隣り合う分数
整数の世界では、2 と 3 は「隣り合っている」、3 と 5 は「隣り合っていない」だろうという
ことは直感的に理解できる。
整数論で、「連続する3整数の積は、6 の倍数である」という定理があるが、これは正確に
は「隣り合う3つの整数の積は、6 の倍数である。」とすべきだろう。
ところが、分数の世界に数の範囲を拡げた場合、「隣り合う」という感覚が不明確になる。
例えば、
分数の 1/3 と 1/2 は、果たして隣り合っているのだろうか?
分数の 1/3 と 2/3 は、どうなんだろうか?
......... 疑問は尽きない。
この問題に対して、次のような考え方があることを最近知った。
定義 2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)に対して、
ad−bc=±1
が成り立つとき、2つの分数 a/b 、c/d は隣り合うという。
b=d=1 すなわち 2つの数が、ともに整数の場合は、我々の今までの直感的理解と
一致する。
この定義を用いると、1/3 と 1/2 は、隣り合っていると言えるが、1/3 と 2/3 は、隣り
合っているとは言えないことになる。
1/2 と 2/3 については、1/3<1/2<2/3 なので、「あ〜そうかな〜」という感じなのだ
が、1/3<9/20<1/2 である 9/20 が 1/3 とは隣り合っていないことを思うと、とても
不思議な感覚だといえる。
下図に、分数を並べてみた。
分数全体が、加算集合を示すには上図で十分であるが、「隣り合う」という感覚を説明す
るには不十分である。
定義によれば、2つの列ベクトル | によって生成される平行四辺形の面積 | |
が 1 であるときに、2つの分数は「隣り合う」ことになる。 |
このことを言い換えれば、面積 1 の正方形に一次変換を施して、面積が不変な場合、そ
の1次変換を表す行列の列ベクトルは、隣り合う分数を生成することになる。
(もちろん、行列の成分は全て整数とする。)
隣り合う分数には、次のような面白い性質もあるらしい。
性質(1) 2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)が隣り合う分数
であるとき、2つの分数は既約分数でなければならない。
(証明) 分数 a/b が既約分数でないと仮定すると、最大公約数 (a,b)は1とは異なる。
条件より、ad−bc=±1 で、左辺が (a,b) で割り切れることになり、矛盾。
よって、分数 a/b は既約分数。分数 c/d についても同様である。 (証終)
性質(2) 2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)が隣り合う分数
であるとき、分数 (a+c)/(b+d) は、これらの間にあって、両方に隣り合う
分数となる。
(証明) 2つの分数 a/b 、c/d は隣り合う分数であるので、ad−bc=±1
(a+c)/(b+d) と a/b について、(a+c)b−(b+d)a=bc−ad=±1 なので、
分数 (a+c)/(b+d) と a/b は隣り合う分数である。
同様にして、
(a+c)/(b+d) と c/d について、(a+c)d−(b+d)c=ad−bc=±1 なので、
分数 (a+c)/(b+d) と c/d は隣り合う分数である。
また、
((a+c)/(b+d)−a/b)((a+c)/(b+d)−c/d)=−1/b2(b+d)2<0
より、(a+c)/(b+d) は、2つの分数 a/b 、c/d の間にある。(証終)
この性質(2)から、1/3 と 1/2 は、隣り合う分数なので、
1/3<3/8<2/5<3/7<1/2
と次々に隣り合う分数ができるかにみえるが、それは、隣り合う三者間の関係であって、
離れた数同士は、やはり隣り合わないもの
上の場合だと、1/3 と 3/7,3/8 と 3/7,・・・
も出てくる。なんか収拾がつかない感じだ。
この「隣り合う分数」という概念から、どのような数学が展開されるのか、とても興味がある。
(参考文献:I.M.ゲルファント A.シュン 著 富永 星 赤尾和男 訳
ゲルファント先生の学校に行かずにわかる数学 3 代数(岩波書店))
(追記) 平成19年5月19日付け
平成19年5月8日付けで、当HPの掲示板「出会いの泉」に、HN「数学はとことん難しい」
さんから書き込みがあった。
テレビ番組をみていると、どうも「予告→本編」の連鎖を客観的な文体で宣伝コードを要
所要所に埋め込んでいるとみられ、これらを探求していくと、一年間を12区画に分割でき、
「6 5/6 5 4/5 4 3/4 3 2/3 2 1/2 1 0/1 0」(0は6にまた6は0に置き換え、数列
の輪で考える)のテーマで数列を構成している雰囲気である。特に分数の並びが妙なので
インターネット検索をすると「ファレイ数列」「既約分数」「スターン=ブロコット木」を割り出
したが、これ以上の資料は見当たらない。これらの数列は何を意味しているのだろうか。
「隣り合う分数」というページは平成15年6月頃アップしたもので、常々「隣り合う分数」や、
分数の合理的な番号の付け方をどうするかなど頭の片隅にあった。掲示板の書き込みを
見てほぼ4年ぶりの見直しをしようと思い立った。
ところで、数学セミナー(日本評論社) 2005年2月号〜4月号で、京都大学教授であら
れた岩井齊良さんが「分数の世界」と題して連載されている。また、数学セミナー 2007年
3月号で、浅井哲也さんが「エレガントな解答をもとむ」で隣り合う分数を話題にされている。
時は正に「隣り合う分数」で熟したかのようである。
#岩井齊良さんが2021年8月6日に逝去された。謹んで哀悼の意を表します。
いま、このページを読み返していて、
性質(2) 2つの分数 a/b 、c/d (a,b,c,d は整数で、b,d>0)が隣り合う分数
であるとき、分数 (a+c)/(b+d) は、これらの間にあって、両方に隣り合う
分数となる。
から作られたであろう問題
a,b,c,d が正の数で、 a/b < c/d ならば、
a/b < (a+c)/(b+d) <c/d
が成り立つことを証明せよ。
が脳裏をかすめる。この問題は古くは福岡教育大学で出題されたものだが、教科傍用の
問題集で解いた覚えがある方がほとんどだろう。
私自身、この問題を高校1年の不等式の証明の時間に解いた覚えがあるが、この問題
が「隣り合う分数」の話題に関係しているとは、その当時、微塵も思わなかった!
自然数 n 以下の分母を持つ 0 以上 1 以下の既約分数を大きさの順に小さい方から並
べた数列を、ファレイ(Farey)数列という。ファレイ数列を、Fn と表すことにする。
例 数列 F1 は、 0/1 , 1/1 (数 0 を分数 0/1 で表す。)
例 数列 F2 は、 0/1 , 1/2 , 1/1
例 数列 F3 は、 0/1 , 1/3 , 1/2 , 2/3 , 1/1
例 数列 F4 は、 0/1 , 1/4 , 1/3 , 1/2 , 2/3 , 3/4 , 1/1
例 数列 F5 は、 0/1 , 1/5 , 1/4 , 1/3 , 2/5 , 1/2 , 3/5 , 2/3 , 3/4 , 4/5 , 1/1
例 数列 F6 は、 0/1 , 1/6 , 1/5 , 1/4 , 1/3 , 2/5 , 1/2 , 3/5 , 2/3 , 3/4 , 4/5 , 5/6 , 1/1
上記例の数列において新しい項が、前段の2つの分数 a/b ,c/d から、
(a+c)/(b+d)
という形の中間分数により与えられている点が面白い。換言すれば、隣り合う分数の話題
に関係するということだ。
ファレイ数列 Fn が、いくつの項からなる数列かという問いに対して、次の事実が知られ
ている。ファレイ数列の特徴から明らかだろう。
オイラーの関数 φ(n) に対して、ファレイ数列 Fn の項数は、
1+φ(1)+φ(2)+・・・+φ(n)
により与えられる。
但し、φ(n)=(1 から n までの自然数のうち n と互いに素なものの個数)
例 φ(1)=1 、φ(2)=1 、 φ(3)=2 、φ(4)=2 、・・・ なので、
ファレイ数列F1 の項数は、 1+φ(1)=2
ファレイ数列F2 の項数は、 1+φ(1)+φ(2)=3
ファレイ数列F3 の項数は、 1+φ(1)+φ(2)+φ(3)=5
以下、同様にして、
ファレイ数列F4 の項数は、7
ファレイ数列F5 の項数は、11
ファレイ数列F6 の項数は、13
ファレイ数列F7 の項数は、19
ファレイ数列F8 の項数は、23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
である。
一般に、ファレイ数列Fn の項数は、大体 3n2/π2 位であることが知られている。
n=1 のとき、 3n2/π2=3/π2≒0.3 (実際の項数は、2)
n=2 のとき、 3n2/π2=12/π2≒1.2 (実際の項数は、3)
n=3 のとき、 3n2/π2=27/π2≒2.7 (実際の項数は、5)
n=4 のとき、 3n2/π2=48/π2≒4.9 (実際の項数は、7)
n=5 のとき、 3n2/π2=75/π2≒7.6 (実際の項数は、11)
n=6 のとき、 3n2/π2=108/π2≒10.9 (実際の項数は、13)
n=7 のとき、 3n2/π2=147/π2≒14.9 (実際の項数は、19)
n=8 のとき、 3n2/π2=192/π2≒19.5 (実際の項数は、23)
(小さい n については、全然遠いかな...f(^_^;) )
上記で、数 0 を分数 0/1 で表したように、正の無限大(+∞)を分数 1/0
で表すことに
する。このとき、2つの既約分数 a/b ,c/d から、新しい既約分数 (a+c)/(b+d) が順次
生成される。
0/1 | 1/0 | |||||||||||||||
1/1 | ||||||||||||||||
1/2 | 2/1 | |||||||||||||||
1/3 | 2/3 | 3/2 | 3/1 | |||||||||||||
1/4 | 2/5 | 3/5 | 3/4 | 4/3 | 5/3 | 5/2 | 4/1 |
上記表の構成方法から、出現する分数は全て相異なる。
上記表を、スターン=ブロコット(Stern-Brocot)の木構造という。
0/1 から 1/1 までに注目すると、ファレイ数列の各項が大きさの順に出現している。
上記表の太字の数列が、ファレイ数列 F4 で、項数は、7 である。
上記の表から、次の性質が成り立つことが推察される。
2つの既約分数 a/b ,c/d が、あるファレイ数列の隣り合う2項であるとき、中間
分数 (a+c)/(b+d) はファレイ数列の Fb+d の項となる
例 分数 1/2 と 2/3 は、ファレイ数列 F3 の隣り合う2項であるが、その中間分数
3/5 は、ファレイ数列 F5 の項になっている。
(追記) 平成19年5月30日付け
上記では、全く機械的にファレイ数列の各項を計算したが、幾何学的に次のような意味
合いがあることを最近知ることができた。
当HPの「平成15年度前期 東京大学 理科系」の問題でお世話になった東京大学の坪
井先生がファレイ数列を幾何的に説明されている。(日本数学会市民講演会2006)
下図は、2つの円 C1:x2+(y−1/2)2=(1/2)2 C2:(x−1)2+(y−1/2)2=(1/2)2
と x 軸に対して順次外接する円を描いたものである。
このとき、円 D の中心のx 座標は、1/2 で、円 E1 の中心の x 座標は、1/3 、円 E2 の
中心の x 座標は、1/3 となることに驚かされる。
これは、正にファレイ数列のF3 なのだ!
実際に、手計算でこのことを確認してみよう。
円 D の中心の x 座標が、1/2 であることは明らかだろう。円 D の半径を
R とすると、
三平方の定理より、 (1/2−R)2+(1/2)2=(1/2+R)2 が成り立つ。
これより、 R=1/8 である。
また、円 E1 の半径を r 、中心 E1 の x 座標を a とすると、三平方の定理より、
(1/2−r)2+a2=(1/2+r)2 、 (1/2−a)2+(1/8−r)2=(1/8+r)2
が成り立つ。これより、
a2=2r 、 a2−a+1/4=r/2
第2式より、 4a2−4a+1=2r なので、 4a2−4a+1=a2
すなわち、 3a2−4a+1=0
よって、 (3a−1)(a−1)=0 より、 a=1/3 、1
a=1 は不適なので、 a=1/3
同様にして、中心 E2 の x 座標が 2/3 であることも示される。
また、円 C1 と円 E1 および x 軸に接する円の中心の x 座標を b 、半径を s とすると、
上記と同様の計算から、
b2=2s 、 b2−(2/3)b+1/9=2s/9
が得られ、これを解いて、 b=1/4 、 s=1/32 となる。
(コメント) b=1/4 もファレイ数列のF4 の項である。順次、原点に近づいて行くにした
がって、自然数 n の逆数 1/n が円の中心の x 座標を与えている点、さらに
半径が 1/(2n2) のような雰囲気である点がとても面白い。
上図の円のことを、フォードの円(Ford circle)と言うらしい。
このことを一般的に証明してみよう。
円 En の中心の x 座標が、1/n
で、半径が 1/(2n2) であるとき、
円 En+1 の中心の x 座標と半径は
それぞれ
、
で与えられることを示す。
三平方の定理より、
(1/2−r)2+a2=(1/2+r)2 、(1/n−a)2+(1/(2n2)−r)2=(1/(2n2)+r)2
が成り立つ。これより、
a2=2r 、 a2−(2/n)a+1/n2=2r/n2
第2式より、 n2a2−2na+1=2r なので、 n2a2−2na+1=a2
すなわち、 (n2−1)a2−2na+1=0
よって、 ((n+1)a−1)((n−1)a−1)=0 より、 a=1/(n+1) 、1/(n−1)
a=1/(n−1) は不適なので、 a=1/(n+1)
このとき、半径は、1/(2(n+1)2) となる。
(コメント) 証明を眺めていると、今更ながらに美しい結果ですね!坪井先生に感謝します。
さて、話を元に戻そう。上記で述べたように、下表のように中間分数が種々得られた。
0/1 | 1/0 | |||||||||||||||
1/1 | ||||||||||||||||
1/2 | 2/1 | |||||||||||||||
1/3 | 2/3 | 3/2 | 3/1 | |||||||||||||
1/4 | 2/5 | 3/5 | 3/4 | 4/3 | 5/3 | 5/2 | 4/1 |
この中間分数に新しい概念が次のように付加される。
2つの分数 a/b<c/d に対して、正の数 p 、q を用いて作られる分数
(pa+qc)/(pb+qd)
は、不等式 a/b<(pa+qc)/(pb+qd)<c/d を満たす。
実際に、 (pa+qc)/(pb+qd)−a/b={(pa+qc)b−(pb+qd)a}/(pb+qd)b
=q(bc−ad)/(pb+qd)b>0
なので、 a/b < (pa+qc)/(pb+qd) が成り立つ。
(pa+qc)/(pb+qd) < c/d も同様に成り立つ。
このとき、分数 (pa+qc)/(pb+qd) のことを、
2つの分数 a/b<c/d に対する重み p : q の中間分数という。
例 上記の表において、
分数 1/1 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。
分数 1/2 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 2 : 1 の中間分数である。
分数 1/2 は、2つの分数 0/1 、 1/1 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。
分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 3 : 1 の中間分数である。
分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/1 に対して、重み 2 : 1 の中間分数である。
分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/2 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この計算から、
分数 1/2 は、2つの分数 0/1 、 1/1 の間にある
分数 1/3 は、2つの分数 0/1 、 1/2 の間にある
ことが分かる。
同様にして、
分数 2/3 は、2つの分数 0/1 、 1/0 に対して、重み 3 : 2 の中間分数である。
分数 2/3 は、2つの分数 0/1 、 1/1 に対して、重み 1 : 2 の中間分数である。
分数 2/3 は、2つの分数 1/2 、 1/1 に対して、重み 1 : 1 の中間分数である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この計算から、
分数 2/3 は、2つの分数 0/1 、 1/1 の間にある
分数 2/3 は、2つの分数 1/2 、 1/1 の間にある
ことが分かる。
また、重みの変化に着目すると次のように変化している。
たとえば、
分数 1/3 の場合は、 3 : 1 → 2 : 1 → 1 : 1
分数 2/3 の場合は、 3 : 2 → 1 : 2 → 1 : 1
このことを一般化すると、重みが等しくなるまでは、
大 : 小 ( 小 : 大 ) → 大−小 : 小 ( 小 : 大−小 )
と変化しているようだ。
以上をまとめて、分数 2/3 の動向を絵にしてみた。
このように重み p : q の値如何によって、上から下に水がしたたり落ちるように、分数の
落ち着き先(重みが 1 : 1 になるまで)が定まっていくことは、とても面白い現象だ。
練習問題A 重みの変化に着目して、分数 3/5 は、どのように変化するか?
(答) 5 : 3 → 2 : 3 → 2 : 1 → 1 : 1
練習問題B 左側大→右側大→左側大→重み 1 : 1 と重みが変化するとき出発点の
分数を求めよ。
(答) 1 : 1 → 2 : 1 → 2 : 3 → 5 : 3 より、求める分数は、3/5
練習問題A、B からも分かるように、分数 3/5 と 重みの変化は 1 : 1 に対応していると
言える。
そこで、重みが左側大のときは数字の「0」を、右側大のときは数字の「1」を対応づけるも
のとすると、
分数 3/5 には、 数の並び 010 が対応する
例 分数 3/4 に対応する数の並びを求めよ。
4 : 3 → 1 : 3 → 1 : 2 → 1 : 1 なので、 011 が対応する。
ところで、分数 3/4 について、
3=4×0+3
4=3×1+1
3=1×3
から、分数 3/4 の連分数表示は、[ 0 ; 1 , 3 ] となる。
重みの変化の計算では順次大きい数から小さい数を引いているが、これは割り算をして
「余り」に換算していることに等しい。
最後は、余り「0」の一歩手前で計算が終了するので、実質は、
3=4×0+3
4=3×1+1
3=1×2+1
という計算に等しい。
そこで、第1行には、数の「1」を対応させ、これが「0」回、
第2行には、数の「0」を対応させ、これが「1」回、
第3行には、数の「1」を対応させ、これが「2」回、
と翻訳すれば、 011 という数の並びが出現する。
例 分数 3/5 についても同様な計算で、数の並びを見いだせ。
3=5×0+3
5=3×1+2
3=2×1+1
2=1×1+1
以上から、求める数の並びは、 010 となる。
分数 3/5 の連分数表示が、[ 0 ; 1 , 1 , 2 ] であることを考えると、
分数 Q/P の連分数表示が、[ a ; b , c ,・・・, d ] であるとき、
分数 Q/P に対応する数の並びは、
1 を a 個 、 0 を b 個 、 1 を c 個 、 ・・・ 、 1 または 0 を
d−1 個並べたもの
となることが分かる。
前にあげた表
0/1 | 1/0 | |||||||||||||||
1/1 | ||||||||||||||||
1/2 | 2/1 | |||||||||||||||
1/3 | 2/3 | 3/2 | 3/1 | |||||||||||||
1/4 | 2/5 | 3/5 | 3/4 | 4/3 | 5/3 | 5/2 | 4/1 |
において、 0/1 、 1/1 、 1/0 以外の分数について、数の並びに置き換えてみると、
0/1 | 1/0 | |||||||||||||||
1/1 | ||||||||||||||||
0 | 1 | |||||||||||||||
00 | 01 | 10 | 11 | |||||||||||||
000 | 001 | 010 | 011 | 100 | 101 | 110 | 111 |
隣り合う分数 1/2 と 2/3 の中間分数として、分数 3/5 が作られたわけだが、分数 3/5
の数の並びが 010 で、分数 1/2、2/3 の数の並びがそれぞれ 0 と 01 であることを考え
ると、分数の落ち着き先が、010 → 0 と 01 を端点にもつ範囲になるものと推察される。
すなわち、「010」は「01」の左側で、かつ、「010」は「0」の右側に位置する。
数学セミナー 2007年3月号で、浅井哲也さんは、「エレガントな解答をもとむ」に、次の
ような問題を出題された。
分母が100以下のすべての既約分数が大きさの順に並んでいる。分数 17/66 の
両隣りの分数を求めよ。
これまでに学んだ理論をこの問題に適用してみよう。
まず、 17=66×0+17
66=17×3+15
17=15×1+2
15=2×7+1
2=1×1+1
以上から、分数 17/66 に対応する数の並びは、000100000001 となる。
したがって、両隣りの分数に対応する数の並びは、
00010000000 0001000000
となるはずである。
これらの連分数表示は、それぞれ [ 0 ; 3 , 1 , 8 ] 、[ 0 ; 3 , 1 , 7 ] なので、分
数に直せば、それぞれ、 9/35 、 8/31 となる。
このとき、2つの分数 9/35 、 8/31 は、 9×31−8×35=−1 より隣り合う分数で、
分数 17/66 は、それらの中間分数である。
さらに、2つの分数 9/35 、 17/66 の中間分数を考えると、 26/101 となり、これは、
分母が100以下という条件に反するから不適である。
同様に、2つの分数 17/66 と 8/31 の中間分数 25/97 を考えると、分数
8/31 よ
り分数 25/97 の方が、より分数 17/66 に近い。
以上から、
分母が100以下のすべての既約分数を大きさの順に並べたとき、
分数 17/66 の両隣りの分数は、9/35 と 25/97 である
ことが示された。
上記の問題について、当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんからレポートを
頂いた。(平成22年12月7日付け)
y/x、17/66 (ただし、 y/x<17/66) が隣り合う分数から、 17x−66y=1 となる。
不定方程式 17x−66y=1 を解くと、一般解は、
x=35+66t 、 y=9+17t (t は整数)
17/66の片方の親は、F66では、 0<x<66 だから、 t=0 の 9/35 となる。
もう1つは、ファレイ数列の中間分数の生成方法から、
分子=9+c=17 、 分母=35+d=66 より、 8/31 である。
よって、 9/35、17/66、8/31 である。
また、F100
とすると、17/66、25/97、8/31 と中間分数ができる。
(コメント) 3年半ぶりにこのページを見て、まだまだ書き足りないところがあるような...予
感!攻略法さんに感謝します。
攻略法さんからの補足です。(平成22年12月8日付け)
不定方程式 17x−66y=1 ( y/x<17/66 で隣り合う分数)の一般解
x=35+66t 、 y=9+17t (t は整数)
は、t=0、1、2、3、・・・ とすると、 9/35、・・・、17/66 の中間分数を生成する。
t | 0 | 1 | 2 | 3 | ・・・ | ∞ |
y | 9 | 9+17 | 9+17×2 | 9+17×3 | ・・・ | 17 |
x | 35 | 35+66 | 35+66×2 | 35+66×3 | ・・・ | 66 |
同様に、17/66<y/x は隣り合う分数から、 −17x+66y=1 となる。一般解は、
x=31+66t 、 y=8+17t (t は整数)
で、t=0、1、2、3、・・・ とすると、 17/66、・・・、8/31 の中間分数を生成する。
t | 0 | 1 | 2 | 3 | ・・・ | ∞ |
y | 8 | 8+17 | 8+17×2 | 8+17×3 | ・・・ | 17 |
x | 31 | 31+66 | 31+66×2 | 31+66×3 | ・・・ | 66 |
(追記) 令和3年9月26日付け
数学セミナー 2021年7月号で、山田修司さんは、「エレガントな解答をもとむ」に、この
ページの話題に関連する問題を出題された。
有理数 s、t (s<t)が既約分数で s=a/b、t=c/d と表されるとき、
m=s#t=(a+c)/(b+d)
と定める。開区間 I =(s,t)に対して、 s<m<t が成り立ち、u を開区間 I の#中点と
呼ぶことにする。
このとき、開区間 I は、#中点と2つの開区間(s,u)、(u,t)に分割される。すなわち、
I =(s,u)U{u}U(u,t)
例 開区間 I =(1/2,2/3)に対して、 u=(1/2)#(2/3)=3/5 なので、
1回目の分割は、 IL=(1/2,3/5)、IR=(3/5,2/3)
2回目の分割は、 ILL=(1/2,4/7)、ILR=(4/7,3/5)、
IRL=(3/5,5/8)、IRR=(5/8,2/3)
このとき、 IRL=(3/5,5/8) における#中点は、8/13となり、
「8/13」は開区間 I =(1/2,2/3)におけるアドレスとして、「RL」を持つ。
ここで、 8/13=(2・1+2・2)/(3・2+3・3) であるので、8/13は、
2つの分数 1/2<2/3 に対する重み 2 : 3 の中間分数となる。
重みが左側大のときは数字の「0」を、右側大のときは数字の「1」を対応づけるものとす
ると、
2 : 3 → 2 : 1 なので、分数 8/13 には 10 が対応する。
数字の「0」をL、数字の「1」をRと対応づければ、これは、まさにアドレス「RL」を持つこと
を意味する。
「エレガントな解答をもとむ」での出題では、
開区間 I 内の全ての有理数はアドレスを持つことを示せ。
となっている。
「エレガントな解答をもとむ」において、次の概念が興味深い。
2つの既約分数 a/b、c/d に対して、それらの解離度を
Δ(a/b、c/d)=bc−ad
で定める。
例 Δ(1/3,1/2)=3−2=1 より、解離度は1で、2つの分数は隣り合っている。
Δ(1/3,2/3)=6−3=3 より、解離度は3で、2つの分数は隣り合っていない。
当HP読者のK.S.さんから、ファレイ数列に関する話題をメールで頂いた。
(平成23年10月7日付け)
ファレイ数列において、
数列 F1 : 0/1,1/1 より、分子の和=1、分母の和=2 である。
数列 F2 : 0/1,1/2,1/1 より、分子の和=2、分母の和=4 である。
数列 F3 : 0/1,1/3,1/2,2/3,1/1 より、分子の和=5、分母の和=10 である。
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このことから、次の命題が成り立つことが予想される。
命 題 ファレイ数列において、(分子の和)/(分母の和)=1/2 が成り立つ。
自然数 n に関する数学的帰納法で証明できる。
(証明) n=1 のとき、明らかに成り立つ。
n=k(k≧1)のとき、命題が成り立つと仮定する。すなわち、
数列 Fk において、(分子の和)/(分母の和)=1/2
n=k+1 とする。分母が、kまでのファレイ数列の分母の和=A、分子の和=Bとすると、
帰納法の仮定より、B/A=1/2 なので、 A=2B
一方、k+1を分母に持つ既約分数は、オイラーの関数から、Φ(k+1)個あり、分母の和
は、(k+1)Φ(k+1)となる。
一般に、n/m が既約であれば、(m−n)/m も既約であるので、分母が k+1 のときの
既約な分数の分子の和は、等差数列の和の求め方と同様の方法(ガウスの方法)を用いて、
Φ(k+1)(1+k)/2 ( ← 項数×(初項+末項)/2 )
となる。このとき、分母=k+1 のときのファレイ数列の分母の和=C、分子の和=D とす
ると、D/C=1/2 より、C=2D となる。
よって、n=k+1 のときのファレイ数列について、
分母の和/分子の和=(B+D)/(A+C)=(B+D)/(2B+2D)=1/2
以上により、すべての自然数 n について、命題が成り立つ。 (証終)
(コメント) ファレイ数列の美しい性質ですね!K.S.さんに感謝します。
当HPがいつもお世話になっているHN「空舟」さんから、関連する話題を頂いた。
(平成25年2月10日付け)
「隣り合う分数」に関連する重要な性質が見当たらなかったので紹介します。特に、(1)か
ら導かれる(2)の性質がとても面白いと思います。
(1) 分数が隣り合う ⇔ ファレイ数列の項として隣り合う
すなわち、以下が成り立つ。(a、b、c、d:自然数)
2つの分数 a/b、c/d が(分数として)隣り合う
⇔ |ad-bc|=1
⇔ (0,0)、(a,b)、(c,d)、(a+c,b+d)で囲まれる平行四辺形の面積=1
⇔ 上記の平行四辺形の辺・内部には格子点が存在しない
⇔ a/b と c/d の間には、Max(b,d)以下の分母を持つ分数は無い
⇔ ファレイ数列Fn[n=Max(b,d)]において、a/b と c/d は(項として)隣り合う。
(参考:ピックの定理(Wikipedia) 、当HP「ピックの定理」)
(2) 中間分数の意義
a/b と c/d が隣り合う時、中間分数 (a+c)/(b+d) は、a/b、c/d と隣り合う。
そこで、それぞれの間で(1)を適用して分かることは、
中間分数は、a/b と c/d の間にある最も分母が小さい分数
である。
(追記) 平成25年11月16日付け
上記では、隣り合う分数について、いろいろ見てきたが、「隣り合う」とくれば、やはり順番
に数えたくなるのが人情だろう。
上図のように、分数を並べれば数えられる(可算集合)ことは明らかだが、如何せん、分数
が重複しているので、このままではダブったまま数えられてしまう。ダブりがないように数える
ことができれば、その分数が最初から数えて何番目かも分かるし、逆に、ある順番にある分
数が何であるかも分かってしまう。(→ 参考:「分数と有理数の違い」)
このような夢のようなことが可能であることを、次の書籍で最近知ることができた。
寺澤 順 著 「有理数をカウントする数式」 (数学セミナー ’13年12月号 (日本評論社))
関数
を用いると、n番目の有理数は、 Fn(0) で与えられる。
(例) 1番目の有理数は、F1(0)=F(0)=1(=1/1)
2番目の有理数は、F2(0)=F(F(0))=F(1)=1/2
3番目の有理数は、F3(0)=F(F(F(0)))=F(1/2)=2(=2/1)
4番目の有理数は、F4(0)=F(F(F(F(0))))=F(2)=1/3
5番目の有理数は、F5(0)=F(F(F(F(F(0)))))=F(1/3)=3/2
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(コメント) 計算していて、ワクワクしてきますね!
(追記) ks さんからご投稿いただきました。(令和5年6月9日付け)
3つの分数 x=b/a 、y=d/c 、z=(b+d)/(a+c) について、x<z<yのとき、z が x よりか、
yよりか(近い)という分数の近さを判断する条件はありますか?
らすかるさんからのコメントです。(令和5年6月9日付け)
a、b、c、d>0 とします。(x+y)/2=b/(2a)+d/(2c)=(ad+bc)/(2ac) です。
z-(x+y)/2>0 を整理すると、(ad-bc)(c-a)>0
ここで、 x<y から、ad-bc>0 なので、 z-(x+y)/2>0 ⇔ c>a
従って、a と c を比較して、
a の方が大きければ、x 寄り、c の方が大きければ、y 寄り
となります。
(コメント) b/a=1/2 、d/c=2/3 について、 (b+d)/(a+c)=3/5
1/2=0.5 、2/3=0.67 、3/5=0.6 なので、分数3/5は、分数2/3寄りである。
らすかるさんの結果は、上記の計算をしなくても、a=2とc=3の大小関係 a<c を見て、
瞬時に、分数3/5は、分数2/3寄りであることが分かる。
ks さんからのコメントです。(令和5年6月10日付け)
らすかるさん、ありがとうございます。どの位の位置にあるかを考えました。
b/a+(d/c -b/a)×c/(a+c)=(b+d)/(a+c) なので、x と y を c : a に内分する点であること
が分かりました。分子は影響しないのが面白いですね。
ks さんからのコメントです。(令和5年6月12日付け)
b/a< x/(a+c) <d/c (a<c)を満たす x の必要条件を調べたら、2b<x<2d で、b+d は、
ほぼ中間であることが分かりました。
例えば、3/7<x/18<6/11 のとき、x=7、8、9、10、11 でした。
以下、工事中!