方程式論
中学校の教科書から消えていた「2次方程式の解の公式」が復活するという。正しくは、
発展教材という非常に肩身の狭い立場から一気に主役に返り咲くわけだが...。
私自身、2次方程式の解の公式は最初呪文のように覚えて使いまくり、だんだんと覚え
ていったものだ。証明は二の次で、証明を理解したのはずっと後から。
今年(2007年)の夏、教えを乞うた河合塾の某有名講師の方も「数学は、ある程度暗
記しないと解けない!」と仰っていたが、私も同感である。趣味として数学に親しむなら、
たっぷり時間がとれるが、高校生には定められた時間に解きこなさなければいけないと
いう制約がある。自ら解法を発見し組み立てていくのは、平均的な高校生には無理な話
だろう。
教科書では証明が先にあって、その後練習問題をこなすという順になっているが、証明
で生徒のやる気を失わせるより、どんどん公式を使わせて、どんな2次方程式も解の公式
で解けることを実感させた方が生徒の達成感という意味で有効だと思う。
このページでは方程式の理論について知られていることを整理しようと思う。
ところで、2次方程式、3次方程式、4次方程式には「解の公式」が存在し一般的に解け
るが、5次以上の方程式には解の公式は存在しないことが知られている。
(このことは、1824年アーベル(1802〜1829)らにより得られた結果である)
もっとも、「 n 次方程式は必ず複素数の範囲で解が存在する」(代数学の基本定理)
という定理がガウスにより、1799年に証明されているので、存在は分かるが、その姿を
一般的に見いだす方法は、5次以上ではないということだ。
2次方程式、3次方程式、4次方程式における「解の公式」を整理しておこう。
(2次方程式の解の公式)
2次方程式 aX2+bX+c=0 において、
(3次方程式の解の公式)
3次方程式 aX3+bX2+cX+d=0 は必ず、X3+3pX+q=0 の形に変換できる。
(→「チルンハウス変換」)
このとき、ab=−p 、a3+b3=−q を満たす a 、 b は、2次方程式 X2+qX−p3=0
の解の3乗根である。この a、b を用いて、3次方程式の解が求められる。
(→参考:高次方程式の解の近似計算)
この解法は、Cardano の解法といわれるが、実際の発見者はタルタリア(1535)らしい。
例 題 3次方程式 X3+6X2+3X+2=0 を解け。
X=Y−2 とおくと、 (Y−2)3+6(Y−2)2+3(Y−2)+2=0 より、
Y3−9Y+12=0
ここで、 Y=a+b とおくと、 (a+b)3−9(a+b)+12=0 より、
a3+b3+12+(a+b)(3ab−9)=0
よって、 3ab−9=0 、 a3+b3+12=0 すなわち、 ab=3 、 a3+b3=−12
を満たす a 、 b を求めればよい。
a3b3=27 なので、2数 a3、b3 を解に持つ2次方程式は、 t2+12t+27=0
よって、 (t+3)(t+9)=0 より、 t=−3、−9
これらの3乗根で実数であるものは、 − および −
このとき、 1の3乗根を、 ω として、3次式 Y3−9Y+12 は、
{Y+(+)}{Y+(ω+ω2)}{Y+(ω2+ω)}
と因数分解される。よって、3次方程式の解は、
−−−2 、 −ω−ω2−2 、 −ω2−ω−2
となる。
ここで、興味ある問題がある。1990年度の東京大学前期文系の入試問題である。
3次方程式 X3+3X2−1=0 の一つの解を α とする。
(1) (2α2+5α−1)2 を aα2+bα+c の形の式に表せ。
ただし、a、b、c は有理数とする。
(2) 上の3次方程式の α 以外の二つの解を(1)と同じ形の式で表せ。
東大の入試問題とはいえ、さすがに文系レベルに問題が易化されているので、解くこと自
体には全く支障がないだろう。
(1) α は、 α3=−3α2+1 を満たすので、 α4=−3α3+α=9α2+α−3
(2α2+5α−1)2
=4α4+25α2+1+20α3−10α−4α2
=4(9α2+α−3)+20(−3α2+1)+21α2−10α+1
=−3α2−6α+9
(2) 他の2つの解を β 、 γ とすると、3次方程式の解と係数の関係から、
α+β+γ=−3 、 αβ+βγ+γα=0 、 αβγ=1
よって、 β+γ=−α−3 で、 α(−α−3)+βγ=0 より、 βγ=α2+3α
このとき、 β 、 γ は、2次方程式 x2+(α+3)x+α2+3α=0 の解である。
{x+(α+3)/2}2=−α2−3α+(α+3)2/4=(−3α2−6α+9)/4
(1)の結果を用いて、 {x+(α+3)/2}2=(2α2+5α−1)2/4
よって、x+(α+3)/2=(2α2+5α−1)/2 、x+(α+3)/2=−(2α2+5α−1)/2
より、 x=α2+2α−2 、 −α2−3α−1 となる。
(コメント) (1)の問題が唐突な印象があるが、それは東京大学の入試問題作問者の親
心でしょう!また、なぜ、「2α2+5α−1」が出てくるかは、以下を読まれると理
解できると思う。
ところで、(2α2+5α−1)2=−3α2−6α+9 という計算結果には実は必然性がある。
α は、3次方程式 X3+3X2−1=0 の一つの解なので、左辺は、
(X−α)(X2+(α+1)X+α2+α−2)
と因数分解される。このとき、2次式 X2+(α+1)X+α2+α−2 の判別式を計算すると、
D=(α+1)2−4(α2+α−2)=−3α2−6α+9
となる。したがって、問題(1)は、次の問題(2)では解の公式を使いますよ!というヒントに
なっているわけだ。
ところで、 α3=−3α2+1 を満たすとき、3次方程式の他の解が、α で表されるとい
う事実は面白いですね!
ただ、どんな場合でもできるとは限らないようです。因みに、上記で考えた3次方程式
X3+6X2+3X+2=0 について、同様のことをやろうとしたら、出来ませんでした!
判別式の平方根が有理数でないと出来ないようです。
(この件で、Anonymous さんに計算していただきました!Anonymous さんに感謝いたしま
す。・・・H19/9/23)
以前、Anonymous さんから紹介された問題を解いてみよう。
3次方程式 X3−3X+1=0 の一つの解を α とする。他の2つの解 β 、γ
を α を用いて表せ。
3次方程式の解と係数の関係から、
α+β+γ=0 、 αβ+βγ+γα=−3 、 αβγ=−1
よって、 β+γ=−α で、 α(−α)+βγ=−3 より、 βγ=α2−3
このとき、 β 、 γ は、2次方程式 x2+αx+α2−3=0 の解である。
{x+α/2}2=−α2+3+α2/4=(−3α2+12)/4
ここで、 (a+bα+cα2)2=12−3α2 となる a、b、c を求める。
(この計算がなかなか大変で、Excel の VBA を活用して探索すると、)
a=4 、b=−1 、c=−2 (a=−4 、b=1 、c=2 もあり)
したがって、 {x+α/2}2=(4−α−2α2)2/4
よって、 x+α/2=(4−α−2α2)/2 、 x+α/2=−(4−α−2α2)/2 より、
x=−α2−α+2 、 α2−2 となる。
当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが別解を考えられた。
(平成23年1月8日付け)
上記の問題は、3次方程式のビエタの解法を使って解くことができます。一般性はありま
せんがちょっと面白いです。ビエタの解法は代数的ではなく、三角関数や逆三角関数を使
うので私もそうですが、面白くないとして無視されがちかなと思います。
(別解) 3倍角の公式より、 cos3θ=(3/4)cosθ+(1/4)cos3θ ・・・ (1)
これと、 X3=3X−1 ・・・ (2) を見比べて、(1)を8倍する。
8cos3θ=6cosθ+2cos3θ ・・・ (1)’
そこで、 2cos3θ=−1 となるようなθをとれば、X=2cosθが、(2)の解となる。
2cos3θ=−1 より、 cos3θ=−1/2 を解いて、
3θ=2π/3 、4π/3 、8π/3
すなわち、 θ=2π/9 、4π/9 、8π/9
θ=2π/9 として、 α=2cosθ とおけば、他の解は、
β=2cos2θ 、 γ=2cos4θ
このとき、 β=2cos2θ=2(2cos2θ−1)=4cos2θ−2=α2−2
解と係数の関係から、 γ=−α−β=−α−(α2−2)=−α2−α+2
(コメント) 別解を考えられたFNさんに感謝します。
3次方程式 X3−X+1/3=0 の一つの解を α とする。他の2つの解 β 、γ
を α を用いて表せ。
3次方程式の解と係数の関係から、
α+β+γ=0 、 αβ+βγ+γα=−1 、 αβγ=−1/3
よって、 β+γ=−α で、 α(−α)+βγ=−1 より、 βγ=α2−1
このとき、 β 、 γ は、2次方程式 x2+αx+α2−1=0 の解である。
{x+α/2}2=−α2+1+α2/4=(−3α2+4)/4
ここで、 (a+bα+cα2)2=4−3α2 となる a、b、c を求める。
(この計算がなかなか大変で、Excel の VBA を活用して探索すると、)
a=4 、b=−3 、c=−6 (a=−4 、b=3 、c=6 もあり)
したがって、 {x+α/2}2=(4−3α−6α2)2/4
よって、 x+α/2=(4−3α−6α2)/2 、 x+α/2=−(4−3α−6α2)/2 より、
x=−3α2−2α+2 、 3α2+α−2 となる。
さて、上記の問題
3次方程式 X3−3X+1=0 の一つの解を α とする。他の2つの解 β 、γ
を α を用いて表せ。
の解答では、
(a+bα+cα2)2=12−3α2 となる a、b、c を見いだす
ときに、Excel の VBA を利用しているという後ろめたさがあった。もっと自力で求める方法
はないものだろうか?
実は、次のような互除法の考えを用いる驚嘆すべき解法が世間では知られているようだ。
F(X)=X3−3X+1 とおくと、 F’(X)=3X2−3 である。
このとき、 F(X)÷ F’(X) を実行して、 F(X)= F’(X)・(X/3)−2X+1
次に、 F’(X)÷(−2X+1) を実行して
F’(X)=(−2X+1)(−3X/2−3/4)−9/4
そこで、F(X)= F’(X)・(X/3)−2X+1 より、−2X+1=F(X)− F’(X)・(X/3) を
F’(X)=(−2X+1)(−3X/2−3/4)−9/4 に代入して、
F’(X)=(F(X)− F’(X)・(X/3))(−3X/2−3/4)−9/4
すなわち、F(X)・(−3X/2−3/4)+ F’(X)・(−1+X/4+X2/2)=9/4
このとき、 X に α を代入して、 F’(α)・(−1+α/4+α2/2)=9/4
ここで、 F(X)=(X−α)(X−β)(X−γ) なので、
F’(X)=(X−β)(X−γ)+(X−α)(X−γ)+(X−α)(X−β)
よって、 F’(α)=(α−β)(α−γ)
また、 3次式 X3−3X+1 の判別式は、( → 参考:判別式 )
(α−β)2(α−γ)2(β−γ)2=−4・(−3)3−27・12=108−27=81
よって、 (α−β)(α−γ)(β−γ)=±9
したがって、 F’(α)・(−1+α/4+α2/2)=9/4 の両辺に β−γ を掛けて、
(9/4)(β−γ)
=F’(α)(β−γ)・(−1+α/4+α2/2)
=(α−β)(α−γ)(β−γ)・(−1+α/4+α2/2)=±9・(−1+α/4+α2/2)
よって、 β−γ=±(−4+α+2α2) (←上手い!感動しました...。)
β−γ=−4+α+2α2 のとき、 β+γ=−α と連立して、
β=α2−2 、 γ=−α2−α+2
β−γ=−(−4+α+2α2)=4−α−2α2 のとき、 β+γ=−α と連立して、
β=−α2−α+2 、 γ=α2−2
したがって、何れにしても、α 以外の2つの解は、−α2−α+2 と α2−2
(コメント) なるほど!この手を使うと、Excel のご厄介にならずに済みそうですね。判別式
が有理数の平方という形になっているところがポイントのようです。
FNさんが、この話題について考察された。(平成23年1月9日付け)
定理 有理数係数の3次式 F(x)=x3+ax2+bx+c に対して、
F(x)=0 の解を、α、β、γ とし、判別式をDとする。
Dが有理数の平方であれば、β、γは、αの有理数係数の2次式で表すことが
できる。
次の補題が、定理の証明において一番重要なステップです。
補題 有理数係数の3次式 F(x)=x3+ax2+bx+c の判別式をDとする。
このとき、 F(x)G(x)+F’(x)H(x)=D を満たす有理数係数の1次式G(x)と
2次式H(x)が存在する。
<注意> 補題中の式 F(x)G(x)+F’(x)H(x)=D の右辺はDである必要はなく、「0で
ない有理数」または「1」で十分です。
補題は、理論的な証明も可能ですが、3次式であれば、単なる計算問題としても不可能で
はないと思います。補題の証明は後回しにしましょう。
補題は認めて定理を証明してください。
FNさんが、上記の定理について考察された。(平成23年1月28日付け)
定理は、F(x)が既約であることを仮定すれば、逆も成り立ちます。既約が必要なのは、例
えば、F(x)=x3+x として、α=i 、β=−i とすれば、β=α2−α+1 とかで書けるが、
D=−4 は有理数の平方ではない。
「解の巡回」で考えられていることも合わせて、次の形にします。
有理数係数の既約な3次式 F(x)=x3+ax2+bx+c に対して、
F(x)=0 の解を α、β、γ とする。このとき、次の条件は同値である。
(1) 有理数係数の2次式 G(x) が存在して、 β=G(α)
(2) 有理数係数の2次式 G(x) が存在して、β=G(α) 、γ=G(β) 、α=G(γ)
(3) (α−β)(β−γ)(γ−α) は有理数である。
判別式を表に出さない表現にしましたが、(3)が、「判別式Dは有理数の平方である」と同
値であるのは明らかです。
(3)⇒(1) は、攻略法さんによって既に証明されています。
(2)⇒(3) が一番簡単だと思います。
(1)⇒(2) は、体の代数拡大についての基礎事項を使った証明でもいいですし、高校生
にわかる証明もできれば欲しいと思います。
(3)⇒(1) の別証明も含めて、どれでもいいから考えてください。
攻略法さんが、FNさんの問いかけに答えられた。(平成23年2月1日付け)
(3)⇒(1) についての別証明:
F(x)=x3+aX2+bX+c=(x−α)(x−β)(x−γ) とすると、
解と係数の関係より、α+β+γ=−a 、 αβ+βγ+γα=b
よって、 β+γ=−(α+a) ・・・ (T)式
βγ=b−α(β+γ)=b−α(−(α+a))=α2+aα+b より、
(α−β)(α−γ)
=α2−(β+γ)α+βγ
=α2−(−(α+a))α+α2+aα+b=3α2+2aα+b
(β−γ)2=(β+γ)2−4βγ
=(−(α+a))2−4(α2+aα+b)
=a2+2aα+α2−4α2−4aα−4b=−3α2−2aα+(a2−4b)
また、β−γ={(α−β)(α−γ)(β−γ)}2/{(α−β)(α−γ)(β−γ)} より
分母=±√D (∵ 判別式 D={(α−β)(β−γ)(γ−α)}2 より)
分子=(3α2+2aα+b){−3α2−2aα+(a2−4b)}
=−9α4−12aα3+(−a2−15b)α2+(2a3−10ab)α+(a2b−4b2)
=9aα3+(11a2−6b)α2+(2a3+2ab+9c)α+(a2b−4b2+12ac)
(∵ f(α)=α3+aα2+bα+c=0 より)
=2(a2−3b)α2+(2a3−7ab+9c)α+(a2b−4b2+3ac)
(∵ f(α)=α3+aα2+bα+c=0 より)
よって、 β-γ=±P(x)/√D (※ P(α)は、αの2次式) ・・・ (U)式
(T)式と(U)式を連立して、
β={−(α+a)+(±P(α)/√D)}/2 、γ={−(α+a)−(±P(α)/√D)}/2
したがって、±√D=(α-β)(β-γ)(γ-α)が有理数なら、βはαの2次式で表される。
(証終)
(3)⇒(2) の考察
求めたβ、γを具体的に、a、b、c で表現すると、βは、
α2 の係数=±(a2−3b)/(√D)
α1 の係数=(1/2){±(2a3−7ab+9c)/(√D)−1}
α0 の係数=(1/2){±(a2b−4b2+3ac)/(√D)−a}
これは、「私の備忘録」の「代数学」の「解の巡回」で、らすかるさんが提示された巡回関数
G(x)の式と同じである。(a、b、c と p、q、r は元の式の定義が入れ替わっている)
FNさんからのコメントです。(平成23年2月1日付け)
(3)⇒(1) について、具体的なG(x)の形がほぼ求まり、らすかるさんの式が得られている
ようですね。(1)⇒(2) の証明ができればらすかるさんの式の証明が得られます。
(3)⇒(2) の証明も面白そうです。一般に、a、b、c を異なる3つの数として、a’、b’、c’
を任意の数とするとき、G(a)=a’、G(b)=b’、G(c)=c’ を満たす2次式G(x)は、一意的に
存在し、
G(x)=a’(x−b)(x−c)/{(a−b)(a−c)}
+b’(x−c)(x−a)/{(b−c)(b−a)}+c’(x−a)(x−b)/{(c−a)(c−b)}
で与えられる。これは容易に確認できます。これを使えば、β=G(α)、γ=G(β)、α=G(γ)
を満たす2次式G(x)を具体的に書くことはすぐできます。
ただし、それの係数が有理数であることを示すのは簡単ではなさそうです。それならきちんと
計算して、らすかるさんの式を導いてしまったほうがいいような気もします。
実際にやってみました。相当な計算でした。答えが書いてなければできなかったでしょう。
一番簡単な (2)⇒(3) の証明を書いておきます。
(証明) β=G(α)、γ=G(β)、α=G(γ) より、
(α−β)(β−γ)(γ−α)={(α−G(α)}{β−G(β)}{γ−G(γ)}
これはα、β、γ の対称式だから、基本対称式 −a、b、−c で書けるので、有理数で
ある。 (証終)
上記定理の、より一般的な場合の証明を、当HPがいつもお世話になっているHN「攻略
法」さんが与えられた。(平成23年1月10日付け)
問 題 3次方程式 F(x)=ax3+bx2+cx+d=0 の一つの解を、α とする。
他の2つの解 β、γ を α を用いて表せ。
(解) F(x)=ax3+bx2+cx+d=a(x−α)(x−β)(x−γ) となる。
F(x)をF’(x)で割ったとき、商を、Q(x)、余りを R(x)とすると、
F(x)=F’(x)Q(x)+R(x) なので、 R(x)=F(x)−F’(x)Q(x) ・・・(*)
F’x)をR(x)で割ったとき、商を、S(x)、余りをT(x)とすると、
F’(x)=R(x)S(x)+T(x) ・・・(**)
この式に、(*)を代入して、 F’(x)={F(x)−F’(x)Q(x)}S(x)+T(x)
よって、 F(x)S(x)+F’(x){−1−Q(x)S(x)}=−T(x)
これに、1つの解 α を代入して、F’(α){1+Q(α)S(α)}=T(α) ・・・(***)
また、 F(x)=a(x−α)(x−β)(x−γ) より、
F’(x)=a{(x−β)(x−γ)+(x−α)(x−γ)+(x−α)(x−β)} なので、
F’(α)=a(α−β)(α−γ) ・・・(****)
F(x)=ax3+bx2+cx+d の判別式Dは、
D=b2c2+18abcd−4ac3−4b3d−27a2d2
で与えられる。また、判別式の定義により、
D=a4(α−β)2(α−γ)2(β−γ)2 ・・・(*****)
式(***)の両辺に、(β−γ) をかけると、
(β−γ)F’(α){1+Q(α)S(α)}=(β−γ)T(α)
式(****)より、a(α−β)(α−γ)(β−γ){1+Q(α)S(α)}=(β−γ)T(α)
すなわち、a2(α−β)(α−γ)(β−γ){1+Q(α)S(α)}=a(β−γ)T(α)
式(*****)より、 (±√D){1+Q(α)S(α)}=a(β−γ)T(α)
よって、 β−γ=(±√D){1+Q(α)S(α)}/(aT(α)) ・・・(1)
また、解と係数の関係より、 α+β+γ=−b/a なので、
β+γ=−(b/a+α) ・・・(2)
式(1)と式(2)を連立して、
β={−(b/a+α)+(±√D){1+Q(α)S(α)}/(aT(α))}/2
γ={−(b/a+α)−(±√D){1+Q(α)S(α)}/(aT(α))}/2 (終)
● 上記のQ(x)、R(x)、S(x)、T(x)を具体的に、a、b、c、d で表してみよう。
F(x)÷F’(x) は、組立除法(→参考:「組立除法の意外な使い道」)により、
Q(x)=(ax+b/3)/(3a)=(1/3)x+b/(9a)
R(x)={2c/3−2b2/(9a)}x+d−bc/(9a)=R1x+R0
F’(x)÷R(x) は、組立除法により、
S(x)={3ax+2b−3aR0/R1)/R1=(3a/R1)x+(2b−3aR0/R1)/R1
T(x)=c−2bR0/R1+3aR02/R12
● 3次方程式 x3−3x+1=0 について、Excel VBAを利用して、β、γを具体的に、α
で表してみよう。
Sub Test() Let a = 1 'f(x)=ax^3+bx^2+cx+d=0 Let b = 0 Let c = -3 Let d = 1 Let D2 = b ^ 2 * c ^ 2 + 18 * a * b * c * d - 4 * a * c ^ 3 - 4 * b ^ 3 * d - 27 * a ^2 * d ^ 2 '判別式 Debug.Print "判別式D="; D2 If D2 >= 0 Then Let DD = Int(Sqr(D2)) 'その平方根 Debug.Print "√D="; DD If DD * DD = D2 Then '平方数なら Let Q1 = 1 / 3 'Q(x)の係数 Let Q0 = b / (9 * a) Debug.Print "Q(x)=("; Q1; ") * x + ("; Q0; ")" Let R1 = -2 * b ^ 2 / (9 * a) + 2 * c / 3 Let R0 = d - b * c / (9 * a) Debug.Print "R(x)=("; R1; ") * x + ("; R0; ")" Let S1 = 3 * a / R1 Let S0 = (2 * b - 3 * a * R0 / R1) / R1 Debug.Print "S(x)=("; S1; ") * x + ("; S0; ")" Let T0 = c - 2 * b * R0 / R1 + 3 * a * R0 ^ 2 / R1 ^ 2 Debug.Print "T(x)="; T0 Let A2 = ((DD * Q1 * S1) / T0) / 2 Let A1 = (-1 + DD * (Q1 * S0 + Q0 * S1) / T0) / 2 Let A0 = (-b / a + DD * (1 + Q0 * S0) / T0) / 2 Debug.Print "β=("; A2; ") * α^2 + ("; A1; ") * α + ("; A0; ")" Let DD = -DD Let A2 = ((DD * Q1 * S1) / T0) / 2 Let A1 = (-1 + DD * (Q1 * S0 + Q0 * S1) / T0) / 2 Let A0 = (-b / a + DD * (1 + Q0 * S0) / T0) / 2 Debug.Print "γ=("; A2; ") * α^2 + ("; A1; ") * α + ("; A0; ")" Else Debug.Print "表せません。" End If Else Debug.Print "判別式Dが負です。" End If End Sub |
● 3次方程式 F(x)=x3+ax+b=0 について、β-γを求めてみた。
F(x)=x3+ax+b=(x−α)(x−β)(x−γ) とすると、
解と係数の関係より、 α+β+γ=0 、 αβ+βγ+γα=a
よって、 β+γ=−α 、 βγ=α2+a より、
(α−β)(α−γ)=α2−(β+γ)α+βγ=3α2+a
(β−γ)2=(β+γ)2−4βγ=−3α2−4a
ここで、 判別式 D=(α−β)2(α−γ)2(β−γ)2=−4a3−27b2
また、 β-γ={(α−β)(α−γ)(β−γ)2}/{(α−β)(α−γ)(β−γ)}
において、 分母=±√D
分子=(3α2+a)(−3α2−4a)=−6aα2+9bα−4a2
なので、 β-γ=±(−6aα2+9bα−4a2)/√D
ここで、 a=−3 、b=1 を代入して、 D=108−27=81 より、
β-γ=±(18α2+9α−36)/9=±(2α2+α−4)
(補足) 平成19年9月29日付け
3次方程式 X3−3X+1=0 の解の一つを α とすると、3つの解は
α 、 −α2−α+2 、 α2−2
であることが示されたが、これらの解の間に次のような性質が成り立つことも面白い。
(もっとも、ガロア理論を熟知されていれば当然のことだろうが...。)
F(α)=−α2−α+2 とおくと、
F(F(α))
=−(−α2−α+2)2−(−α2−α+2)+2
=−α4−2α3+4α2+5α−4
=−α(3α−1)−2(3α−1)+4α2+5α−4 (← α3=3α−1)
=−3α2+α−6α+2+4α2+5α−4
=α2−2
F(F(F(α)))
=(−α2−α+2)2−2
=α4+2α3−3α2−4α+2
=α(3α−1)+2(3α−1)−3α2−4α+2
=3α2−α+6α−2−3α2−4α+2
=α
同様にして、
G(α)=α2−2 とおくと、 G(G(α))=−α2−α+2 、G(G(G(α)))=α
が成り立つ。 (→ 参考:「解の巡回」)
(4次方程式の解の公式)
4次方程式 aX4+bX3+cX2+dX+e=0 については、Ferrariの解法 が有名だろう。
例 題 4次方程式 X4−8X3+28X2−80X+48=0 を解け。
X=Y+2 とおくと、 (Y+2)4−8(Y+2)3+28(Y+2)2−80(Y+2)+48=0
より、 Y4+4Y2−32Y−48=0 すなわち、 Y4=−4Y2+32Y+48
いま、ある数 λ を考え、 (Y2+λ)2 を計算してみる。
(Y2+λ)2
=Y4+2λY2+λ2=−4Y2+32Y+48+2λY2+λ2=(2λ−4)Y2+32Y+λ2+48
このとき、右辺が完全平方式になるように、λの値を定めればよい。
判別式を D とすると、
D/4=162−(2λ−4)(λ2+48)=−2λ3+4λ2−96λ+448=0
すなわち、 λ3−2λ2+48λ−224=0
この3次方程式の左辺は、(λ−4)(λ2+2λ+56)
と因数分解され、解の一つとして、
λ=4 を得る。このとき、(Y2+4)2=4(Y+4)2 となり、4次方程式は、2つの2次方程式
Y2+4=±2(Y+4) すなわち、 Y2−2Y−4=0 、 Y2+2Y+12=0
に分解される。 これを解いて、 、
ところで、X=Y+2 なので、求める解は、 、
(コメント) Ferrariの解法は、完全平方化を2回行うところがポイントですね!
(追記) 当HP読者のHN「LRW」さんから別解をいただきました。(令和3年6月22日付け)
4次方程式 x4−8x3+28x2−80x+48=0 の解について、あくまでも有理数の範囲
で因数分解できる場合に限りますが、次のような方法も有効です。
x^4-8x^3+28x^2-80x+48 の定数項の約数に着目し、x^2+4 で平方完成すると、
(x^2+4)^2-8x^3+20x^2-80x+32
このうち、x^3の項を -8x(x^2+4) でくくり出して、
(x^2+4)^2-8x(x^2+4)+20x^2-48x+32
このうち、定数項がくくれるように、8(x^2+4) とくくると、
(x^2+4)^2-8x(x^2+4)+8(x^2+4)+12x^2-48x
そこで、(x^2+4) の係数をまとめると、
(x^2+4)^2+(8-8x)(x^2+4)+12x^2-48x
たすきがけの方法で、掛けて 12x^2-48x、足して 8-8x になるように残りを分解する。
x^2+4 | -6x | ||
× | |||
x^2+4 | 8-2x | ||
8-8x |
よって、 (x^2-6x+4)(x^2-2x+12)=0 を解けば、答えが出る。
(コメント) LRWさん、別解をありがとうございました。
A2=B2 より、 (A+B)(A−B)=0 なので、次のような解法も考えられる。
例 題 4次方程式 X4−2X2−32X−63=0 を解け。
試しに、 X4−2X2−32X−63=(X2+kX+m)(X2−kX+n) としてみる。
このとき、 右辺=X4+(m+n−k2)X2+k(n−m)X+mn なので、
m+n−k2=−2 、 k(n−m)=−32 、 mn=−63
ここで、 m=−7 、n=9 とすると、 k=−2 で、 m+n−k2=−2 を満たす。
よって、与えられた4次方程式は、因数分解されて、
(X2−2X−7)(X2+2X+9)=0
となる。 したがって、
X2−2X−7=0 の解は、 X=1±2
X2+2X+9=0 の解は、 X=−1±2i ( i は虚数単位)
(コメント) 上記では、 k 、 m 、 n が直ちに求まったが、一般には見つけ難い。
この解法は、デカルトによるものといわれている。
さて、5次以上方程式には解の公式は存在しないわけであるが、解は確かに存在するし、
方程式の係数の状況によっては解を求めることが可能な場合がある。
5次以上方程式で、解が具体的に求められる例をいくつかあげよう。
例 5次方程式 x5 = 1 を解け。
見かけ上は5次方程式だが、 (x−1)(x4+x3+x2+x+1)=0 と因数分解されるの
で、実質は、4次方程式 x4+x3+x2+x+1=0 の解法である。
ここで、Ferrariの解法やデカルトの解法を持ち出すまでもなく、次のような美しい解法が
知られている。
x≠0 なので、 x2+x+1+1/x+1/x2=0
このとき、 (x+1/x)2−2+(x+1/x)+1=0
すなわち、 (x+1/x)2+(x+1/x)−1=0
よって、 X=x+1/x とおくと、 X2+X−1=0 なので、
このとき、
この方程式の4つの解は、
となる。
(コメント) この計算から、
であることが分かる。この結果も興味深いですね!
また、上記の解法は、相反方程式の解法で、私が高校1年のときに洗礼を受けた解法で
ある。両辺を x2 で割るというアクロバット的解法にしびれたものだ。ただ、現在の学習指導
要領では疎遠になっている解法でもある。
(追記) 平成21年2月28日付け
当HPがいつもお世話になっているS(H)さんからの出題である。
問 題 実数 a 、b に対して、4次方程式 x4+ax3+bx2+ax+1=0 が少なくとも
1つの実数解を持つとき、a2+b2 の最小値を求めよ。
(解) x≠0 なので、 x2+ax+b+a/x+1/x2=0 より、
(x+1/x)2+a(x+1/x)+b−2=0
よって、 X=x+1/x とおくと、 X2+aX+b−2=0 となる。
X≦−2 、 2≦X の範囲に少なくとも1つ解を持つとき、a 、b の条件を求める。
F(X)=X2+aX+b−2 とおくと、軸の方程式は、 X=−a/2
よって、 −a/2≦−2 すなわち、 a≧4 のとき、
判別式 D=a2−4b+8≧0 すなわち、 b≦(1/4)a2+2
−a/2≧2 すなわち、 a≦−4 のとき、
判別式 D=a2−4b+8≧0 すなわち、 b≦(1/4)a2+2
−2≦−a/2≦2 すなわち、 −4≦a≦4 のとき、
F(−2)=4−2a+b−2=2−2a+b≦0
または、 F(2)=4+2a+b−2=2+2a+b≦0
よって、条件を満たす( a , b )は、次の領域内の点である。(境界も含む。)
上図より、a2+b2 の最小値は、4/5 となる。 (終)
例 5次方程式 x5+x4+x3+x2+x+1=0 を解け。
両辺に x−1 を掛けて、 (x−1)(x5+x4+x3+x2+x+1)=0 すなわち、 x6 = 1
この解は、 x = cos(kπ/3)+i・sin(kπ/3) (k=0、1、2、3、4、5)
すなわち、
x = 1 、 (1+i)/2 、 (−1+i)/2 、 −1 、 (−1−i)/2 、 (1−i)/2
よって、 5次方程式 x5+x4+x3+x2+x+1=0 の解は、
(1+i)/2 、 (−1+i)/2 、 −1 、 (−1−i)/2 、 (1−i)/2
(補足) 上記では、解答の最速を考えて、「x−1 を掛けて」としたが、相反方程式の解法
を意識すれば次のように解くことも可能だろう。
5次式 x5+x4+x3+x2+x+1 は、 x +1 で割り切れるので、
x5+x4+x3+x2+x+1=(x +1)(x4+x2+1)
x4+x2+1=0 より、 x≠0 なので、 x2+1+1/x2=0
よって、 (x+1/x)2=1 より、 x+1/x=1、−1
すなわち、 x2−x+1=0 、 x2+x+1=0
これらを解いて、 x=(1±i)/2 、 (−1±i)/2
したがって、 5次方程式 x5+x4+x3+x2+x+1=0 の解は、
(1+i)/2 、 (−1+i)/2 、 −1 、 (−1−i)/2 、 (1−i)/2
また、次のように解くことも可能だろう。ただ、お勧めはできない拙速と思われる解法だが...。
5次式 x5+x4+x3+x2+x+1 は、 x +1 で割り切れるので、
x5+x4+x3+x2+x+1=(x +1)(x4+x2+1)
x4+x2+1=0 より、 x2 = ω、ω2 ( 但し、 ω =(−1+i)/2 )
x2 = ω2 からは、 x = ω 、−ω
x2 = ω とする。 (a+bi)2 = ω を展開して係数を比較すると、
2a2−2b2=−1 、 4ab=
これより、 a2+2ab−b2=0 なので、(a−b)(a+b)=0
よって、 b=a 、 a=−b
b=a のとき、 4ab= から、 a=±1/2 、 b=±/2
このとき、 x=±(1+i)/2 である。
a=−b のとき、 4ab= から、 b2<0 となり矛盾。
以上から、 5次方程式 x5+x4+x3+x2+x+1=0 の解は、
(1+i)/2 、 (−1+i)/2 、 −1 、 (−1−i)/2 、 (1−i)/2
例 6次方程式 x6+x5+x4+x3+x2+x+1=0 を解け。
x≠0 なので、 x3+x2+x+1+1/x+1/x2+1/x3=0
このとき、 (x+1/x)3−3(x+1/x)+(x+1/x)2−2+(x+1/x)+1=0
すなわち、 (x+1/x)3+(x+1/x)2−2(x+1/x)−1=0
よって、 X=x+1/x とおくと、 X3+X2−2X−1=0
3次方程式については解の公式があるので、具体的に解を求めることが出来る。
(途中まで計算したが、手計算では面倒になってきたので打ち切り!)
その解について、さらに2次方程式を解くことにより、所要の解が求められる(筈)。
以下、工事中