ配ると4個余り、7個ずつ配ると9個足りない。人数とりんご
    の個数を求めよ。

(解) 人数は、4+9=13(人) で、りんごの個数は、 6×13+4=82個  (終)


(追記) 令和4年7月17日付け

 過不足算と鶴亀算の混じり合った次の問題も面白そうである。灘中学の入試問題(2017)
で、若干改題しました。

問題  鉛筆が何本かあり、生徒40人のクラスで、鉛筆を何本かずつ配る。男子に5本ず
    つ、女子に4本ずつ配ると、4本余る。そこで、鉛筆を新たに12本追加して、男子に
    3本ずつ、女子に5本ずつ配ると余りは出なかった。

     初めに用意していた鉛筆は、何本であったか?

(解) 40人のうち、男子 x 人、女子 y 人とし、初めに用意していた鉛筆を z 本とする。

 題意より、 5x+4y=z−4 、3x+5y=z+12 、x+y=40 が成り立つ。

 (第2式)−(第1式) から、 −2x+y=16 なので、(第3式)と辺々引いて、

 3x=24  よって、 x=8 、y=32 となるので、初めに用意していた鉛筆は、

  5×8+4×32+4=172(本)  (終)


 方程式を立てれば何でもないが、これを算数的には、どう解くのだろうか?むしろ、こちら
の方が悩ましい。

 解決のポイントは、上記の解の 「−2x+y=16」 という式である。

 x+y=40 なので、 (1+2)x=40−16 から、 x=(40−16)÷(1+2)=8 と男子
の人数が分かることに注意すれば、次のような算数的な解法が出来るだろう。


(別解) 「鉛筆を新たに12本追加」したということを、初めに用意していた鉛筆だと12本不

足したと考えて、過不足算の計算から、男子の人数は、 (40−(12+4))÷(1+2)=8

女子の人数は、 40−8=32

 よって、初めに用意していた鉛筆は、 5×8+4×32+4=172(本)  (終)


(別解) (男子の人数)+4+40=2(女子の人数)−12=80−2(男子の人数)−12

 すなわち、 3(男子の人数)=40−16=24 から、 (男子の人数)=8

 このとき、 (女子の人数)=32 で、

 鉛筆の本数は、 5×8+4×32+4=172(本)  (終)


(別解)・・・鶴亀算の発想

 線分図を描くと、

  

 問題文の配分では、両者に16本の差がある。

 40人全員を女子とすると、4本ずつ配るのと5本ずつ配るのでは、40本の差があるので、
40-16=24(本)の差を埋める必要がある。

 女子1名を男子1名に変更すると、4本ずつ配る場合は男子の分1本が増え、5本ずつ配
る場合は男子の分2本が減るので、結局、両者の差は、3だけ縮まる。

 したがって、24本の差を埋めるに必要な男子の数は、 24÷3=8(人) となり、女子の
数は32人で、初めに用意していた鉛筆は、 5×8+4×32+4=172(本)  (終)


(追記) 令和4年7月21日付け

 過不足算の一つに、「差集め算」と言われるものがある。個々の差を合計したものが全
体の差になる点に注目する計算である。これに対して、個々の数がどれくらい多い、少ない
に注目する計算が過不足算である。


問題 生徒に鉛筆を4本ずつ配ったら5本余り、6本ずつ配ったら7本足りないという。鉛筆
   の本数と生徒の人数を求めよ。

(解) 生徒個々の鉛筆の本数差は、 6−4=2(本)

   全体の差は、 5+7=12 なので、生徒の人数は、 12÷2=6(人)

  また、鉛筆の本数は、 6×4+5=29(本)  (終)

 上記の計算を図示すれば、次のようになる。

  

 個々の差は「2」というのは直ぐ分かるが、差集め算では全体の差の求め方が重要である。

 次の問題を考えよう。

問題 1冊200円のノートが5冊と1本80円のボールペン7本がある。それぞれの金額の
    差はいくらか?

 この問題を、200×5−80×7=1000−560=440(円) と解いてしまっては、差集め
算は理解されない。次のような計算をするのが、差集め算における全体の差の計算である。

(解) 少ない方の同じ個数に注目して、

   5(200−80)−80−80=440(円)  (終)

問題 1冊200円のノートと1本180円の鉛筆を同じ数だけ購入した。それぞれの合計金
    額の差は400円であった。それぞれいくら購入したのだろうか?

(解) 個々の金額の差は、 200−180=20(円)

 全体の差は、400円なので、購入本数は、 400÷20=20

 よって、 ノートは、 200×20=4000(円)

       鉛筆は、 180×20=3600(円)  (終)

問題 所持金を使って、1冊200円のノートを買うと、1冊300円のノートを買う場合に比べ
   て、3冊多く買える。それぞれお釣りは出ないものとして、所持金を求めよ。

(解) 個々の差は、 300−200=100(円)

    全体の差は、200円のノート3冊分なので、 200×3÷100=6(冊)

  よって、 300円のノートは、 6冊 買うことが出来て、所持金は、 1800円

 因みに、200円のノートは、 6+3=9(冊) 買える。 (終)


(追記) 令和4年7月22日付け

問題 50円玉、100円玉、500円玉が合わせて36枚あり、合計金額は、6000円である。
    しかい、2種類の硬貨の枚数を取り違えたため、合計金額が、6200円になった。

     それぞれの硬貨は何枚ずつあるのだろうか?

(解) 50円玉、100円玉、500円玉の枚数を、それぞれ x、y、z とすると、題意より、

   50x+100y+500z=6000 ・・・ (1)

 合計金額の差が200円なので、取り違えた硬貨は、50円玉と100円玉である。

 よって、 50y+100x+500z=6200 ・・・ (2)

(2)−(1) より、 50(y−x)+100(x−y)=200 すなわち、 50(x−y)=200

 よって、 x−y=4 となる。このとき、 y=x−4 、 z=36−x−y=40−2x なので、

 50x+100(x−4)+500(40−2x)=6000

 よって、 850x=13600 を解いて、 x=16 なので、 y=12 、z=8  (終)


(別解) 合計金額の差が200円なので、取り違えた硬貨は、50円玉と100円玉で、50円

 玉の方が100円玉より4個だけ多い。

 最低でも、 50円玉 5枚、100円玉 1枚 はあり、合計金額は、350円

 50円玉、100円玉が1枚ずつ増える毎に、 150円ずつ増える。

  350+150m+500(30−2m)=6000 より、 850m=9350 なので、 m=11

 以上から、 50円玉 16枚、100円玉 12枚、500円玉 8枚  (終)


 次は、中学受験の算数では定番の問題と言える。個々の差を集めて、全体の差と考えれ
ばよい。

問題 生徒が、長椅子に8人ずつ座ると、5人掛けが1脚できて、さらに2脚余る。6人ずつ
    座ると、9人が座れない。

   このとき、椅子は何脚あって、生徒は何人いるか?

(解)
    

 個々の差は、 8−6=2 で、全体の差は、 8×2+3+9=28 なので、

 長椅子の脚数は、 28÷2=14 で、生徒の人数は、 6×14+9=93(人)  (終)


(追記) 令和4年7月23日付け

 大抵の過不足算は、条件設定で余りと不足が対になっていて(過不足算たる所以か...)
頭が混乱するが、余りだけとか不足だけの場合は考えやすい。

問題 生徒一人一人に12個ずつ配ると88個不足し、8個ずつ配ると12個不足する。
    生徒は何人いるのだろうか?

(解) 生徒一人に配る個数を4個減らすと、全体で不足分が、88−12=76(個) 減少す
   る。よって、生徒の人数は、 76÷4=19(人)  (終)

問題 生徒一人一人に90円ずつ配ると200円余り、、100円ずつ配ると30円余る。
    生徒は何人いるのだろうか?

(解) 生徒一人に配る金額を10円増やすと、全体で余りが、200−30=170(円) 減少
   する。よって、生徒の人数は、 170÷10=17(人)  (終)


(追記) 令和4年7月24日付け

問題 生徒一人一人に7個ずつ配ると13個不足し、5個ずつ配ると最後の3人には6個ず
    つ配れた。生徒は何人いるのだろうか?

#「最後の3人には6個ずつ配れた」ということは結局3個余ったということなので...。

(解) 個々の差は2で、全体の差は、13+3=16(個) なので、

  生徒の人数は、 16÷2=8(人)  (終)

問題 1本80円の鉛筆と1本120円のボールペンを合わせて40本買う予定だったが、買
    う本数を取り違えて、予定より320円高くなった。初めにそれぞれ何本買う予定だっ
    たのか?

(解) 個々の差は120−80=40(円) なので、320÷40=8(本) より、鉛筆の方が

  ボールペンより、8本多い。合わせて40本なので、

  鉛筆 24本 、 ボールペン 16本 買う予定だった。  (終)



  以下、工事中!


 (2) 旅人算

   A君はX地点を午前8時ちょうどに40km離れたY地点に向かって時速4kmで
  歩き出した。それと同時にY地点にいたB君がX地点に向かって時速20kmで走
  り出した。2人が出会うのはいつか?


 方程式を用いれば、出会うまでの時間を t (時間)として、

   4×t+20×t=40  より、 t=5/3 (時間) すなわち、 1時間40分となる。

よって、2人が出会うのは、 当日の午前9時40分 である。


 これを旅人算で計算してみよう。旅人算には、2つのパターンがある。

(イ) 出会い算 ・・・ 向かい合って互いに進む場合
(ロ) 追いつき算 ・・・ 同じ向きに進む場合

  何れも、相対速度を考えるところがポイントである。

(→ 参考:「山手線問題」、「山手線問題(2)」、「山手線問題(3)」)


  B君を固定して考えると、A君の歩く速さは、時速24kmである。よって、40kmを歩くの

に要する時間は、 40÷24=5/3 (時間) すなわち、 1時間40分となる。

 よって、2人が出会うのは、 当日の午前9時40分 である。


(追記) 令和元年6月20日付け

 方程式を使えば解けることは解けるが、方程式を使わない方が簡単な場合が多い。

例 題 甲、乙の2人は一定の速さで2地点A、Bを徒歩で往復した。2人は同時に地点Aを

 出発し、甲は時速4/5kmで地点Bに向かった。甲が地点Bに着いてから35分後に乙が地

 点Bに着いた。甲は地点Bに着いてから1時間後に来た道を2人で一緒に地点Aに向かっ

 た。地点Bから地点Aに向かうときの速さは、乙が地点Aから地点Bに向かうときの速さの

 4/3倍で、2人が地点Aに戻ったのは地点Aを出発してから8時間後でした。

 2地点A、B間の道のりは何kmか。乙が地点Aから地点Bに向かうときの速さは時速何km

 か。(武蔵中 改題)

(方程式を利用する場合) 2地点A、B間の道のりをxkm、乙が地点Aから地点Bに向かうと
                きの速さをvkmとする。

 このとき、 x/(4/5)+1+x/(4v/3)=8 、x/v=x/(4/5)+35/60

  5x/4+(3/4)(5x/4+7/12)=7 より、 x=3

  x/v=3/(4/5)+7/12=80/15 より、 v=3・3/13=9/13

(方程式を利用しない場合)

 乙の速さの比は3:4なので、かかった時間は4:3

 地点Bで乙は25分休憩しているので、実際に歩いた時間は、480−25=455分

 よって、乙が地点Aから地点Bに行くのに要した時間は、 455×(4/7)=260(分)

 甲が地点Aから地点Bに行くのに要した時間は、 260−35=225(分)

 よって、2地点A、B間の道のりは、 (225/60)×(4/5)=3km

 乙が地点Aから地点Bに向かうときの速さは、 3÷(260/60)=9/13


(コメント) 小学生の柔らかい頭のうちに上記のような方程式を使わない解法に親しめば、
      方程式を使うことの良さも違った意味で感じられることだろう。


(追記) 令和2年8月12日付け

問 題 1周60mの円周上にスタート地点Sがあり、3人A、B、Cは同時に地点Sから、Aと
     Bは右回りに、Cは左回りに円周上を動く。Aの速さは10m/秒、Bの速さは、6m/秒
     で、Cの速さは、4m/秒とする。(四天王寺中学校(2020)改題)

(1) Aが地点SをBと一緒に動き出して、最初に、Bに追い着くのは何秒後か?
(2) AとCが2回目に出会うのは何秒後か?


(解)(1) 60÷(10−6)=15(秒後)

(2) 120÷(10+4)=60/7(秒後)


(追記) 令和4年5月30日付け

 次の問題も旅人算の一種だろうか?

問 題 甲、乙の2人は一定の速さで2地点A、B間を往復する。甲は地点Aを出発し、地点

 Bに着くとすぐに折り返す。甲が出発したのと同時に、乙は地点Bを出発し、地点Aに着くと

 すぐに折り返す。出発して、Bから4kmの地点で、甲乙は出会い、その2時間後、Aから2

 kmの地点で、再度甲乙が出会った。

 このとき、2地点A、B間の距離と甲と乙の速さを求めよ。


(解) 2地点A、B間の距離を x km、甲と乙の速さをそれぞれ v (km/h)、v(km/h)、

 出発後に初めて出会うまでの時間を T (h)とおくと、題意より、

  x=v・T+v・T 、v・T=4 、v・(T+2)−x+v・(T+2)−x=x

  v・(T+2)−x=2

なので、 x=v・T+4 、2v+2v=2x すなわち、 v+v=x

 x=(v+v)T なので、 T=1 である。

 このとき、 v=4 で、 4・(1+2)−x=2 から、 x=10

 よって、 v=x−v=6  (終)


(コメント) 連立方程式を用いれば上記のような解法になるが、この問題を、文字を使わな
      いで、算数的に解くことは可能だろうか?


(追記) 令和4年6月19日付け

 旅人算の問題は、何となく日常生活っぽくて好きな問題だ。次の問題は、洛星中学 入試
問題(2022) 改題 です。ぜひ、楽しんでみてください。


問題  下図のように池Pと池Qのまわりを囲む道路がある。AB間は490mあり、左側、右
    側の道路はそれぞれ1470m、980mである。

   

 兄と弟は同時にA地点を出発し、兄は池Pのまわりを反時計まわりに、弟は池Qのまわり
を時計まわりに、それぞれ一定の速さで走り始めた。兄が2回目にB地点に着いたのと同
時に、弟も2回目にB地点に着いた。

 このとき、次の問いに答えよ。

(1) 兄の走る速さと弟の走る速さの比を、もっとも簡単な整数比で答えよ。

(2) 兄が1回目にBに着いたとき、弟はBを通り過ぎてAに向かっていた。

(ア) このとき、弟はBから何m離れた地点にいるか。

(イ) この後、初めて兄が弟を追い抜くとき、2人はBから何m離れた地点にいるか。

(3) 今度は、兄と弟は同時にBを出発し、兄は池Pのまわりを反時計まわりに、弟は池Qの
   まわりを反時計まわりに、先ほどと同じ速さで走り始めた。

   

 出発してから20分25秒後に2人は初めてすれ違った。このとき、兄の走る速さと弟の走る
速さをそれぞれ求めよ。

(解)(1) 兄、弟の走る速さをそれぞれ v、v’とおくと、題意より、

  (1470+490+1470)/v=(980+490+980)/v’ すなわち、

   3430/v=2450/v’ より、 v/v’=3430/2450=7/5

(2)(ア) 兄が1回目にBに着くまでの時間を t とおくと、 vt=1470

  よって、 t=1470/v=1470×5/(7v’)=1050/v’ なので、 v’t=1050

 したがって、弟は、Bから 1050−980=70(m) 離れた地点にいる。

(イ) 兄が弟を追い抜くのに要する時間は、相対速度の考え方を用いて、

   70÷(v−(5/7)v)=245/v なので、Bから、 (245/v)×v=245(m)

 離れた地点で兄は弟を追い抜く。

(3) 題意より、兄と弟は、20分25秒後、すなわち、245/12(秒)後に2人は初めてAB間
  ですれ違うので、次の等式が成り立つ。

 (245/12)(v+(5/7)v)=490+1470+490+1470+980+490+980+490

  すなわち、 (245/7)v=6860 より、 v=196(m/分)

 弟の走る速さは、 (5/7)v=140(m/分)  (終)

# 走る速さ(ランニング)の標準は、だいたい200(m/分)前後と言われるので、概ね妥
  当な数値設定ですね。弟の走る速さは、ジョギング並みですね。

(コメント) 当初数値を適当にいじっていたら、結果が随分汚い数値になってしまった。数
     値設定を詳しく分析したら、何とか綺麗な整数値にすることが出来た。洛星中学の
     実際の問題も、結果がきれいな整数値になっていて、作問の際の苦労がひしひし
     と実感出来ました。以前、北野白梅町にある洛星中学・高校を訪問したとき、数学
     科のM先生には大変お世話になりました。いろいろご教示いただき感謝いたしま
     す。そう言えば、代数幾何の恩師の小田先生も洛星のご出身でした。


 (3) 鶴亀算

 鶴と亀が合わせて10匹いる。足の本数を数えたら28本であった。鶴と亀はそれぞ
れ何匹いるか?

(解) 10匹全部が鶴とすると、足の本数は20本。28−20=8(本)は亀によるもの。

   よって、亀は、8÷(4-2)=4(匹) で、鶴は、6匹。  (終)


(コメント) 鶴亀算は、「全部が○○とすると〜」というのが計算の流れですね。

 いくつか類題を考えてみよう。

問題 1個25円のリンゴと1本15円のバナナ合わせて20個買って420円支払った。リン
    ゴはいくつ買ったか?

(解) バナナを20本買ったとすると、代金は300円。その差額120円はリンゴによるもの。

   よって、 120÷10=12(個) がリンゴ  (終)

問題 みかん1個は27円、りんご1個は45円である。みかんとりんごをあわせて100個
    買って、3060円払った。みかんは何個買ったか。

(解) 27×100=2700  3060−2700=360  360÷18=20

   よって、 みかん80個、りんご20個  (終)


 上記の鶴亀算は、そのものずばりの定型パターンであるが、少し「エッ!これも鶴亀算」と
いうパターンも紹介しておこう。

問題 ある商品を1000個仕入れて、仕入れ値の3割増の定価をつけて販売した。何とか
   600個までは売れた。売り上げをもっと伸ばしたいので、定価の2割引で何個か販売
   した。さらに定価の4割引にしたところ、全部売り切れたという。このときの売上額は、
   仕入れ値の1割7分増しであった。定価の4割引で売ったのは何個か?

(解) 1個当たりの仕入れ値を1とすると、仕入れ値額の合計は、1000

   売上額は、1000×1.17=1170

   最初、定価1.3のものが600個売れたので、 合計780

   よって、値引きで400個の売上額は、 1170−780=390

   400個全部を定価の2割引で売ったものとすると、その売上額は、

   1.3×0.8×400=416 なので、その差額は、 416−390=26

   4割引と2割引の売値の差額は、 1.3×0.8−1.3×0.6=0.26

   よって、 26÷0.26=100 となり、定価の4割引で売ったのは100個  (終)


(追記) 令和2年4月5日付け

 次の階段の昇降問題も鶴亀算らしく見えないかな?

問題 長い階段のまんなかあたり、甲、乙の2人が同じ段に立っている。じゃんけんをして、
    勝った人は3段上がり、負けた人は2段下がる。12回じゃんけんをしたところ、甲は
    最初いた段より16段だけ上にいた。乙は最初いた段から数えて上下どちらに何段
    の位置にいるか?

(解) 12回すべて甲の勝ちとすると、12×3=36 より、36段上にいるはずである。

   ところが実際は16段なので、その差は、 36−16=20(段)

   勝ちの回数が1回減って負けの回数が1回増えると、段数は、 3+2=5段 だけ変
  化する。

  よって、 20÷5=4 より、勝ちの回数が4回減って、甲の 8勝4敗 となる。

  すなわち、乙の4勝8敗となり、 4×3+8×(−2)=−4 から、乙は最初いた段から
 数えて下に4段の位置にいる。  (終)


(追記) 令和元年10月13日付け

 江戸時代の和算書「勘者御伽双紙」の中に「さっさ立て」という遊びが紹介されている。

 30個の碁石と空の箱A、Bがある。一人の演者が「さあ」という掛け声とともに碁石を2ま
たは3個取って相手に見えないように2個の場合はAに、3個の場合はBに入れる。「さあ」
「さあ」・・・「さあ」という掛け声の数でAに入っている碁石の数を相手に当ててもらうという遊
びである。

 例えば、「さあ」の掛け声が12回のとき、Aに入っている碁石の数は、鶴亀算的に次のよう
に考えるとすぐ分かる。

 12回全部がAに入ったものとすると、合計24個にしかならないので、30個との差は6個と
なる。よって、6回はBに入り、残り6回はAに入るので、Aの碁石の数は12個となる。

 もちろん、A、Bに碁石を入れる回数をそれぞれ x、y 回とすると、連立方程式
x+y=12 、2x+3y=30 が立てられ、実際に、x=y=6 であることが確かめられるが、
それは、野暮というものだろう。


(追記) 令和4年8月12日付け

 鶴亀算は、その名前から分かるように、「鶴」と「亀」という2つの対象物に関する計算であ
るが、最近、次のような3つの対象物に関する鶴亀算を知ることが出来た。

問題 1個50円のアイス、1個130円の饅頭、1個90円のカステラを、合わせて14個買う
    と代金は、1100円になるという。ただし、アイスの個数は饅頭の個数の3倍とする。

     果たして、カステラは、いくつ買ったのだろうか?

(解) アイスの個数 : 饅頭の個数=3:1 なので、(130−50)÷4=20(円) から、アイ

   スと饅頭を合わせて、50+20=70(円) と考える。

  14個全部がカステラとすると、代金は、 90×14=1260(円) となるので、

  アイスと饅頭は合わせて、 (1260−1100)÷(90−70)=8(個) となる。

  したがって、カステラの個数は、 14−8=6(個) となる。  (終)


 (4) 弁償算

 もらえるはずの金額が弁済のために減らされる計算は、弁償算と言われる。

問題 運び賃が1個30円で、それを壊すと運び賃はもらえず50円の弁償金がかかる。
   100個運んで運び賃をもらい弁償金を払って残金2040円を得た。壊した数は何個か。

(解) 壊した数が0個だと、 30×100=3000(円)もらえるはずだが、実際は2040円。

   よって、 960÷80=12(個)が壊した数。  (終)


(追記) 令和4年8月13日付け

(5) 相当算

 線分図で、割合が相当する数量を考える問題は、相当算と言われる。

問題 所持金の40%より60円多い金額でものを買ったら、300円残った。最初の所持金
   はいくらだったか?

(解) 60+300=360(円) が60%に相当するので、最初の所持金は、

   360÷0.6=600(円)  (終)

問題 ある本を1日目に全体の1/3を読み、2日目に全体の1/4を読み終えたら、残り100
   ページとなった。この本は、何ページあるか?

(解) 1−1/3−1/4=5/12 が100ページに相当するので、全体のページ数は、

  100÷5/12=240(ページ)  (終)

問題 所持金の1/3を使って本を買い、残りの1/4を使ってアイスを買ったら、残金が600
   円となった。最初の所持金はいくらだったか?

(解) 1−(1/3+2/3×1/4)=1/2 が600円に相当するので、最初の所持金は、

 600÷1/2=1200(円)  (終)

 次に、少し難しい相当算を練習してみよう。

問題 大きなバケツに水が満杯入っている。その中から、全体の1/4と6リットルを汲み出
    し、次に残りの1/3を汲み出したら、バケツに12リットルの水が残った。初めにバケ
    ツにはいくらの水が入っていたか?

(解) 線分図を用いて、

  

 EFが2/3相当で、12リットルなので、BC=DFは、18リットル よって、ACは、24リットル

 よって、3/4相当が24リットルなので、初めのバケツには、32リットルの水が入っていた。
                                                     (終)


(追記) 令和4年8月15日付け

問題 AはBよりも260円高く、BはAの3/5よりも60円安い。Bはいくらか?

(解) 題意より、260-60=200(円)が2/5相当なので、Aは200÷2/5=500(円)

  よって、Bは、500-260=240(円)  (終)

問題 Bの所持金は、Aより450円少なく、Aの所持金はCより600円多い。Cの所持金は
    3人の所持金合計額の3/10を持っている。3人の所持金はそれぞれいくらか?

(解) 600+(600-450)=750(円)が、1−(3/10)×3=1/10相当なので、

  Cの所持金は、 750×3=2250(円)

  Aの所持金は、 2250+600=2850(円)

  Bの所持金は、 2850−450=2400(円)  (終)


例12 ・・・ 速さ・時間・距離

 平成26年度神奈川県公立高校入試数学で次のような問題が出題された。長文なので、
要点をおさえて掲示したいと思う。

 2地点A、Bの間に地点Cがあり、Aを出発してCまでは上り坂、Cから先は下り坂でBに
着く。この間の距離は、1200mである。上り坂では、分速50mで歩き、下り坂では分速
60mで歩くものとする。ある人がAを出発してCを通り、Bに着いたが、Cに引き返して、ま
た、Bに着いた。その間の所要時間は、34分であった。このとき、AC間の距離、および、
BC間の距離を求めよ。


 実際の問題では、「AC間の距離を x、BC間の距離を y として方程式をつくれ」という指示
があり、次のような模範解答が示された。

(解) 題意より、 x+y=1200 、

    x/50+y/60+y/50+y/60=34 すなわち、 3x+8y=5100

  よって、 5y=5100−3600=1500 より、 y=300  よって、 x=900  (終)

 問題文の指示に従えば、上記のように連立方程式をつくり解かねばならないが、指示が
なければ、上記の問題は、ほぼ小学生レベルの算数の問題だろう。

(別解) AからC、BからCの上り坂に要した時間の合計は、1200÷50=24(分)

 したがって、CからBの下り坂に要した時間は、 (34−24)÷2=5(分)

 よって、BC間の距離は、60×5=300(m)で、AC間の距離は、900mとなる。  (終)


(コメント) 新聞発表の解答では、方程式をもちいる方が(正答例)として掲載されているが、
      算数的に解いた(別解)では、どのような採点をするのだろうか?大いに興味があ
      るところである。

       あえて感想を言えば、「連立方程式の問題」を意識するあまり、問題が冗長な割
      には、内容が乏しく、いたずらに受検生を悩ませた感が否めない。(CからBは下り
      坂だがBからCは上り坂ということに気づく必要がある!)策に溺れたという感じで、
      もっと洗練された平易な作問が出来なかったのかと問いかけたくなる。算数レベル
      の解答をみれば、多分多くの方もそう思うことだろう。


(追記) 令和4年5月31日付け

問 題  A町から車に乗ってB町へ行く途中、丁度全体の道のりの5/6のところで車が故障
     してしまい、そこから徒歩でB町に着いた。徒歩に要した時間は、車で行った部分に
     要した時間の3倍でした。このとき、車の速さは、徒歩の何倍であるか?

(解) 全体の道のりを x とすると、車で走った道のりは、(5/6)x、徒歩の道のりは、(1/6)x

 車で行った部分に要した時間をTとすると、徒歩に要したは、3T となる。

 車の速さを v、徒歩の速さを u とすると、 vT=(5/6)x 、u・3T=(1/6)x

このとき、辺々割って、 v/(3u)=5 なので、 v/u=15

 以上から、車の速さは、徒歩の15倍である。  (終)


 連立方程式を立てれば上記のような解答になるが、この問題を算数的に解いてみよう。

(別解) 車で走った道のりは、徒歩の5倍で、要した時間は、1/3 なので、車の速さは、

    徒歩の 3×5=15(倍) である。  (終)


(追記) 令和4年6月22日付け

問 題  自転車で、指定された時間に行く。毎時15kmの速さだと、1時間早く着き、毎時
     8kmの速さだと、45分の遅刻となる。指定された時間に着くためには、速さはいか
     ほどか?

(解) 自転車で走る距離を x とおくと、題意より、 x/8−x/15=1+3/4

  すなわち、 (7/120)x=7/4 より、 x=30

 よって、指定された時間は、 30/15+1=3(時間後) である。

 このとき、求める速さは、 30/3=10(km/h) である。  (終)


(追記) 令和4年7月19日付け

 上記の問題は、過不足算的な見方をして解くことも出来る。

問 題  自転車で、指定された時間に行く。毎時15kmの速さだと、1時間早く着き、毎時
     8kmの速さだと、45分の遅刻となる。指定された時間に着くためには、速さはいか
     ほどか?

(別解) 指定された時間を x とおくと、題意より、 15(x−1)=8(x+3/4) と書ける。

  このとき、 7x=21 より、 x=3 となる。

 よって、求める速さは、 15×(3−1)÷3=10(km/時) となる。  (終)


 この問題に対して、面積図を用いた解法も有効だろう。

(別解) (速さ)×(時間)で、距離は面積で表される。

    

 上図において、緑色部分の面積は、 8×(1+3/4)=14

 水色部分の面積と緑色部分の面積は等しいので、 14÷(15−8)=2(時間)

 よって、距離は、 15×2=30(km) となり、この距離を3時間で行けばよいので、

求める速さは、 30÷3=10(km/h) となる。  (終)


 読者のために、練習問題を残しておこう。

練習問題  徒歩で、指定された時間に行く。毎分100mの速さだと、12分早く着き、毎分
       60mの速さだと、20分の遅刻となる。指定された時間に着くためには、速さは
       いかほどか?

(解) 指定された時間を x とおくと、題意より、 100(x−12)=60(x+20) と書ける。

 このとき、 40x=2400 より、 x=60 となる。

 よって、求める速さは、 100×(60−12)÷60=80(m/分) となる。  (終)


(別解) 面積図を用いる。

    

 上図において、緑色部分の面積は、 60×(12+20)=1920

 水色部分の面積と緑色部分の面積は等しいので、 1920÷(100−60)=48(分)

 よって、距離は、 100×48=4800(m) となり、この距離を60分で行けばよいので、

求める速さは、 4800÷60=80(m/分) となる。  (終)


(追記) 令和4年6月18日付け

例13 ・・・ 比例・反比例

 「ばねばかり」に関する問題が洛星中学 入試問題(2022)で出題された。理科っぽい面
白い問題なので、紹介したいと思う。問題は、改題しました。

問 題  3つのばねばかり A、B、C がある。ただし、Aは正しい重さを示すが、BとCは正し
     くない重さを示す。Aにつるして25gを示した重りをBにつるしたら20gを示した。

 また、重り5個分をBにつるしたときに示す重さと、重り6個分をCにつるしたときに示す重
さが同じになった。

 Cにつるしたときに100gを示した重りをAにつるすと、何gを示すか?

 但し、Bが示す重さとCが示す重さは、それぞれ正しい重さに比例するものとする。

(解) Cにつるしたときに100gを示した重りをBにつるすと、題意より、

   100×(6/5)=120(g) の重さを示す。

  よって、Aにつるすと、 120×(25/20)=150(g) の重さを示す。  (終)


 次のような別解も考えられる。

(別解) ばねばかり同士が示す重さの比を考える。

  題意より、 A : B=25 : 20=5 : 4 で、 B : C=6 : 5 である。

 このとき、A : B : C=15 : 12 : 10 となるので、A : C=15 : 10=3 : 2 である。

 Cが100gを示すとき、Aは、 100×(3/2)=150(g) を示す。  (終)


(コメント) BとCのばね定数を、それぞれk、k’とおくと、フックの法則から、

   (重り5個分)×k=Bが示す重さ 、(重り6個分)×k’=Cが示す重さ

 よって、題意より、 Bが示す重さ=Cが示す重さ なので、 

  (重り5個分)×k=(重り6個分)×k’ すなわち、 k=(6/5)×k’

 したがって、 Cにつるしたときに100gを示した重りをBにつるすと、

 Bが示す重さは、 (6/5)×100=120(g) となる。

#ばねばかりはフックの法則が示すように単純なのですが、同じ重さを測定するときに個数
 と反比例になるところが難しいですね!


(追記) 令和4年6月25日付け

問 題  3種類の果物A、B、Cがある。A8個の重さは、B2個とC1個の重さに等しい。ま
     た、A6個とB1個の重さは、C2個の重さに等しい。C1個と同じ重さにするには、A
     は何個必要か?

(解) 8A=2B+C 、6A+B=2C が成り立つので、 20A=5C より、 C=4A

   よって、 C1個と同じ重さにするには、Aは4個必要である。  (終)


(追記) 令和4年7月12日付け

問 題  玉葱が3kg入りの袋と2kg入りの袋に分けてあり、合わせて15袋の玉葱がある。
     3kg入りの袋全部と2kg入りの袋全部の重さは等しいとき、それぞれ何袋あるのだ
     ろうか?

(解) 3kg入りの袋と2kg入りの袋がそれぞれ x 個、y 個とすると、 x+y=15

  題意より、 3x=2y なので、 2x+3x=30 より、 x=6 、y=9  (終)

 連立方程式を回避するには次のように解けばよい。

(別解) 3kgいりの袋の数は、2kg入りの袋の数の 2/3 倍なので、2kg入りの袋の数は、

    15÷(1+2/3)=9(個) で、3kg入りの袋の数は、 15−9=6(個)  (終)


(追記) 令和4年6月28日付け

問 題  3層A、B、Cからなるケーキがある。

   

 Cの重さは、500gで、Aの重さは、Bの半分にCの重さの1/5を加えたものに等しい。
また、Bの重さは、Aの重さの1/4とCの重さを加えたものに等しい。

 このケーキの重さを求めよ。

(解) 題意より、 C=500 、A=(1/2)B+(1/5)C 、B=(1/4)A+C なので、

  2A=B+(2/5)C=(1/4)A+C+(2/5)C=(1/4)A+(7/5)C

 よって、 (7/4)A=(7/5)C より、 A=(4/5)C=400

 このとき、 B=(1/4)A+C=600 なので、 A+B+C=1500(g)  (終)


(追記) 令和5年8月31日付け

例14 ・・・ 面積の計算

 同じ図形を並べることによって、方程式の計算が回避される場合があることを、最近知る
ことができた。

 ∠B=90°の直角三角形ABCにおいて、斜辺AC=5で、他の2辺の和が7である
とき、△ABCの面積を求めよ。


  

 この問題は、中学生・高校生的には普通次のように解かれるであろう。

(解) AB=x とおくと、BC=7−x なので、三平方の定理より、 x2+(7−x)2=52

 展開して整理すると、 x2−7x+12=(x−3)(x−4)=0 から、x=3、4

 よって、 (x ,y)=(3 ,4)、(4 ,3)

 何れにしても、△ABC=3×4÷2=6  (終)

 これに対して、次のような別解が考えられる。

(別解) △ABCを反時計回りに90°回転した△A’B’C’を並べて、下図を得る。

 

 このとき、求める面積は、 (7×7÷2−5×5÷2)÷2=6  (終)


(追記) 令和6年1月30日付け

 大中小の3つの正方形が隣接している。

  

 大と中の辺の長さの差は5で、中と小の辺の長さの差は3である。また、大中小の正方形
の1辺の長さの和は20である。このとき、中の正方形の面積を求めよ。

 文字を用いて解くと、次の通り。

 中、小の正方形の1辺の長さをそれぞれ x、y とおくと、題意より、

 (x+5)+x+y=20 、 x=y+3  すなわち、 2x+y=15 、x=y+3

 よって、 2y+6+y=15 より、 y=3 なので、 x=6

 したがって、中の正方形の面積は、6×6=36

 これに対して、次のように考えれば、連立方程式は回避される。

(解) 中の正方形の1辺の長さは、 {(20−5)+3}÷3=6 なので、

求める面積は、 6×6=36  (終)


 よおすけさんから別解をいただきました。(令和6年2月1日付け)

(別解) 使う文字を x のみとした場合は、以下のようになります。

 中の1辺の長さを x とすると、小の1辺の長さは、x−3、大の1辺の長さは、x+5 で、

大中小の正方形の1辺の長さの和は20なので、 x+5+x+x−3=20 より、x=6

 よって、中の正方形の面積は36  (終)



  以下、工事中