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001 | 平成15年度前期 | 東京大学 | 理科系 | ・・・ | 三角関数(数学U) | やや難 |
円周率 π は、3.05 より大きいことを証明せよ。
この問題は、多分受験生の意表を突いた問題ではなかっただろうか?今、巷間でも話題
になっている。新学習指導要領では、円周率は、3 として計算してもよいとされているが、
「円周率は、やっぱり 3 より大きいよね!」という東大からのメッセージではないかとい
う穿った見方もできる。
円周率 π =3.14159・・・ という知識しかない場合は、全くのお手上げ状態だったろ
うと推察される。昔、慶應義塾大学で、対数の定義を問う問題が出題されたが、教科書レ
ベルの内容にも関わらず、不意をつかれた受験生は戸惑ったらしい。
(補足) よおすけ様からの情報によると、商学部(1963年)が出題とのこと。正答者は全体の23%だったとか。
翌年に、以下の問題も出題されているとのこと。
A>0、B>0、a≠1、a>0 のとき、 logaAB=logaA+logaBを証明せよ。
これも正答者は全体の40%だったとのこと。(平成20年7月21日追記)
今回の問題についても、河合塾が「やや難」と問題レベルを評価しているように、受験生
にとっては組し難い問題であったことは間違いない。5月下旬にある日数教主催の大学入
試問題懇談会が今から楽しみである。
そもそも円周率 π とは、 (円周)= π × (直径) を意味する。
したがって、円周という曲線の長さを、内側から正多角形の周(直線の長さ)で近似する
という発想が浮かべば、この問題は、ほとんど出来たものと思ってよい。
たとえば、半径 1 の円周を内側から、正六角形の周で近似すれば、
2×π> 6×1 すなわち、 π> 3
となる。(このことからも、円周率 π を 3 とするのには、無理がある!)
問題では、これより厳しく、π> 3.05 を示せ、ということである。
(心憎いばかりに微妙な、3.05 である!)
正六角形では、近似が甘いので、正八角形、正十角形、正十二角形、・・・ と、辺の数を
増やして、周の長さが、円周率 π に、どんどん近づくようにすればよい。
正八角形だと、二重根号の計算が煩わしいので、パス!
正十角形だと、cos36°の計算が煩わしいので、パス!
正十二角形だと、cos30°の計算と二重根号の計算の両方が絡んできそうだが、組し
やすそうなので、正十二角形の場合について、π> 3.05 を示そう。
(河合塾の解答速報でも、正十二角形の場合を調べているが、値を厳しく評価しすぎで、東大の、温情ある
3.05 という中途半端な数の特性を活かしきっていない。ここでは、3.05 の特性を活かした解答を提示
する。)
(問題の解答)
半径 1 の円周に、正十二角形が内接しているものとする。正十二角形の一辺の長さを
X とすると、余弦定理により、 X2=12+12−2・1・1・cos30°=
なので、
> 0.26
よって、(2π)2>(12×)2 より、
π2 > 36・×2 > 36・0.26=9.36 >(3.05)2=9.3025
したがって、π > 3.05 が示された。
(注) 問題の試験範囲として、冒頭では数学Uとなっているが、上記のように解けるので、
数学Tの範囲としてもよい。
(注) この問題に対して、各予備校の解答はそれぞれであるが、基本的方針は同じである。
代々木ゼミナールでは、上の解答と同様であるが、正八角形を用いている点が面白い。
ただ、小数点以下3桁の平方の計算をしなければならず、私は、その計算を避けた。
また、東進ハイスクールでは、正12角形を用いて、きっちり 3.05 となるように上手
く近似している点が素晴らしい。
円周率を、数学的にきちんと取り扱い、 π ≒ 3.14 という認識を持ったのは、古代ギリ
シャのアルキメデス(B.C.287?〜212)である。(詳しくは、こちらを参照)
上記のように、正多角形の周の長さを用いて円周の長さを近似する方法は、アルキメデ
スの考え方そのものである。
数学セミナー(’93年4月号、5月号)において、京都大学教授の上野健爾
氏が、連載で
「円周率 π をめぐって」と題して寄稿している。
(上野先生とは、院生時代に1回だけ酒席を同席したことがある。あの頃、いろいろ上野先生から、もっとお話を
伺っておけばよかったなと後悔しています。)
数学セミナーには、円周率 π の求め方がいろいろ載っており、もしかしたら、入試問題を
作問した方は、この数学セミナーの記事を参考にしたのかもしれない。
特に、数学セミナー(5月号)には、おもしろい求め方が載っているので、紹介したい。
オイラーによれば、無限級数 | ![]() |
は収束し、その和は、 | ![]() |
である。すなわち、 |
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したがって、 | ||||
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このことから、 | ||||
![]() |
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すなわち、 π > 3.05 |
(注) 上記の無限級数が収束することは簡単に示されるが、その和を求めることは難しい。
和を求めるために、17世紀から18世紀初頭まで数学者を悩まし続けた。オイラーが、
ようやく、その和を求めたのは、1735年のことである。
無限級数が収束すること: | ||
第n部分和を | ![]() |
とおくと、 |
![]() |
||
したがって、無限数列 ![]() よって、収束する。 |
無限級数の和を求めること: | |||
無限積 | ![]() |
と、 | |
テイラー展開 | ![]() |
において、Xの係数を比較して、 | |
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|||
よって、 | |||
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(参考文献:志賀浩二 著 極限の深み(岩波書店))
(追記)
平成15年 第52回 大学入試懇談会 (日本数学教育学会 主催)
(平成15年5月25日(日))
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学習院大学百周年記念会館 今年もまた、入試懇談会の季節が やってきた。心地よい新緑の中、学 習院大学に日本各地から多くの方が 集まり、盛会の中、今年度の大学入 試問題について、いろいろなお話を うかがうことができた。 出席大学は、次の通りである。 学習院大学 東北大学 慶応義塾大学 東京理科大学 京都大学 東京大学 早稲田大学 |
各講師の先生方からのお話を要約して、特に、次の点を強調されていた。
大学入試問題によって、大学に入ってから必要となる数学が何であるかが分かる
自分の頭で考え、文章読解力と論証力、そして、論理性と計算力を鍛え、幾何学的
イメージをもつ
高校教育関係者にとっては、指導の改善が必要とされるところである。
今回の懇談会での注目は、やはり「東京大学 理科」の問題6 であろう。
この問題は、新聞にも取り上げられ、世間一般の注目を浴びた。
出題の意図は、講師の個人的な考えとして、次のようなものであろうと話された。
同じ無理数である平方根は、近似値を平方すれば、その確かさを自分で確認できるが、円
周率の場合はそう簡単には出来ない。そこで、平方根を用いて円周率を評価するという考え
方を見る問題だろうと思う。
このような問題の場合、解答は(円に内接する正多角形を用いる→平方根を評価する)が
最も標準的だろうと思われる。会場から、「円周率は、円の面積からも求められるのでは?」
と質問されたが、「円周率を初めて学ぶ小学校では、タイヤを1回転させてどこまで転がるか、
という体験の下に円周率というものを理解しているので、円周が直径の円周率倍で求められ
るということは共通認識だと思う。」と、話された。しかし、円の面積から近似値を計算するこ
ともありえるだろうと思うとも話された。また、「円周率は、3.14159 なので、成り立つ。」と
解答することも考えられるが、これについて、(講師の意見としては)論外だと思うと感想を述
べられた。
また、当HPの解答、各予備校の多くの解答では正多角形を用いて計算しているが、正多
角形を用いない場合として、次のような別解も考えられるとのことである。
(別解) 下図のような半径 5 の四分円を考える。3辺の長さが 3、4、5 の直角三角形を
下図のように配置する。このとき、弧の長さは、 より大きい。
![]() |
ところで、![]() ![]() ![]() よって、 2×π×5×1/4>7.71 より、 円周率 π >7.71×0.4=3.084>3.05 が成り立つ。 (終) |
直接的に確かめられないものを、実感的に把握できるものを用いて評価するという数学の
基本を教えられたような気がする。とてもいい話を聞くことができ、充実した時を過ごすことが
出来た。
(再追記) 「π> 3.05」であることを、上記では、正多角形の辺の長さと円周の長さの関係
から証明したが、もちろん、正多角形の面積と円の面積の関係からも示すことが
できる。
辺の長さに注目した場合は、正八角形や正十二角形など比較的身近な多角形で十分だっ
たのに対して、面積に注目した場合は、正十二角形では証明に失敗するようである。
ここでは、正二十四角形を用いて証明する。
半径が1の円の面積は、π で、その円に内接する正二十四角形の面積は、
24×(1/2)sin15°=12sin15°で与えられる。
このとき、 π>12sin15° である。
三角関数における加法定理を用いて、
sin15°=sin(45°−30°) =sin45°cos30°−cos45°sin30° から、
ここで、 >1.732×1.414=2.449048>2.44 、
<1.42 なので、
π>12×(2.44−1.42)/4=3×1.02=3.06>3.05
が成り立つ。
(参考文献:安田 亨 著 入試数学伝説の良問100 (講談社))
(追記) 平成20年10月15日付け
当HPの掲示板「出会いの泉」に、14日付けで、HN「カズ」さんが次のように書き込まれた。
(多少文言等を修正させていただきました。)
先日、高1の末娘が通う塾の2年次説明会で、上記の東大入試問題のことを聞いた。三角
関数の基本事項だけで証明して、娘に教えてやろうとの想いで、自己流で証明をしてみた。
(証明方法)
(1) 半径が 1 の円Aに内接する正十二角形の12等分された1つの△ABCを考える。このと
き、円弧BC=π/6で、π>6×BC が成り立つ。
(2) 次に、BC×1/2=sin15°より、BC=2×sin15°となるので、(1)より、
π>12×sin15°となる。
(3) このとき、sin15°>0.2588 から
π>12×sin15°>12×0.2588=3.1056>3.05 となる。
(4) したがって、円周率 π は、3.05 より大きい。
この証明方法は、「余弦定理」・「加法定理」等を使用していないこと、sin15°の近似値
を用いたことにより、計算も単純で、非常に理解しやすいと思う。
(コメント) 上記の「カズ」さんの証明は、基本的に再追記で述べた面積利用の証明と一致
する。
sin15°の値を(再追記)では加法定理を用いて求めたが、次の図形からも求められる。
上図の斜辺の計算には、二重根号を外す計算(教科書では発展レベル)が必須である。
この点を除外すれば、「カズ」さんの証明は十分高校1年レベルと言える。
証明を頂いた「カズ」さんに感謝します。
(追記) 平成20年11月3日付け
上図を用いて、sin15°の値を計算する場合、二重根号の計算は避けられないが、下図
を用いると、二重根号の計算が回避できて、sin15°の値が求められることを、カズさんか
らご教示いただいた。
B=30°、C=90°の直角三角形ABCにおいて、辺BC上に、∠ADC=45°となる点D
をとり、点Dより辺ABに垂線AHを引く。このとき、∠DAH=15°である。
上図において、 DH=(−1)/2 なので、sin15°=(
−1)/2
=(
−
)/4
と求められる。
(コメント) 簡明に求められる図に感動しました。カズさんに感謝いたします。
また、別解として、当HPの掲示板「出会いの泉」に、平成20年10月30日付けで、HN「し
んくろ」様より頂いたものを紹介したい。
加法定理の証明に利用される図を用いる方法
上図からは、sin75°も容易に求めることができる。
(コメント) この図だと分母の有理化がないので計算するまでもないですね! sin15°の計
算の奥の深さを思い知らされました!しんくろ様に感謝いたします。
さて、今まで初等幾何的な証明としては、東京大学の T 先生による
という図形を用いた証明が素晴らしいと考えていたが、当HPがいつもお世話になっている、
らすかるさんが三角関数を使わない初等的な証明を考えられたので紹介したいと思う。
(多少文言等を修正させていただきました。)
「カズ」さんが証明に用いた正十二角形の12等分された1つの△ABC内に点Dを
DB=DC 、∠BDC=90°であるようにとる。
このとき、CD=(/2)BC で、さらに、∠ECD=∠BAC=30°なので
CE=(2/)CD=(
/
)BC=(
/3)BC 、DE=(1/2)CE=(
/6)BC
となる。
また、 AE=BE で、 AE=BD+DE=(/2+
/6)BC より、
AC=AE+CE=(/2+
/6)BC+(
/3)BC=(
/2+
/2)BC
ここで、 AC=1 なので、 BC=/2−
/2
また、 >2.44 、
<1.42 なので、 BC>0.51
したがって、 π>6×BC>3.06>3.05 (終)
(コメント) 加法定理を用いずに、BCの大きさが評価できるとは驚きです!
点Dの活用は正に「神の手」ですね。らすかるさんに感謝します。
(追記) 〜 平成15(2003)年12月24日付け朝日新聞朝刊 〜
23日付けから、「変わる入試 転機の教育」と題して特集が始まった。24日付けは、入試
問題の新たな流れとして、『思考力を重視する傾向にある』ことが主に論じられ、その格好の
例題として、今春の東京大学入試問題「円周率は、3.05より大きいことを証明せよ。」が取
り上げられている。
ただ、その記事には誤りがあるので、ここで補足しておきたい。朝日新聞に誤りを指摘した
メールを送っても訂正されることはまずない(過去に経験あり!)ので、HP上で読者の方に
のみお知らせする次第である。
紙上では、ある受験生が「半径 1 の円に内接する正八角形を書いて、その面積が3.05
より大きいことを示した。予備校で確かめたら、正解だと言われた。」とあるが、それは、絶
対に不可能なことである。
(注: 上記の正八角形の面積は、2 で、およそ 2.82 である!)
上記でも説明した通り、面積を用いた証明は、正二十四角形で可能で、正八角形や正十
二角形などでは失敗する。
このことは、昨日の出張先でも話題になり、「正八角形では示されないよね〜」と新聞記事
に疑問の声が集中した。
正八角形の辺の長さに注目すれば、証明は可能である。(参考:代々木ゼミナール解答速報)
上記受験生の方は、東京大学に合格されたということなので、単なる勘違いとは思えず、
多分取材された方が、記事を書く段階で、辺の長さを面積と誤解されたのではないかと推
察される。(1面トップ記事なのに、朝日新聞は校正をしてしないのだろうか?)
また紙上では、03年度入試を担当したある教授のお話として、「試験問題は、大学が発
信する最大のメッセージだ」とあるが、これもちょっと(?)である。このページを書くにあたり
日本数学教育学会研究部の方にいろいろお世話になったが、そのときの経験として、「果
たして大学当局が入試担当者を明らかにすることはあるのだろうか?」という疑問である。
朝日新聞の記事については、いろいろ疑問が残るが、下記に、正八角形の辺の長さを用
いた証明を記しておく。
半径 1 の円に内接する正八角形の 1 辺の長さを X とおくと、余弦定理から、
X2 = 2−
が成り立つ。したがって、 (8X)2 = 128−64 である。
ここで、 <1.415 が成り立つ。
実際に、 1.4152 =2.002225 > 2 より、 <1.415
したがって、
(8X)2 = 128−64 >128−64×1.415=128−90.56=37.44
ここで、37.44>37.21=(6.1)2 なので、 8X > 6.1 となる。
半径 1 の円周の長さは、円周率を π として、2π で、明らかに、2π >
8X
したがって、 2π > 6.1 より、 π > 3.05 が成り立つ。(証終)
(追記) 平成15(2003)年12月25日付け朝日新聞朝刊で、上記の件で「訂正」が出ていた。
やはり、受験生は、正八角形では計算していなかった。当HPにおけるのと同様に正二十四
角形の面積を用いて示したという。受験生本人から訂正の申し入れがあったのだろう。
(追記) 平成22年2月6日付け
2月4日付けで、T.K.さんから、上記であげられた何れの証明でもなく、かつ、より簡単
な証明というもの見出されたということで、メールをいただいたので紹介したい。
以下の証明法を使えば、中学3年生の知識(三平方の定理と平方根)で証明できるとの
ことである。(一部文言等を修正させていただきました!)
(証明)
![]() |
円Oの半径を r とし、中心Oを通り、円周とA、Bで接する正三角形 を描く。 このとき、線分ABは円に内接する正6角形の1辺である。さらに、 ABの中点と、Oを通る直線を引き、円との交点をCとする。 ACは円に内接する正12角形の1辺である。 この長さをαとする。 |
未知の円周率をπと置いたとき、円周の長さは、2πr である。また、正12角形の外周は、
12αであるが、明らかに、12α<2πr より、6α/r<π なので、
3.05<6α/r を証明すればよい。
ABとOCの交点をDとする。△AODは直角三角形であり、AO=r 、AD=r/2 なので、
OD=r/2 である。 よって、 CD=(2−
)r/2 である。
△ACDもまた直角三角形で、AD=r/2 より、 α2=AC2=(2−)r2 となる。
これより、 (6α/r)2=36(2−) となるので、 (3.05)2<36(2−
) を示せば
よいことになる。
1.732<<1.733 なので、 0.267<2−
<0.268
ここで、 (0.51)2=0.2601 、 (0.52)2=0.2704 なので、
(0.51)2<2−<(0.52)2
すなわち、 6×0.51<6α/r<6×0.52 より、 3.06<6α/r<3.12
以上から、 3.05<6α/r より、 3.05<π が示された。 (証終)
(コメント) T.K.さん、初等的で簡明な証明をありがとうございます。証明の方向性は冒頭
にある(問題の解答)と同じ流れですね。
T.K.さんによれば、「この問題はアルキメデスが正96角形から円周率を近似した史実を
知っていれば、着想できるものと思われる」とのことで、解法そのものは単純で高校数学など
必要なく大学入試としてはふさわしくないように思われるが、作問者は、学生に、数学の能力
だけでなく、数学史についても知っていて欲しいと考えたのではないかと想像しているとのこと。
FNさんが、上記に関連する問題を出題されました。(平成24年1月3日付け)
円周率をπとするとき、次の不等式を証明せよ。
(A0) π>3 | (B0) π<4 | |
(A1) π>3.01 | (B1) π<3.5 | |
(A2) π>3.05 | (B2) π<3.2 | |
(A3) π>3.1 | (B3) π<3.15 | |
(A4) π>3.14 | (B4) π<3.143 |
使っていいのは、πの定義、即ち半径1の円の円周が2πであることと半径1の円の面積
がπであることだけとします。(できればπの定義だけにしたいがそれは可能でしょうか?)
(A)の方は、円に内接する多角形(普通は正多角形)を考えて、その周の長さが2πより小
さいことから証明するのが普通でしょう。(B)の方は、円に外接する多角形を考えてその面
積がπより大きいことから証明すると思います。(外接多角形の周の長さが円周より長いこ
との証明ができれば周の長さでも可)
どのような内接多角形、外接多角形をとってくるかということと、その周の長さ、あるいは
面積をどのように評価するかということになります。弱い不等式については簡単な方法で、
強い不等式についてはより精密な方法で示すことになります。
(A0)は内接正六角形で、(B0)は外接正方形でできますから、小学生のレベルです。手計
算でないと意味がないですが、(A4)(B4)を手計算でやるのは難しいのではないかと思いま
す。
(A2)は、冒頭の問題ですから、これはもういいとします。(A1)(A3)(B1)(B2)(B3)について考
えてみてください。
例えば、(B1)の解としては、(B1)は証明できるが、(B2)は証明できない程度のものが望ま
しいです。
ところで、東大が「3.05」として出題したことについて考えてみます。普通なら「3.1」で
出題しそうなものです。そうすると方法が限定されることから反対があったのでしょう。多様
な発想による、いろいろな解答が欲しかったということでしょうか。
それなら、「3.01」や「3.02」等でもよかったはずです。この方が解答の幅は広がりま
す。「3.01」から「3.1」までいろいろ検討したうえで、見た目も考慮に入れて「3.05」に
なったということでしょう。
(コメント) 最近、この話題に触れる機会がありました。某予備校では、
円周率は、3.11より大きいことを証明せよ。
という形で演習しているそうです。この問題は、FNさんの分類:A系列に属する問題ですね!
(解) 半径1の円に内接する正24角形を考える。その周の長さをLとすると、
L=24×2sin(π/24)=48sin(π/24)
ここで、 2sin2(π/24)=1−cos(π/12) で、さらに、
2cos2(π/12)=1+cos(π/6)=(2+)/2=(
+1)2/4 より、
cos(π/12)=(+1)/2
=(
+
)/4
よって、 8sin2(π/24)=4−−
より、
L2=482sin2(π/24)=288(4−−
)
<1.4143 、
<1.7321 なので、
<2.4498 である。
このとき、 L2>288×0.1359=39.1392
ここで、 (2×3.11)2=38.6884 なので、 L2>(2×3.11)2 から、
L>2×3.11 で、 2π>L から、 π>3.11 (終)
(コメント) 上記では、半径1の円に内接する正24角形の周の長さを評価したが、半径が
1の円に内接する正24角形の面積に注目した場合の評価式は、
π>3(−
)
である。この場合、、
の小数点以下下4桁程度の評価では、「π>3.11」を示すこと
は困難なようである。目的を達成するためには、、、
について、より厳しい評価が必要
である。
FNさんからのコメントです。(平成24年1月4日付け)
正多角形でない多角形を考えることは、(1)精度が落ちる (2)長さ(or面積)を正多角形な
ら1つでいいのに普通は2つ以上計算しなければならないことからメリットはないと思います。
あまり意味はないと思いますが、弱い不等式なら証明できないこともないので、(A1)(B1)を
正多角形でない多角形でやってみました。
(別解)にあるように、半径5の四分円を考えて、その周上に2点(3,4)、(4,3)を取ってい
るのを、1点(3,4)だけをとる。(別解)は、正でない12角形を考えているのだが、それでは
(A2)が証明できてしまうので、弱くするために正でない8角形を考えるということである。この
とき2本の弦の長さは、√10+2√5である。これの2倍が、「3.01」より大きいことを示せば
よい。√10>3.1、√5>2.2 では証明できない((A0)しかでない)が、√10>3.15
ぐらい
にしておけばできる。
(B1)も半径5の四分円 x2+y2=25 (x≧0、y≧0)を考え、周上の2点(3,4)、(4,3)を取って
そこでの接線を考えてできるかと思ったら残念ながらちょっと駄目でした。π<3.6なら出
ます。しょうがないから、x2+y2=169 を考えて、周上の2点(5,12)、(12,5)を取って、そこで
の接線を考えたらできました。正でない多角形を考えるのはあまり意味がないと思います。
半径1の円に内接する正n角形の周の長さは、2nsin(π/n)
半径1の円に内接する正2n角形の面積は、nsin(π/n)
半径1の円に外接する正n角形の周の長さは、2ntan(π/n)
半径1の円に外接する正n角形の面積は、ntan(π/n)
従って、 nsin(π/n)<π<ntan(π/n)
(これは、0<x<π/2のとき、sin x < x <tan x の x に、π/n を代入して、n倍したもの)
正多角形で考えるということは、nを適当にとって、nsin(π/n)やntan(π/n)を適当に評価
しようということである。nとしては、2の累乗かそれに3をかけたものしか考えないだろう。
4、8、16、32、64、・・・ または 6、12、24、48、96、・・・
これらなら根号を開くことができれば理論上計算可能である。理論上なら、5角形や17角
形も平方根だけで求めることができるがもちろんそんなことはするはずがない。
証明は手計算でないと意味ないが、ちょっとカンニングをして nsin(π/n) や
ntan(π/n) の
値をエクセルとかで調べておくといいでしょう。
n | nsin(π/n) | ntan(π/n) |
4 | 2.828427125 | 4 |
6 | 3 | 3.464101615 |
8 | 3.061467459 | 3.313708499 |
12 | 3.105828541 | 3.215390309 |
16 | 3.121445152 | 3.182597878 |
24 | 3.132628613 | 3.159659942 |
32 | 3.136548491 | 3.151724907 |
48 | 3.139350203 | 3.146086215 |
64 | 3.140331157 | 3.144118385 |
96 | 3.141031951 | 3.1427146 |
これを見れば、証明の方針がある程度決まります。ただし、必ずしも n が小さいほど計算
しやすいとは限りません。例えば、sin(π/8)は、2重根号だけど、sin(π/12)は、2重根号では
ない等。
「π>3.11」の証明で、n=16ではなくてn=24を使っています。n=16なら3重根号、n=24なら
2重根号だからということとあわせて、3.1326・・・>3.11の方が、3.1214・・・>3.11より楽なはずだ
ということから妥当なところでしょう。
攻略法さんが、(A2) π>3.05 を証明されました。(平成24年1月5日付け)
(解 その1) 正10角形、すなわち、n=10 を考える。
このとき、 2・sin(18°)=(-1)/2=1/φ (φは黄金比)である。
フィボナッチ数列 0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,… の2項の比 Fn/Fn+1
は、
0/1<1/2<3/5<8/13<21/34<…
1/φ …<34/55<13/21<5/8<2/3<1/1
となる。
よって、不等式 n・sin(π/n)<π<n・tan(π/n) と 2sin(18°)=1/φ>8/13 より、
π>10sin(180°/10)>5・(8/13)=3.07…>3.05 (終)
※ 開平の場合、>2.23 として、sin(18°)=(√5-1)/4>(2.23-1)/4=1.23/4=0.3075
なので、 π>10sin(18°)=3.075>3.05 (終)
攻略法さんからのコメントです。(平成24年1月6日付け)
この問題は、sinθ、tanθの値を求める問題とも言えるのではないでしょうか。
たとえば、 sin(π/30)=(-1- +
√(5-
))/8=(-1-√5 + √(30-6
))/8
実際に、3倍角の公式より、 3sin(π/30)-4sin3(π/30)=sin(π/10)=(-1+)/4
よって、x=sin(π/30) として、4x3 - 3x + (-1+√5)/4 = 0 を解けばよい。
(数式処理ソフトを使えば求まるでしょう。)
ところで、
0<θ<π/2 として、 sin(π/10)=(-1+)/4
(2010年センター試験 数学U・数学B より)
について、まず、
sin4θ=cosθ を満たすθを求める。右辺を変形して、sin4θ=sin(π/2-θ)
0<θ<π/2 において、0<cosθ=sin(π/2-θ)<1 より、 0<sin4θ<1
このとき、 θは、4θ=π/2-θ または 4θ=π-(π/2-θ)=π/2+θ を満たす。
よって、 θ=π/6 または θ=π/10
これより、 sin4θ=cosθ を解けば、sin(π/10) が得られる。
2sin2θcos2θ=cosθ から、2(2sinθcosθ)(1-2sin2θ)=cosθ
両辺を cosθ>0 で割ると、 4sinθ(1-2sin2θ)=1
よって、 8sin3θ-4sinθ+1=0
因数分解して、(先のθの解π/6を参考にする) (2sinθ-1)(4sin2θ+2sinθ-1)=0
2次方程式の解の公式より、 sinθ=(-1±)/4
sinθ>0 より、 sinθ=(-1+)/4
(コメント) 攻略法さん、ありがとうございます。
FNさんからのコメントです。(平成24年1月6日付け)
「この問題は、sinθ、tanθを求める問題!?」について、「求める」というのは強すぎるよ
うなやや弱いような感じです。やはり、「評価する」という方がいいでしょう。根号を使って表し
て(多分、これが求める?)それを評価する場合が多いとは思います。
この問題を離れて、sin(π/n)等を根号を使って表すのは面白い問題だと思います。
ところで、sin(π/30)は、3重根号ではないのですね。cos(π/30)は、3重根号のようです。
数式処理ソフトを使ったのでは面白くありません。
(解 その2) 3辺が 5、12、13 の直角三角形、1辺が12の正方形、半径17の4分円を
![]() |
左図のように配置する。正方形の対角線は、 12 ![]() (おおよそ正8角形) 図より、4分円の弧>直角三角形の斜辺×2 なので、 2π×17/4>13×2 よって、π>13×4/17=3.058…>3.05 (終) |
FNさんからのコメントです。(平成24年1月5日付け)
(解 その1)の正10角形はまず考えないとは思いますが、できないことはないですね。
(FNさんからの追記) 平成24年1月6日付け
オイラーのφ関数について、φ(8)=φ(10)=φ(12)=4 だから、π/8、π/10、π/12 のいず
れについても、正弦を求めるには2次方程式2回(根号を開くのが2回)だから理論的には同
等ですね。実際の計算については「12」が有利とは思いますが、正10角形もありうると思うよ
うになりました。
φ(n)=8 となる n 、即ち、根号を開くのが3回でできるのは、n=16、20、24の他に、n=15、30
があります。この問題を離れて、sin(π/30)=sin12°とかを求めてみるのも面白そうです。
多分、3重根号でしょうが...。
φ(n)=16(根号を開くのが4回)は、n=32、40、48、60 の他に、n=17 があります。正17角形
については、生きている間に1回は考えてみたいと思います。
(解 その2)の方は内接すらしない(ほぼ内接だけど)正でない8角形(ほぼ正だけど)で出
来てしまうのがすごいです。
凡人さんが、「理系という事で数IIIの積分を使った解法」を示されました。
(平成24年1月6日付け)
f(x)=4/(x2+1) と置くと、f’(x)=-8x/(x2+1)2<0 、f”(x)=8(x2-1)/(x2+1)3 より、
0<x<1 において、f(x)は、上に凸な単調減少関数である。
従って、∫01f(x)dx=π>{(f(0)+f(1))/2+Σk=1〜n-1f(k/n)}/n = {3+Σk=1〜n-1f(k/n)}/n
※右辺は、f(x)=4/(x2+1)、x 軸、y 軸、x=1 で囲まれる図形の面積を台形で近似した値
これを、各nの値で計算すると、
n=1 のとき、 π>3
n=2 のとき、 π>(3+16/5)/2=31/10=3.1
n=3 のとき、 π>(3+36/10+36/13)/3=203/65>3.123
n=4 のとき、 π>5323/1700>3.131
となり「π>3.13」までは手計算で証明できます。n≧5 のときは、さすがに手計算が大変
なので、PCにお願いすると、「π>3.14」を示すには、n=11まで計算する必要があります。
上からの評価をうまく行う方法を考え中です。
FNさんからのコメントです。(平成24年1月6日付け)
東大の問題の趣旨からいえば、高校でやったことは使っていいから、このやりかたもあり
ですね。n=2 はごく簡単に計算できて、それで、π<3.1 がでてしまうのがすごいです。この
方向での解答を書いた受験生も少しはいたのでしょう。n=4 で、π>3.13 が出てしまうんで
すね。
普通のやりかたは、√(1-x2) の 0 から 1 までの積分を何個かの台形の面積で評価して
いるとも言えるわけで、そう考えるなら、無理関数より分数関数の方が無理数が出てこない
分、はるかにいいことになります。微分積分という高度なことが使われているわけではありま
すが...。
攻略法さんからのコメントです。(平成24年1月6日付け)
∫{1/(1+x2)}dx について
0≦x≦1において、不等式 1/(1+x2)=1-x2+x4/(1+x2)≧1-x2+x4/2 より、
∫01{1/(1+x2)}dx=π/4≧∫01{1-x2+x4/2}dx=[x-x3/3+x5/10]01
=1-1/3+1/10=(30-10+3)/30=23/30
以上から、 π≧46/15=3.06…>3.05
同様に、 0≦x≦1において、不等式 1/(1+x2)=1-x2+x4/(1+x2)≧1-x2 より、
∫01/{1/(1+x2)}dx=π/6≧∫01/
{1-x2}dx=[x-x3/3]01/
=1/
-1/9
=8
/27
以上から、 π≧16√3/9=3.07…>3.05
FNさんからのコメントです。(平成24年1月6日付け)
上記計算の真似をして、逆向きの不等式を出してみました。
1/(1+x2)=1-x2+x4/(1+x2)≦1-x2+x4 より、
∫01{1/(1+x2)}dx=π/4< ∫01{1-x2+x4}dx=1-1/3+1/5=13/15
以上から、 π<52/15=3.46・・・<3.5
ところで、n を偶数として、
1/(1+x2)=1-x2+x4-x6+・・・+x2n/(1+x2)≦1-x2+x4-x6+・・・+x2n
を使って計算すると、π/4<1-1/3+1/5-・・・・+1/(2n+1) が得られますが、収束が遅いこと
で有名な級数だから、いい結果を得るのは大変でしょう。
攻略法さんからのコメントです。(平成24年1月7日付け)
ライプニッツの式 π/4=ArcTan(1)=1-1/3+1/5-1/7+1/9- … よりは、マチンの式
π/4=4ArcTan(1/5)-ArcTan(1/239)
を使うのが実用的ですね。
円周の長さの評価式では、「円弧の長さ」におけるスネルの不等式
0<θ<π/2 のとき、
において、θ=π/6 のとき、 sinθ=1/2、cosθ=/2、tanθ=
/3 なので、
3・(1/2)/(2+/2)<θ<(2・(1/2)+
/3)/3 より、 3(4-
)/13<θ<(3+
)/9
よって、 18(4-)/13<π<2(3+
)/3
<1.74 として、 18(4-1.74)/13=3.12<π<2(3+1.74)/3=3.16 でしょう。
(コメント) 近似の精度は置いといて、スネルの不等式は有用ですね!
FNさんからのコメントです。(平成24年1月7日付け)
マチンの式は一応知っていましたが、スネルの式は知りませんでした。スネルの式を証明
させて、それを使ってπの評価を要求するという問題は大学入試問題として手頃な感じです。
sinθ<θ<tanθ が、1次近似で等式になるのに対して、スネルの式は、3次近似で等
式になるようです。
3次近似で考えると、 3sinθ/(2+cosθ)≒3(θ-θ3/6)/(3-θ2/2)=θ
(2sinθ+tanθ)/3≒(2θ-θ3/3+θ+θ3/3)/3=θ
だから、精度にかなりの差が出るのは納得できます。
攻略法さんが、「sin(π/n)等を根号を使って表すのは面白い問題だと思います。」を受け
て、種々の三角関数の値を調べられました。(平成24年1月8日付け)
● 60°(=π/3)、45°(=π/4)、30°(=π/6)
sin(60°)=sin(π/3)=/2 、cos(60°)=cos(π/3)=1/2
sin(45°)=sin(π/4)=/2 、cos(45°)=cos(π/4)=
/2
sin(30°)=sin(π/6)=1/2 、cos(30°)=cos(π/6)=/2
● 36°(=π/5)
θ=π/5 より、2θ+3θ=π なので、sin(3θ)=sin(π-2θ)=sin(2θ)
倍角、3倍角の公式を使って、4cos2θ-2cosθ-1=0
2次方程式の解の公式より、cosθ>0に注意して、
cosθ=(1+)/4=(1/2)φ (黄金比)
sin2θ=1-cos2θ=1-(1+)/4)2=(10-2
)/16
sinθ>0 より、 sinθ=√(10-2)/4
(別解) ∠A=36°、AB=AC=x 、BC=1 の二等辺三角形ABCを考える。
点Bから、∠B=72°の二等分線をひき、辺ACとの交点をDとする。
△BCDは、BC=BD=1 の二等辺三角形、△DABは、DA=DB=1 の二等辺三角形となる。
△ABC∽△BCDより、AB : BC = BC : CD なので、 x : 1 = 1 : x-1
よって、 x(x - 1) = 1 より、 x2 - x - 1 = 0 従って、x = (1 + )/2 = φ (黄金比)
次に、点Dから辺ABへ下ろした垂線の足をKとする。△DAK≡△DBK なので、△DAKに
おいて、cos(36°)=AK/AD=x/2=(1+)/4
● 22.5°(=π/8)
θ=π/8 とすると、2θ=π/4
余弦の倍角の公式 cos(2θ)=2cos2θ-1 より、 /2=2cos2θ-1
cosθ>0に注意して、 cosθ=√(+2)/2
sin2θ=1-cos2θ=(2-)/4 で、sinθ>0 より、sinθ=√(2-
)/2
(別解) ∠A=45°、AB=AC= の二等辺三角形ABCを考える。点Bから、辺ACへ下ろし
た垂線の足をDとする。△BDAは、BD=AD=1 の直角三角形となる。△BDCの直角三角形
において、 BC2=BD2+DC2=12+(-1)2=4-2
点Aから辺BCへ下ろした垂線の足をHとする。
△ABHにおいて、sin(22.5°)=BH/AB={√(4-2)/2}/√2=√(2-
)/2
● 18°(=π/10)
θ=π/10とすると、5θ=π/2 で、2θ+3θ=π/2 なので、
sin3θ=sin(π/2-2θ)=cos2θ
倍角、3倍角の公式を使って整理すると、 4sin3θ-2sin2θ-3sinθ+1=0
因数分解して、 (sinθ-1)(4sin2θ+2sinθ-1)=0
2次方程式の解の公式より、sinθ>0に注意して、sinθ=(-1+)/4
cos2θ=1-sin2θ=(10+2√5)/16 で、cosθ>0 より、cosθ=√(10+2)/4
(別解) ∠A=36°、AB=AC=x、BC=1 の二等辺三角形ABCを考える。点Bから、∠B=72°
の二等分線をひく。辺ACとの交点をDとする。△BCDは、BC=BD=1の二等辺三角形、
△DABはDB=DA=1の二等辺三角形となる。△ABC∽△BCDより、AB : BC = BC : CD
なので、 x : 1 = 1 : x-1 より、 x(x-1)=1 よって、 x2-x-1=0
以上から、 x=(1+)/2=φ (黄金比)
次に、点Aから辺BCへ下ろした垂線の足をHとする。∠BAH=18°なので、
sin(18°)=BH/AB=(1/2)/((1+√5)/2)=(-1+)/4=(1/2)(1/φ)
● 15°(=π/12)
sin(π/12)=sin(π/3-π/4)
=sin(π/3)cos(π/4)-cos(π/3)sin(π/4)=(/2)(
/2)-(1/2)(
/2)=(
-
)/4
cos(π/12)=cos(π/3-π/4)
=cos(π/3)cos(π/4)+sin(π/3)sin(π/4)=(1/2)(/2)+(
/2)(
/2)=(
+
)/4
(別解) sin(π/12)=sin(π/4-π/6)
=sin(π/4)cos(π/6)-cos(π/4)sin(π/6)=(/2)(
/2)-(
/2)(1/2)=(
-
)/4
cos(π/12)=cos(π/4-π/6)
=cos(π/4)cos(π/6)+sin(π/4)sin(π/6)=(/2)(
/2)+(
/2)(1/2)=(
+
)/4
(別解) △ADCは、AC=1、∠ADC=30°、∠Cが直角の直角三角形で、CDの延長にBをとり、
△ABDは、AD=BD=2、∠ABC=∠BAD=15°の二等辺三角形とする。
△ABCにおいて、AB2=BC2+CA2なので、AB2=(2+)2+12=8+4
このとき、AB=+
● 12°(=π/15)
π/15=π/6-π/10 なので、加法定理より、
sin(π/15)=sin(π/6-π/10)=sin(π/6)cos(π/10)-cos(π/6)sin(π/10)
=(1/2){√(10+2)/4}-(
/2){(-1+
)/4}=( √(10+2)+
-√15) ) /8
cos(π/15)=cos(π/6-π/10)=cos(π/6)cos(π/10)+sin(π/6)sin(π/10)
=(/2){√(10+2
)/4}+(1/2){(-1+
)/4}=( √(30+6
)+
-1 )/8
● 9°(=π/20)
π/20=π/4-π/5 なので、加法定理より、
sin(π/20)=sin(π/4-π/5)=sin(π/4)cos(π/5)-cos(π/4)sin(π/5)
=(/2){(1+
)/4}-(
/2){√(10-2
)/4}=( √10+
-2√(5-
) )/8
cos(π/20)=cos(π/4-π/5)=cos(π/4)cos(π/5)+sin(π/4)sin(π/5)
=(/2){(
+1)/4}+(
/2){√(10-2
)/4}=( √10+
+2√(5-
) )/8
● 7.5°(=π/24)
π/24=π/6-π/8 なので、加法定理より、
sin(π/24)=sin(π/6-π/8)=sin(π/6)cos(π/8)-cos(π/6)sin(π/8)
=(1/2){√(+2)/2}-{
/2}{√(2-
)/2}=( √(
+2)-√(6-3
) )/4
cos(π/24)=cos(π/6-π/8)=cos(π/6)cos(π/8)+sin(π/6)sin(π/8)
={/2}{√(
+2)/2}+(1/2){√(2-
)/2}=( √(6+3
)+√(2-
) )/4
● 6°(=π/30)
π/30=π/5-π/6 なので、加法定理より、
sin(π/30)=sin(π/5-π/6)=sin(π/5)cos(π/6)-cos(π/5)sin(π/6)
={√(10-2)/4}(
/2)-{(1+
)/4}(1/2)=( √(30-6
) -1-
)/8
cos(π/30)=cos(π/5-π/6)=cos(π/5)cos(π/6)+sin(π/5)sin(π/6)
={(1+)/4}(
/2)+{√(10-2
)/4}(1/2)=(
+√15 +√(10-2
) )/8
● 4.5°(=π/40)
π/40=π/8-π/10 なので、加法定理より、
sin(π/40)
=sin(π/8-π/10)=sin(π/8)cos(π/10)-cos(π/8)sin(π/10)
={√(2-)/2}{√(10+2
)/4}-{√(2+
)/2}{(-1+
)/4}
=( √(20-10+4
-2√10) +√(2+
)-√(10+5
) )/8
=( √(10+√10)-√(10-3√10) +√(2+)-√(10+5
) )/8
cos(π/40)
=cos(π/8-π/10)=cos(π/8)cos(π/10)+sin(π/8)sin(π/10)
={√(2+)/2}{√(10+2
)/4}+{√(2-
)/2}{(-1+
)/4}
=( √(20+10+4
+2√10) -√(2-
)+√(10-5
) ) /8
=( √(10-√10)+√(10+3√10) -√(2-)+√(10-5
) ) /8
● 3°(=π/60)
π/60=π/10-π/12 なので、加法定理より、
sin(π/60)
=sin(π/10-π/12)=sin(π/10)cos(π/12)-cos(π/10)sin(π/12)
={(-1)/4}{(
+
)/4}-{√(10+2
)/4}{(
-
)/4}
=( √30+√10--
-√(60+12
)+√(20+4
) )/16
cos(π/60)
=cos(π/10-π/12)=cos(π/10)cos(π/12)+sin(π/10)sin(π/12)
={√(10+2)/4}{(
+
)/4}+{(
-1)/4}{(
-
)/4}
=( √30-√10-+
+√(60+12
)+√(20+4
) )/16
らすかるさんからのコメントです。(平成24年1月8日付け)
答え合わせは、こちらでどうぞ。
FNさんからのコメントです。(平成24年1月12日付け)
π/3、π/4、π/6 は容易として、π/5、π/8、π/10 を計算しておけば、あとは加法定理
で出るということですね。加法定理では、新たに2重に根号がついたりはしないから、π/5、
π/8、π/10 で2重根号がありうるだけで、kπ/60 では、3重根号は現れないということで
すね。面白そうだとは思いながら自分ではやってません。いつかやってみます。
らすかるさんは、π/120=1.5°刻みで、すべての鋭角の三角比を出しておられるので
すね。実際にやってみたときの答え合わせに使わせて頂きます。1.5°でも3重根号が現
れないのは意外に感じます。
π/90=2°やπ/180=1°については、φ(90)=24、φ(180)=48 となって、素因数3を含
むから立方根がつくのでしょう。多分、これらの角の正弦等を求めるのはとても難しいので
しょう。
(追記) 平成25年4月6日付け
東京大学の円周率の評価問題に触発されたように、今年度も円周率を東大以上に厳しく
評価する問題が大阪大学で出題された。
大阪大学 理系(2013) ・・・H25年度より新設された挑戦枠入試問題
3.141<π<3.142 を示せ。
上記の問題の前に微積分の問題が出題され、それを用いて解くらしいが、その誘導問題
が一般には公開されていない。
上記のExcelさんの表
n | nsin(π/n) | ntan(π/n) |
4 | 2.828427125 | 4 |
6 | 3 | 3.464101615 |
8 | 3.061467459 | 3.313708499 |
12 | 3.105828541 | 3.215390309 |
16 | 3.121445152 | 3.182597878 |
24 | 3.132628613 | 3.159659942 |
32 | 3.136548491 | 3.151724907 |
48 | 3.139350203 | 3.146086215 |
64 | 3.140331157 | 3.144118385 |
96 | 3.141031951 | 3.1427146 |
から不等式を示すためには、n=96以上の評価が必要である。これって、手計算で可能な
のだろうか?大阪大学の誘導問題が大いに気にかかる!
(追記) GAI さんから、話題の提供です。(平成25年7月31日付け)
アルキメデス考案の半径1の円に内接と外接する正多角形を計算することにより、円周率
π(π=3.141592・・・)の値を小数第6位の精度まで確定させるためには、正何角形までの
図形を考察せねばならないでしょうか?
自分で求めた結論を確かめたいので、どなたか挑戦願います。
空舟さんからのコメントです。(平成25年7月31日付け)
Maxima によると、「5463」でした。
f(n):=n*sin(%pi/n);
g(n):=n*tan(%pi/n);
/* [wxMaxima: input start ] */
float(f(5463));
float(g(5463));
float(g(5462));
/* [wxMaxima: input end ] */
> 3.141592480434425
> 3.141592999900581
> 3.1415930000274
GAI さんからのコメントです。(平成25年7月31日付け)
f(n):=n*1/2*1^2*sin(%2*pi/n)=n/2*sin(%pi/(n/2))
になりませんか?私は正5624角形の結論となりました。
らすかるさんからのコメントです。(平成25年7月31日付け)
内接n角形をn個の二等辺三角形に分けた時、頂角は、2π/n なので、底辺の長さは、
2sin(2π/n÷2)=2sin(π/n)
よって、周の長さは、2nsin(π/n) なので、半周(角度π)では、nsin(π/n) となります。
(参考) 内接多角形と外接多角形では、 sinθ<θ<tanθ という式を使用しますが、
これの代わりに、
sinθ<θ<(sinθ+tanθ)/2
(つまり、円周の長さは内接多角形と外接多角形の周の平均より小さい)
を使用すれば、n=2812で、π=3.141592… が確定しますね。また、θが小さいとき
θ≒(2sinθ+tanθ)/3であることを使うと、例えば、n=5463 のとき、
π=3.14159265358981…
と、小数点以下12桁まで正確に求まります。(但し、これだけでは何桁まで正確か分かりません。)
GAI さんからのコメントです。(平成25年7月31日付け)
私は周の長さではなく、面積で挟んでいました。そうですよね、周の長さで挟むべきですね
・・・。でも、面積で考えてはいけないのかな?
らすかるさんからのコメントです。(平成25年7月31日付け)
元々の目的は、(円周)÷(直径)の値を求めることだと思いますので、周の長さで考えるの
が自然だと思います。もちろん、(半径)=1 のとき、(円周)÷(直径)=(面積)を既知として良い
のであれば、面積で考えても別に構わないと思いますが、結果的にnが大きくなるので損で
すね。
空舟さんからのコメントです。(平成25年8月1日付け)
アルキメデスの方法と書いてあったので、(アルキメデスの方法は周と記憶していたので)
周でやりました。周でやる時は、「外接多角形の周長が円周より長いこと」が、実は自明で
はないことを認識しておく必要が時にあると思います。(→ 参考:「円の面積」)
GAI さんからのコメントです。(平成25年8月1日付け)
半径1の円を描く。この円が内接円となる正三角形を作る。さらに、この正三角形の外接
円を描く。いま描いた円を内接円となるように、外側に正4角形を作る。この正4角形の各
頂点を通る円を描く。この円が内接円となるよう、外側に正5角形をつくり、さらにその正5
角形の各頂点を通る円を描く。このように、次々と正多角形を変えながら円を構成していく
とき、正多角形は限りなく円に近づいていくので、外接する円はある大きさ以上には膨らま
ない。そこで、こうして構成できる円の極限の半径が知りたい。どこまで膨らませられるの
か?
らすかるさんからのコメントです。(平成25年8月1日付け)
「外接する円はある大きさ以上には膨らまない」とは限らないと思います。
1/2+1/3+1/4+… が発散するのと同様に、無限に正多角形を追加すれば、円も無限に大き
くなる可能性があります。でも、計算したら、収束するようですね。1/Π[k=3〜∞]cos(π/k)
になると思いますが、これ「WolframAlpha」で計算したら、「8.7000366252…」という値になり
ました。この値は、「A051762」にありました。
空舟さんからのコメントです。(平成25年8月1日付け)
正三角形の外接円の半径は最初の円の 1/cos(π/3)倍、次の円の半径はそれの
1/cos(π/4)倍、・・・というわけで、A = Π1/cos(π/n) という極限ですが、8.70 ぐらいだそう
です。
収束することを理屈で確認する目的で評価を試みました。
対数を取った logA = Σ log(1/cos(π/n)) を考えて、 cos(π/x)≧1-(π/x)2/ 2 より、
1/cos(π/x)≦2x2/(2x2-π2) なので、log(1/cos(π/x))≦ log(2x2/(2x2-π2)) ・・・(*)
ここで、(*)を、x=2から∞まで積分すると上界を与える・・・と思ったら(*)の右辺はx≦π
で定義されないので、
A = 2**Π(n=5以降) 1/cos(π/n)
としておいて、(*)を、x=4から∞まで積分して上界を与えてみると、
A ≦ 2**(42/(42-π2/2))4
右辺を数値計算させると、「12.36483... 」となり、「8.70」より大幅に大きいですが、(*)の評
価が指数の肩として反映されるのために増幅されたと考えられます。
at さんからのコメントです。(平成25年8月2日付け)
A = Π1/cos(π/n) が収束することを示すだけでしたら、次のようにやってもいいですね。
cos(π/k)≧1-(π/k)2/2=(k2-(π/)2)/k2 なので、k≧4のとき、
1/cos(π/k)≦k2/(k2-(π/)2)≦k2/(k2-32)
が成り立ちます。したがって、Πk=4〜n 1/cos(π/k)≦Πk=4〜n k2/(k2-32)
ここで、Πk=4〜n k2/(k2-32)=(Πk=4〜n k/(k-3))*(Πk=4〜n k/(k+3))
=(4/1)*(5/2)*(6/3)*…*((n-2)/(n-5))*((n-1)/(n-4))*(n/(n-3))
*(4/7)*(5/8)*(6/9)*…*((n-2)/(n+1))*((n-1)/(n+2))*(n/(n+3))
=(4*5*6*(n-2)*(n-1)*n)/(1*2*3*(n+1)*(n+2)*(n+3))<(4*5*6)/(1*2*3)=20
A(n)=Πk=3〜n 1/cos(π/k) とおくと、A(n)=(1/cos(π/3))*Πk=4〜n 1/cos(π/k)<2・20=40
よって、A(n)は単調増加であって上に有界なので、Πn=3〜∞ 1/cos(π/n) は収束。
以下、工事中