こてんこてん蔵庫3                     戻る

(→蔵庫1(文法用語・用言) 蔵庫2(助動詞) 蔵庫4(敬語) 蔵庫5(問題集)

【が】<格助詞> *****************************************************************

<用法>@主格。直前の体言が主語でることを表す。
      A連体修飾格。直前の体言が後続の体言にかかる働きを示す。
      B準体法。体言と同様に用いる。
      
<訳し方>@「〜が」(例・「人には木の端のやうに思はるるよ」と清少納言書けるも、
                げにさることぞかし。
               →「世間の人からは木の端切れのように思われることよ」と
                 清少納言書いているのも、なるほどもっともなことだ。)

       A「〜の」(例・ことさらに感じ、仰せ下されけるよし、家長日記には書けり。
               →特別お褒めになって御教書を命じて賜った事情が家長日記に
                書いてある。)

       B「〜のもの」(例・この歌はある人のいはく、柿本人麻呂なり。
                 →この歌はある人が言うには柿本人麻呂のものである。)

<接続>活用語の連体形・体言に続いて用いられる。

<判別上の注意>接続助詞「が」との区別が必要。
            詳細は【「が」の判別】を参照。

【に】<格助詞> *****************************************************************

<用法>すべて連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法である。
      C以外は現代語の「に」と同じ用法である。次の6種類に分けられる。

      @環境。その動作が行われる場所や時、場合を表す。
      A対象。その動作が何に対して行われるのかを表す。
      B目的。その動作が何のために行われるのかを表す。
      C原因。その動作がなぜ行われるのかを表す。
      D結果。変化してどういう結果になったのかを表す。
      E比較。何と何を比較しているのかを表す。
      
<訳し方>@「〜に」(例・夜の間牛死にぬ。
               →その夜のうち牛が死んでしまう。)

       A「〜に」(例・三足なる角の上帷子をうちかけて・・・
               →鼎についている三本足の角の上帷子を被せて・・・)

       B「〜に」(例・花見罷れりけるに、早く散り過ぎにければ。
                 →花見出かけたところ、早くも散ってしまっていたので。)

       C「〜によって」(例・万の事は月見るこそ慰むるものなれ。 
                 →世間のあらゆる雑事は月を眺めることによって慰められるものだ。)

       D「〜に」(例・春暮れてのち夏なり、夏果てて秋の来るにはあらず。
              →春が過ぎた後で夏なり、夏が終ってから秋が来るわけではない。)

       E「〜と」(例・歌の道のみ、古へ変はらぬなど言ふ事もあれど、いさや。
              →歌の道だけは昔変わらないなどと言う事もあるが、どうだろうか。)

<接続>活用語の連体形・体言に続いて用いられる。
      Bの用法は動詞の連用形に続いて用いられる。

<判別上の注意>接続助詞「に」をはじめ、他の品詞にも紛らわしいものがある。
            詳細は【「に」の判別】を参照。

【の】<格助詞> *****************************************************************

<用法>@主格。直前の体言が主語であることを表す。
      A連体修飾格。直前の体言が後続の体言にかかる働きを示す。
      B準体法。体言と同様に用いる。「の」の後に体言が省かれていると考える。
      C同格。「の」の前後が同じものをさす。
      D比喩。
      
<訳し方>@「〜が」(例・世には心得ぬ事多きなり。
               →世の中には理解できない事多いものである。)

       A「〜の」(例・人心はなほうたて覚ゆれ。
               →人心というものは、やはり情けなく感じられる。)

       B「〜のもの」(例・いかなれば四条大納言はめでたく兼久が悪かるべき。
                 →どうして四条大納言のものは素晴らしく、兼久の歌は悪いの
                  だろうか。)

       C「〜で」(例・連歌しける法師、行願寺の辺にありけるが・・・
               →連歌を職業として法師、行願寺の付近に住んでいた人が・・・)

       D「〜のように」(例・我が袖は潮干に見えぬ沖の石人こそ知らね乾く間ぞなき
                  →私の袖は干潮時にも見えない沖の石のように、人は知らな
                   いだろうが涙で乾く間とてない)

<接続>活用語の連体形・体言の他、副詞・他の助詞・用言の語幹に続いて用いられる。

【と】<格助詞> *****************************************************************

<用法>すべて連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法で、次の7種類に分けら
     れる。DF以外は現代語と同じ用法である。

      @共同者。その動作を共にする相手を表す。
      A並列。二つの事物を並べる。
      B結果。事物が変化した結果を表す。
      C比較の対象。比較している対象となる事物を表す。
      D比喩。ある事物の状態を他の事物にたとえる。
      E引用の内容。会話や心内表現などの引用部分を受ける。
      F強調。
      
<訳し方>@「〜と」(例・人向ひたれば、詞多く、身もくたびれ、心も静かならず。
              →人向き合っていると、言葉も多くなり、身体も疲れ、心も平静で
               はない。)

       A「〜と」(例・期する所、ただ、老死とにあり。
              →長生きしても待ち受けるものは、ただ老い死だけである。)

       B「〜と」(例・古き墳は鋤かれて田なりぬ。
              →古い墓は掘り返されて田んぼなってしまう。)

       C「〜と」(例・銭あれども用ゐざらんは、全く貧者同じ。
              →お金があっても使わないのは、全く貧乏人同じである。)

       D「〜のように」(例・ふるさとは雪のみこそ花は散るらめ
                 →旧都は今頃、雪のように花が散っているだろう)

       E「〜と」(例・憂へ忘る言へど、酔ひたる人ぞ、過ぎにし憂さを思ひ出でて泣く
               める。
              →「酒を飲めば悲しみを忘れる」言うけれど、酔っ払っている人こそ
                遠い過去の嫌なことを思い出しては泣くようだ。)

       F「〜は全て」(例・ありある人、さ思ひつることよと見給へど・・・
                 →祝賀の席に居合わせた人は全員「どうせこんなことだと思っ
                  ていたよ」と言って見ていらっしゃったが・・・)

<接続>@〜Dは活用語の連体形・体言に続いて用いられる。
      Fは同一の動詞の間に挟まり、「と」の直前は連用形になる。
      Eは「と」の直前で一文となる。この場合、単語一語の場合もあるし、文章の場合
     もある。活用語で終る場合は、終止形・命令形、及び係り結びによる連体形・已然
     形になる。

【へ】<格助詞> *****************************************************************

<用法>連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法で、動作の方向を表す。現代
     語と同じ用法である。
      
<訳し方>「〜へ」(例・参りたる人ごとに山登りしは、何事かありけん。
             →参拝している人々がみんな山登って行ったのは、山の上にどん
              なことがあったのだろうか?)

<接続>体言に続いて用いられる。

【を】<格助詞> *****************************************************************

<用法>すべて連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法で、次の3種類に分け
      られる。C以外は現代語と同じ用法である。

      @対象。その動作が何に対して行われているのかを表す。
      A経由・経過。通過する場所や、経過する時間を表す。
      B起点。その動作が行われる起点を表す。
      C離合の相手。「別る」「逢ふ」など離合の意味を持つ動詞に使われる。
      
<訳し方>@「〜を」(例・筆取れば物書かれ、楽器取れば音を立てんと思ふ。
               →人は筆手に取ると自然に何かを書くようになり、楽器手に取
                ると音を奏でようと思うものだ。)

       A「〜を」(例・栗栖野といふ所過ぎて、ある山里に尋ね入る事侍りしに・・・。
              →栗栖野という所通って、ある山里に人を尋ねて入ることがござい
               ましたが・・・)

       B「〜を」(例・春は家立ち去らでも・・・
               →桜の咲く春は家出て行かなくても・・・)

       C「〜と」(例・逢坂にて人別れける時に詠める。
              →逢坂で人別れたときに詠んだ歌。)

<接続>活用語の連体形・体言に続いて用いられる。

<判別上の注意>他の助詞との区別が必要。詳細は【「を」の判別】を参照。

【から】<格助詞> ***************************************************************

<用法>すべて連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法で、次の3種類に分け
      られる。@は現代語と同じ用法である。

      @起点。その動作が起こり始める場所や時を表す。
      A経由地。動作をするのに通過する場所を表す。
      B手段・方法。その動作が行われる手段や方法を表す。
      
<訳し方>@「〜から」(例・去年から山籠もりして侍るなり。
               →去年から山籠もりをしております。)

       A「〜を」(例・月夜よみ妹に逢はむと直道から我は来れども夜そ更けにける
              →月が美しく照る夜なので、あの娘に会おうと思って、
                近道通って私は来たが、夜が更けてしまった。)

       B「〜で」(例・徒歩からまかりて言ひ慰め侍らむ。
              →徒歩参って話をしてお慰めしましょう。)

<接続>活用語の連体形・体言に続いて用いられる。

【して】<格助詞> ***************************************************************

<用法>すべて連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法で、次の3種類に分けら
     れる。

      @手段・材料。その動作を行うのに用いる手段や材料を表す。
      A共同者。その動作を共にした相手を表す。
      B使役の対象。その動作をさせる相手を表す。
      
<訳し方>@「〜で」(例・御前の火炉に火を置くときは、火箸して挟むことなし。
              →天皇・上皇の御座の前にある火鉢に火をつけるときは火箸挟む
               ことはしない。)

       A「〜とともに」(例・もとより友とする人、一人二人して行きけり。
                 →以前から友だちにしていた人、一人二人とともに出かけた。)

       B「〜に」(例・人をしてかかる目を見する事、慈悲もなく礼儀にも背けり。
              →他人こんな目に遭わせることは、慈悲の心もなく、世間の礼儀に
               も反している。)

<接続>活用語の連体形・体言に続いて用いられる。

<判別上の注意>他の語と紛らわしいものがあり、区別が必要。
           詳細は【「して」の判別】を参照。

【にて】<格助詞> ***************************************************************

<用法>すべて連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法で、次の3種類に分けら
     れる。

      @場所・時。その動作が行われる場所や時を表す。
      A手段・材料。その動作を行うのに用いる手段や材料を表す。
      B原因・理由。その動作が行われることになった原因・理由を表す。
      
<訳し方>@「〜で」(例・長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやかるべけれ。
              →長くとも40歳に達しないくらい死んでいくのが見苦しくないだろう。)

       A「〜で」(例・女の履ける足駄にて作れる笛には、秋の鹿必ず寄るとぞ言ひ伝へ
               侍る。
              →女が履いている下駄作った笛の音には、
                秋の牡鹿が必ず寄って来ると言い伝えられています。)

       B「〜ので」(例・竹の中におはするにて知りぬ。
              →竹の中にいらっしゃるのでわかった。)

<接続>活用語の連体形・体言に続いて用いられる。

<判別上の注意>他との語に紛らわしいものがあり、区別が必要。
            詳細は【「にて」の判別】を参照。

【より】<格助詞> ***************************************************************

<用法>E以外はすべて連用修飾格(後続の用言を修飾する)としての用法で、次の5種類
     に分けられる。Eは連体修飾格である。 なお、@BEは現代語と同じ用法である。

      @起点。その動作が起こり始める場や時を表す。
      A経由地。動作をするのに通過する場所を表す。
      B比較の基準。何を基準に比較しているのかを表す。
      C手段・方法。その動作が行われる手段や方法を表す。
      D即時。ある動作が起こるとすぐ、別のある動作が起こることを表す。
      E限定。直前の語句が一定の範囲を示し、後続の体言にかかる。
      
<訳し方>@「〜から」(例・伊勢国より、女の鬼になりたるを率て上りたり。
               →伊勢の国から、女の鬼になったのを引き連れて都に上ってきた。)

       A「〜を」(例・沖より舟どもの歌ひののしりて、漕ぎゆくなども聞こゆ。
              →沖通って何艘かの船が、歌をうたって大騒ぎして、漕いで行く声
               なども聞こえる。)

       B「〜よりも」(例・無常の来たる事は、水火の攻むるより速やかに逃れがたきも
                  のを。
                →死がやってくることは、水や火が襲いかかることよりも速くて、
                  逃れられないものなのに。)

       C「〜で」(例・ただ一人、徒歩より詣でけり。
              →ただ一人で、徒歩参拝した。)

       D「〜とすぐに」(例・名を聞くより、やがて面影は推し測らるる心地するを・・・
                 →人の名前を聞くとすぐに、その人の容姿が推測できる気がす
                  るのに・・・)

       E「〜より」(例・これを見るよりほかのことなければ・・・
                →この物語を読むより他のことはないので・・・)

<接続>活用語の連体形・体言に続いて用いられる。

【が】<接続助詞> ***************************************************************

<用法>@逆接。
      A単純接続。

<訳し方>@「〜が」(例・今井四郎軍しける、これを聞いて・・・(中略)・・・太刀の先を口
               に含み、馬よりさかさまに飛び落ち、貫かれてぞ失せにける。
              →今井四郎が戦っていた、これを聞いて・・・(中略)・・・太刀の先
               端を口の中に入れ、馬から逆さまに飛び落ちて、刀に貫かれて死
               んでしまった。)

       A「〜ところ」(例・やすらかに結ひて参らせたりける、思ふやうに廻りて、水を
                  汲み入るる事めでたかりけり。
               →水車を楽に組み立てて差し上げたところ、思い通りによく回転し
                て、水を汲み上げて池に入れるようすが素晴らしかった。)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

<判別上の注意>格助詞「が」との区別が必要。
            詳細は【「が」の判別】を参照。

【に】<接続助詞> ***************************************************************

<用法>@順接。
      A逆接。
      B単純接続。
      
<訳し方>@「〜ので」(例・あまり憎き、その法師をばまづ斬れ。
                →あまりにも憎いので、その僧侶を最初に斬れ。)

       A「〜が」(例・しばし奏でて後、抜かんとする、大方抜かれず。
              →しばらく舞った後で頭に被った足鼎を抜こうとする、全く抜けない。)

       B「〜と」(例・命あるものを見る、人ばかり久しきはなし。
              →命のあるものを見る、人間ほど命の長い生き物はいない。)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

<判別上の注意>他との語に紛らわしいものがあり、区別が必要。
            詳細は【「に」の判別】を参照。

【を】<接続助詞> ***************************************************************

<用法>@順接。
      A逆接。
      B単純接続。
      
<訳し方>@「〜ので」(例・まことに徳たけたる有様にて、内裏へ参られたりける
               →本当に徳の備わった様子で宮中へ参内なさっていたので、)

       A「〜のに」(例・八重桜は奈良の都にのみありける、このごろぞ世に多くなり
                 侍るなる。
               →八重桜は昔は奈良の都にだけあったのに
                 近頃は世間に多くなっているようです。)

       B「〜ので」(例・御室にいみじき児のありける、いかで誘ひ出して
                 遊ばんと企む法師どもありて・・・
               →仁和寺にすばらしい子どもがいたので、何とか誘い出して
                 一緒に遊ぼうと計画した僧侶たちがいて・・・)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

<判別上の注意>格助詞「を」との区別が必要。
            詳細は【「を」の判別】を参照。

【て】<接続助詞> ***************************************************************

<用法>@単純接続。
      A原因・理由。後述する行為の原因・理由を述べる。
      B逆接。
      C連用修飾。後続の用言を修飾する。
      D被補助語。後続の補助動詞につなぐ用法。 
      
<訳し方>@「〜て」(例・ある時思ひ立ち、ただ一人、徒歩より詣でけり。
               →ある時思い立っ、一人で徒歩で参詣した。)

       A「〜ので」(例・障ることあり、まからで。
                →差し支える用事があるので、出かけられなくて。)

       B「〜が」(例・汝、姿は聖人に、心は濁りに染めり。
               →お前は外見は聖人である、心は濁りに染まっている。)

       C「〜ようすで」(例・三寸ばかりなる人、いとうつくしう居たり。
                 →三寸ほどの人が、とてもかわいらしい様子で座っていた。)

       D「〜て」(例・この気色、尊く見え候ふ。
               →このようすが尊く見えございます。)

<接続>活用語の連用形・副詞、格助詞「と」に続いて用いられる。

<判別上の注意>他の語と紛らわしいものがあり、区別が必要。
            詳細は【「て」の判別】を参照。

【して】<接続助詞> **************************************************************

<用法>単純接続。
      
<訳し方>「〜て」(例・ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
             →川の流れは絶えることがなく、しかも、その水は元の水ではない。)

<接続>形容詞型活用語・形容動詞型活用語の連用形
      及び助動詞「ず」の連用形に続いて用いられる。

     ※形容詞型活用語の場合は本活用「〜く」から接続する。
       (補助活用「〜かり」からは接続しない。
     ※形容動詞型活用語の場合は補助活用「〜に」から接続する。
       (本活用「〜なり」からは接続しない。
     ※助動詞「ず」の場合は上記の例文にあるように、連用形は「ず」から
       接続する。
(同じ連用形でも「に」や「ざり」からは接続しない。

<判別上の注意>格助詞「して」をはじめ、他の語にも紛らわしいものがあり、
            注意が必要。詳細は【「して」の判別】を参照。

【で】<接続助詞> ***************************************************************

<用法>打消接続。その動作を打ち消して後続の文節につなげる用法。
      
<訳し方>「〜ないで」(例・逢は止みにし憂さを思ひ・・・
               →結婚できないで終ってしまった恋のつらさを思い・・・)

<接続>活用語の未然形に続いて用いられる。

【とも】<接続助詞> **************************************************************

<用法>逆接の仮定条件。前に述べた内容が起きたものと仮定して、後の内容を逆接に
     述べる表現である。
      
<訳し方>「〜ても」(例・たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらん。
              →たとえ耳と鼻が切れてなくなっても、命だけはどうして助からない
               ことがあろうか。)

<接続>活用語の終止形に続いて用いられる。

【ど】<接続助詞> ***************************************************************

<用法>逆接の確定条件を表す。次の2種類の用法がある。

      @逆接の偶発条件。前述した事柄が起きた後、
        それに反する内容で後述する事柄が偶発的に起こることを表す。

      A逆接の恒常条件。前述した事柄が起こると、
        それに反する内容で後述する事柄が必ず起こることを表す。
      
<訳し方>@「〜けれども」(例・木の葉をかきのけたれ、つやつや物も見えず。
                  →木の葉を取り除いてみたけれども、埋めておいた物が全
                   然見つからない。)

       A「〜ても」(例・百薬の長とは言へ、万の病は酒よりこそ起これ。
               →「酒は百薬の長」とは言っても、いろいろな病はじつに酒から起
                こるものである。)

<接続>活用語の已然形に続いて用いられる。

【ども】<接続助詞> **************************************************************

<用法>逆接の確定条件を表す。次の2種類の用法がある。

      @逆接の偶発条件。前述した事柄が起きた後、
        それに反する内容で後述する事柄が偶発的に起こることを表す。

      A逆接の恒常条件。前述した事柄が起こると、
        それに反する内容で後述する事柄が必ず起こることを表す。
      
<訳し方>@「〜けれども」(例・枕上に寄り居て泣き悲しめども、聞くらんとも覚えず。
               →枕もとに近寄って座って泣き悲しむけれども、その声を本人が聞
                 いているようには思われない。)

       A「〜ても」(例・懈怠の心みづから知らずと言へども、師これを知る。
               →怠け心というものは自分では意識していなくても
                 師匠にはよくわかっているのである。)

<接続>活用語の已然形に続いて用いられる。

【ば】<接続助詞> ***************************************************************

活用語の未然形に続いて使われるものと、已然形に続いて使われるものとで、用法・訳し方
が異なるので注意。


A・未然形接続の場合

<用法>順接の仮定条件。前述した事柄が起きたものと仮定して、後述する事柄を順接に
     述べる表現である。
      
<訳し方>「〜ば」(例・飽かず、惜しと思は、千年を過ぐすとも一夜の夢の心地こそせめ。
             →もし長い命を不足に感じ、惜しいと思うなら、たとえ千年を過ごし
              ても一夜の夢を見たのと同様な気持ちがするに違いない。)

<注意> 仮定条件は通常活用語の未然形に接続助詞「ば」を伴った形であるが、未然形
      となる活用語が形容詞及び形容詞型の活用をする助動詞と打消の助動詞「ず」の
      場合は、接続助詞「ば」が清音化し「は」となる(例1〜例7)。ただしこれらを連用形
      に係助詞「は」のついた形と考える説があり、それが通説とされている。しかし、本
      稿では例10〜例12の用例とは厳然として区別すべき観点から未然形を認め接続
      助詞「ば」は清音化したものと扱う。なお、打消の助動詞「ず」については鎌倉時代
      以降、また形容詞及び形容詞型の活用をする助動詞については江戸時代以降、
      未然形に接続助詞「ば」が接続した形が登場し、これで仮定条件を表すようになっ
      た(例8・例9)。
   
    例1・我はかばかしく、さのたまふとも、かかる道に率て出で奉るべきかは。
       (私がもっとしっかりしていたならば、)
    例2・傳奕のごとく、生たりし時仏法を信ぜず。
       (傳奕のようであるならば、)
    例3・ともかくも君が心。出で給ひぬべく、車寄せさせよ。
       (ともかくあなたの意志次第だ。ここをお出になろうと思うのならば、)
    例4・思ふこと適ふまじく、いかにもいかにも世にはかうながらはあるまじ。
       (源氏宮への恋が叶いそうにないならば、)
    例5・もしまことに聞こしめし果てまほしく、駄一疋を賜はせよ。
       (本当に話の終わりまですっかりお聞きになりたいのならば、)
    例6・琴のことの音聞きたく、北の国の上に松を植ゑよ。
       (琴のことの音を聞きたいのならば、)
    例7・龍の首の玉取り得ず、帰り来な。
       (龍の首の玉を取ってくることができなかったら、)
    例8・それほど名残り惜しく、誓紙書かぬがよいわいの。
       (それほど名残惜しいのならば、)
    例9・かかる折だにもその恩を報じ申さず、何をもってか報い申さん。
       (このような時にでも恩返しをしてさしあげなかったら、)

    ただ、形容詞及び形容詞型の活用をする助動詞と打消の助動詞は未然形と連用形
   が同形であるので、これらの連用形に係助詞「は」のついた下記の用例との判別に注
   意しなければならない。
   
    例10・心苦しくあれど、見ざらましかば口惜しからまし
       (源氏の君もすまない気持ちするけれど、)
    例11・今一度聞えべく思ひし。
       (もう一度申し上げたいと思っていました。)
    例12・いつの程に急ぎ書き給ひつらむと見るも、安からずありむけかし。
       (気がかりであっただろうよ。)
  
    未然形に接続助詞「は」のついた形と連用形に係助詞「は」のついた形との判別は
   1・仮定条件に現代語訳できるか否か
   2・「は」を省略したり「は」を係助詞「も」に置換しても文が成立するか否か
   に着目する。詳しくは【仮定条件】 【ず】<「ずは」の形について>の項を参照。

B・已然形接続の場合

<用法>順接の確定条件を表す。次の3種類の用法がある。

      @原因・理由。前述した事柄が、後述する事柄の原因や理由を表す。
      A偶発条件。前述した事柄が起こると、偶然、後述する事柄が起こることを表す。
      B恒常条件。前述した事柄が起こると、必ず、後述する事柄が起こることを表す。
      
<訳し方>@「〜ので」(例・年寄るまで石清水を拝まざりけれ、心憂く覚えて・・・。
               →年を取るまで石清水八幡宮を参拝しなかったので、残念に思っ
                て・・・)

       A「〜と」 (例・松どもともして走り寄りて見れ、このわたりに見知れる僧なり。
               →松明などを灯して駆けつけて見る
                 この辺で顔を見知っている僧侶である。)

       B「〜と」(例・命長けれ、恥多し。
              →命が長い、恥をかくことも多いものだ。)

【も】<接続助詞> ***************************************************************

<用法>@逆接の仮定条件。前に述べた内容が起きたものと仮定して、後の内容を逆
       接に述べる表現である。

      A逆接の確定条件。前述した事柄が起きた後、それに反する内容で後述する
       事柄が起こることを表す。
      
<訳し方>@「たとえ〜ても」(例・身一つからうじて逃るる、資材を取り出づるに及ばず。
                   →たとえ身体だけはどうにか逃げ出せても、焼けている建
                    物から家財を取り出すことまではできない。)

       A「〜けれども」(例・物を言ふ、くぐもり声に響きて聞こえず。
                  →何か物を言うけれども、内にこもった声になって響いて、
                   はっきりと聞こえない。)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

<判別上の注意>係助詞「も」との区別が必要。詳細は【「も」の判別】を参照。

【ながら】<接続助詞> ***********************************************************

<用法>@逆接。
      A同時並行。動詞と動詞の間に使われ、
        前の動作と後の動作が同時に行われていることを表す。
      B全部。名詞や副詞に続いて用いられた場合は、この意味である。
      
<訳し方>@「〜けれども」(例・身は賎しながら、母なむ宮なりける。
                  →身分は低いけれども、母は宮家の出身であった。)

       A「〜ながら」(例・取りつきながらいたう睡りて、落ちぬべき時に目を醒ますこと
                  度々なり。
                 →木の枝にしがみつきながらすっかり眠り込んで、
                   何度も木から落ちそうなときに目を醒ます有様である。)

       B「すべて」(例・大事を思ひ立たん人は、去り難く、心にかからん事の本意を遂
                 げずして、さながら捨つべきなり。
               →仏道に入ることを決心した人は、離れにくく、心に引っかかるさま
                ざまな用事の目的を果たさないで、すべて捨て去るべきである。)

<接続>動詞・助動詞の場合は連用形、形容詞・形容動詞の場合は語幹
      (但し、シク活用の形容詞の場合は終止形)、及び、副詞・名詞に続いて用いられる。

【つつ】<接続助詞> *************************************************************

<用法>@反復・継続。その動作が繰り返し行われている状態を表す。
      A同時並行。動詞と動詞の間に挟んで使われ、前の動作と後の動作とが同時に行
       われていることを表す。
      B詠嘆。和歌の末尾に使われ、事物に感動する気持ちを表す。
      
<訳し方>@「〜続けて」(例・談義の座にても、大きなる鉢にうづ高く盛りて、膝元に置きつつ
                  食ひながら文をも読みけり。
                 →仏典の講義の席でも、大きな鉢に芋頭を山盛りにして、それを膝
                  元に置き続けて、食べながら仏典を講読した。)

       A「〜ながら」(例・死骸は気疎き山の中にをさめて、さるべき日ばかり詣でつつ見れ
                  ば・・・
                 →死者の遺骨は人の気配のない山の中に埋葬して、墓参りをする
                  はずの日だけに、お参りしながら墓の様子を見てみると・・・)

       B「〜だなあ」(例・田子の浦に打ち出でて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
                 →田子の浦に出てみると、白く美しい富士山の高嶺には雪が降り積
                  もっていることだなあ。)

<接続>動詞・助動詞の連用形に続いて用いられる。

【ものを】<接続助詞> ***********************************************************

<用法>逆接。
      
<訳し方>「〜のに」(例・皆人の興ずる虚言は、ひとり「さもなかりしものを」と言はんも詮なくて・・・
              →みんながおもしろがる嘘話は、自分だけ一人「そうではなかったのに」と
               言っても仕方がないので・・・)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

【ものの】<接続助詞> ***********************************************************

<用法>逆接。
      
<訳し方>「〜けれども」(例・つれなく妬きものの、忘れ難きに思す。
               →空蝉は冷淡で恨めしいけれども、源氏は忘れがたい女だとお思いになる。)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

【ものから】<接続助詞> *********************************************************

<用法>@逆接の確定条件。
      A順接の確定条件。江戸時代以降の用法。原因・理由を表す。
      
<訳し方>@「〜けれども」(例・いたましうするものから、下戸ならぬこそ男は良けれ。
                  →酒を勧められて困ったような表情をするけれども
                    全く飲めないわけではないのが、男として好ましい。)

       A「〜ので」(例・さすがに辺土の遺風忘れざるものから、殊勝に覚えらる。
                →やはり片田舎の遺風を忘れずに伝えているので
                  奥浄瑠璃は優れたものに感じられる。)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

【ものゆゑ】<接続助詞> *********************************************************

<用法>@逆接の確定条件。
      A順接の確定条件。原因・理由を表す。
      
<訳し方>@「〜けれども」(例・待つ人も来ぬものゆゑに鶯の鳴きつる花を折りてけるかな
                  →私が待っている人は来ないけれども、あの人へのもてなし
                    のために、鶯が鳴いた花の枝を折ってしまったことだよ 。)

       A「〜ので」(例・事ゆかぬものゆゑ、大納言をそしりあひたり。
                →納得いかない事なので、大納言を非難しあっている。)

<接続>活用語の連体形に続いて用いられる。

【だに】<副助詞> ***************************************************************

<用法>@最小限度の希望。望んでいる事柄のうち、最小限度のものを表す。
       A類推。最小限の事柄を示し、それ以上の事柄を類推させる。
      
<訳し方>@「せめて〜だけ」(例・我に今一度、声をだに聞かせ給へ。
                   →私にもう一度、せめてだけでも聞かせてください。)

       A「〜さえ」(例・つくづくと一年を暮らすほどだにも、こよなうのどけしや。
              →しみじみと一年を過ごす間でさえも、格別にゆったりとするものだ。)

       ※Aの文は最低限の事柄として「一年を過ごすこと」を提示して、言外に「まして
        人間は何十年も生きるのだから、なおさらゆったりと過ごせるはずだ」という類
        推をさせている。

<接続>活用語の連体形・体言・助詞に続いて用いられる。

<特記事項>奈良時代までは@の用法しかなく、Aの用法は平安時代以後にみられるよう
         になった。鎌倉時代以後は「だに」は「さへ」とほとんど同義に用いられるように
         なり、室町時代以後は「さへ」が使われるようになり、現代に至っている。

【すら】<副助詞> ***************************************************************

<用法>@類推。最小限の事柄を示し、それ以上の事柄を類推させる。
       A最小限度の希望。望んでいる事柄のうち、最小限度のものを表す。
      
<訳し方>@「〜さえ」(例・聖などすら、前の世のこと夢に見るはいと難かなるを・・・
               →徳の高い僧侶などでさえ、前世のことを夢に見るのは
                 非常に困難であるということだが・・・)

       A「〜だけでも」(例・人の寝る甘睡は寝ずてはしきやし君が目すらを欲りて嘆かふ。
                  →愛し合う人たちがするような共寝はできず、せめていとしい
                   あの人の目だけでも見たいと思って嘆いている。)

<接続>体言・副詞・助詞に続いて用いられる。

<特記事項>「すら」は主に奈良時代までに用いられた。
         平安時代以後は和歌や和漢混交文にわずかに用いられ、特に、散文での用
         例は非常に少ない。これは「すら」の用法が「だに」「さへ」で表されるようにな
         ったためである。

【さへ】<副助詞> ***************************************************************

<用法>@添加。ある事柄の上にさらに別の事柄が加わることを表す。
       A類推。最小限の事柄を示し、それ以上の事柄を類推させる。
      
<訳し方>@「〜までも」(例・黒き穢き身を肩抜きて、目も当てられずすぢりたるを、興じ見
                  る人さへうとましく、憎し。
                 →黒く汚れた体で肩の部分だけ肌を出して、見ていられないく
                  らい身をくねらせて舞う姿を面白がって見る人までも、いやら
                  しい。)

       A「〜さえ」(例・まさしき兄弟さへ似たるは少なし。まして従兄弟に似たるものは
                なし。
               →本当の兄弟でさえ似ている者は少ない。まして、従兄弟には似
                ている者はいない。)

<接続>活用語の連体形・体言・助詞に続いて用いられる。

<特記事項>@が本来の用法。Aの用法はもともとは「すら」が表していた意味であるが、
         平安時代以後「すら」はほとんど使われなくなり、「だに」「さへ」が「すら」の
         意味まで表すようになった。さらに時代が下ると「だに」の用例も減り、室町
         時代以後は「さへ」が使われるようになり、現代に至っている。

【のみ】<副助詞> ***************************************************************

<用法>@限定。状況や動作を限定する表現。
       A強調。
      
<訳し方>@「〜だけ」(例・花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。
                →桜は満開の時だけを、月は満月のときだけを観賞するもの
                 だろうか。)

        A特に訳さない(例・ただ一人あるのみこそ良けれ。
                  →ただ一人でいるのが良いのだ。)

<接続>活用語の連体形・体言・副詞・助詞に続いて用いられる。

【ばかり】<副助詞> **************************************************************

<用法>@程度。だいたい、おおよその程度を表す。
       A限定。それだけと限定する意味を表す。
      
<訳し方>@「〜ほど」(例・人の亡き跡ばかり悲しきはなし。
                →人の死後の有様ほど悲しいものはない。)

       A「〜だけ」(例・極楽寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
               →石清水八幡宮に付属している極楽寺・高良などを拝んで、
                 石清水八幡宮は これだけのものと思い込んで帰ってしまった。)

<接続>活用語の終止形・連体形、体言・副詞・助詞に続いて用いられる。

【など】<副助詞> ***************************************************************

<用法>@例示。同類の事物の中からいくつかを代表例として示す用法。
       A婉曲。明示せずにやわらかく示す。
      B引用の内容。会話や心内表現などの引用部分を受ける。
      
<訳し方>@「〜など」(例・奥なる屋にて酒飲み、物食ひ、囲碁・双六など遊びて・・・
               →桟敷の奥にある家の中で酒を飲んで物を食べて、囲碁や双六など
                の遊びをして・・・)

       A「〜など」(例・雨など降るのもをかし。
               →雨などが降るのも情趣がある。)

       B「〜などと」(例・「我こそ得め」など言ふ者どもありて、跡に争ひたる、様悪し。
                →「遺産は私がもらおう」などと言う者たちがいて、人の死後に
                  相続争いをしているのは見苦しいものだ。)

<接続>@Aは活用語の連用形・連体形、体言に続いて用いられる。
      Bは「など」の直前で一文となる。この場合、単語一語の場合もあるし、文章の場合
      もある。
      活用語で終る場合は、終止形・命令形、及び係り結びによる連体形・已然形になる。

【まで】<副助詞> ***************************************************************

<用法>@範囲。動作が及ぶ範囲を表す。
       A限度。動作や状況の限度を示す。
      
<訳し方>@「〜まで」(例・大きなる辻風起こりて、六条わたりまで吹けること侍りき。
               →大きな旋風が発生して、六条付近まで吹き抜けたことがございました。)

        A「〜ほど」(例・落ちぬべきまで簾張り出でて・・・
                →今にも落ちそうなほど桟敷の前の簾を外に押し広げて・・・)

<接続>各種の単語から接続する。

【し】<副助詞> *****************************************************************

<用法>強調。直前の語を強調する。
            
<訳し方>特に訳さない。(例・人の心すなほならねば、偽りなきにもあらず。
                 →人の心は素直ではないから、偽善もないわけではない。)

<接続>主語・連用修飾語に続いて用いられる。

<判別上の問題>他の品詞に紛らわしいものがあるので注意。
            詳細は【「し」の判別】を参照。

【は】<係助詞> *****************************************************************

<用法>@提示。「は」を含む文節を他のものと区別して提示する。後続の文節は提示した
       語句に関する叙述となる。
      A対比。複数の事柄を対照的に取り立てて示す。「Aは○○」「Bは××」の形で
       対句を構成する。
      B強調。この場合は「は」を取り除いても文が成立する。

<訳し方>@「〜は」(例・唐の物、薬の外なくても事欠くまじ。
             →中国からの渡来品、薬の他特になくても不自由はしないだろう。)

       A「〜は」(例・みかきもり衛士のたく火の夜燃え昼消えつつ物をこそ思へ
             →皇居の御門を警護する兵士の焚く火が夜燃えて昼消えている
              ように、私の心にある恋の炎も夜燃え上がり昼心が消え入るば
              かり思い嘆き、物思いに沈んでいることだ。)

       B「〜は」(例・昔、若き男、異しうあらぬ女を思ひけり。
             →昔、ある若い男がまんざら悪くない女を恋しく思った。)

<接続>各種の語から接続する。活用語から接続す場合@Aは連体形から、Bは連用形
      から接続する。

<特記事項>格助詞「を」から接続する場合は濁音化し「ば」と表記される。
         (例・すべて月・花を、さのみ目にて見るものかは。)

<判別上の注意>終助詞「は」、接続助詞「ば」との区別が必要。詳細は【「は」の判別】
           参照。

【も】<係助詞> *****************************************************************

<用法>@並列。同種の事物を並べて示す。
       A添加。同種の事物をさらに付け加える。
      B強調。直前の文節を強める。
      
<訳し方>@「〜も」(例・防がんとするに、力なく、足立たず。
              →防ごうとしたが、力なく足立たない。)

        A「〜も」(例・血垂り、ただ腫れに腫れみちて、息つまりければ・・・。
              →血が垂れてやたらに腫れて、息苦しくなってきたので・・・)

       B「〜も」(例・世の人数さのみ多からぬにこそ。
              →この世に生きている人の数、そう多くはないのだ。)

<接続>各種の語から接続する。

<判別上の注意>接続助詞「も」との区別が必要。詳細は【「も」の判別】を参照。

【ぞ】<係助詞> *****************************************************************

※この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、 文末の活用語は連体形で結ぶ。

<用法>@強調。直前の文節を強めたいときの用法。
      A懸念。悪い結果や不都合な事態を予測して、そうなることへの危機感を表す。

<訳し方>@特に訳さない。(例・何事も入り立たぬさましたる良き。
                   →何事についても深く立ち入って知っているふりをしないで
                    いるのが良い。)

        A「〜したら困る」(例・門よくさしてよ。雨も降る。
                   →門をしっかり閉めなさい。雨が降ったら困る。)

<接続>@は各種の単語から接続する。
       Aは係助詞「も」から接続する。

<判別上の注意>終助詞「ぞ」との区別が必要。詳細は【「ぞ」の判別】を参照。

【なむ】<係助詞> ***************************************************************

※この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は連体形で結ぶ。

<用法>強調。直前の文節を強めたいときの用法。
      
<訳し方>特に訳さない。(例・もののあはれも知らずなりゆくなん、あさましき。
                 →物の情趣も理解できなくなってゆくのは、情けない。)

<接続>各種の単語から接続する。

<特記事項>この語は「なん」と発音された。
         また、鎌倉時代以降の作品では、「なむ」は「なん」と表記された。

<判別上の注意>終助詞「なむ」をはじめ、他の語と紛らわしいものがあるので注意が必要。
            詳細は【「なむ」の判別】を参照。

【や】<係助詞> *****************************************************************

※この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は連体形で結ぶ。

<用法>@疑問。読者や登場人物にものを問いかける表現。
       A反語。主張したい内容とは反対のことを疑問形にして述べて、言外に強い否定
       を表す言い方。
      
<訳し方>@「〜か」(例・もし、この御中にいろをし房と申すぼろおはします。
              →もしかすると、このお仲間にいろをし房と申し上げるぼろがいらっし
               ゃいます。)

        A「〜か」(例・近き火などに逃ぐる人は「しばし」と言ふ。
               →近所の火事で逃げ出す人は「しばらく待ってみよう」と言うだろう
                いや、言うわけがない。)

       ※反語の場合は、必ず叙述した一文の後に「いや、そうではない」という否定の主
        張が言外に含まれている。
現代語訳の際はこのことを踏まえて訳す必要がある。

<接続>各種の単語から接続する。

<判別上の注意>他の助詞と紛らわしいものがあるので区別が必要。
            詳細は【「や」の判別】を参照。

【か】<係助詞> *****************************************************************

※この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は連体形で結ぶ。

<用法>@疑問。読者や登場人物にものを問いかける表現。
       A反語。主張したい内容とは反対のことを疑問形にして述べて、言外に強い否定
       を表す言い方。
      
<訳し方>@「〜か」(例・参りたる人ごとに山へ登りしは何事ありけん。
              →参拝している人がみんな山へ登って行ったのは、山の上に何事
               があったのだろう。)

       A「〜か」(例・あとまで見る人ありとはいかで知らん。
              →客の去った後もなお、客を送り出した人の様子を見ている人がい
               ることを、どうして知っているだろういや、知っているはずはない。)

      ※反語の場合は、必ず叙述した一文の後に「いや、そうではない」という否定の主張
       が言外に含まれている。
現代語訳の際はこのことを踏まえて訳す必要がある。

      ※なお、主張したい内容とは反対のことが否定文の場合は、反語形にすることで強い
       肯定の意味を表す。

       (例・たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなど生きざらん。
         →たとえ耳・鼻が切れてなくなっても、命だけはどうして助からないことがあろう
          いや、助かるに決まっている。)


<接続>各種の単語から接続する。

<判別上の注意>他の助詞と紛らわしいものがあるので区別が必要。詳細は【「か」の判別】
           を参照。

【やは】<係助詞> ***************************************************************

※係助詞「や」に係助詞「は」のついた形。
  この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は連体形で結ぶ。

<用法>@疑問。読者や登場人物にものを問いかける表現。
       A反語。主張したい内容とは反対のことを疑問形にして述べて、言外に強い否定
       を表す言い方。

<訳し方>@「〜か」(例・乾き砂子の用意やはなかりける。
              →乾いた砂の用意はしなかったのだろう。)


       A「〜か」(例・聞き伝ふばかりの末々はあはれとやは思ふ。
              →故人の名前を伝え聞いているだけの後世の子孫たちは、その故
               人のことを哀れと思うだろういや思いはしない。)

       ※反語の場合は、必ず叙述した一文の後に「いや、そうではない」という否定の
        主張が言外に含まれている。
現代語訳の際はこのことを踏まえて訳す必要が
        ある。

<特記事項>文末に用いられた場合はすべて反語の用法である。

<接続>各種の語から接続する。

【かは】<係助詞> ***************************************************************

※係助詞「か」に係助詞「は」のついた形。
  この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は連体形で結ぶ。

<用法>@疑問。読者や登場人物にものを問いかける表現。
       A反語。主張したい内容とは反対のことを疑問形にして述べて、言外に強い否定
       を表す言い方。
      
<訳し方>@「〜か」(例・かばかりの中に何かはと、人の心はなほ、うたて覚ゆれ。
               →こんな悲嘆の中でどうしてそんなことを言うのだろうと、人の心
                というものは、やはり情けなく感じられる。)

        A「〜か」(例・男女の情けも、ひとへに逢ひ見るをば言ふものかは
               →男女の恋も一途に結ばれるものだけをいうものだろういや、
                そうではない
。)

       ※反語の場合は、必ず叙述した一文の後に「いや、そうではない」という否定の
        主張が言外に含まれている。
現代語訳の際はこのことを踏まえて訳す必要が
        ある。

<特記事項>文末に用いられた場合はすべて反語の用法である。

<接続>各種の語から接続する。

【こそ】<係助詞> ***************************************************************

※この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は已然形で結ぶ。

<用法>@強調。直前の文節を強めたいときの用法。
       A逆接。「こそ」を受ける結びの語で文が終らず、さらに後続の文節に続く場合に
       限る用法。
      
<訳し方>@特に訳さない(例・片田舎の人こそ、色濃く、万はもて興ずれ。
                  →片田舎の人に限って、何事にもしつこく持て囃すものである。)

        A「〜けれども」(例・思ひ出でて偲ぶ人あらんほどこそあらめ、そもまたほどなく
                    失せて、聞き伝ふるばかりの末々は、あはれとやは思ふ。
                  →故人を思い出して懐かしむ人がいるうちはまだ良いけれども
                    そんな人もまもなく死んでしまうと、故人の名前を伝え聞いて
                    いるだけの後世の子孫は、故人を哀れと思うだろうか。)

<接続>各種の単語から接続する。

【なむ】<終助詞> ***************************************************************

<用法>願望。他に対して「そうなってほしい」という気持ちを表す。
     
<訳し方>「〜ほしい」(例・惟光とく参らなむとおぼす。
                →惟光に早く参上してほしいとお思いになる。)

<接続>動詞・助動詞の未然形に続いて用いられる。

<特記事項>「なむ」は「なん」と発音する。また、鎌倉時代以後は表記上も「なん」となるの
        で注意したい。

<判別上の注意>係助詞「なむ」をはじめ、他の語と紛らわしいものがあるので注意が必要。
            詳細は【「なむ」の判別】を参照。

【ばや】<終助詞> ***************************************************************

<用法>希望。自分が「そうしたい」という気持ちを表す。
      
<訳し方>「〜たい」(例・その人に逢ひ奉りて、恨み申さばやと思ひて、尋ね申すなり。
              →その人にお会いして、恨みをお晴らし申し上げたいと思って、
               お尋ねするのです。)

<接続>動詞・助動詞の未然形に続いて用いられる。

<判別上の問題>他の助詞の複合型に紛らわしいものがある。
            詳細は【「ばや」の判別】を参照。

【てしか】<終助詞> **************************************************************

<用法>希望。自分が「そうしたい」という気持ちを表す。
      
<訳し方>「〜たい」(例・いかでこのかぐや姫を得てしがな。
              →何としてでもこのかぐや姫を自分の妻にしたいものだなあ。)

<接続>他動詞の連用形に続いて用いられる。同様の用法の助詞として「にしか」があるが、
     そちらは自動詞の連用形に続いて用いられる点に注意。

<特記事項>上記の用例のように「てしが」と濁音になる場合がある。

【にしか】<終助詞> **************************************************************

<用法>希望。自分が「そうしたい」という気持ちを表す。
      
<訳し方>「〜たい」(例・いかで心として死にもしにしがな。
              →何としてでも思い通りに死んでしまいたいものだなあ。)

<接続>自動詞の連用形に続いて用いられる。同様の用法の助詞として「てしか」があるが、
     そちらは他動詞の連用形に続いて用いられる点に注意。

<特記事項>上記の用例のように「にしが」と濁音になる場合がある。

【もがな】<終助詞> **************************************************************

<用法>願望。まだ実現していないことを想定して「そうなってくれればよいのに」と願う気持ち
     を表す。
            
<訳し方>「〜たらよいのになあ」(例・心あらん友もがな
                     →物の情趣を理解しあえる友がいてくれたらよいのになあ。)

<接続>体言・助詞、及び、形容詞型活用語や形容動詞型活用語の連用形に続いて用いられ
     る。

【な】<終助詞> *****************************************************************

<用法>@禁止。他人に対してある行動を阻止したい気持ちを表す。
       A詠嘆。物事に感動する気持ちを表す。
      
<訳し方>@「〜な」(例・わきざしたち、いづ方をもみつぎ給ふ
              →付き添いの方々よ、どちらの側にも味方なさる。)

        A「〜なあ」(例・いかでこのかぐや姫を得てしが
               →何としてでも、このかぐや姫を自分の妻にしたいものだなあ。)

<接続>@は動詞の終止形(但しラ行変格活用動詞の場合は連体形)に続いて、
       Aは言い終えた文の後に用いられる。

<特記事項>和歌で句中に使われた場合は、そこで区切れとなる。

         (例・筒井つの井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらし妹見ざるまに
           →円筒型に掘った井戸の枠でよくあなたと背比べをした私の背丈も、
            もうすっかり井戸の枠の高さを越してしまったようだなあ。あなたと
            しばらく会わずにいる間に。)

<判別上の問題>他の品詞に紛らわしいものがあるので注意。詳細は【「な」の判別】
            参照。

【そ】<終助詞> *****************************************************************

<用法>禁止。他に対してある行動を阻止したい気持ちを表す。
      
<訳し方>「〜な」(例・あが君生き出で給へ。いといみじき目な見せ給ひ
             →お前様、生き返っておくれ。私に悲しい思いをさせてくれる。)

<接続>特に指定はない。どの単語にも続いて用いられる。

<特記事項>副詞「な」とセットで使われ、「な+動詞+そ」の形で、中間にある動詞の動作
        を禁止する働きを示す。
中間の入る動詞の活用形は連用形になる。但し、カ行
        変格活用・サ行変格活用動詞の場合は未然形となる。

【かな】<終助詞> ***************************************************************

<用法>詠嘆。物事に感動する気持ちを表す。
      
<訳し方>「〜だなあ」(例・世のしれ者かな
               →世にもまれな馬鹿者だなあ。)

<接続>体言・活用語の連体形に続いて用いられる。

【かし】<終助詞> ***************************************************************

<用法>確認。強く念を押す気持ちを表す。
      
<訳し方>「〜よ」(例・有り難き志なりけんかし
             →珍しく殊勝な好意だったのだろう。)

<接続>言い終えた文に続いて使われる。

【よ】<終助詞> *****************************************************************

<用法>@感動。自分の感動を表す。
       A呼びかけ。他人に対して呼びかける。
      
<訳し方>@「〜だなあ」(例・かく危き枝の上にて、安き心ありて睡るらん
               →あんな危険な枝の上でよくもまあ安心して眠っているものだなあ。)

        A「〜よ」(例・少納言、香炉峰の雪、いかならむ。
              →清少納言、香炉峰の雪はどんな具合でしょうか。)

<接続>体言や言い終えた文の後に続いて用いられる。

【ぞ】<終助詞> *****************************************************************

<用法>@断定。その事物を強く指し示して断言する表現。
       A強い疑問。相手に強く問いかける働きを示す。
      
<訳し方>@「〜であるよ」(例・夏の蝉の春秋を知らぬもあるかし。
                  →夏の蝉が春秋を知らずに死ぬという短命な生き物もあるの
                  であるよ
。)

        A「〜か」(例・かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。いかにかく言ふ
              →これほどの高さになれば飛び降りるにしても降りられるだろう。
                それなのに、なぜそのように言うの。)

<接続>体言・活用語の連体形に続いて用いられる。

<判別上の注意>係助詞「ぞ」との区別が必要。詳細は【「ぞ」の判別】を参照。

【か】<終助詞> *****************************************************************

<用法>@詠嘆。事物に感動する気持ちを表す。
      A願望。そうなってほしいことを切望する心情を表す。
      
<訳し方>@「〜だなあ」(例・空蝉の世にも似たる花桜咲くと見しまにかつ散りにけり
                 →はかないこの世に似ているものだなあ。桜の花は咲いたかと
                  思うと、一方ではもう散ってしまうから)

        A「〜ほしい」(例・二上の山に隠れるほととぎす今も鳴かぬ君に聞かせむ
                 →二上山に籠っている不如帰よ。今すぐにでも鳴いてほしい
                  愛しいあの方にぜひ聞かせたいと思うから。)

<接続>@は体言・活用語の連体形に続いて用いられる。
      Aは打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」の後に限って用いられる。

<特記事項>Aは奈良時代までの用法、平安時代以後は@の用法のみになる。

<判別上の注意>他の助詞に紛らわしいものがあり、注意が必要。
            詳細は【「か」の判別】を参照。

【は】<終助詞> *****************************************************************

<用法>詠嘆。事物に感動する気持ちを表す。

<訳し方>「〜ことよ」(例・「年立ちかへる」などをかしきことに、歌にも文にも作るなる
               →鶯が春に鳴くのは、「年立ちかへる」などと、風情のあることとし
                て、和歌にも漢詩にも詠まれていることよ

<接続>体言・活用語の連体形、及び終助詞「や」に続いて用いられる。

<判別上の注意>他の助詞に紛らわしいものがあり、注意が必要。
            詳細は【「は」の判別】を参照。

【や】<間投助詞> ***************************************************************

<用法>@詠嘆。事物に感動する気持ちを表す。
       A提示。和歌・俳句において、ある名詞を詠嘆の気持ちを込めて提示する。

        句中に使われた場合は、そこで区切れとなる。
      
<訳し方>@「〜よ」(例・つくづくと一年を暮らすほどだにも、こよなうのどけし
              →しみじみと一年を過ごす間でさえも、格別に心がゆったりするもの
               だ。)

        A「〜よ」(例・古池蛙飛び込む水の音
              →静まり返った古い池がある。蛙が水に飛び込み、静寂を破った。
               春の息吹が感じられることだ)

<接続>特に指定はない。どの単語にも続いて用いられる。

<判別上の問題>他の助詞に紛らわしいものがある。詳細は【「や」の判別】を参照。

【を】<間投助詞> ***************************************************************

<用法>@詠嘆。事物に感動する気持ちを表す。
      A強調。
      
<訳し方>@「〜なあ」(例・思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましもの
               →一途に思い慕いながら寝たのであの人が夢の中に現れたのだろうか。
                 もし夢と知っていたならば目が覚めないままでいたのになあ

       A特に訳さない。(例・とく装束着てかしこへ参れ。
                   →今すぐ装束を着てあちらへ参上しなさい。)


<接続>特に指定はない。どの単語にも続いて用いられる。

<判別上の問題>他の助詞に紛らわしいものがある。詳細は【「を」の判別】を参照。

【「が」の判別】 *******************************************************************

@格助詞

 例1・「人には木の端のやうに思はるるよ。」と清少納言書けるも、げにさることぞかし。

 例2・かの桟敷の前をここら行き交ふ人の、見知れるあまたあるにて知りぬ、世の人数
   もさのみは多からぬにこそ。

 <判別のポイント>
  
  1・活用語の連体形あるいは、体言から接続する。
  2・活用語の連体形から接続する場合は、「が」の直前に体言を補って訳すことができる。
                                                   (例2)

  ※例2の場合、「見知れるあまたある」の現代語訳は、「顔を見知っているが多くいる」
   となり、青文字で示したように、体言を補って訳すことができる。

A接続助詞

 例1・馬に乗りたる女の行きあひたりける、口曳きける男、悪しく曳きて、聖の馬を堀へ落
    してけり。

 例2・やすらかに結ひて参らせたりける、思ふやうに廻りて、水を汲み入るる事めでたかり
    けり。

 <判別のポイント>

  1・活用語の連体形に限り、接続する。
  2・「が」の直前に体言を補って訳すことができない。  
  3・後続の文節に対して逆接(例1)・単純接続(例2)のいずれかの働きがある。
  4・後続の語は読点を挟んで、何らかの文節に続く。

【「を」の判別】 *******************************************************************

@格助詞

 例1・ただ、物のみ見んとするなるべし。
 例2・花は盛りに、月は隈なきのみ、見るものかは。

 <判別のポイント>
  
  1・活用語の連体形あるいは、体言から接続する。
  2・活用語の連体形から接続する場合は、「を」の直前に体言を補って訳すことができる。
                                                   (例2)

  ※例2の場合、「隈なきのみ見る」の現代語訳は、「一点の陰りのないときだけを見る」
   となり、青文字で示したように、体言を補って訳すことができる。

A接続助詞

 例1・傍らなる足鼎を取りて、頭に被きたれば、つまるやうにする、鼻を押し平めて、顔を
    さし出でて、舞ひ出でたるに・・・

 例2・年々の春の草のみぞ、心あらん人はあはれと見るべき、果ては、嵐にむせびし松も、
    千年を待たで薪に砕かれ、古き墳は鋤かれて田となりぬ。


 例3・飲む人の、顔いと堪え難げに眉をひそめ、人目をはかりて捨てんとし、逃げんとする
    捕へて引きとどめて、すずろに飲ませつれば・・・

 <判別のポイント>

  1・活用語の連体形に限り、接続する。
  2・「を」の直前に体言を補って訳すことができない。  
  3・後続の文節に対して順接(例1)・逆接(例2)・単純接続(例3)のいずれかの働きがある。
  4・後続の語は読点を挟んで、何らかの文節に続く。

B間投助詞
 
 例・何事も心のどかに思し召せ。

 <判別のポイント>

  1・各種の単語から接続する。
  2・「を」を取り除いても文意が変化しない。

【「して」の判別】 ******************************************************************

@格助詞

 例・人をしてかかる目を見する事、慈悲もなく、礼儀にも背けり。

 <判別のポイント>
  
  1・活用語の連体形・体言、及び助詞から接続する。
  2・「〜で」「〜に」「〜とともに」と訳すことができる。
  3・後続の用言を修飾する働きがある。
  4・「し」の直前で文節に区切ることができない。

A接続助詞

 例・老いぬる人は精神衰へ、淡く疎かにして、感じ動くところなし。

 <判別のポイント>

  1・形容詞型・形容動詞型活用語の連用形、及び、打消しの助動詞「ず」の連用形に限り、
   接続する。
  2・「〜て」「〜で」と訳すことができる。  
  3・後続の文節に対して単純接続の働きがある。
  4・後続の語は読点を挟んでから、何らかの文節に続く。
  5・「し」の直前で文節に区切ることができない。

Bサ行変格活用動詞の連用形+接続助詞「て」
 
 例・かかる事をしても、この世も後の世も益あるべきわざなれば、いかがはせん。

 <判別のポイント>

  1・「し」の直前で文節に区切ることができる。
  2・「し」を活用させることができる。
  3・「し」と「て」で単語に区切ることができる。
  4・「し」には「する」という意味があり、「して」はそのまま「して」と訳す。


Cサ行四段活用動詞の連用形活用語尾+接続助詞「て」

 例・家々より松どもともして走り寄りて見れば、このわたりに見知れる僧なり。

 <判別のポイント>

 1・「し」の直前が動詞の語幹になる。
 2・「し」を活用させることができる。
 3・「し」と「て」で単語に区切ることができる。

 ※これは単語に区切ると「ともし」+「て」になる。したがって、「し」の直前では単語に
  区切れない。

【「にて」の判別】 ******************************************************************

@格助詞

 例・ここにて対面し奉らば、道場を穢し侍るべし。

 <判別のポイント>
  
  1・活用語の連体形・体言から接続する。
  2・「〜で」「〜ので」と訳すことができる。
  3・後続の用言を修飾する働きがある。
  4・「に」の直前で文節に区切ることができない。

Aナリ活用形容動詞の連用形活用語尾+接続助詞「て」

 例・男子の声は幼げにて文読みたる、いと美し。

 <判別のポイント>

  1・「に」の直前は形容動詞の語幹になる。
  2・「に」と「て」で単語に区切ることができる。  
  3・「に」を活用させることができる。
 
  ※これは単語に区切ると「幼げに」+「て」になる。したがって「に」の直前では単語に
   区切れない。

B断定の助動詞「なり」の連用形+接続助詞「て」
 
 例・吉野の花、左近の桜、みな一重にてこそあれ。

 <判別のポイント>

  1・活用語の連体形、あるいは体言から接続する。
  2・「〜で」と訳すことができる。
  3・後続の語は「あり」「侍り」に限られる。
  4・「に」と「て」で単語に区切ることができる。
  5・「に」を活用させることができる。

【「は」の判別】 *******************************************************************

@係助詞

 例1・家にありたき木松・桜。
 例2・人みな生を楽しまざる、死を恐れざる故なり。
 例3・声して涙見えぬほととぎすわが衣手のひつを借らなむ
 例4・いつとても恋しからずあらねども秋の夕はあやしかりけり
 例5・今一度聞ゆべく思ひし。
 例6・夜中も過ぎにけむかし、風のやや荒々しう吹きたる
 例7・はじめより「我」と思ひ上がり給へる御方々、めざましき者におとしめ嫉み給ふ。

 <判別のポイント>
  
  1・各種の単語から接続する。
  2・提示や対比の用法で直前の語が活用語の場合は連体形から接続する。(例2)
  3・「は」の直前の語句を提示し、「〜は」と訳すことができる。(例1〜例3・例6・例7)
  4・後続の語は、その事物に対する叙述をする文節となる。(例1・例2)
  5・強調の用法の場合は「は」を省いても文が成立する。(例4・例5)
  6・強調の用法で直前の語が活用語の場合は連用形から接続する。(例4・例5)
  7・文末にあるときは述部が倒置あるいは省略されている。(例6・例7)

A終助詞

 例・その文は殿上人みな見てし

 <判別のポイント>

  1・活用語の連体形、または終助詞「や」から接続する。
  2・詠嘆の意を表し、「〜よ」「〜ことよ」と訳すことができる。
  3・後続の語はもともとない。従って述部の倒置や省略もない。

B接続助詞
 
 例1・なかなかに恋に死なず桑子にぞなるべかりける玉の緒ばかり
 例2・舟とむる遠方人のなくこそ明日帰り来むせなと待ち見め
 例3・その本尊、願ひ満て給ふべくこそ尊からめ 

 <判別のポイント>

 1・形容詞及び形容詞型の活用をする助動詞、打消の助動詞の未然形から接続する。
 2・順接の仮定条件を表し、「は」を接続助詞「ば」に置き換えることができる。
 3・係助詞「こそ」を伴うときは「は」の後に「こそ」がくる。(例2・例3)

 <特記事項> Bの用法を係助詞とし直前にある例1の「ず」、例2の「なく」、例3の「べく」
          は連用形とする説が通説となっているが、上記@の例4・例5の用法とは意
          味が異なること、また係助詞「は」に係助詞「こそ」を伴う場合、「こそ」の後に
          「は」が使われるという理由で、Bの3例はいずれも未然形に接続助詞「ば」
          の清音化したものがついた形と解する。

【「ぞ」の判別】 *******************************************************************

@係助詞

 例1・何事も古き世のみ慕はしき。
 例2・門よくさしてよ。雨も降る。

 <判別のポイント>
  
  1・直前の文節を強調する用法の場合は、各種の単語から接続する。(例1)
  2・悪いことを予想して懸念する用法の場合は、係助詞「も」から接続する。(例2)
  3・係助詞「ぞ」がついた文節を受けて文を終える場合、文節の活用語は連体形で結ぶ。

A終助詞

 例1・夏の蝉の春秋を知らぬもあるかし。
 例2・かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。いかにかく言ふ

 <判別のポイント>

  1・活用語の連体形、または体言から接続する。
  2・強い断定の意を表す場合は、「〜であるよ」と訳すことができる。(例1)
  3・疑問の意を表す場合は、「〜か」と訳すことができる。(例2)

【「も」の判別】 *******************************************************************

@係助詞

 例1・若き人は少しの事良く見え、わろく見ゆるなり。
 例2・老いたる、若き、智ある、愚かなる、変わる所なし。

 <判別のポイント>
  
  1・各種の単語から接続する。
  2・同種の事物を並列・添加、または直前の文節を強調する働きがある。
  3・いずれの用法でも「〜も」と訳すことができる。
  4・活用語の連体形から接続する場合は、
    「も」の直前に体言を補って訳すことができる。(例2)

  ※例2の場合、「老いたる、若き、智ある、愚かなる」の現代語訳は、
    「年をとったも、若いも、賢いも、愚かなも、」となり、
    青文字で示したように、体言を補って訳すことができる。


A接続助詞

 例1・身一つからうじて逃るる、資材を取り出づるに及ばず。
 例2・物を言ふ、くぐもり声に響きて聞こえず。

 <判別のポイント>

  1・活用語の連体形から接続する。
  2・「も」の直前に体言を補って訳すことができない。 
  3・逆接の仮定条件の場合は、「たとえ〜ても」と訳すことができる。
  4・逆接の確定条件の場合は、「〜だけれども」と訳すことができる。
  5・後続の語は、読点を挟んでから何らかの文節に続く。

【「や」の判別】 *******************************************************************

@係助詞

 例1・蓑笠ある。貸したまへ。
 例2・近き火などに逃ぐる人は、「しばし」と言ふ。

 <判別のポイント>
  
  1・疑問(例1)、反語(例2)を表す。
  2・疑問・反語とも「〜か」と訳すことができる。
  3・この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は連体形で結ぶ。

A間投助詞

 例1・公事など繁く、春の急ぎにとり重ねて催し行はるるさまぞ、いみじき
 例2・荒海佐渡に横たふ天の川

 <判別のポイント>

  1・文末・句末に使われて、詠嘆を表す。(例1)
  2・和歌・俳句において句中の名詞を詠嘆の心情をこめて提示する。(例2)
  3・上記いずれの場合も「〜よ」「〜ことよ」と訳すことができる。
  4・和歌・俳句の句中で使われた場合は、「や」の直後で区切れとなる。

【「か」の判別】 *******************************************************************

@係助詞

 例1・この人の後には誰に問はん。
 例2・身を養ひて、何事を待つ。期する処、ただ老いと死とにあり。

 <判別のポイント>
  
  1・疑問(例1)、反語(例2)を表す。
  2・疑問・反語とも「〜か」と訳すことができる。
  3・この係助詞がついた文節を受けて文を終える場合、文末の活用語は連体形で結ぶ。

A終助詞

 例1・苦しくも降りくる雨神の崎狭野のわたりに家もあらなくに
 例2・我が命も常にあらぬ昔見し象の小川を行くきて見むため

 <判別のポイント>

  1・詠嘆の意を表し、「〜だなあ」「〜ことよ」と訳すことができる。(例1)
  2・詠嘆の用法は活用語の連体形、または体言から接続する。(例2)
  3・奈良時代までは願望の意もあり、「〜ほしい」と訳すことができる。
  4・願望の用法は、打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」の後に限り、接続する。

【「ばや」の判別】 ******************************************************************

@終助詞

 例・別当入道の庖丁を見ばや

 <判別のポイント>
  
  1・動詞・助動詞の未然形から接続する。
  2・希望の意を表し、「〜たい」と訳すことができる。
  3・文末に使われるため、後続の語はない。

A接続助詞「ば」+係助詞「や」

 例1・羽なければ、空をも飛ぶべからず。竜ならばや、雲にも乗らん。
 例2・年ごろ、あやしく、世の人のする言忌などもせぬところなればや、かうやあらん。

 <判別のポイント>

  1・活用語の未然形から接続し、「もし〜なら〜なのだろうか」と訳す。(例1)
  2・活用語の已然形から接続し、「〜だから〜なのだろうか」と訳す。(例2)
  3・いずれの場合も、係助詞「や」の結びで文末の活用語が連体形となる。
  4・「ば」と「や」で単語に区切ることができる。  

【「ば」の判別】 ********************************************************************

@接続助詞(仮定条件)

 例1・春まで命あら、必ず来む。

 <判別のポイント>
  
  1・活用語の未然形から接続する。
  2・順接の仮定条件を表し、「〜ならば」と訳すことができる。
  3・後続の文節はその仮定した事柄が実現した場合の帰結が述べられる。

 <特記事項> 未然形となる活用語が形容詞(例2)及び形容詞型の助動詞(例3)・打消
          の助動詞(例4)の場合は、「ば」が「は」と清音になって仮定条件を表す。
 
 例2・鶯の谷より出づる声なく春くることを誰か知らまし
 例3・ゆく蛍雲の上まで往ぬべく秋風吹くと雁に告げこせ
 例4・いつまでか野辺に心のあくがれむ花し散らず千代も経ぬべし


A接続助詞(確定条件)

 例1・花に鳴く鶯、水に棲む蛙の声を聞け、生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざり
    ける。
 例2・驚きて見れ、いみじうをかしげなる猫あり。
 例3・羽なけれ、空をも飛ぶべからず。

 <判別のポイント>

  1・活用語の已然形から接続する。
  2・後続の文節は前の文節で述べた事柄によって生じた結果が述べられる。
  3・順接の確定条件のうち恒常条件を表し、「〜と必ず」と訳す。(例1)
  4・順接の確定条件のうち偶然条件を表し、「〜と」と訳す。(例2)
  5・順接の確定条件のうち原因・理由を表し、「〜ので」と訳す。(例3)
  

B係助詞「は」の連濁

  例・すべて、月・花をさのみ目にて見るものかは。

 <判別のポイント>

  1・格助詞「を」に限って接続する。
  2・「は」を省略しても文が成立する。
  3・「は」は強調の働きをするだけで特に現代語訳に反映させる必要がない。