・ 3次方程式の解 S.H氏
高校2年になると、高次方程式を学ぶ。旧学習指導要領では「数学B」に含まれていたこ
とを考えると、「数学II 」に移行したことにより、高次方程式を学ぶ高校生が増えることは確
実だろう。ただ、昨今の選択科目の大幅導入により、今までほぼ全員「数学II
」を学んでい
たのが、「数学II 」を選択科目に設定している高校が大幅に増えてきており、高校2年生は
全員「数学II 」を学んでいると考えるわけにはいかなくなりつつある。
ある統計によれば、ある県の高校の「数学II 」の必修になっている割合は、36.8%に過
ぎず、残りは選択に甘んじている。従って、高校2年で「数学II 」を学ぶ割合は、7割ぐらい
だろう。数学に対する風当たりが厳しい昨今ながら、残念なことである。
教科書では因数定理の応用として高次方程式が扱われ、あたかも、全ての3次方程式が
因数定理を用いると解かれるような錯覚を覚えさせられる。
しかしながら、一般的に3次方程式を解くことは困難である。むしろ解くことは、諦めた方が
よいという場合がほとんどである。もちろん、2次方程式の解の公式と同様に、3次方程式の
解の公式も存在するが、個人的には、あまりなじめない。
一般に、解くことは諦めた方がよい3次方程式であるが、次のような解法を見せられると、
思わず引き込まれてしまうから不思議だ。
例 3次方程式 X3+X2−2X−1=0 を解け。
グラフの解析を行うことにより、この3次方程式は、−2 と −1 の間、−1
と 0 の間、1
と 2 の間にそれぞれ一つずつ解を持つことが分かる。しかし、その解を因数定理を用いて
求めることは難しい。
いま、X=Y+1/Y とおく。
(Yはもちろん複素数とする。Yが実数だと、| X |≧2 となって、意味をなさない。)
このとき、3次方程式に代入して、分母を払い整理すれば、
Y6+Y5+Y4+Y3+Y2+Y+1=0
となる。両辺に、Y−1 を掛ければ、
Y7−1=0
となる。したがって、Y は、(1と異なる)1の7乗根である。
1の7乗根は、Y=exp(2nπi/7) (n=1、2、3、4、5、6 i
は虚数単位) と書ける。
このとき、X=Y+1/Y=2cos(2nπ/7) となる。
n=1、2、3、4、5、6 を代入して異なるものを求めれば、3次方程式の解は、
−2cos(π/7) 、−2cos(3π/7) 、2cos(2π/7)
となる。