因数分解
高校で学ぶ因数分解の最高峰は次の公式だろう。
x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)
この公式は、式の値の計算や不等式の問題で活躍する。
今まで、この公式の証明としては、次のような計算をするものとばかり思っていた。
(証明)
x3+y3+z3−3xyz
=(x+y)3−3xy(x+y)+z3−3xyz
=(x+y)3+z3−3xy(x+y+z)
=(x+y+z){(x+y)2−(x+y)z+z2}−3xy(x+y+z)
=(x+y+z){(x+y)2−(x+y)z+z2−3xy}
=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx) (終)
このような解法に対して、次のような裏技があることを、当HPがいつもお世話になってい
るS(H)さんよりご教示いただいた。S(H)さんに感謝します。
(裏技)
3つの数 x、y、z を零点に持つ3次式は、 (T−x)(T−y)(T−z) とおける。
このとき、 (T−x)(T−y)(T−z)=T3−(x+y+z)T2+(xy+yz+zx)T−xyz において、
Tに x、y、z をそれぞれ代入して、
x3−(x+y+z)x2+(xy+yz+zx)x−xyz=0
y3−(x+y+z)y2+(xy+yz+zx)y−xyz=0
z3−(x+y+z)z2+(xy+yz+zx)z−xyz=0
3つの式を辺々加えると、
x3+y3+z3−(x+y+z)(x2+y2+z2)+(xy+yz+zx)(x+y+z)−3xyz=0
よって、
x3+y3+z3−3xyz
=(x+y+z)(x2+y2+z2)−(xy+yz+zx)(x+y+z)
=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)
(追記) 当HPがいつもお世話になっている GAI さんも同様な方法を推奨されている。
(平成22年3月5日付け)
x+y+z=a 、xy+yz+zx=b 、xyz=c とおくと、3つの数 x、y、z は、
3次方程式 T3−aT2+bT−c=0 の解である。
これから、x3−ax2+bx−c=0 、y3−ay2+by−c=0 、z3−az2+bz−c=0
これらの和をとって、x3+y3+z3−a(x2+y2+z2)+b(x+y+z)−3c=0
x3+y3+z3−a(x2+y2+z2−b)−3c=0
x3+y3+z3−3c=a(x2+y2+z2−b)
よって、 x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)
(コメント) この裏技だと、難しい因数分解の公式には見えないですね!
この裏技の手法を用いると、S(H)さんが平成21年7月16日付けで提供された公式
x3+y3+z3+w3−3(xyz+xyw+xzw+yzw)
=(x+y+z+w)(x2+y2+z2+w2−xy−xz−xw−yz−yw−zw)
を示すことも容易だろう。これは、読者のための練習問題としよう。
この話題に関連して、HN「よおすけ」さんが当HPの掲示板「出会いの泉」に情報を寄せら
れた。よおすけさんに感謝します。
この問題に関連した内容が、数学問題集「考える葦」の中の「高校1年の数学知識で解け
る数学問題集」の問題6に載っているとのこと。
全米数学オリンピック(1973年)
問4 次の連立方程式を解け。
x+y+z=3 、 x2+y2+z2=3 、 x3+y3+z3=3
(解) xy+yz+zx={(x+y+z)2−(x2+y2+z2)}/2=3
xyz={(x3+y3+z3)−(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)}/3=1
より、 3つの数 x、y、z は3次方程式 t3−3t2+3t−1=0 の解である。
よって、 (t−1)3=0 より、 t=1 すなわち、 x=y=z=1 である。 (終)
(コメント) 何か、易しかったですね...。
当HPがいつもお世話になっているHN「空舟」さんからのコメントです。
(平成25年4月25日付け)
最近、もう1つの裏の視点を知りましたので紹介します。
X3−1 、x・X2+y・X+z の終結式(→参考:「判別式と終結式」)を求めると、
x3+y3+z3−3xyz です。すなわち、X3−1 と x・X2+y・X+z が共通根を持つ条件が
x3+y3+z3−3xyz=0
です。X3−1 の根を a、b、c とすると、[実際には、 1、 (-1±)/2]
(xa2+ya+z)(xb2+yb+z)(xc2+yc+z)=x3+y3+z3−3xyz
です。 x・X2+y・X+z の根を p、q とすると、 [実際には、(-y±√(y2-4xz)/2x]
(p3−1)(q3−1) = (x3+y3+z3−3xyz)/x3 となる...はずです。
空舟さんからのコメントです。(平成25年4月27日付け)
なるほど、x3−1 と ax2+bx+c の終結式はシルベスター行列の方法によると
a,b,c,0,0
0,a,b,c,0
0,0,a,b,c
1 0,0,-1,0
0,1,0,0,-1
の行列式ですが、第1列に第4列を足し、第2列に第5列を足して
a,b,c
c,a,b
b,c,a
の行列式とも書けることを理解しました。すでに指摘した
X3−1 の根を a、b、c とすると、[実際には、 1、 (-1±)/2]
(xa2+ya+z)(xb2+yb+z)(xc2+yc+z)=x3+y3+z3−3xyz
と合わせれば、CirculantMatrixの性質を理解できました。
当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんが考察されました。
(平成25年4月27日付け)
x3+y3+z3−3xyz
=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)
=(x+y+z)((x+y+z)2−3xy−3yz−3zx)
=(1/2)(x+y+z)((x−y)2+(y−z)2+(z−x)2)
=(x+y+z)(x+ωy+ω2z)(x+ω2y+ωz)
(ただし、ω=(-1+i)/2 ※1の虚数立方根)
を使ってミタ!
問題 a3+b3=(a+b)3−3ab(a+b)を使って、x3+y3+z3−3xyz を因数分解せよ。
(解答は、このページの冒頭参照)
問題 x3+y3+z3 を基本対称式で表せ。
(解答は、「対称式の真実」を参照)
問題 x3+y3+z3−3xyz を x、y、z の1次式の積の形に表せ。
(解答) x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)
ここで、 x2+y2+z2−xy−yz−zx=x2−(y+z)x+y2−yz+z2=0 を解くと、
x=(y+z±(y−z)i)/2 より、1の虚数立方根をω=(-1+i)/2として、
x=(y+z+(y−z)i)/2=−(ω2y+ωz)
x=(y+z−(y−z)i)/2=−(ωy+ω2z)
以上から、 x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x+ωy+ω2z)(x+ω2y+ωz) (終)
問題 x+y+z=0 とするとき、x3+y3+z3−3xyz=0 を示せ。
(解答) x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx) より明らか。 (終)
問題 (a−b)3+(b−c)3+(c−a)3 を因数分解せよ。
(解答は、3(a−b)(b−c)(c−a) )
問題 a+b+c=3、a2+b2+c2=5、a3+b3+c3=7 のとき、a4+b4+c4、a5+b5+c5
の値を求めよ。
(解答は、「淡い期待」を参照)
問題 行列式
| x y z |
| z x y |
| y z x |
を求めよ。
(解答は、上記の空舟さんのコメント(4月27日付け)を参照)
問題 x、y、z を正の実数とするとき、x3+y3+z3−3xyz≧0 を示せ。
(解答) x3+y3+z3−3xyz=(1/2)(x+y+z)((x−y)2+(y−z)2+(z−x)2) より明ら
か。 (終)
問題 3辺の長さが x、y、z の三角形で、x3+y3+z3−3xyz=0 が成り立つとき、この三
角形はどんな三角形か?
(解答は、正三角形)
問題 3次方程式 x3+3px+q=0 の解を求めよ。
(解答は、「3次方程式の解2」、「方程式」やカルダノの公式、フォンタナ(タルタリア)の公式
を参照)
問題(2006年度 東京大学 文系 第3問) nを正の整数とする。実数x、y、zに対する方程式
xn+yn+zn=xyz ・・・(*) を考える。
(1) n=1のとき、(*)を満たす正の整数の組(x,y,z)で、x≦y≦zとなるものをすべて求めよ。
(2) n=3のとき、(*)を満たす正の整数の組(x,y,z)は存在しないことを示せ。
(解答) (1) (x,y,z)=(1,2,3) のみ
(2) 解が存在すると仮定する。x≦y≦z としても一般性は失われない。このとき、
x3+y3+z3=xyz≦z3 より、 x3+y3≦0
しかるに、x、yは正の整数なので、 x3+y3>0 これは矛盾である。
よって、(*)を満たす正の整数の組(x,y,z)は存在しない。 (終)
(コメント) 懐かしい問題ばかりですね!でも、最後の東大の問題は趣旨が違うような...
そんな雰囲気 f(^^;) )
(追記) 攻略法さんからの続報です。(平成25年4月28日付け)
問題 a+b+c=0 のとき、a3+b3+c3=−3(a+b)(b+c)(c+a) を示せ。
(解答) a3+b3+c3−3abc=0 から明らか。 (終)
問題 a+b+c=0 のとき、次の式の値を求めよ。
(1) (a3+b3+c3)/(abc)
(2) (a2+b2+c2)/(a3+b3+c3)+(2/3)(1/a+1/b+1/c)
(解答) (1) 3 (2) 0
問題 a、b、c、p、q、r を正の実数とするとき、次を示せ。
(1) p≠q のとき、(p+q+r)/3>(pqr)1/3 である。
(2) x を未知数とする方程式 x3−3ax2+3b2x−c3=0 が相異なる3つの正の実数解を
もつならば、a>b>c である。
(解答) (1) x、y、z を正の実数とするとき、x3+y3+z3−3xyz≧0 から明らか。
(2) 相異なる3つの正の実数解をα、β、γとすると、解と係数の関係から、
α+β+γ=3a、αβ+βγ+γα=3b2、αβγ=c3
このとき、(1)より、 (αβ+βγ+γα)/3>(α2β2γ2)1/3 なので、
b2>c2 から、b>c
また、 (α+β+γ){(α+β+γ)2−3(αβ+βγ+γα)}
=α3+β3+γ3−3αβγ>0 なので、
3a(9a2−9b2)>0 から、 a>b
以上から、a>b>c である。 (終)
攻略法さんからの続報です。(平成25年4月29日付け)
問題 x3+y3+3z2=u3+v3 の整数解を求めよ。
(解答) a3+b3+c3−3abc=(a+b+c)((a+b+c)2−3ab−3bc−3ca) において、
ab+bc+ca=0 になるようにすると、a3+b3+c3−3abc=(a+b+c)3
a+b≠0 の条件で、c=−ab/(a+b) となるので、代入して、
a3+b3+{−ab/(a+b)}3−3ab{−ab/(a+b)}={a+b−ab/(a+b)}3
両辺に (a+b)3 を掛けると、
a3(a+b)3+b3(a+b)3−(ab)3+3(ab)2(a+b)2=(a2+ab+b2)3
よって、x=a(a+b)、y=b(a+b)、z=ab(a+b)、u=a2+ab+b2、v=ab とすればよ
い。 (終)
類題 x2+y2=z2 の整数解を求めよ。
(解答) (a+b)2=(a−b)2+4ab より、a=m2、b=n2 とすると、
(m2+n2)2=(m2−n2)2+(2mn)2 (終)
(追記) よおすけさんからの出題です。(平成25年5月28日付け)
x3+y3+z3−3xyz の因数分解を使った問題があります・・・・。
u=log(x3+y3+z3−3xyz) のとき、ux+uy+uz=3/(x+y+z) と
なることを証明せよ。(出典:朝倉数学講座5 微分学 能代 清 著)
S(H)さんが考察されました。(平成25年5月29日付け)
左辺=(3y2 - 3xz)/(x3 + y3 - 3xyz + z3) + (3x2 - 3yz)/(x3 + y3 - 3xyz + z3)
+ (-3xy
+ 3z2)/(x3 + y3 - 3xyz + z3)
=(3y2 - 3xz + 3x2 - 3yz - 3xy + 3z2)/(x3 + y3 - 3xyz + z3)
=3(x2 + y2 + z2 - xy - yz - xz)/(x + y + z)(x2 + y2 + z2 - xy - yz - xz)
=3/(x + y + z) QED。
上記の計算では面白くなく興ざめと言う方を満足させる証明をお願いします。(→ 参考)
(追記) HN「nuio」さんからのご投稿です。(平成30年5月1日付け)
x3+y3+z3−3xyz の因数分解ですが、因数定理を用いた因数分解を行ったところ、簡
単に出来ましたので、書き込みさせて頂きます。
まずは、x について降べきの順に整理すると、 x3−3xyz+y3+z3 となります。因数を見
つける為には、最高次の係数が1なので定数項 y3+z3 の約数を探さなければなりません。
そこで、y3+z3 を因数分解します。 y3+z3=(y+z)(y2−yz+z2) ですね。この公式す
ら覚えてない人は、yに−zを代入すれば、y3+z3=0 になる事が分かるので、後は、整式
の割り算の筆算により、容易に因数分解できますね。
したがって、x=−(y+z) のとき、 x3−3xyz=x(x2−3yz)=−(y+z)(y2−yz+z2)
なので、因数定理により、 x3−3xyz+(y+z)(y2−yz+z2) は、x+y+z を因数に持つ
事が分かります。
あとは、 x3−3xyz+y3+z3 を、x+y+z で割ります。整式の割り算の筆算により、商は、
x2−(y+z)x+y2−yz+z2
であると分かります。したがって、
x3+y3+z3−3xyz=(x+y+z)(x2 + y2 + z2 - xy - yz - xz)
となり、因数分解完了です。このように、因数定理の力に頼れば、今まで丸暗記だった事も、
そんなに面倒ではないレベルの導出に収められる場合がありますね。
その他として、ω3−1 は因数定理により、ω−1 を因数に持つ事が分かり、後は整式の
割り算の筆算により、ω3−1=(ω−1)(ω2+ω+1) となり、ω3−1 の因数分解をド忘れ
しても、1の三乗根ωの性質をすぐに導けますね。
(コメント) 因数定理の有用性という趣旨は理解できましたが、x3+y3+z3−3xyz の因数
分解の方法としては、計算が少し大変ですね!
(追記) 「因数分解する(しない)」と題して、DD++さんからご投稿いただきました。
(令和3年9月27日付け)
高校数学の因数分解の問題で、以下の有名な問題があります。
ab(a-b) + bc(b-c) + ca(c-a) を因数分解せよ
通常、この問題は、かなり手間のかかる変形を頑張ることになります。しかし、一方で、数
学IIIの微分の知識を使うと、以下のような因数分解を一切しない解答が成立します。
(解) f(x) = (x-a)(x-b)(a-b) + (x-b)(x-c)(b-c) + (x-c)(x-a)(c-a) とおく。
f’(x) = {(x-a)+(x-b)}(a-b) + {(x-b)+(x-c)}(b-c) + {(x-c)+(x-a)}(c-a)
= (2x-a-b)(a-b) + (2x-b-c)(b-c) + (2x-c-a)(c-a)
f”(x) = 2(a-b) + 2(b-c) + 2(c-a) = 0
f”(x) = 0 ということは、f’(x) は x によらない定数であり、その値は、
f’((a+b)/2) = 0 + (a-c)(b-c) + (b-c)(c-a) = 0
f’(x) = 0 ということは、f(x) は x によらない定数であり、その値は、
f(a) = 0 + (a-b)(a-c)(b-c) + 0 = -(a-b)(b-c)(c-a)
したがって、 与式 = f(0) = -(a-b)(b-c)(c-a) (終)
さて、3 文字の対称式や交代式の有名な因数分解問題は他にも多数ありますが、同様の
方法は取れるでしょうか?
(コメント) 因数分解の方法として、私にとって初見でした。躊躇なく「裏技」に採用させてい
ただきました。
類題として、次の因数分解の問題はどうでしょうか?
問題 a2(b−c)+b2(c−a)+c2(a−b) を因数分解せよ。
数学 I レベルの問題ですが、通常は次のように解かれます。
a2(b−c)+b2(c−a)+c2(a−b)
=a2(b−c)−(b2−c2)a+b2c−bc2
=a2(b−c)−(b+c)(b−c)a+bc(b−c)
=(b−c)(a2−(b+c)a+bc)
=(b−c)(a−b)(a−c)
=−(a−b)(b−c)(c−a)
これをDD++さんの紹介された方法で解くと、次のように解かれるのでしょう。
(解) f(x)=(x−a)2(b−c)+(x−b)2(c−a)+(x−c)2(a−b) とおく。
f’(x)=2(x−a)(b−c)+2(x−b)(c−a)+2(x−c)(a−b)
f”(x)=−2a(b−c)−2b(c−a)−2c(a−b)=0
f”(x)=0 ということは、f’(x) は x によらない定数であり、その値は、
f’(a)=0+2 (a−b)(c−a)+2(a−c)(a−b)=0
f’(x)=0 ということは、f(x) は x によらない定数であり、その値は、
f(a)=0+(a−b)2(c−a)+(a−c)2(a−b)=(a−b)(c−a)(a−b+c−a)
=−(a−b)(b−c)(c−a)
したがって、 与式=f(0)=−(a−b)(b−c)(c−a) (終)
(コメント) DD++さんの問題を書き換えただけでしたね!後で気がつきました...f(^^;)
お口直しにもう1問挑戦してみました。
問題 a3(b−c)+b3(c−a)+c3(a−b) を因数分解せよ。
(解) f(x)=(x−a)3(b−c)+(x−b)3(c−a)+(x−c)3(a−b) とおく。
f’(x)=3(x−a)2(b−c)+3(x−b)2(c−a)+3(x−c)2(a−b)
f”(x)=6(x−a)(b−c)+6(x−b)(c−a)+6(x−c)(a−b)
f”’(x)=−6a(b−c)−6b(c−a)−6c(a−b)=0
f”’(x)=0 ということは、f”(x) は x によらない定数であり、その値は、
f”(a)=0+6(a−b)(c−a)+6(a−c)(a−b)=0
f”(x)=0 ということは、f’(x) は x によらない定数であり、その値は、
f’(a)=0+3(a−b)2(c−a)+3(a−c)2(a−b)=−3(a−b)(b−c)(c−a)
f’(x)=−3(a−b)(b−c)(c−a) より、
f(x)=−3(a−b)(b−c)(c−a)x+A (Aは定数)
とおける。このとき、x=a を代入して、
0+(a−b)3(c−a)+(a−c)3(a−b)=−3(a−b)(b−c)(c−a)a+A
よって、 A=(a−b)3(c−a)+(a−c)3(a−b)+3(a−b)(b−c)(c−a)a
=(a−b)(c−a)((a−b)2−(c−a)2+3a(b−c))
=(a−b)(c−a)(a2−2ab+b2−c2+2ca−a2+3a(b−c))
=(a−b)(c−a)((b−c)(b+c)+a(b−c))
=(a−b)(b−c)(c−a)(a+b+c)
すなわち、
(x−a)3(b−c)+(x−b)3(c−a)+(x−c)3(a−b)
=−3(a−b)(b−c)(c−a)x+(a−b)(b−c)(c−a)(a+b+c)
x=0 を代入して、
−a3(b−c)−b3(c−a)−c3(a−b)=(a−b)(b−c)(c−a)(a+b+c)
すなわち、 a3(b−c)+b3(c−a)+c3(a−b)=−(a−b)(b−c)(c−a)(a+b+c) と
因数分解できる。 (終)
(コメント) これは普通に、
a3(b−c)+b3(c−a)+c3(a−b)
=a3(b−c)−(b3−c3)a+bc(b2−c2)
=(b−c)(a3−(b2+bc+c2)a+bc(b+c))
=(b−c)((c−a)b2+c(c−a)b−(c2−a2)a)
=(b−c)(c−a)(b2+cb−(c+a)a)
=(b−c)(c−a)((b−a)c+b2−a2)
=(b−c)(c−a)(b−a)(c+b+a)
=−(a−b)(b−c)(c−a)(a+b+c)
と計算した方が速いかも...。
DD++ さんからのコメントです。(令和3年9月29日付け)
a2(b−c)+b2(c−a)+c2(a−b) の形も、初形が違う以上別問題として扱われるべき
だと思います。
そして、(x−a)2(b−c)+(x−b)2(c−a)+(x−c)2(a−b) にするのも、私もすぐに思
いついたのですが、実は、f(a) を計算するときに、元の問題よりはるかに簡単とはいえ、「因
数分解している」のですよね。なので、ちょっとだけ美しさに欠けるかなと...。
f’(何か) では、1 つの項が 0 になり、残り 2 つが ± で打ち消しあって 0 になり、f(何か)
では、2 つの項が 0 になり、残った項がそのまま答えという形はないものでしょうか?
(コメント) なるほど!確かに、
(a−b)2(c−a)+(a−c)2(a−b)=(a−b)(c−a)(a−b+c−a)=−(a−b)(b−c)(c−a)
では因数分解してましたね。
DD++さんの示された条件を満たすためには、問題の形が相当限定されるような...。
りらひいさんからのコメントです。(令和3年9月30日付け)
こういうやり方はどうでしょう?
a^2(b-c) + b^2(c-a) + c^2(a-b) の因数分解
(解) f(x,y) = (x-a)(y-a)(b-c) + (x-b)(y-b)(c-a) + (x-c)(y-c)(a-b) とおく。
∂f(x,y)/(∂x) = (y-a)(b-c) + (y-b)(c-a) + (y-c)(a-b)
∂f(x,y)/(∂y) = (x-a)(b-c) + (x-b)(c-a) + (x-c)(a-b)
∂^2f(x,y)/(∂x)^2 = 0 …@
∂^2f(x,y)/(∂y)^2 = 0 …A
∂^2f(x,y)/(∂x∂y) = (b-c) + (c-a) + (a-b) = 0 …B
@Bより、∂f(x,y)/(∂x) は、x, y によらない定数であり、その値は、
∂f(x,y)/(∂x)|[(x,y)=(0,a)] = 0 + (a-b)(c-a) + (a-c)(a-b) = 0
ABより、∂f(x,y)/(∂y) は、x, y によらない定数であり、その値は、
∂f(x,y)/(∂y)|[(x,y)=(a,0)] = 0 + (a-b)(c-a) + (a-c)(a-b) = 0
よって、f(x,y) は、x, y によらない定数であり、その値は、
f(a,b) = 0 + 0 + (a-c)(b-c)(a-b) = -(a-b)(b-c)(c-a)
したがって、 与式 = f(0,0) = -(a-b)(b-c)(c-a) (終)
また、次のようなのはどうでしょう?(実は先にこちらを思い付きました。)
a^3(b-c) + b^3(c-a) + c^3(a-b) の因数分解
(解) f(x,y) = (x-a)(y-a)(x+y+a)(b-c) + (x-b)(y-b)(x+y+b)(c-a) + (x-c)(y-c)(x+y+c)(a-b) と
おく。
∂f(x,y)/(∂x)
= {(x-a)+(x+y+a)}(y-a)(b-c) + {(x-b)+(x+y+b)}(y-b)(c-a) + {(x-c)+(x+y+c)}(y-c)(a-b)
= (2x+y)(y-a)(b-c) + (2x+y)(y-b)(c-a) + (2x+y)(y-c)(a-b)
∂f(x,y)/(∂y)
= {(y-a)+(x+y+a)}(x-a)(b-c) + {(y-b)+(x+y+b)}(x-b)(c-a) + {(y-c)+(x+y+c)}(x-c)(a-b)
= (x+2y)(x-a)(b-c) + (x+2y)(x-b)(c-a) + (x+2y)(x-c)(a-b)
∂^2f(x,y)/(∂x)^2 = 2(y-a)(b-c) + 2(y-b)(c-a) + 2(y-c)(a-b)
∂^2f(x,y)/(∂y)^2 = 2(x-a)(b-c) + 2(x-b)(c-a) + 2(x-c)(a-b)
∂^2f(x,y)/(∂x∂y)
= {(2x+y)+(y-a)}(b-c) + {(2x+y)+(y-b)}(c-a) + {(2x+y)+(y-c)}(a-b)
= (2x+2y-a)(b-c) + (2x+2y-b)(c-a) + (2x+2y-c)(a-b)
∂^3f(x,y)/(∂x)^3 = 0 …@
∂^3f(x,y)/(∂y)^3 = 0 …A
∂^3f(x,y)/((∂x)^2∂y) =2(b-c) + 2(c-a) + 2(a-b) = 0 …B
∂^3f(x,y)/(∂x(∂y)^2) =2(b-c) + 2(c-a) + 2(a-b) = 0 …C
[A] @Bより、∂^2f(x,y)/(∂x)^2 は、x, y によらない定数であり、その値は、
∂^2f(x,y)/(∂x)^2|[(x,y)=(0,a)] = 0 + 2(a-b)(c-a) + 2(a-c)(a-b) = 0
[B] ACより、∂^2f(x,y)/(∂y)^2 は、x, y によらない定数であり、その値は、
∂^2f(x,y)/(∂y)^2|[(x,y)=(a,0)] = 0 + 2(a-b)(c-a) + 2(a-c)(a-b) = 0
[C] BCより、∂^2f(x,y)/(∂x∂y) は、x, y によらない定数であり、その値は、
∂^2f(x,y)/(∂x∂y)|[(x,y)=(0,a/2)] = 0 + (a-b)(c-a) + (a-c)(a-b) = 0
[A][C]より、∂f(x,y)/(∂x) は、x, y によらない定数であり、その値は、
∂f(x,y)/(∂x)|[(x,y)=(0,0)] = 0
[B][C]より、∂f(x,y)/(∂y) は、x, y によらない定数であり、その値は、
∂f(x,y)/(∂x)|[(x,y)=(0,0)] = 0
よって、f(x,y) は、x, y によらない定数であり、その値は、
f(a,b) = 0 + 0 + (a-c)(b-c)(a+b+c)(a-b) = -(a-b)(b-c)(c-a)(a+b+c)
したがって、 与式 = f(0,0) = -(a-b)(b-c)(c-a)(a+b+c) (終)
DD++さんからのコメントです。(令和3年9月30日付け)
なるほど二変数関数!これはお見事。
りらひいさんからのコメントです。(令和3年10月1日付け)
偏微分は高校の範囲外ですよね?因数分解は回避するとして、展開を許容することにす
れば、f(x,y)を展開して定数項以外消えることを確認する感じでもよいと思います。まあ、そ
れはそれで非常に大変なんですが...。
(コメント) りらひいさん、素晴らしいです!
関数f(x,y)において、fx(x,y)=fy(x,y)≡0 ならば、f(x,y)は定数関数
が巧妙に使われていて感動しました。
DD++さんからのコメントです。(令和3年10月1日付け)
因数分解は回避するとして、展開を許容することにすれば、f(x,y)を展開して定数項以外
消えることを確認する感じでもよいと思います。
あるいは、例えば、私が最初に挙げた例で言うなら、
f(x) = (x-a)(x-b)(a-b) + (x-b)(x-c)(b-c) + (x-c)(x-a)(c-a) で、いきなり
f(a) = -(a-b)(b-c)(c-a) 、f(b) = -(a-b)(b-c)(c-a) 、f(c) = -(a-b)(b-c)(c-a)
を計算して、 f(x) = -(a-b)(b-c)(c-a) が恒等式である(方程式ならば、2次の等式が異なる
3つの値で成り立つことはあり得ない)とする手段もあります。
二変数だとどこまで確認すれば恒等式と言えるかちょっと考えないといけませんが。
(コメント) なるほど、
g(x) = (x-a)(x-b)(a-b) + (x-b)(x-c)(b-c) + (x-c)(x-a)(c-a) + (a-b)(b-c)(c-a)
において、2次式 g(x) が、g(a) = g(b) = g(c) = 0 と異なる3つの値 a、b、c について
言えれば、g(x)≡0 となるということを昔聞いた覚えがあります。
以下、工事中!