大川研究室主催 | |
『数学の問題コーナー』 に挑戦! |
このページでは、日頃からお世話になっている広島工業大学の大川研究室が主催する
『数学の問題コーナー』の問題に挑戦したいと思う。
(追記) 大川先生が逝去されて、上記のサイトもリンクが切れているようです。
Kelly Burkhardさんより、まだネット内には検索すると関連ページが見られるとご教示
いただきました。ただし、残念ながら大川先生の書かれたものが残っているわけでは
ないとのことです。Kelly Burkhardさんに感謝します。2018.7.14(→ 参考)
目 次 (順不同) | ||||||
問題番号 | 出 題 分 野 | 問題番号 | 出 題 分 野 | |||
107 | ・・・・・ | 因数分解 | 56 | ・・・・・ | 無理数性の証明 | |
4 | ・・・・・ | 整数論(体) | 79 | ・・・・・ | 整数論(整除) | |
118 | ・・・・・ | 整数論(周期性) | 109 | ・・・・・ | 平面幾何 | |
200 | ・・・・・ | 整数論(不定方程式) | 3 | ・・・・・ | 無理数性の証明 | |
260 | ・・・・・ | 数列(漸化式) | 262 | ・・・・・ | 分数方程式 | |
263 | ・・・・・ | 確率論 | 15 | ・・・・・ | 解の存在範囲 | |
161 | ・・・・・ | 順列組合せ | 269 | ・・・・・ | 空間図形 | |
274 | ・・・・・ | 条件付き最大最小 | 13 | ・・・・・ | 極値の和 | |
268 | ・・・・・ | 行列のn乗 | 293 | ・・・・・ | 無理数の計算 | |
103 | ・・・・・ | 数学パズル | 316 | ・・・・・ | 不等式の証明 | |
326 | ・・・・・ | 関数の極限 | 339 | ・・・・・ | 3次方程式の解 | |
問題107 次の式を因数分解せよ。
x4 + y4
+ z4 + w4 - 2( x2y2 +
x2z2 + x2w2
+y2z2 + y2w2 +
z2w2 ) + 8xyzw
[類題] x6 - y6
+ z6 -3x4y2 + 3x2y4 +
2x3z3 + 6xy2z3 を因数分解せよ。
大川研究室のHPでは、答はあるものの途中経過がないので、高校生に戻った気分で次のよ
うに解いてみた。
問題107、類題ともに、解法の根底にあるのは、いわゆる「たすき掛け」の手法である。
(解) 与式=x4 + y4
+ z4 + w4 - 2( x2y2 +
x2z2 + x2w2
+y2z2 + y2w2 +
z2w2 ) + 8xyzw
=( x2 - y2 )2 + 2x2y2 + ( z2 - w2)2+ 2z2w2
- 2( x2y2 +
x2z2 + x2w2 + y2z2 + y2w2 +
z2w2 ) + 8xyzw
=( x + y )2( x - y )2- 2( x2z2 + x2w2 + y2z2 + y2w2 - 4xyzw ) + ( z + w )2( z - w )2
ここで、簡単な計算から、
( x + y )2( z - w )2+ ( x - y )2( z + w )2= 2( x2z2 + x2w2 + y2z2 + y2w2- 4xyzw )
なので、たすき掛けにより、
与式=(( x + y )2- ( z + w )2)(( x - y )2- ( z - w )2)
したがって、
与式=( x + y + z + w )( x + y - z - w )( x - y + z - w )( x -
y - z + w )
と因数分解される。(終)
類題も同様にできる。
(解) 与式=( x2 - y2)3 + z6 + 2x3z3 + 6xy2z3
=z6 + ( 2x3 + 6xy2)z3 + ( x + y)3( x - y)3
ここで、簡単な計算から、
( x + y)3 + ( x - y)3 = 2x3 + 6xy2
なので、たすき掛けにより、
与式=( z3+ ( x + y)3)( z3+ ( x - y)3)
=( z + x + y )( z2- z( x + y ) + ( x + y )2 )( z + x - y )( z2 - z( x - y ) + ( x - y )2)
=( x + y + z )( x2 + y2 + z2+ 2xy - yz - zx )( x - y + z )( x2 + y2 + z2- 2xy + yz - zx )
と因数分解される。(終)
問題56 自然対数の底 e は無理数である。
この問題については、既に当HPで解答掲載済みである。(→ こちらを参照)
問題107に関連して、次の問題 4も興味深い。
問題 4 3つの数 は有理数体上一次独立であることを示せ。
(解) いま、有理数 a、b、c を用いて、
とする。
両辺に十分大きい自然数をかけることにより、初めから、 a、b、c は整数としてよい。
a、b、c のうち、少なくとも一つは 0 でないと仮定する。
このとき、 が無理数であることから、a、b、c のどれも 0 とはならない。
よって、a、b、c の最大公約数で両辺を割り算することにより、a、b、c は互いに素と
してよい。
そこで、上式の両辺に、 をかける。
展開して、式を整理すると、
a3+2b3+4c3−6abc=0
となる。
a3=−2b3−4c3+6abc
において、右辺は、偶数だから、左辺の a3 、すなわち、a は偶数となる。
a=2k (kは整数)を、上式に代入して、式を整理すれば、
b3=−4k3−2c3+6kbc
よって、同様な理由から、b も偶数となる。
b=2m (mは整数)を上式に代入して、式を整理すれば、
c3=−4m3−2k3+6kmc
よって、同様な理由から、c も偶数となる。
以上から、a、b、c はともに偶数となり、a、b、c が互いに素としたことに矛盾する。
したがって、a = b = c = 0 となり、 は有理数体上一次独立となる。
問題107のような単に因数分解だけの問題だったら無味乾燥で味気ないが、この問題の
ような、応用例のある因数分解だと、俄然輝きを増してくるから不思議だ。
問題79 21092−1 は 10932 で割り切れる事を示せ。
[類題] 23510 −1 は 35112 で割り切れる事を示せ。
大川研究室の解答は、とても美しい。このページでは、強引に計算を推し進めて、結果を
示そうと思う。(多分、誰もやりたがらない計算だろう。)
p=1093 とおく。 p−1=1092=22×3×7×13 と素因数分解されるので、約数は、
1、 2、 3、 4、 6、 7、 12、 13、 14、 21、 26、 28、 39、 42、
52、 78、 84、 91、156、182、273、364、546、1092
の 24個ある。これらについて、p2 を法とした、2x の値を求めてみると、
21=2
22=4
23=8
24=16
26=64
27=128
212≡4p−276
213≡7p+541
214≡15p−11
221≡−267p−315
226≡191p−243
228≡−330p+121
239≡−139p−303
242≡−21p−238
252≡133p+27
278≡157p−3
284≡211p−192
291≡−339p−530
2156≡151p+9
2182≡−1
上式の両辺を6乗して、 (2182)6≡(−1)6 すなわち、21092≡1
類題も同様にやってみよう。
p=3511 とおく。 p−1=3510=2×33×5×13 と素因数分解されるので、約数は、
1、 2、 3、 5、 6、 9、 10、 13、 15、 18、 26、 27、 30、 39、
45、 54、 65、 78、 90、117、130、135、195、234、270、351、390、585、
702、1170、1755、3510
の 32個ある。これらについて、p2 を法とした、2x の値を求めてみると、
21=2
22=4
23=8
25=32
26=64
29=512
210=1024
213≡2p+1170
215≡9p+1169
218≡75p−1181
226≡1559p−390
227≡−393p−780
230≡365p+782
239≡911p+130
245≡2130p+1298
254≡−1172p+997
265≡−1661p−1546
278≡1628p−655
290≡135p−476
2117≡1121p−886
2130≡−100p−875
2135≡303p+88
2195≡322p+1015
2234≡1037p+2043
2270≡665p+722
2351≡1616p−1933
2390≡907p+1502
2585≡283p+756
2702≡−323p+785
21170≡−283p−757
21755≡1
上式の両辺を2乗して、 ( 21755)2≡1 すなわち、23510≡1
上記の計算は、小さい電卓を片手に計算したものである。
p=1093 の場合は、それほど気の遠くなるような計算ではなく、比較的楽に求めることが
できた。 291≡−339p−563 まで計算して、係数の大きさに不安になった(大川研究室
の結果を知っていたので、それほどでもなかったが...)が、鮮やかに、 2182≡−1 が示
されて、とても感動した。深い森の中で、一気に展望がひらけたような気分であった。
それに対して、p=3511 の場合は、大変だった。計算しては、計算ミスが発見され、何
度か計算を繰り返した。私の傍らで、「何かお手伝いできれば、・・・」と計算用紙を見た、あ
る女性の方は、大変な計算に「見なかったことにします!!」と言って、足早に去ってしまっ
た。 p=1093 の場合のように、途中で、何がしかの劇的な式を期待したが、
21755≡1
に到達するまで、遠くて長い茨の道であった。とても、疲れた。1755=33×5×13 なの
で、p=1093 のときのような上手い解法は、あまり期待できないと思う。
問題118 は、フィボナッチ数列の周期性に関する問題である。
フィボナッチ数列 {an} とは、、漸化式
a1 = 1、a2 = 1、 an + 2 = an + 1 + an
により定まる数列である。(詳しくは、こちらを参照)
最初のいくつかの項を列挙すれば、
1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233、377、610、987、1597、・・・
となる。これらの各項を、例えば、mod 2 で考えれば、数列は、
1、1、0、1、1、0、1、1、0、1、1、0、1、1、0、1、1、・・・
また、mod 3 で考えれば、数列は、
1、1、2、0、2、2、1、0、1、1、2、0、2、2、1、0、1、・・・
となり、同じ数字の列(赤字の部分)が繰り返し現れる。このような現象を、フィボナッチ数列
の周期性という。
問題118によれば、次のように定義される。
自然数 N と p に対し、p がフィボナッチ数列 {an} の mod N 周期であるとは、
任意の自然数 n に対して、 an + p ≡ an (mod N)
が成り立つときをいう。
このような p のうち、最小の正の数を、通常 mod N 周期 と呼ぶことは、三角関数におけ
る周期の場合と同じである。
上記にあげた例によれば、mod 2 周期は、3 で、mod 3 周期は、8 となる。
このとき、次の定理が成り立つ。
定理
どんな自然数 N に対しても、フィボナッチ数列は、 0 以外の mod N 周期 p を持つ。
問題118によれば、この定理の証明は、「フィボナッチ数列の定義のされ方によりすぐ分か
る。」とされているが、それほど自明なこととは思われないので、ここで、証明しておきたい。
フィボナッチ数列 {an}において、an ≡ rn (mod N) (ただし、0≦ rn≦N−1)とする。
このとき、順序対( rn , rn+1 )において、0≦ rn≦N−1、0≦ rn+1≦N−1 なので、起こり
うる場合の数は、全部で N2 個ある。
ところで、n の値の範囲として、0 ≦ n ≦ N2 (ただし、r0 =0 とする。)で考えるものとす
れば、順序対( rn , rn+1 )は全部で N2+1 個できる。
したがって、鳩ノ巣原理により、
( rk , rk+1 )=( rm , rm+1 )
となる k、m (k<m) が存在する。すなわち、 rk = rm 、rk+1 = rm+1 が成り立つ。
ここで、k=0 ならば、自然数 p として、p=m とおけばよい。
もし、k≧1 ならば、mod N において、
rk-1 ≡ ak-1 =ak+1− ak ≡ rk+1− rk = rm+1− rm ≡ am+1− am = am-1 ≡ rm-1
すなわち、 rk-1 = rm-1 となる。
以下同様にして、rk-2 = rm-2 、・・・、r0 = rm-k が示される。
そこで、p=m−k とおけば、p は自然数で、 rp = r0 = 0 となる。
上記の計算から、さらに、 rp+1 = r1 であるので、
rp+2 ≡ ap+2 =ap+1+ ap ≡ rp+1+ rp = r1+ r0 ≡ a1+ a0 = a2 ≡ r2
すなわち、 rp+2 = r2 となる。 (ただし、a0=0 とする。)
以下同様にして、rp+3 = r3 、・・・、rp+p-1 = rp-1 、r2p = rp = r0、・・・ が示される。
(厳密には、数学的帰納法により示される。)
以上から、ある自然数 p が存在して、任意の自然数 n に対して、an + p ≡ an (mod N) の
成り立つことが示された。
(参考文献:和田秀男 著 数の世界 整数論への道 (岩波書店))
(補足) ・・・・・ 「mod N 周期」について、ある特殊な場合には、循環節の長さを求める公
式が存在する。
公式 5以外の奇素数 P に対して、
P≡1、9 (mod 10) のとき、mod P 周期は、P−1
P≡3、7 (mod 10) のとき、mod P 周期は、2P+2
で与えられる。
証明は、「硲 文夫 著 初等代数学 (森北出版)」に詳しく載っている。是非ご覧頂き
たい。
(硲 さんとは、随分昔、東北大学で行われた代数幾何学のシンポジウムでお会いしたことがある。私の先輩の
友人という関係であるが、数学に対する造詣の深さに感嘆したことを覚えている。)
ここでは、上記の公式を活用しながら、1≦N≦60 の各Nの値に対して、mod
N 周期を
求めようと思う。興味を持った読者の方は、N≧61 についても計算してみて下さい。
N | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
周期 | 1 | 3 | 8 | 6 | 20 | 24 | 16 | 12 | 24 | 60 | 10 | 24 | 28 | 48 | 40 |
N | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
周期 | 24 | 36 | 24 | 18 | 60 | 16 | 30 | 48 | 24 | 100 | 84 | 72 | 48 | 14 | 120 |
N | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43 | 44 | 45 |
周期 | 30 | 48 | 40 | 36 | 80 | 24 | 76 | 18 | 56 | 60 | 40 | 48 | 88 | 30 | 120 |
N | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 |
周期 | 48 | 32 | 24 | 48 | 300 | 72 | 84 | 108 | 72 | 20 | 48 | 72 | 42 | 58 | 120 |
上記の表の作成には、表計算ソフト Excel を用いた。フィボナッチ数そのものは必要でな
く、余りを、フィボナッチ数列の漸化式に代入して、順次余りを計算すると楽である。
また、上記の証明からも分かるように、「1、1」と、「1」が連続するところまでが循環節であ
ることに注意する。
上記の表で、公式通りだと、N=29 のとき、周期は 28 となるはずであるが、実際は、14
である。もちろん、28 も周期なのだが、最小の正の数ということから考えると、少し違和感を
覚える。同様に、N=47 のときも、公式と若干ズレが生じた。公式通りだと、周期は 96 とな
るはずであるが、実際は、32 である。どうして、このような現象が起こったのであろうか。証
明を精査する必要がありそうだ。
また、’03杜陵サークル5月例会において、伊藤潤一(平舘高校)さんが、次のような公式
を証明されている。
公式 k を2以上の自然数とする。このとき、
mod 2k 周期は、3・2k-1 であり、mod 5k 周期は、4・5k である。
上記の表で確認すると、mod 4(=22) 周期は、6(=3・22-1)
mod 8(=23) 周期は、12(=3・23-1)
mod 16(=24) 周期は、24(=3・24-1)
mod 32(=25) 周期は、48(=3・25-1)
mod 25(=52) 周期は、100(=4・52)
で、確かに成り立っている。
問題109 平行四辺形 ABCD がある。
AB の中点を P, BC の三等分点を B = B0、 B1、 B2 、B3 = C, AB1 と DP の交点を Q とする時、四 角形 BB1QP の面積は、ABCD の面積のどれだけ か?比を求めよ。 |
(解) 点Pより、BCに平行線を引き、線分AB1との交点をRとする。
このとき、中点連結の定理より、2PR=BB1 で、△AQD∽△RQP から、AQ:QR=6 : 1 よって、AQ:QB1=3 : 4 となる。 したがって、四角形BB1QPの面積は、 平行四辺形ABCDの面積の、 |
(コメント) 大川研究室では中学程度の問題として紹介されているが、解答があまり中学的
でないとの理由から、答が「・・・・・。」である。多分、答は上記であっているはずだ
が、ちょっとだけ不安...。でも、解答に用いる手法から言えば、十分中学的だと
思うのだが...?
問題200 不定方程式
i) y2= x4 + x3 + x2 + x + 1 の自然数解は (x , y) = ( 3 , 11)
ii) y2 = x4
+ 2x3 + 2x2 + 2x + 5 の自然数解は (x , y) = ( 2 , 7)
何れもこれが全て。
大川研究室のHPでの解法が斬新だったので、ちょっと解法をなぞってみた。
(解) @) F(x)=x2 +(1/2)x 、G(x)=x2 +(1/2)x+1/2 とおく。
このとき、 y2−(F(x))2=(3/4)x2 +x+1=(3/4)(x+2/3)2+2/3>0
(G(x))2−y2=(1/4)x2 −(1/2)x−(3/4)=(1/4)(x−1)2−1
ここで、x>3 のとき、
F(x)>0 、G(x)>0 、y2−(F(x))2>0 、(G(x))2−y2>0
なので、 x>3 のとき、
(F(x))2<y2<(G(x))2 すなわち、 F(x)<y<G(x)
が成り立つ。
このとき、自然数 x (x>3)に対して、必ず、F(x)、G(x)
のどちらかが自然数で、
G(x)−F(x)=1/2<1
なので、y が自然数になることはない。
よって、x=1、2、3 の場合についてのみ調べればよい。
x=1 のとき、 y2=5 (不適)
x=2 のとき、 y2=31 (不適)
x=3 のとき、 y2=121 より、 y=11
したがって、求める自然数解は、 x=3 、y=11 のみ。
A) F(x)=x2 +x 、G(x)=x2 +x+1 とおく。
このとき、 y2−(F(x))2=x2 +2x+5=(x+1)2+4>0
(G(x))2−y2=x2 −4
ここで、x>2 のとき、
F(x)>0 、G(x)>0 、y2−(F(x))2>0 、(G(x))2−y2>0
なので、 x>2 のとき、
(F(x))2<y2<(G(x))2 すなわち、 F(x)<y<G(x)
が成り立つ。
このとき、自然数 x (x>2)に対して、必ず、F(x)、G(x)
はともに自然数で、
G(x)−F(x)=1
なので、y が自然数になることはない。
よって、x=1、2 の場合についてのみ調べればよい。
x=1 のとき、 y2=12 (不適)
x=2 のとき、 y2=49 より、 y=7
したがって、求める自然数解は、 x=2 、y=7 のみ。
(コメント) 同型の二次関数で挟み込むという発想が素晴らしいですね!
問題3 は、無理数である事を証明せよ。
平成17年3月12日に当HPの掲示板に、この問題に関する書き込みがあった。大川研
究室のHPでの解法がちょっと分かりにくかったので、質問をされた cbc 様の疑問を解決
すべく、少し文言等を補充して考えてみた。
(解) が有理数であるとして、 = m/n (m、n は自然数で、n は、最小のもの)
とする。これより、 2n2 = m2 を得るが、 m が奇数であるとすると矛盾を生ずるので、
m=2k なる自然数 k が取れる。これより、 n2 = 2k2 となり、 n も偶数( n=2p) と
なり、 = k/p であるが、これは、 n の最小性に反するから矛盾。
よって は無理数である。
(別解) = m/n (m、n は自然数で、n は、最小のもの)とする。このとき、
1<<2 なので、 0<n<m<2n が成り立つ。
ところで、 (+1)(−1) = 1 なので、
= (√2−1)- 1 - 1
このとき、 = m/n を上式に代入すると、
= (2n−m)/(m−n)
0<m−n<n なので、これは n の最小性に反するから矛盾である。
よって は無理数である。
(更なる別解) 1<<2 なので、0< | 1 − | <1 が成り立つことに注意する。
このとき、n を十分大きくとれば、( 1 − )n は限りなく 0 に近づく。
いま、 ( 1 − )n を 2 項展開して、 の偶数冪と奇数冪の項に分ける
と、 ( 1 − )n = an + bn となる整数 an 、 bn が存在する。
構成法から、 an≧1 、 bn≦−1 である。
が有理数であるとして、 = p/q (p、q は自然数)と置くと、
| 1 − |n = | an・q + bn・p |/q
an・q + bn・p は整数で、0 とは異なるから、 | an・q + bn・p |≧1
よって、| 1 − |n ≧1/q となり、これは、( 1 − )n が限りなく 0
に近づくことに矛盾する。
よって は無理数である。
(コメント) が無理数であることの証明は、こちらも参照。 cbc 様、このような解法では
いかがでしょうか?
問題260 数列 {an}(n=0、1、2、・・・)を
a0=3 、 an+1=a0a1a2・・・an+2
で定めるとき、その一般項を求めよ。
[類題] a0=13 、 an+1=4(a0a1a2・・・an)2+6(a0a1a2・・・an)+3
この問題は、高校生レベルの問題なので、解答を詳しく書いてみることにした。
(解) 漸化式より、 an+1=a0a1a2・・・an+2=(an−2)an+2 が成り立つ。
よって、 a1=(a0−2)a0+2=5=22+1
a2=(a1−2)a1+2=17=24+1
a3=(a2−2)a2+2=257=28+1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
より、
an=22n+1
と類推される。この類推が正しいことを数学的帰納法により示す。
n=0 のとき、 左辺=a0=3 右辺=220+1=3 で、左辺=右辺
よって、n=0 のとき成り立つ。
n=k(k≧0)のとき成り立つと仮定する。すなわち、 ak=22k+1
このとき、 ak+1=(ak−2)ak+2=(22k−1)(22k+1)+2=22k+1+1
となり、n=k+1 のときも成り立つ。
以上から、 an=22n+1 (n=0、1、2、・・・) が成り立つ。
(コメント) [類題]も同様にできるのだろうが、その方策は今のところ未解決である。後で
じっくり考えることにしよう。
(追記) 類題がようやく解けました!ちょっと本題の解答に先入観があって盲点に入ってい
ました。
(類題の解) bn=a0a1a2・・・an とおくと、 b0=13 で、与えられた漸化式は、
bn+1/bn =4bn2+6bn+3
となる。分母を払って、
bn+1 =4bn3+6bn2+3bn
よって、
2bn+1+1=8bn3+12bn2+6bn+1=(2bn+1)3
3を底として両辺の対数をとると、
log3(2bn+1+1)=3log3(2bn+1)
これより、数列 {log3(2bn+1)} は、初項 log3(2b0+1)=log327=3 で、
公比 3 の等比数列なので、
log3(2bn+1)=3・3n=3n+1
となる。
よって、 bn=(33n+1−1)/2
このとき、 an=bn/bn−1=(33n+1−1)/(33n−1)
ここで、3n=x とすると、
33n+1−1=33x−1=(3x)3−1=(3x−1)((3x)2+3x+1)
33n−1=3x−1
よって、 an=(3x)2+3x+1 となるので、元に置き換えると、
an=32・3n+33n+1
となる。
(コメント) 置き換えに気がつくと難なく解けました。上記の本題では数学的帰納法で求め
ましたが、このような解法を適用すれば直接的に求まりますね!
(本題の別解) bn=a0a1a2・・・an とおくと、 b0=3 で、与えられた漸化式は、
bn+1/bn =bn+2
となる。分母を払って、
bn+1 =bn2+2bn
よって、
bn+1+1=(bn+1)2
2を底として両辺の対数をとると、
log2(bn+1+1)=2log2(bn+1)
よって、
log2(bn+1)=2n+1 より、 bn=22n+1−1
このとき、an=bn/bn−1=(22n+1−1)/(22n−1)=22n+1
(コメント) この解法を見て、類題が本当に類題になっていることに納得しました。
問題262 a1、a2、・・・、an を相異なる実数とする。この時、分数方程式
は、n - 1 個の相異なる実数解を持つことを示せ。
(解) 一般性を失うことなく、 であるとしてよい。
与えられた分数方程式の分母を払って、
とおくと、 F(x) は、連続関数である。 このとき、
において、明らかに、 が成り立つ。
よって、方程式 F(x) = 0 は、 a1 と a2 の間に実数解を持つ。
同様にして、
、 、 ・・・ 、
より、方程式 F(x) = 0 は、 ak と ak+1 (k=2、3、・・・、n−1) の間に実数解を持つ。
以上から、方程式 F(x) = 0 は、 n−1 個の相異なる実数解を持ち、これらは、元の
分数式の分母を 0 にしない。
したがって、与えられた分数方程式は、n - 1 個の相異なる実数解を持つ。
(コメント) 高校程度の容易問題とのことですが、連続関数の知識を使うので、数学III
(高校
3年)相当でしょうか?
問題263 A1、 A2、・・・、 An を独立な確率事象とするとき、その余事象
A1c、 A2c、・・・、 Anc も独立になることを示せ。
(解) A1c、 A2c、・・・、 Anc のうちの任意の有限個 B1、 B2、・・・、 Bmを取り出して、
P(B1∩ B2∩・・・∩ Bm)=P(B1)P(B2)・・・P(Bm)
が成り立つことを示せばよい。ただし、Bk=Ankc とする。
m=2 のとき、 P(B1∩ B2)=P(An1c∩ An2c)
=1−P(An1∪ An2)
=1−P(An1)−P(An2)+P(An1∩ An2)
=1−P(An1)−P(An2)+P(An1)P(An2)
=(1−P(An1))(1−P(An2))
=P(An1c)P(An2c)
=P(B1)P(B2)
よって、m=2 のとき、成り立つ。
m=k(k≧2)のとき、成り立つと仮定する。すなわち、
B1、 B2、・・・、Bk は独立とする。
このとき、
P(B1∩ B2∩・・・∩ Bk+1)
=P((B1∩ B2∩・・・∩ Bk)−P((B1∩ B2∩・・・∩ Bk)∩ Bk+1c)
=P(B1)P(B2)・・・P(Bk)−P(B1)P(B2)・・・P(Bk)P(Bk+1c)
=P(B1)P(B2)・・・P(Bk)(1−P(Bk+1c))
=P(B1)P(B2)・・・P(Bk)P(Bk+1)
よって、B1、 B2、・・・、Bk、Bk+1 も独立となる。
以上から、A1、 A2、・・・、 An が独立ならば、A1c、 A2c、・・・、 Anc も独立になる。
問題15 a、b を実定数とし、 f(x)=x4+ax+b と置く。方程式 f(x)=0 の実数
解がただ一つであると仮定する。このとき、 a、b の間に成立する関係式を
求め、 f(x)=0 の全ての解を a (あるいは b )で表し、a、b
がその条件
を満たしながら動くとき、解の取りうる範囲を複素平面上に図示せよ。
詳しい解答は、読者の計算に委ねるとあるので、計算してみた。
(解) f(x)=x4+ax+b より、その導関数は、 f’(x)=4x3+a で、
f’(x)=0 はただ一つの実数解 α を持つ。 ただし、
である。 このとき、
により、 f(x) は、x=α で極小かつ最小である。
題意により、方程式 f(x)=0 は、実数解をただ一つ持つので、 f(α)=0 が成り立つ。
このとき、
において、
よって、
すなわち、 27a4=256b3 が成り立つ。
ところで、 f(x)=x4+ax+3α4=(x−α)2(x2+2αx+3α2) と因数分解されるので、
方程式 f(x)=0 の解は、 x=α(重解)、(−1± i)α となる。
したがって、解の存在範囲を複素平面上に図示すれば、下図のようになる。
問題161 1、2、3、・・・19、20 と数字の書かれた(各 1 枚、計 20 枚)のカード
から、どの2つのカードも互いに連続した数字にならないような 8 枚のカ
ードの選びかたは何通りあるか?
[類題] 1、2、3、・・・29、30 の30枚のカードから、どの2つのカードも数字
の差が 3 以上になるような 8 枚のカードの選びかたは何通りあるか?
大川研究室の解答では、2通りの解答が用意されている。本題だけだったら、高校生向
けの解答としては、別解の方が普通かな?と思ったが、類題のことを考えるとやはり本解
の方も捨てがたい!
(解) ○ 12個を並べる。 ○○○○○○○○○○○○
条件を満たすためには、それらの隙間または両端(× 13個)から8個選んで埋めれ
ばよい。
×○×○×○×○×○×○×○×○×○×○×○×○×
よって、求める場合の数は、
13C8=1287(通り)
(注) たとえば、 ×○○○×○○○○×○×○×○×○×○× という場合に対し
1 5 10 12 14 16
18 20
ては、8個の数字として、 1、5、10、12、14、16、18、20 が選ばれる。
(類題の解) まず、8個の○を並べ、その隙間に×を2個ずつ挿入する。
○××○××○××○××○××○××○××○
残りの8個を、○同士の隙間または両端の計9箇所から重複を許して8箇所を選
んで並べる。
その場合の数は、
9H8=16C8=12870(通り)
上記の問題に対して、らすかるさんから興味ある別解を頂戴した。(平成17年5月25日)
選ばれた8個の数を昇順に並べるとき、n番目の数と1番目の数は、2(n−1)以上の差が
ある。よって、 2(n−1)−(n−1)=n−1 だけ余裕があるので、n番目の数から、n−1
を
引いて考えてもよい。このとき、求める場合の数は、1〜13の13個の数から8個の数を選
ぶ場合の数に等しい。
よって、 13C8=1287(通り)
類題の方も同様に解くことができる。
選ばれた8個の数を昇順に並べるとき、n 番目の数と 1 番目の数は、3(n−1)以上の差
がある。よって、 3(n−1)−(n−1)=2(n−1) だけ余裕があるので、n
番目の数から、
2(n−1) を引いて考えてもよい。このとき、求める場合の数は、1〜16
の16個の数から
8個の数を選ぶ場合の数に等しい。
よって、 16C8=12870(通り)
(コメント) 大川研究室の解答では、×を置いて保険をかけるという発想でしたが、らすか
るさんの発想は全く逆で、余分なものは取り除くという考えでした。らすかるさん
の素晴らしいアイデアに感嘆するばかりです!
問題269 底面と側面が垂直な三角柱がある。これを斜めの平面で切って上半分
を取り除いたところ、底面の頂点 A1 , A2 , A3 に対する高さが h1 ,
h2 ,
h3 となった。この立体の体積を底面積 S と h1 , h2, h3 で表せ。
大川研究室によれば、高校程度の立体幾何の問題ということなので考えてみた。
(解) | |
与えられた三角柱を、左図のように3つの三角柱 に分割して考える。 このとき、求める立体の体積は、3つの三角柱 B-A1A2A3 、B-A2A3C 、B-A3CD の体積の和となる。 ところで、線分 BA1 と平面A2A3C は平行なので、 B-A2A3C の体積=C-A1A2A3 の体積 が成り立つ。 また、線分 CA2 と線分DA3 は平行 なので、 △A3CD=△A2A3D |
よって、 B-A3CD の体積=B-A2A3D の体積 が成り立つ。
ここで、線分 BA1 と平面A2A3D は平行なので、B-A2A3D の体積=D-A1A2A3 の体積
すなわち、 B-A3CD の体積=D-A1A2A3 の体積 が成り立つ。
以上から、求める立体の体積は、3つの三角柱
B-A1A2A3 、C-A1A2A3 、D-A1A2A3
の和となる。
よって、 S・h1/3+S・h2/3+S・h3/3 = S・(h1+h2+h3)/3 である。
(コメント) 台形の面積の公式との類推から、答えは十分予想できた。
また、上記の結果から体積は底面の三角形の辺の長さによらず面積のみが関与すること
に驚かされる。この性質を利用すると、次のことが言えるであろう。
鉛直方向の辺を上下に移動させても体積は変わらないので、鉛直方向の辺の長さが何れ
も h1+h2+h3 となるように、上記の立体図形にもう2つの立体図形を重ねると、上面と底
面が平行な三角柱が作れ、しかも、その3個とも体積は等しい。
(追記) 大川研究室から、上記の問題の一般化を与えたサイト「NazoLab」をご紹介いた
だいた。(平成23年12月31日付け)
1次関数 F(x,y)=ax+by+c に対して、F(A1)=h1、F(A2)=h2、F(A3)=h3 で、
△A1A2A3 の重心をGとすると、 F(G)=(h1+h2+h3)/3 が成り立つ。
このとき、上記で得られた結果は、 体積=(底面積)×F(重心) と書くことができる。
問題274 実数 x , y が、 x2 + xy + 2y2 = 1 なる条件を満たしながら動く時、
2x2 − y2 の最大値・最小値を求めよ。
[類題] 実数 x , y が、 6x2 + 12xy − 5y2 = 1 なる条件を満たしながら
動く時、 x2 − 2xy + 2y2 の最大値・最小値およびその時の x, y の値
を求めよ。
大川研究室によれば、高校程度の条件付き最大最小問題ということなので考えてみた。
(解) 2x2 − y2 = k とおく。 kx2 + kxy + 2ky2 = k を用いて、
(k−2)x2 + kxy + (2k+1)y2 = 0
k = 2 のとき、条件を満たす x 、y は存在するので、k = 2 は起こり得る。
k ≠ 2 のとき、上式を x の2次方程式と見て、実数解をもつことから、
判別式 D = k2y2 − 4(k−2)(2k+1)y2=(k2 − 4(k−2)(2k+1))y2 ≧ 0
y2 ≧ 0 なので、 k2 − 4(k−2)(2k+1) ≧ 0
すなわち、 7k2 − 12k − 8 ≦ 0
この不等式の解と、k = 2 を含めて、定数 k の取り得る値の範囲は、
≦ | k | ≦ |
ここで、 判別式 D = 0 を満たす定数 k = k0 に対して、
2x2 − y2= k0 、 x2 + xy + 2y2 = 1
を満たす実数 x 、 y が存在することを確認しておこう。
2次方程式より、重解は、 x = −k0y/(2(k0−2)) = my と書けるので、
x2 + xy + 2y2 = 1 に代入して、 (m2 + m + 2)y2 = 1
どんな m に対しても、 m2 + m + 2 > 0 なので、実数解 y が存在する。
以上から、判別式 D = 0 を満たす定数 k = k0 に対して、確かに実数解 x 、y
が存在する。
従って、最大値は、 | 最小値は |
(コメント) グラフ描画ソフトを用いて、検証してみた。赤い線が最大の場合で青い線が最
小の場合である。
(類題の解) x2 − 2xy + 2y2=k とおく。 6kx2 + 12kxy − 5ky2 = k を用いて、
(6k−1)x2 + (12k+2) xy − (5k+2)y2 = 0
k = 1/6 のとき、条件を満たす x 、y は存在するので、k =
1/6 は起こり得る。
k ≠ 1/6 のとき、上式を x の2次方程式と見て、実数解をもつことから、
上式を x の2次方程式と見て、実数解をもつことから、
判別式 D/4 = ((6k+1)2 + (6k−1)(5k+2))y2 ≧ 0
y2 ≧ 0 なので、 (6k+1)2 + (6k−1)(5k+2) ≧ 0
すなわち、 66k2 + 19k − 1 ≧ 0 より、 (22k − 1)(3k + 1) ≧ 0
ここで、 k=(x − y)2+y2 ≧ 0 なので、 3k + 1 ≧ 0
よって、不等式の解と、k = 1/6 を含めて、定数 k の取り得る値の範囲は、
k ≧ 1/22 となる。
従って、最大値は、なしで、最小値は、 1/22 である。
このとき、 x = (7/4)y なので、6x2 + 12xy − 5y2 = 1 と連立して、
、
を得る。ただし、複号同順である。
(コメント) グラフ描画ソフトを用いて、検証してみた。赤い線が一般の場合で青い線が最
小の場合である。
問題13 f (x) = x3 - 3x2 - 3x と置く。この関数は極大値、極小値をそれぞれ1つ
取るが、それらの和と積を求めよ。(高校2年程度の容易問題)
(解) 三次関数のグラフは、変曲点について点対称なので、変曲点は、極大点と極小点
の中点である。
F”(X) =6X−6=0 より、X=1
よって、F(1)=(極値の和)/2 なので、
(極値の和)=2 F(1)=2(1−3−3)=−10
である。(終)
問題268(改題) A を 3次正方行列で、対角成分がすべて 0、その他の成分が
すべて 1/2 なるものとする。このとき、行列のn乗の極限
を求めよ。
原題では一般の n 次正方行列(n≧3)であるが、n=3 としても問題の趣旨には反しな
いと思う。
この問題の面白さは、解答にも書かれているとおり、次のような背景がある点である。
3人が毎回お金を出し合う。初回は各自任意の金額を出すが、2回目以降は、次のルー
ルに従って出すものとする。
ルール: 前の回に自分以外の2人が出した金額の平均額を出す
この操作を続けていくと、3人が出す金額はともに、ある一定額に近づいていく。
(コメント) 初回の金額にどれほどばらつきがあっても最後は同じような金額になっていく
という点が面白いですね!
ここでは、大川研究室の解答とは異なるが最も標準的と思われる解答を与えたいと思う。
(解) det(A−λE)=0 より、 4λ3−3λ−1=0
これを解いて、 λ=1、−1/2 (重解) となる。
このとき、固有値 λ=1 に属する固有ベクトルとして、 (1,1,1) をとることができる。
また、固有値 λ=−1/2 に属する固有ベクトルとして、 (1,−1,0)、(1,1,2) をとる
ことができる。 これら3つのベクトルは互いに垂直である。
よって、各ベクトルの正規化を行い、3次の正方行列
が作られる。このとき、
となるので、
よって、
(終)
(参考) n 回目に3人 A、B、C が出す金額を、それぞれ an、bn、cn とおく。
上記より、an、bn、cn は、(a1+b1+c1)/3 に収束することが分かる。
ここで、もしも、an、bn、cn の収束を仮定すれば、次のような解答もあり得るだろう。
(解) 条件より、 an+1=(1/2)bn+(1/2)cn
bn+1=(1/2)cn+(1/2)an
cn+1=(1/2)an+(1/2)bn
よって、 an+1−bn+1=(−1/2)(an−bn) より、 an−bn=(−1/2)n−1(a1−b1)
bn+1−cn+1=(−1/2)(bn−cn) より、 bn−cn=(−1/2)n−1(b1−c1)
このことから、an、bn、cn は同一の値に収束する。
さらに、an+bn+cn = a1+b1+c1 なので、 an、bn、cn は、(a1+b1+c1)/3 に収束
する。よって、
(終)
(コメント) 当初、問題268に対しては、上記のような別解を思いついたが直ぐに断念した。
an−bn が0に収束しても、an、bn が収束するとは限らないからである。
(反例) an=n+2/n 、bn =n+1/n
問題293 1+ は、 a + b ( a、b : 有理数)の形の数の平方の和になら
ないことを示せ。
この問題は高校2年生程度の格好の演習問題といえる。ここでは高校生らしい解答を示
したいと思う。
(解) 1+=(a+b)2+・・・+(c+d)2 と書けるものと仮定する。
このとき、 右辺=a2+・・・+c2+2b2+・・・+2d2+2(ab+・・・+cd)
なので、左辺と比較して、
a2+・・・+c2+2b2+・・・+2d2=1 、 2(ab+・・・+cd)=1
よって、 a2+・・・+c2+2b2+・・・+2d2=2(ab+・・・+cd) から、
(a−b)2+・・・+(c−d)2+b2+・・・+d2=0
a、b、・・・、c、d は有理数なので、その平方は0以上。
したがって、 a−b=・・・=c−d=b=・・・=d=0 すなわち、
a=b=・・・=c=d=0
このとき、 1+=0 となり、矛盾する。
よって、1+は、a+b の形の数の平方の和にならない。 (証終)
ここで、大川研究室の解答を補足しておきたい。
次の事実が用いられる。
有理係数の整方程式 f (x) = 0 が、p + を解に持てば、p − もまた解
である。ただし、p、q は有理数で は無理数とする。
この事実を踏まえて、次のような解答になると思う。
(解) 1+=(a+b)2+・・・+(c+d)2 と書けるものと仮定する。
このことから、有理係数の整方程式 1+x=(a+bx)2+・・・+(c+dx)2 は、
x= を解に持つことが分かるので、上記事実から、 x=− も解となる。
よって、 1−=(a−b)2+・・・+(c−d)2
が成り立つ。 このとき、 左辺の符号は負、しかるに、右辺の符号は0以上。
これは矛盾である。
よって、1+は、a+b の形の数の平方の和にならない。 (証終)
問題103 次の様なゲームを考える。:
トランプの1から6までの札が4枚ずつ計24枚ある。これらを数字が見え
るように表にして、テーブルの上に並べる。
先手・後手の2人の競技者が順番に1枚ずついずれかのカードを取る。
このとき、それまでに取られた両者のカードの数の和を丁度31にした人が
「勝ち」、31を超えた人が「負け」とする。このゲームの必勝法はどうなるで
あろうか?
このゲームは、1から始めて連続する数字を6個以下ずつ交互につなげていって、最後に
31を言った人が勝ちというゲーム、即ち、A「1、2、3」、B「4、5」、A「6、7、8、9、10」、B
「11、12、13、14」、A「15、16、17」、B「18、19、20、21」、A「22、23、24」、B「25、26、27」、
A「28、29、30、31・・・で私の勝ち!」というものに似ている。
この場合は先手必勝であり、先手は「3、10、17、24」(←残りの数を7の倍数にして相
手に手を渡す!)という数まで言えばよい。
しかし、上記の問題では使える数字の個数に制限があり、はるかに難しいゲームとなっ
ている。
大川研究室の解答にもある通り、本来勝ちパターンである「3」を取った場合、先手必敗
になるという点に驚かされた。
3+4+3+4+3+4+3+4+?
?で、「3」を取りたいところだが、既に4枚全てを使い切ってしまっているので取れず、
「負け」が確定してしまう。
しかし、大川研究室によれば、このゲームはやはり先手必勝だそうだ。
「最初に何を取れば必勝となるか、全て調べてみて下さい。」ということなので、手計算で
少し調べてみた。
◎ 先手が「1」を取った場合
これに対して、後手が3以上を取った場合、次の先手の手番のとき、合計10にすること
ができるので、これは先手必勝パターンである。
問題は、後手が「1または2」を取った場合である。
後手が「1」を取った場合、先手は「6」を取れば、先手必勝パターンである。
1+1+6+2+6+1+6+1+6+?
先手がもしも「6」を取らない場合
1+1+1+5+2+5+2+5+2+6+? で後手の勝ち
1+1+2+4+2+5+2+5+2+5+? で後手の勝ち
1+1+3+3+2+6+1+6+1+6+? で後手の勝ち
1+1+4+2+2+5+2+5+2+5+? で後手の勝ち
1+1+5+1+2+5+2+6+1+6+? で後手の勝ち
後手が「2」を取った場合、先手は「6」を取ればよい。このとき、後手必勝パターンにする
ために後手は「1」を取るしかない。この取り方を続ける。
1+2+6+1+6+1+6+1+6+?
すると、後手は、?で、「1」を取れば勝ちになるのだが、「1」は既に4枚使い切っている
ので取れず、後手の負けが確定する。
◎ 先手が「2」を取った場合
先手が「1」を取った場合と同様に考える。 後手が3以上を取った場合、次の先手の
手番のとき、合計10にすることができるので、これは先手必勝パターンである。
問題は、後手が「1または2」を取った場合である。
後手が「1」を取った場合
この場合は、次のような先手必勝パターンが考えられる。
(後手は後手必勝パターンになるように取るものと仮定)
2+1+5+2+5+2+5+2+5+? (「2」を使い切ってしまい、負けが確定)
後手が「2」を取った場合
先手は「2」を取れば、先手必勝パターンである。
実際に、 2+2+2+4+5+2+5+1+1+3+4
◎ 先手が「3」を取った場合
後手が「3」を取ってしまうと、先手必敗である。
3+3+4+4+3+4+3+4+?
また、上で述べたように、後手が「4」を取ってしまうと、先手必敗である。
3+4+3+4+3+4+3+4+?
◎ 先手が「4」を取った場合
後手が「6」を取ってしまうと、先手必敗である。次に先手が何を取ろうとも、後手は足し
て「7」になる数をとれるからである。
また、後手が「3」を取っても、先手必敗である。
4+3+3+4+3+4+3+4+?
◎ 先手が「5」を取った場合
5+5+2+5+2+5+2+4+1
のような手順で、先手必勝!
◎ 先手が「6」を取った場合
後手が「4」を取ってしまうと、先手必敗である。次に先手が何を取ろうとも、後手は足し
て「7」になる数をとれるからである。
以上から、先手必勝となるためには、初手「1または2または5」を取ればよい。
(コメント) この問題について、当HPがいつもお世話になっている、HN「らすかる」さんに
検証をしていただいた。上記の解答は、当初アップロードしたものを修正してあ
る。解答として、まだ不完全な部分があるかもしれないが、読者の方には、この
問題の雰囲気が伝われば成功と言えるだろう。頭で考えると非常に複雑で、「思
った以上に奥の深い問題でした。」と、らすかるさんは感想を述べられている。私
も同感!出題者の大川さんも、高校生の頃、暇にまかせてしらみつぶしに考えら
れたそうで、相当根気が必要な問題のようです。今風の高校生には無理かな?
問題316 数列 { (1+1/n)n } は単調増加、 { (1+1/n)n+1 } は単調減少であ
ることを対数やネイピアの数以前の高校1年程度の数学で証明せよ。
「高校1年程度の数学で」というところに引かれた。大川研究室の証明を参考にしながら
少し証明を整理してみた。(→参考:加重平均の底力)
(証明) 1+1/n と 1 の重みをそれぞれ n と 1 として加重平均をとると、
このとき、相乗平均は、
よって、
(等号は不成立!)
すなわち、
このことは、数列 { (1+1/n)n } が単調増加であることを示す。
同様にして、後半部分も示される。
を示すために、
の両辺の逆数をとって
を示せばよい。
そこで、n/(n+1) と 1 の重みをそれぞれ n+1 と 1 として加重平均をとり、相乗
平均との関係を考えれば上記の不等式は直ちに示される。 (証終)
(コメント) 数列 { (1+1/n)n } が単調増加であることは書籍等では下記のように示されの
が通常である。
上記2式の各項を比較することにより、
であることが分かる。
(コメント) 相加平均と相乗平均の関係を用いて簡明に証明されるとは驚きです!
もちろん、上記の証明は初等的であるが、腕力を持って示す方法も存在する。
関数
が、x>0 において増加関数であることを、微分法を用いて示す。
対数微分法により、 log F(x)=x(log (x+1)−log x
) から、
F’(x)/F(x)=log (x+1)−log x + x(1/(x+1)−1/x)
=log (x+1)−log x − 1/(x+1)
ここで、 G(x)=log (x+1)−log x − 1/(x+1) とおいて、さらに微分すると、
G’(x)=1/(x+1)−1/x + 1/(x+1)2=−1/x(x+1)2<0
より、関数 G(x) は単調に減少する。
x → ∞ のとき、 G(x)=log(1+1/x)− 1/(x+1)
→ 0
なので、 x>0 のとき、 G(x)>0 である。
よって、 F’(x)/F(x)>0 、 F(x)>0 より、 F’(x)>0
よって、関数 F(x) は単調に増加する。
(コメント) 微分を使った、こういう証明も味があっていいですね!
問題326 関数 | ( x > 0 ) に対して、次の極限値を求めよ。 | |
@) | ||
A) |
大川研究室ではまだ解答準備中ということであるが、高校程度の問題という文言に誘惑
されて挑戦してみた。
(解) @) 平均値の定理より、
F(x+1)−F(x)=F’(y) ( x
< y < x+1 )
となる y が存在する。ここで、 log F(x)=x(log(x+1)−log
x ) なので、
F’(x)=F(x){log(x+1)−log
x −1/(x+1)}
z=log(x+1)−log x −1/(x+1) において、
z’=−2/(x+1)2<0 なので、z は単調に減少する。
よって、 x < y < x+1 より、
log(x+2)−log(x+1) −1/(x+2)
<log(y+1)−log y −1/(y+1)
<log(x+1)−log x −1/(x+1)
x → ∞ のとき、 z → 0 なので、 z>0 となり、 F’(x)>0
よって、 F(x)は単調に増加するので、
F(x){log(x+2)−log(x+1) −1/(x+2)}
<F(y){log(y+1)−log y −1/(y+1)}
<F(x+1){log(x+1)−log
x −1/(x+1)}
すなわち、
x2・F(x){log(x+2)−log(x+1) −1/(x+2)}
<x2・(F(x+1)−F(x))
<x2・F(x+1){log(x+1)−log x −1/(x+1)}
ここで、 x → ∞ のとき、 F(x) → e 、F(x+1)
→ e である。
また、 ロピタルの定理より、 x → ∞ のとき、
lim x2{log(x+1)−log x −1/(x+1)}
= lim {log(x+1)−log x −1/(x+1)}/(1/x2)
= lim {1/(x+1)−1/x +1/(x+1)2}/(−2/x3)
= lim x2/{2(x+1)2}= 1/2
同様にして、
lim x2{log(x+2)−log(x+1) −1/(x+2)}
= lim {log(x+2)−log(x+1) −1/(x+2)}/(1/x2)
= lim {1/(x+2)−1/(x+1) +1/(x+2)2}/(−2/x3)
= lim x3/{2(x+1)(x+2)2}= 1/2
したがって、挟み撃ちの原理により、 x → ∞ のとき、
x2・(F(x+1)−F(x)) → e/2
A) ロピタルの定理より、 x → ∞ のとき、
lim x(e−F(x))= lim(e−F(x))/(1/x)= lim(−F’(x))/(−1/x2)= lim x2・F’(x)
ここで、@)における計算結果を用いて、 x → ∞ のとき、 F(x)
→ e で、
lim x2{log(x+1)−log x −1/(x+1)}= 1/2
である。 したがって、 x → ∞ のとき、 lim x(e−F(x))=e/2 である。
(コメント) 高校程度の問題ということであるが、ちょっと標準的な高校生には厳しいかな?
上記の結果から、 x → ∞ のとき、 x(e−F(x)) は有限確定値に収束するので、
1/x と e−F(x) は同位の無限小である。換言すれば、F(x)が
e に収束する速さは、
1/x が 0 に収束する速さにほぼ等しいということである。 y=1/x のグラフを、頭に
描いてもらえば分かるように、その収束する速さは非常に遅い、否、遅すぎる...!
これに対して、
が自然対数の底 e に収束する速さは異常に速い、否、速すぎる...くらい!!
(→ 参考:「自然対数の底 e が無理数であること」)
問題339 x に関する3次方程式 x3 + x2 - 4x + 1 = 0 の3根を求めよ。
大川研究室のHPでは、3次方程式の3根を α、β、γ として、
α = 2cos(2π/13) + 2cos(16π/13) = 0.273891..........
β = 2cos(4π/13) + 2cos(32π/13) = 1.3772...............
γ = 2cos(8π/13) + 2cos(64π/13) = -2.65109............
と答が与えられている。
当HPがいつもお世話になっているHN「らすかる」さんは、次のように考察されている。
u = e2πi/13 、 v = e-2πi/13 とおくと、
α = u+v+u8+v8 = u+v+u5+v5
β = u2+v2+u16+v16 = u2+v2+u3+v3
γ = u4+v4+u32+v32 = u4+v4+u6+v6
このとき、 α2 = (u+v+u5+v5)2 = β+2γ+4
β2 = (u2+v2+u3+v3)2 = γ+2α+4
γ2 = (u4+v4+u6+v6)2 = α+2β+4
なので、 α+β+γ = u+v+u5+v5+u2+v2+u3+v3+u4+v4+u6+v6
= u+u2+u3+u4+u5+u6+v6+v5+v4+v3+v2+v
= u+u2+u3+u4+u5+u6+u7+u8+u9+u10+u11+u12 = -1
α2+β2+γ2 = 3(α+β+γ+4) = 9
αβ+βγ+γα = {(α+β+γ)2 - (α2+β2+γ2)}/2 = (1 - 9)/2 = -4
α3+β3+γ3 = α(β+2γ+4) + β(γ+2α+4) + γ(α+2β+4)
= 3(αβ+βγ+γα)+4(α+β+γ) = -16
αβγ = {(α+β+γ)3 - 3(α+β+γ)(α2+β2+γ2) + 2(α3+β3+γ3)}/6
= {(-1) - 3・(-1)・9 + 2・(-16)}/6 = -1
よって、 α+β+γ = -1、 αβ+βγ+γα = -4、 αβγ = -1 なので、α、β、γ は、
x3 + x2 - 4x + 1 = 0 の3根。
なお、 f (x) = x2 + x - 3、 g (x) = (x - 1)/x と置くと、これらの関数は何れも方程式の3根
α、β、γ を α → γ → β → α の順に移す事が分かります。
g (x) を自身で 3回合成すると恒等写像になる事、 (i.e. g (g (g (x))) = x)、 f (x) = g (x)
が元の方程式と同値になる事など、面白いですね。(Last Update 2009/10/13)
(→ 参考:「方程式論」、「解の巡回」)
(追記) 大川研究室より、解の巡回について、J.P.Serre の著作をご紹介いただきまし
た。(平成23年12月31日付け)
「F(x) を有理係数既約多項式で、有理数の範囲で既約とする。F(x) の任意の2根
α、β
に対し、適当な有理係数多項式で、β = g(α) なる物が存在するとき、F(x)
を Galois 多項
式と呼ぶ事にする。以下の多項式 F(x) は、Tが有理数で、Q上既約のとき、
F(x) = x3 - Tx2 + (T - 3)x + 1 = 0
は、Galois 多項式となる。」ということが書いてあるとのこと。2-nd edition
には、より高次の
例も沢山書いてあるそうです。