・淡い期待 S.H氏
当HPの掲示板「出会いの泉」に、平成19年1月26日付けで、混沌さんが面白い問題を
紹介されている。
a+b+c=3 、a2+b2+c2=5 、a3+b3+c3=7 のとき、
a4+b4+c4 、a5+b5+c5 の値を求めよ。(改題)
この問題は、米国ミネソタ大学の Alexander Yong 先生が作られた課題である。高校
生でも十分解きうる受験問題集の標準レベルくらいだろうか?
a2+b2+c2=(a+b+c)2−2(ab+bc+ca) から、 ab+bc+ca=2
a3+b3+c3=(a+b+c)(a2+b2+c2−ab−bc−ca)+3abc から、 abc=−2/3
よって、 a4+b4+c4=(a2+b2+c2)2−2(a2b2+b2c2+c2a2)
=(a2+b2+c2)2−2{(ab+bc+ca)2−2abc(a+b+c)}
=25−2(4+4)
=9
(追記) 平成19年7月19日付け
上記の計算は標準的ではあるが上手い解答とは言えない...予感。
次のようなエレガントな解法が存在するようだ。
上記の計算から、 a+b+c=3 、ab+bc+ca=2 、abc=−2/3
よって、a 、 b 、 c を解に持つ3次方程式は、
x3−3x2+2x+2/3=0
このとき、 x3=3x2−2x−2/3 となる。
ここで、 Tn=an+bn+cn とおくと、上式から
T4=3T3−2T2−(2/3)T1=3×7−2×5−(2/3)×3=9
となる。 (→ 参考 : 対称式の真実)
(コメント) この解法を用いると機械的な計算で順次
Tn が求められる。
たとえば、
T5=3T4−2T3−(2/3)T2=3×9−2×7−(2/3)×5=29/3
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以下は、斉次対称式の性質を用いた解法である。上記のエレガントな解法に比べてその
難解さに辟易されるかもしれない。
いま、 F( a , b , c )=(a+b+c)5−(a5+b5+c5) とおくと、F( a , b , c )は5次
の斉次対称式である。明らかに、F( a , b , c )は、(a+b)(b+c)(c+a) で割り切れる。
斉次対称式の約数はまた斉次対称式なので、その商は、
A(a2+b2+c2)+B(ab+bc+ca)
と書ける。 すなわち、
F( a , b , c )=(a+b)(b+c)(c+a){A(a2+b2+c2)+B(ab+bc+ca)}
ここで、 C=0 とおくと、
左辺=(a+b)5−(a5+b5)
=5a4b+10a3b2+10a2b3+5ab4
=5ab(a3+2a2b+2ab2+b3)
=5ab{(a3+2a2b+ab2)+(ab2+b3)}
=5ab{a(a+b)2+(a+b)b2}
=5ab(a+b)(a2+ab+b2)
右辺=ab(a+b){A(a2+b2)+Bab}
両辺の係数を比較して、 A=B=5 なので、
F( a , b , c )=5(a+b)(b+c)(c+a)(a2+b2+c2+ab+bc+ca)
ここで、(a+b)(b+c)(c+a)=(3−a)(3−b)(3−c)
=27−9(a+b+c)+3(ab+bc+ca)−abc
=27−27+6+2/3
=20/3
したがって、 243−(a5+b5+c5)=(100/3)(5+2) より、
a5+b5+c5=243−700/3=29/3
(コメント) an+bn+cn は、次数 n の値が、1、2、3、4 と増えるに応じて、その値は、
3、5、7、9 と増加した。n=5 のとき、もしや、その値は11ではと淡い期待を
抱かせたが、その期待は見事に裏切られた。
それにしても、29/3 だなんて!あと少しで11だったのに...残念!