オイラーの関数
自然数 1、2、3、・・・、n の中で、n と互いに素な数の個数は、オイラーの関数φ(n)で
表される。この関数は、オイラーのφ関数とかオイラーのトーシェント関数とも言われる。
例 1と1は互いに素なので、φ(1)=1
1、2の中で2と互いに素なのは1のみで、φ(2)=1
1、2、3の中で3と互いに素なのは1と2の2個あるので、φ(3)=2
1、2、3、4の中で4と互いに素なのは1と3の2個あるので、φ(4)=2
1、2、3、4、5の中で5と互いに素なのは1、2、3、4の4個あるので、φ(5)=4
1、2、3、4、5、6の中で6と互いに素なのは1、5の2個あるので、φ(6)=2
1、2、3、4、5、6、7の中で7と互いに素なのは1、2、3、4、5、6の6個あるので、φ(7)=6
nの値が大きくなると、上記の計算では辛いものになるので、オイラーの関数の次の性質
を利用した方がいいだろう。
(1) 素数 p に対して、 φ(p)=p−1 特に、φ(pn)=pn−pn−1
(2) a
と b
が互いに素ならば、 φ(ab)=φ(a)φ(b)
(証明)はこちらを参照。
この性質を用いると、上記の計算は次のようにも出来る。
例 φ(2)=2−1=1 、φ(3)=3−1=2 、φ(4)=φ(22)=4−2=2、
φ(6)=φ(2)φ(3)=1×2=2 、φ(12)=φ(4)φ(3)=2×2=4
n=1〜20のφ(n)の値を表にまとめると、(参考→「A000010」)
n | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
φ(n) | 1 | 1 | 2 | 2 | 4 | 2 | 6 | 4 | 6 | 4 | 10 | 4 | 12 | 6 | 8 | 8 | 16 | 6 | 18 | 8 |
問題 次のオイラーの関数の値を求めよ。
(1) φ(12) (2) φ(1800)
(解)(1) φ(12)=φ(4)φ(3)=2×2=4
(2) φ(1800)=φ(23)φ(32)φ(52)=(23−22)(32−3)(52−5)=480 (終)
オイラーの関数の性質で、次の公式も実用的でしょう。
(3) n=paqb・・・rc のとき、 φ(n)=n(1−1/p)(1−1/q)・・・(1−1/r)
(証明) 性質(1)(2)より、n=paqb・・・rc のとき、
φ(n)=φ(pa)φ(qb)・・・φ(rc)=(pa−pa-1)(qb−qb-1)・・・(rc−rc-1)
=n(1−1/p)(1−1/q)・・・(1−1/r) (証終)
この性質(3)を用いれば、上記の問題(2)は次のように計算される。
φ(1800)=1800(1−1/2)(1−1/3)(1−1/5)
=1800(1/2)(2/3)(4/5)=480
また、個数定理を用いても求められる。
1から1800までの自然数のうち、2または3または5で割り切れる数の個数は、
900+600+360−300−120−180+60=1320
よって、求める個数は、 1800−1320=480(個)
φ(1800)に絡む問題として、次は新鮮である。
問題 0より大きく1より小さい分数のうち、分母が1800である既約分数の総和を求めよ。
(解) 求める和は、
1/1800+7/1800+11/1800+・・・+1789/1800+1793/1800+1799/1800
で、項数は、φ(1800)=480 である。
kと1800が互いに素のとき、1800−kと1800も互いに素となるので、
和=(1+1799)×(480÷2)/1800=240
となる。 (終)
オイラーの関数は、当HPでも各所に登場している。例えば、
1.整数論の基礎知識 、フェルマーの定理 、隣り合う分数 、公開鍵暗号の作り方
フェルマーの小定理
このページでは、オイラーの関数について更なる深みを目指してまとめていきたいと思う。
自然数12の正の約数は、1、2、3、4、6、12の6個ある。
このとき、 φ(1)+φ(2)+φ(3)+φ(4)+φ(6)+φ(12)
=1+1+2+2+2+4=12 となる。
このことを一般化すると、次の問題となる。
問題 自然数nの正の約数のオイラーの関数の総和は、nであることを示せ。
(解) n=paqb・・・rc のとき、正の約数のオイラーの関数の総和は、
(φ(1)+φ(p)+・・・+φ(pa))
×(φ(1)+φ(q)+・・・+φ(qb))
・・・
×(φ(1)+φ(r)+・・・+φ(rc))
φ(1)+φ(p)+・・・+φ(pa)=1+(p−1)+・・・+pa−pa-1=pa
同様にして、 (φ(1)+φ(q)+・・・+φ(qb))=qb
・・・
(φ(1)+φ(r)+・・・+φ(rc))=rc
なので、
(φ(1)+φ(p)+・・・+φ(pa))
×(φ(1)+φ(q)+・・・+φ(qb))
・・・
×(φ(1)+φ(r)+・・・+φ(rc))=paqb・・・rc=n (終)
問題 正n角形の1つの頂点から出発して、長さの等しい対角線、または、辺を連続して左
回りに引く。何周かして元の頂点に戻るまでに全ての頂点を通過して、一つの図形を
描く。
この図形が4通りであるとき、自然数nの値を求めよ。ただし、nは2つの素数を掛け
合わせたものとする。
(解) すべての頂点を通る図形の個数は、φ(n)/2であるので、 φ(n)/2=4 から、
φ(n)=8
n=pq とおくと、 (p−1)(q−1)=8 となるので、解は、 p=5、q=3
よって、n=5×3=15 (終)
問題 xy座標平面上で、3直線 y=0、x=5、y=x で囲まれた直角三角形を考える。この
三角形の周および内部には合計21個の格子点がある。
今、原点以外の格子点の一つと原点を結ぶ線分を引くとき、両端以外に格子点が存在
しない線分は何本引けるか。
(解) 線分上の点で原点以外の格子点の座標を(x,y)とおくと、0≦y≦x で、
題意より、xとyは互いに素である。このとき、求める線分の本数は、
1+φ(1)+φ(2)+φ(3)+φ(4)+φ(5)=1+1+1+2+2+4=11(本) (終)
オイラーの関数は大学入試問題としても手頃なのか出題されやすいようだ。
(参考) 横浜市立大学(平成18年度前期)
問題 mを正の整数とし、p、qを異なる素数とする。n=pmqmのとき、φ(n)≧n/3 が
成り立つことを示せ。
(解) n=pmqmのとき、
φ(n)=n(1−1/p)(1−1/q)≧n(1−1/2)(1−1/3)=n/3 (終)
上記の問題のほとんど逆バージョンです。
問題 φ(n)=n/3 のとき、n=2a3b (a≧1、b≧1)であることを示せ。
(解) n=paqbrc・・・sd のとき、φ(n)=n(1−1/p)(1−1/q)(1−1/r)・・・(1−1/s)
よって、題意より、 (1−1/p)(1−1/q)(1−1/r)・・・(1−1/s)=1/3
すなわち、 3(p−1)(q−1)(r−1)・・・(s−1)=pqr・・・s
ここで、 2≦p<q<r<・・・<s と仮定しても一般性を失わない。
p≧3 とすると、 左辺=偶数、右辺=奇数 となり矛盾するので、 p=2
このとき、 3(q−1)(r−1)・・・(s−1)=2qr・・・s で、q−1=2 でなければならない。
よって、 q=3 で、 (r−1)・・・(s−1)=r・・・s となり、偶数=奇数 となり、矛盾。
以上から、n=paqb で、p=2、q=3 に限る。
すなわち、 n=2a3b (a≧1、b≧1)である。 (終)
次の定理は有名でしょう。
フェルマーの小定理
p が素数で、a が p とは互いに素な自然数とするとき、 ap−1 ≡ 1 (mod p)
は、オイラーの関数 φ(n) を用いて、次のように一般化される。
フェルマーの定理
a と n が互いに素な自然数とするとき、 aφ(n) ≡ 1 (mod n)
(証明)は、こちらを参照。
フェルマーの定理を用いると、次の問題が鮮やかに解かれる。
問題 32020の下2桁を求めよ。
(解) φ(100)=100×(1−1/2)(1−1/5)=40 なので、
フェルマーの定理より、 340≡1 (mod 100)
ここで、2020÷40=50 あまり 20 なので、
32020=(340)50・(320)≡320 (mod 100)
ここで、 310=59049≡49 (mod 100) なので、
32020≡49×49=2401≡1 (mod 100)
以上から、32020の下2桁は、01 である。 (終)
問題 120、220、320、・・・、2020 の20個の数について、それぞれの下2桁は何通りの
可能性があるか調べよ。
(解) 20=5×4 に注意して、
a≡0 (mod 5) のとき、 a20≡0 (mod 5)
a≡0 (mod 2) のとき、 a20≡0 (mod 4)
このとき、 a20≡0 (mod 20)
実際に、a20=5m (mは自然数)、a20=4n (nは自然数) から、5m=4n
5と4は互いに素なので、 m=4k (kは自然数) とおける。
よって、 a20=5m=20k (kは自然数) となり、 a20≡0 (mod 20)
a≡1 (mod 2) のとき、 φ(4)=2 より、a2≡1 (mod 4)
すなわち、 a20≡1 (mod 4) より、 a20≡5 (mod 20)
実際に、a20=5m (mは自然数)、a20=4n+1 (nは自然数) から、
5m=4n+1 ここで、 5・1=4・1+1 より、 5(m−1)=4(n−1) なので、
5と4は互いに素より、 m−1=4k すなわち、 m=4k+1 (kは自然数) とおける。
よって、 a20=5m=20k+5 (kは自然数) となり、 a20≡5 (mod 20)
a≡1、2、3、4 (mod 5) のとき、 φ(5)=4 より、 a4≡1 (mod 5)
すなわち、 a20≡1 (mod 5)
a≡0 (mod 2) のとき、 a20≡0 (mod 4)
このとき、 a20≡16 (mod 20)
実際に、a20=5m+1 (mは自然数)、a20=4n (nは自然数) から、
5m+1=4n ここで、 5・3+1=4・4 より、 5(m−3)=4(n−4) なので、
5と4は互いに素より、 m−3=4k すなわち、 m=4k+3 (kは自然数) とおける。
よって、 a20=5m+1=20k+16 (kは自然数) となり、 a20≡16 (mod 20)
a≡1 (mod 2) のとき、 φ(4)=2 より、a2≡1 (mod 4)
すなわち、 a20≡1 (mod 4) より、 a20≡1 (mod 20)
実際に、a20=5m+1 (mは自然数)、a20=4n+1 (nは自然数) から、
5m+1=4n+1 なので、 5m=4n
5と4は互いに素より、 m=4k (kは自然数) とおける。
よって、 a20=5m+1=20k+1 (kは自然数) となり、 a20≡1 (mod 20)
以上から、下2桁の可能性は、 0、1、5、16 の4通りある。 (終)
(コメント) 解答を少し詳しいものに書き換えました。
問題 9^10^11 の十の位を求めよ。
(解) φ(100)=100×(1/2)×(4/5)=40 より、 940≡1 (mod 100)
よって、 9^10^11=(940)^2500000000≡1 (mod 100) より、
十の位は、0 (終)
以下、工事中!