対称式の真実                              戻る

 私が高校に入学して最初に洗礼を受けたのは、「対称式」だった。対称式が関わる問題
は、数学Tの「式と計算」の天王山という印象だった。その難関を通り抜けた者のみに、そ
の後の数学を享受する権利が保証されるという風に感じられた。

 対称式とは、 x+y 、xy 、 x2+y2 、x3y+xy3 、・・・ などのように、x と y を交換しても
同じ式になるものをいう。

 実際に、例えば、 x3y+xy3 で、x と y を交換すると、 y3x+yx3 であるが、これは、元
の式 x3y+xy3 に等しい。 よって、 x3y+xy3 は対称式である。

 対称式のうち、 x+y 、xy を、特に、基本対称式という。

 一般的には、多項式 P(x1,x2,・・・,xn) に対して、任意の n 文字の置換 σ に対して、

        P(xσ(1),xσ(2),・・・,xσ(n))=P(x1,x2,・・・,xn

が成り立つとき、多項式 P(x1,x2,・・・,xn) は対称式であるという。

 また、基本対称式は、 1 、s2 、 ・・・ 、s で表される。

  1=x1+x2+・・・+xn  ( ← x1,x2,・・・,xn の全ての和)

  2=x12+x13+・・・+xn-1n  ( ← x1,x2,・・・,xn の相異なる2項の積の和)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  =x12・・・xn  ( ← x1,x2,・・・,xn の全ての積)


 対称式においては、次の定理が基本的であり、重要である。

定 理  対称式は、基本対称式の多項式として表せ、その表し方は一意的である。


 この定理を意識した次の問題は、対称式の問題では代表的なものと言えるだろう。

問 題  x+y=1 、xy=1 のとき、 x2+y2 、x3+y3 、x4+y4 、x5+y5 の値を求めよ。

(解) x2+y2=(x+y)2−2xy=1−2=−1

 x3+y3=(x+y)3−3xy(x+y)=1−3=−2

 x4+y4=(x2+y22−2x22=1−2=−1

 x5+y5=(x2+y2)(x3+y3)−x22(x+y)=2−1=1  (終)


(追記) 令和2年5月25日付け

 読者のために、同次対称式を基本対称式で表す問題を残しておこう。

練習問題

 x+y+z=a、xy+yz+zx=b、xyz=c とおく。次式を、a、b、cの多項式で表せ。

(1) x2+y2+z2

(2) x3+y3+z3

(3) x4+y4+z4

(解)(1) x2+y2+z2=(x+y+z)2−2(xy+yz+zx)=a2−2b

(2) x3+y3+z3
  =(x+y+z)(x2+y2+z2−(xy+yz+zx))+3xyz=a(a2−3b)+3c=a3−3ab+3c

(3) x4+y4+z4
  =(x2+y2+z22−2(x22+y22+z22

  =(x2+y2+z22−2((xy+yz+zx)2−2xyz(x+y+z))

  =(a2−2b)2−2(b2−2ca)=a4−4a2b+4ca+2b2  (終)


(追記) 平成19年6月24日付け

 上記では、それぞれを求めるための式変形に沿って計算をしたが、これに対して統一的な
式変形があることを最近知ることが出来た。

 =x+y とおくと、明らかに、

  n+1=T1・T−xy・Tn−1

が成り立つ。


 この式変形を用いれば、機械的な計算で順次求められる。問題の都度、式変形を考える
ことから解放されてスッキリした気分になれますネ。

2+y2=T2=T11−xyT0=(x+y)(x+y)−xy(x0+y0)=1・1−1・2=−1

3+y3=T3=T12−xyT1=(x+y)(x2+y2)−xy(x+y)=1・(−1)−1・1=−2

4+y4=T4=T13−xyT2=(x+y)(x3+y3)−xy(x2+y2)=1・(−2)−1・(−1)=−1

5+y5=T5=T14−xyT3=(x+y)(x4+y4)−xy(x3+y3)=1・(−1)−1・(−2)=1

(参考文献:西元教善 著 現行の教科書に対して参考書・問題集等で補充しておきたい内
 容(数研通信 No.58)(数研出版))

 上記の解で次のように考える人もいるだろう。

  x+y=1 、xy=1 より、 x と y は、2次方程式 t2−t+1=0 の解である。

 よって、 t3+1=(t+1)(t2−t+1)=0 より、 t3=−1 である。

 このとき、 x3=−1 、y3=−1 から、 明らかに、 x3+y3=−2

 また、 x4+y4=−(x+y)=−1 、x5+y5=−(x2+y2)=1


(追記) 平成21年7月8日付け

 上記の解で次のように考える人もいるだろう。

 x+y=1 、xy=1 より、 x と y は、2次方程式 t2−t+1=0 の解である。

 そこで、 T=x+y とおくと、 t2=t−1 から、 tn+2=tn+1−t であるので、

 n+2=Tn+1−T (n=0、1、2、・・・)

が成り立つ。よって、

 T0=x0+y0=2 、 T1=x+y=1 、 T2=T1−T0=−1

 T3=T2−T1=−2 、 T4=T3−T2=−1 、 T5=T4−T3=1


(コメント) この解法の方が、「 Tn+1=T1・T−xy・Tn−1 」という非常に人工的な漸化
      式よりも自然でしたね!ただ、対称式ということを全く意識していない解法なので、
      このページの内容に相応しいかどうか...少し不安。

 この漸化式を用いると、「tetsuya」さんが、平成21年7月9日付けで当HPの掲示板「出会
いの泉」に書き込まれた問題

○ x2+x−1=0 の2解 α、β に対し、α+β がすべての自然数 n で整数値となる
  ことを示せ。

○ x+y は、x+y と xy の多項式で表されることを数学的帰納法で示せ。


 も容易に解かれることだろう。

 実際に、前半は、 T=α+β において、 T1=α+β=−1 で整数

 また、αβ=−1 より、 T2=α2+β2=(α+β)2−2αβ=3 で整数

  ここで、 x2=−x+1 から、 xn+2=−xn+1+x であるので、

 漸化式 Tn+2=−Tn+1+T (n=1、2、・・・) が成り立つ。

  したがって、任意の k (k≧1)に対して、T 、Tk+1 が整数と仮定すると、Tk+2 も整数。

 よって、全ての自然数 n に対して、 T=α+β は整数となる。

 また、後半も同様に示される。

 T=x+y において、 T1=x+y より、x+y 、xy の多項式で表される。

また、 T2=x2+y2=(x+y)2−2xy より、x+y 、xy の多項式で表される。

 このとき、 2xy=T12−T2 なので、x と y は、2次方程式

  t2−T1・t+(T12−T2)/2=0

の解である。よって、次の漸化式が成り立つ。

 Tn+2=T1・Tn+1−T・(T12−T2)/2 (n=1、2、・・・)

 したがって、任意の k (k≧1)に対して、T 、Tk+1 が、x+y 、xy の多項式で表されると
仮定すると、Tk+2 も x+y 、xy の多項式で表される。

 よって、全ての自然数 n に対して、 T=x+y は、x+y 、xy の多項式で表される。

 同様の趣旨で、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんが、次のような問題を提起さ
れている。(平成21年8月7日付け)

○ x+1/x が整数ならば、x+1/x も整数であることを示せ。

○ x+1/x が偶数ならば、x+1/x も偶数であることを示せ。


 実際に、前半は、 T=x+1/x において、 T1=x+1/x は整数

また、 T2=x2+1/x2=(x+1/x)2−2 で整数となる。

 このとき、x、1/x は、2次方程式 t2−T1・t+1=0 の解である。

よって、漸化式 Tn+2=T1・Tn+1−T (n=1、2、・・・) が成り立つ。

 したがって、任意の k (k≧1)に対して、T 、Tk+1 が整数と仮定すると、Tk+2 も整数。

 よって、全ての自然数 n に対して、 T=x+1/x は整数となる。

 また、後半も同様に示される。

 T=x+1/x において、 T1=x+1/x は偶数で、

 T2=x2+1/x2=(x+1/x)2−2 も偶数となる。

 このとき、x、1/x は、2次方程式 t2−T1・t+1=0 の解である。

よって、漸化式 Tn+2=T1・Tn+1−T (n=1、2、・・・) が成り立つ。

 したがって、任意の k (k≧1)に対して、T 、Tk+1 が、偶数と仮定すると、Tk+2 も偶数。

 よって、全ての自然数 n に対して、 T=x+1/x は偶数となる。


 また、上記のような解法を用いると、

  x+y+z=3 、 x2+y2+z2=5 、 x3+y3+z3=7 のとき、

 x4+y4+z4 、 x5+y5+z5 の値を求めよ。


などという問題も即答だろう!

 実際に、xy+yz+zx={(x+y+z)2−( x2+y2+z2)}=(9−5)/2=2

 xyz={(x3+y3+z3)−(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)}/3

   ={7−3・(5−2)}/3=−2/3

から、 x 、y 、z は、3次方程式 t3−3t2+2t+2/3=0 の解となる。

 そこで、 T=x+y+z とおくと、漸化式

 n+3=3Tn+2−2Tn+1−(2/3)T (n=0、1、2、・・・)

が成り立つ。このとき、

 T0=x0+y0+z0=3 、 T1=x+y+z=3 、 T2=x2+y2+z2=5

 T3=3T2−2T1−(2/3)T0=15−6−2=7

 T4=3T3−2T2−(2/3)T1=21−10−2=9

 T5=3T4−2T3−(2/3)T2=27−14−10/3=29/3

(コメント) この解法から、Excel さんにお願いすれば、 x+y+z の値を求めるのも
      自由自在...と思いきや、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんのご指摘
      にあるように、そうでもないようですね!2/3 という分数が悪さをするのかな?
      (→参考:「淡い期待」)


 この問題の解法からも分かるように、見通しよく式計算をする能力をみるとか、いろいろ
な知識を動員したりできる素地があるなど、この手の問題は、入試作問者にとってはドル
箱の頻出分野といっても過言ではないだろう。

 このような問題が、高校入試を終えて「ホッ!」としている高校1年の5月頃降りかかるわ
けだから、安穏としている身にとっては、とても辛い時期だった。しかし、ある意味では、こ
れが高校数学かと、中学数学との決別を果たすには十分すぎる試練でもあった。

 当HPの掲示板「出会いの泉」で「混沌」さんが次の書籍を紹介された。
                                     (平成19年1月11日付け)

  硲 文夫 著  「代数学」 数と式の現代的理論 (森北出版)

 生憎この本を現在購入することは叶わず所有する図書館等で閲覧するしかない。本には、

  あたかも珠算の達人が四則演算をそらでこなすように、複雑な対称式の計算を
 暗算で行うことができるようになるであろう。


とあり、何か引きつけられるものがある。対称式の計算には、「ヤング図形」というものが
有効らしく、非常に興味がわく内容だ。第7章の対称式までは、お菓子をほおばりながら、
一気に読み進むことができた。

 このページでは、上記の本を読みこなしながら私の勉強がてら、高校時代に洗礼を受けた
対称式について、その真実の姿はどうであるか、対称式の有り様をまとめてみたいと思う。
この機会を与えていただいたHN「混沌」さんに感謝したい。

 上記の問題について、高校生向けに解答すれば上記の通りであるが、次のような解答も
あり得る。

問 題  x+y=1 、xy=1 のとき、 x2+y2 、x3+y3 、x4+y4 、x5+y5 の値を求めよ。

(解) t1=x+y 、t2=x2+y2 、t3=x3+y3 、t4=x4+y4 、t5=x5+y5 とおく。

 このとき、 P(z)=(z−x)(z−y)=z2−(x+y)z+xy=z2−z+1 とおくと、

 P’(z)/P(z)=1/(z−x)+1/(z−y)

 ここで、

 1/(z−x)=(1/z)(1+(x/z)+(x/z)2+(x/z)3+(x/z)4+(x/z)5+(x/z)6+・・・)

 1/(z−y)=(1/z)(1+(y/z)+(y/z)2+(y/z)3+(y/z)4+(y/z)5+(y/z)6+・・・)

なので、P’(z)/P(z)=2/z+t1/z2+t2/z3+t3/z4+t4/z5+t5/z6+・・・

よって、P’(z)=P(z)(2/z+t1/z2+t2/z3+t3/z4+t4/z5+t5/z6+・・・) より、

 2z−1

=(z2−z+1)(2/z+t1/z2+t2/z3+t3/z4+t4/z5+t5/z6+・・・)

=2z+t1+t2/z+t3/z2+t4/z3+t5/z4+・・・

 −2−t1/z−t2/z2−t3/z3−t4/z4−t5/z5+・・・

 +2/z+t1/z2+t2/z3+t3/z4+t4/z5+t5/z6+・・・

=2z+(t1−2)+(t2−t1+2)/z+(t3−t2+t1)/z2

  +(t4−t3+t2)/z3+(t5−t4+t3)/z4+・・・

 両辺の係数を比較して、

1−2=−1

2−t1+2=0

3−t2+t1=0

4−t3+t2=0

5−t4+t3=0

 ・・・・・・・・・

 これらより、 t1=1 、t2=−1 、t3=−2 、t4=−1 、t5=1  (終)


(コメント) ある意図がない限り、このような解答をする方はまずいないでしょうネ?

 対称式で、 x・・・z (a≧b≧・・・≧c≧0) の形の単項式を含むものを、記号で

  (ab・・・c)

と表す。

(補足) 「x・・・z (a≧b≧・・・≧c≧0)の形の単項式を含む」とは、

  a≧b≧・・・≧c≧0の条件を満たすa、b、・・・、cは固定され、x、y、・・・、zはすべての
 順列をつくす


という意味です。

例 x+y は、(10)  、xy は、(11)  、 x2+y2 は、(20)  、x3y+xy3 は、(31)

 (11)などは、(12)とも表される。

 (10)は、(1)、(20)は、(2) と通常表され、「0」は省いてもよい。

 この記号を使うと、n 個の文字 x1,x2,・・・,xn の基本対称式は、

  (1) 、(12) 、(13) 、・・・、(1

と簡単に表される。

 さて、 (ab・・・c) において、 a+b+・・・+c=n であるとき、 (ab・・・c) は、自然数

n の非増加な組み分けの方法を示している。

例 自然数 4 の非増加な組み分けの方法を全て列挙してみよう。

  4=3+1=2+2=2+1+1=1+1+1+1

 自然数 4 を、○が4個と考えれば、上記の分け方は次のような図に相当する。

「|」を区切り線として、

        4 →  ○○○○

     3+1 →  ○○○|○

     2+2 →  ○○|○○

   2+1+1 →  ○○|○|○

1+1+1+1 →  ○|○|○|○

 ヤング図形とは、このような図を正方形を用いて縦横隙間なく並べて得られる図式のこと
である。

 したがって、上記の自然数 4 の非増加な組み分けの方法をヤング図形を用いると下図
のように表される。

(4) (31) (22) (211) (1111)

 ここで、面白い性質がある。上記のヤング図形の正方形のマス目に、1、2、3、4 と数字
を書き込むことを考える。ただし、左から右へ、上から下へ数字が増加するように書き込む
ものとする。

 このとき、 (4)のタイプの書き込み方法は、通り
        (31)のタイプの書き込み方法は、通り
        (22)のタイプの書き込み方法は、通り
        (211)のタイプの書き込み方法は、通り
        (1111)のタイプの書き込み方法は、通り

なので、 22222=1+9+4+9+1=24 となり、 24=4! という

ことから、 222224! が成り立つ。( ← これは、スゴイ!)


 さて、対称式 x3y+xy3 は、

 x3y+xy3=xy(x2+y2)=xy((x+y)2−2xy)=xy(x+y)2−2(xy)2

という式変形から、基本対称式 s1=x+y 、s2=xy を用いて、

 x3y+xy3=s122−2s22

と表される。このように、対称式を基本対称式の多項式で表す方法がヤング図形とどのよ
うな関連があるのかを次に考えたい。

 2変数の場合の基本対称式のヤング図形は、

(1) (12

 試しに、これらの基本対称式同士を掛けてみよう。

    (12)×(1)=xy×(x+y)=x2y+xy2=(21)

このヤング図形は、

 

で、これは、(12)の図形の右上に(1)の図形を貼り合わせたものに等しい。

 (1)×(12)=(x+y)×xy=x2y+xy2=(21)

なので、同じヤング図形となるはずであるが、これは、(1)の図形の右から(12)の図形が
小正方形に分割され、スライドしているものと考えられる。

 2変数だとあまり詳細な挙動が見えてこないので、今度は3変数の場合を考えることにし
よう。

基本対称式のヤング図形は、

(1) (12 (13

 試しに、これらの基本対称式同士を掛けてみよう。

 (12)×(1)

=(xy+yz+zx)×(x+y+z)

=x2y+xy2+xyz+xyz+y2z+yz2+zx2+xyz+z2

=x2y+xy2+y2z+yz2+zx2+z2x+3xyz

=(21)+3×(13

このヤング図形は、

   +3×

 この計算結果は、どのように理解すればいいのだろうか?

 (12)の図形の右上に(1)の図形を貼り合わせたものと、(12)の図形の下に(1)の図形
を貼り合わせたものと理解するのが妥当なところだろう。

 問題は、その係数である。実は、

 貼り合わせる正方形が n 個で、その結果できる同じ幅の図形が縦方向に正方形
m 個分からなるとき、その係数は、 である


ことが知られている。

 試しに、上記のヤング図形の第1項の係数は、 11=1 である。(← 合っている!)

第2項の係数は、 31=3 である。(← 合っている!)

 そうすると、 (1)×(12) のヤング図形も上記と同じになるはずで、次のように理解する
のが妥当なところだろう。

 (1)の図形の右から(12)の図形が小正方形に分割され、スライドしたものと、(1)の図形
の下に(12)の図形を貼り合わせたものを考え、その係数は、前者は、11×11=1 で、
後者は、32=3 である。

 このように考えると、

 (12)×(1)

=(xy+yz+zx)×(x+y+z)

=x2y+xy2+xyz+xyz+y2z+yz2+zx2+xyz+z2

=x2y+xy2+y2z+yz2+zx2+z2x+3xyz

=(21)+3×(13

のような煩雑そうな計算をしなくても、一気に、 (12)×(1)=(21)+3×(13) と書けそ
うである。

 このことから上記で小正方形の集まりをヤング図形と呼んだが、(12)、(1)、(21)、・・・
などもヤング図形と呼んでいいそうだ。

 ところで、 (12)×(1)=(21)+3×(13) のような書き方には利点がある。それは、変
数の数によらないことだ。だから、ヤング図形で1度だけ(!)計算しておけば、後は、その
結果を用いて変数が何個あろうとも計算がもう終わっているということなのだ。もちろん(21)
等の意味は変数の個数によって変わってくるのだが...。

 変数が2個のとき (13)=0 と考えれば、(12)×(1)=(21) という式にも合点がいく。

 読者のために、練習問題を一つあげておこう。

問 題  次のヤング図形の積 (3212)×(12) を計算せよ。

(解) 計算すると、

 (4311)、(4221)、(4213)、(3221)、(323)、(323)、(3222)、(3214) の各項

に分解される。このとき、

 (4311)の係数は、 11×11=1

 (4221)の係数は、 11×21=2

 (4213)の係数は、 11×31=3

 (3221)の係数は、 21×11=2

 (323)の係数は、 21×31=6

 (323)の係数は、 32=3

 (3222)の係数は、 21×21=4

 (3214)の係数は、 42=6

であるので、

 (3212)×(12

=(4311)+2(4221)+3(4213)+2(3221)+6(323
                           +3(323)+4(3222)+6(3214)  (終)

 計算にちょっと一抹の不安を覚えるので、4つの変数の場合について実際に確認してみ
よう。

(x32zw+x32yw+x32yz+y32zw+y32wx+y32xz+z32yw
  +z32wx+z32xy+w32yz+w32xz+w32xy)(xy+xz+xw+yz+yw+zw)

= (x43zw+x422w+x422z+y43zw+y42wx2+y422
    +z332w+z33wx2+z3222+w332z+w332z+w3222
 + (x422w+x43yw+x42yz2+y332w+y33wx2+y3222
    +z43yw+z42wx2+z422y+w33yz2+w3222+w332y)
 + (x42zw2+x42yw2+x43yz+y33zw2+y3222+y332
    +z33yw2+z3222+z332y+w43yz+w422z+w422y)
 + (x332w+x332w+x3222+y422w+y43wx+y42xz2
    +z422w+z43wx+z42xy2+w3222+w33xz2+w33xy2
 + (x33zw2+x3222+x332z+y42zw2+y422x+y43xz
    +z3222+z332x+z33xy2+w422z+w43xz+w42xy2
 + (x3222+x33yw2+x33yz2+y3222+y332x+y33xz2
    +z42yw2+z422x+z43xy+w42yz2+w42xz2+w43xy)

= (x43zw+y43zw+x43yw+z43yw+x43yz+w43yz+y43wx
    +z43wx+y43xz+w43xz+z43xy+w43xy)
 +( x422w+x422z+y42wx2+y422z+x422w+x42yz2
    +z42wx2+z422y+w422z+w422y+x42zw2+x42yw2
     +y422w+y42xz2+z422w+z42xy2++y42zw2+y422
      +w422z+w42xy2+z42yw2+z422x+w42yz2+w42xz2
 +(z332w+z33wx2+w332z+w332z+y33zw2+y332
    +y33wx2+w33yz2+w332y+y332z+z33yw2+w33xz2
     +w33xy2+x332w+x332w+z332y+x33zw2+x332
       +z332x+z33xy2+x33yw2+x33yz2+y332x+y33xz2
 +(z3222+w3222+y3222+w3222+y3222+z3222
    +x3222+w3222+x3222+z32223222+y3222

= (x43zw+y43zw+x43yw+z43yw+x43yz+w43yz+y43wx
    +z43wx+y43xz+w43xz+z43xy+w43xy)
 +2( x422w+x422z+y422w+y422z+x422y+z422
    +z422y+w422z+w422y+y422x+z422x+w422x)
 +2(z332w+z332w+w332z+w332z+w332y+x332
    +x332z+z332x+x332y+x332y+y332x+y332x)
 +3(y3222+w3222+z3222+x3222

 上記の計算から、 (3212)×(12)=(4311)+2(4221)+2(3221)+3(323

が成り立っている。上記の計算は、4変数の場合なので、当然

 (4213)=0 、(323)=0 、(3222)=0 、(3214)=0

である。このことを考慮すれば、

 (3212)×(12

=(4311)+2(4221)+3(4213)+2(3221)+6(323)+3(323)+4(3222
 +6(3214

が成り立っているものと考えていいだろう。


(コメント) 4変数の計算は大変でした!手計算なもので...(T-T) 。でも、この経験が
      ないと、ヤング図形による対称式の計算の素晴らしさが実感できないですよネ!


 さて、対称式 P(x1,x2,・・・,xn) が、いくつかのヤング図形(ab・・・c)の多項式として
表されるということは直感的に明らかとしていいだろう。

 だから、冒頭に述べた重要定理 :

  対称式は、基本対称式の多項式として表せ、その表し方は一意的である。

を納得するには、ヤング図形が基本対称式の多項式で表されることが分かればよい。

 たとえば、3変数の対称式 x3+y3+z3 を基本対称式で表すのは高校生の標準的な問
題だろう。

 x3+y3+z3
=(x+y+z)(x2+y2+z2−xy−yz−zx)+3xyz
=(x+y+z)((x+y+z)2−3(xy+yz+zx))+3xyz
=s1(s12−3s2)+3s3
=s13−3s12+3s3

 上記をヤング図形を用いて書き表せば、(3)=(1)×(1)×(1)−3(1)×(12)+3(13

となる。 これは、どのように解釈すればいいのだろうか?

 (3)のヤング図形は、   であるが、これを  と  に分解して、その
積を考えてみる。

  ×

 上記の計算の第1項に、ヤング図形   が表れている点が肝要である。

 同様にして、上記に表れているヤング図形  を、  と  に分解して、その

積を考えてみると、
            × +2
であるし、ヤング図形    を、  と    に分解して、その積を考えてみると、
    × +3

となる。 上記の計算から、 (2)×(1)=(3)+(21) より、 (3)=(2)×(1)−(21)

 ここで、(1)×(1)=(2)+2(12) より、 (2)=(1)×(1)−2(12

 (12)×(1)=(21)+3(13) より、 (21)=(12)×(1)−3(13

なので、

 (3)=((1)×(1)−2(12))×(1)−((12)×(1)−3(13))

   =(1)×(1)×(1)−2(12)×(1)−(12)×(1)+3(13

   =(1)×(1)×(1)−3(1)×(12)+3(13

が成り立つ。

 このように、ヤング図形を縦方向に分割し、その積を考えることによって、だんだんとヤン
グ図形の幅を小さくすることができる。つまりは、幅が1のヤング図形(基本対称式!)で表
せるということである。このことから、対称式が基本対称式の多項式で表されるという雰囲
気を味わうことが出来たように思う。

 読者のために、練習問題を一つあげておこう。

問 題  ヤング図形 (4) を、基本対称式を表すヤング図形の多項式で表せ。

(解) (3)×(1)=(4)+(31) より、 (4)=(3)×(1)−(31)

 (3)=(1)×(1)×(1)−3(1)×(12)+3(13) なので、

 (3)×(1)=(1)×(1)×(1)×(1)−3(1)×(1)×(12)+3(13)×(1)

また、

 (21)×(1)=(31)+2(22)+2(212) より、(31)=(21)×(1)−2(22)−2(212

である。 ここで、 (21)=(12)×(1)−3(13) より、

 (21)×(1)=(12)×(1)×(1)−3(13)×(1)

また、(12)×(12)=(22)+2(211)+6(14) より、

 (22)=(12)×(12)−2(211)−6(14

ここで、 (13)×(1)=(211)+4(14) より、(211)=(13)×(1)−4(14) なので、

 (22)=(12)×(12)−2((13)×(1)−4(14))−6(14

=(12)×(12)−2(13)×(1)+2(14

 また、  (13)×(1)=(212)+4(14) より、 (212)=(13)×(1)−4(14

よって、

 (31)

=(12)×(1)×(1)−3(13)×(1)
   −2((12)×(12)−2(13)×(1)+2(14))−2((13)×(1)−4(14))

=(12)×(1)×(1)−3(13)×(1)
   −2(12)×(12)+4(13)×(1)−4(14)−2(13)×(1)+8(14

=(12)×(1)×(1)−(13)×(1)−2(12)×(12)+4(14

以上から、

(4)=(1)×(1)×(1)×(1)−3(1)×(1)×(12)+3(13)×(1)
     −((12)×(1)×(1)−(13)×(1)−2(12)×(12)+4(14))

 =(1)×(1)×(1)×(1)−3(1)×(1)×(12)+3(13)×(1)
     −(12)×(1)×(1)+(13)×(1)+2(12)×(12)−4(14

=(1)×(1)×(1)×(1)−4(1)×(1)×(12)+4(13)×(1)+2(12)×(12)−4(14

                                                   (終)
 この計算も自信がないので、2変数の場合について確認してみよう。

 (4)=x4+y4 であるが、

 x4+y4=(x2+y22−2x22 で、 x2+y2=(x+y)2−2xy=(1)×(1)−2(12

なので、

 (4)=((1)×(1)−2(12))2−2(12)×(12

   =(1)×(1)×(1)×(1)−4(1)×(1)×(12)+4(12)×(12)−2(12)×(12

   =(1)×(1)×(1)×(1)−4(1)×(1)×(12)+2(12)×(12

 2変数なので、 (13)=0 、 (14)=0 としてよいので、上式は、2変数の場合に成り
立つことを示している。

(コメント) 上記の煩雑な対称式の計算を見て直ぐ気づくように、私自身まだ、

  あたかも珠算の達人が四則演算をそらでこなすように、複雑な対称式の計算を
 暗算で行うことができるようになるであろう。


という境地には至っていない。一体いつになったら、そのような境地になれるのだろうか?

 数学Uで多項式関数の微分・積分を学ぶと、数学の問題解法に役立ついろいろな公式
を手にすることが出来る。これは、あたかも子供達が熱中するゲームで敵を倒して新しい
武器を手にし、自らのキャラクターのパワーをアップするのに似ている。

 高校時代に、私が最も微分法の効用を実感したのは、次の公式である。

 方程式 F(x)=0 が重解 α を持つための必要十分条件は、

    F(α)=F’(α)=0    (ただし、 F(x) は多項式)


 この事実は、x=α における F(x) のTaylor展開から明らかだろう。

 高校生向けには、次のように説明すると理解してもらえると思う。

(証明)  F(x)を、x−α で割った余りは、剰余の定理により、 F(α) である。

 よって、 商を Q(x) として、 割り算の恒等式より、 F(x)=(x−α)Q(x)+F(α)

 さらに、 Q(x)を、x−α で割った商を R(x)、余りを r とおくと、

      Q(x)=(x−α)R(x)+r

 よって、 F(x)=(x−α)((x−α)R(x)+r)+F(α)=(x−α)2R(x)+r(x−α)+F(α)

  両辺を微分して、 F’(x)=2(x−α)R(x)+(x−α)2R’(x)+r

 したがって、 F’(α)=r となり、 F(x)=(x−α)2R(x)+F’(α)(x−α)+F(α)

  このことから、 方程式 F(x)=0 が重解 α を持てば、 F(x) は、(x−α)2 で割り

 切れるので、その余り F’(α)(x−α)+F(α)=0 から、 F(α)=F’(α)=0

  逆に、 F(α)=F’(α)=0 とすると、 F(x)=(x−α)2R(x) となり、

 F(x) は、(x−α)2 で割り切れ、方程式 F(x)=0 は重解 α を持つ。 (証終)


  ここで、 F(α)=F’(α)=0 ということは、2つの方程式 F(x)=0 、 F’(x)=0
 が共通解 α を持つということである。

 この共通解の問題も、私が高校生の頃苦しめられた問題の一つである。

 共通解の問題については、終結式という概念が活躍する。

  方程式を前提に考えるので、最高次の係数は 1 とする。 また、いたずらに文字の個
 数を増やさないために、3次方程式に限定して考えることにする。因数分解されて、

   F(x)=(x−α)(x−β)(x−γ)  、G(x)=(x−p)(x−q)(x−r)

 とする。 このとき、

 G(α)G(β)G(γ)=(α−p)(α−q)(α−r)(β−p)(β−q)(β−r)(γ−p)(γ−q)(γ−r)

を考えると、解の差の全てのパターンが入っているので、

 方程式 F(x)=0 、G(x)=0 が共通解を持つことと G(α)G(β)G(γ)=0 は同値

であることは明らかだろう。

 G(α)G(β)G(γ) を 多項式 F(x)、G(x) の終結式といい、通常 R(F,G) と表す。

 すなわち、   R(F,G)=G(α)G(β)G(γ)

 以上をまとめて、次の定理を得る。

定 理  方程式 F(x)=0 、G(x)=0 が共通解を持つための必要十分条件は
     R(F,G)=0 である。



 さて、R(F,G)=G(α)G(β)G(γ)の右辺は3変数 α 、 β 、 γ の多項式であるが、これら
の順番を任意に変更しても元の式と同じなので、終結式 R(F,G) は対称式である。

 ということは、終結式の計算にも、ヤング図形が使えるということである。

例  F(x)=x2+ax+b=(x−α)(x−β) 、G(x)=x2+mx+n=(x−p)(x−q) に対
  して、その終結式 R(F,G) を計算してみよう。

  R(F,G)=G(α)G(β)=(α−p)(α−q)(β−p)(β−q)

 解と係数の関係より、 α+β=−a 、 αβ=b 、 p+q=−m 、 pq=n なので、

 R(F,G)

=(α2+mα+n)(β2+mβ+n)

=α2β2+mα2β+nα2+mαβ2+m2αβ+mnα+nβ2+mnβ+n2

=α2β2+mαβ(α+β)+m2αβ+n(α2+β2)+mn(α+β)+n2

=α2β2+mαβ(α+β)+m2αβ+n((α+β)2−2αβ)+mn(α+β)+n2

=b2−mab+m2b+n(a2−2b)−mna+n2

=na2−mab+b2−mna+m2b−2nb+n2


 普通に展開すれば上記のようであるが、この展開にヤング図形が巧妙に使われるらしい。

 R(F,G) の展開式で、α、β に関する対称式をヤング図形で表せば、

 R(F,G)

=α2β2+mα2β+nα2+mαβ2+m2αβ+mnα+nβ2+mnβ+n2

=α2β2+m(α2β+αβ2)+n(α2+β2)+m2αβ+mn(α+β)+n2

=(22)+m(21)+n(2)+m2(12)+mn(1)+n2

である。

 実際の展開式からヤング図形に直すことは易しい。でも、最初からヤング図形で計算する
にはどうしたらいいのだろうか?

 この展開式で、 m2 、 mn 、 n2 、 m 、 n 、 1 の各項が出るのは明らかだろう。問題は、
その係数である。

 それには、m は解と係数の関係から異なる解の1次式なので、m には、ヤング図形 
を対応づけ、そして、m2 には、ヤング図形

  

を対応づけて考えるといいらしい。

 同様に、n は解と係数の関係から異なる解の2次式なので、n には、ヤング図形 
を対応づけ、そして、n2 には、ヤング図形

 

を対応づけることにする。

 F(x)、G(x)の次数は、ともに 2 なので、基本となるヤング図形は、

 

である。各項の係数を求めるには、m、n に関するヤング図形を基本となるヤング図形から
差し引けばよい。

 m2 の係数は、基本となるヤング図形から

 

を差し引いて、

 

なので、ヤング図形は、(11)=(12)である。(→上記の展開式と一致!)

 mn の係数は、基本となるヤング図形から、  と 

を順次差し引いて、

   →    →  

なので、ヤング図形は、(1)である。(→上記の展開式と一致!)

 n2 の係数は、基本となるヤング図形から

 

を差し引いて何も残らないので係数は、1 と考える。(→上記の展開式と一致!)

 m の係数は、基本となるヤング図形から、  を差し引いて、

   →  

となり、これは、

 

と考え、ヤング図形は、(21)である。(→上記の展開式と一致!)

 n の係数は、基本となるヤング図形から、  を差し引いて、

   →  

なので、ヤング図形は、(2)である。(→上記の展開式と一致!)

 1 の係数は、基本となるヤング図形から、引くものがないので、

 

となり、ヤング図形は、(22)=(22)である。(→上記の展開式と一致!)

 このように考えると、直ちに、

 R(F,G)=(22)+m(21)+n(2)+m2(12)+mn(1)+n2

であることが示される。(← これは、スゴイ!!暗算でもできそう...。)

 上記の展開式では、(2次式)×(2次式)なので、ヤング図形を用いるメリットはあまり感じ
られないかもしれないが、次数が高次になると、その効用が多分実感できることだろう。

 試しに、(3次式)×(3次式)の場合で練習してみよう。

例  F(x)=x3+ax2+bx+c=(x−α)(x−β)(x−γ)

  G(x)=x3+kx2+mx+n=(x−p)(x−q)(x−r)   に対して、

 その終結式 R(F,G) は、

 R(F,G)=G(α)G(β)G(γ)

=(α3+kα2+mα+n)(β3+kβ2+mβ+n)(γ3+kγ2+mγ+n)

 この展開式で、

 1、k、m、n、k2、km、kn、m2、mn、n2、k3、k2m、k2n、km2、kmn、kn2、m3
 m2n、mn2、n3

の各項が出る。(1、k、m、n の4個の文字から重複を許して3個取る組合せは、43=20通り

 それには、k は解と係数の関係から異なる解の1次式なので、k にはヤング図形(1)、
2 にはヤング図形(12)、 k3 にはヤング図形(13)を対応づける。

 同様に、m は解と係数の関係から異なる解の2次式なので、m には、ヤング図形(2)、
2 にはヤング図形(22)、 m3 にはヤング図形(23)を対応づける。

 n は解と係数の関係から異なる解の3次式なので、n には、ヤング図形(3)、n2 には
ヤング図形(32)、 n3 にはヤング図形(33)を対応づける。

 F(x)、G(x)の次数は、ともに 3 なので、基本となるヤング図形は(33)、すなわち、

 

である。各項の係数を求めるには、k、m、n に関するヤング図形を基本となるヤング図形
から差し引けばよい。

1 の係数は、基本となるヤング図形から引くものがないので、ヤング図形は、(33

k の係数は、基本となるヤング図形から(1)を差し引いて、ヤング図形は、(322)

m の係数は、基本となるヤング図形から(2)を差し引いて、ヤング図形は、(321)

n の係数は、基本となるヤング図形から(3)を差し引いて、ヤング図形は、(32

2 の係数は、基本となるヤング図形から(12)を差し引いて、ヤング図形は、(322

km の係数は、基本となるヤング図形から(1)、(2)を順次差し引いて、ヤング図形は、(321)

kn の係数は、基本となるヤング図形から(1)、(3)を順次差し引いて、ヤング図形は、(32)

2 の係数は、基本となるヤング図形から(22)を差し引いて、ヤング図形は、(312

mn の係数は、基本となるヤング図形から(2)、(3)を順次差し引いて、ヤング図形は、(31)

2 の係数は、基本となるヤング図形から(32)を差し引いて、ヤング図形は、(3)

3 の係数は、基本となるヤング図形から(13)を差し引いて、ヤング図形は、(23

2m の係数は、基本となるヤング図形から(12)、(2)を順次差し引いて、ヤング図形は、(221)

2n の係数は、基本となるヤング図形から(12)、(3)を順次差し引いて、ヤング図形は、(22

km2 の係数は、基本となるヤング図形から(1)、(22)を順次差し引いて、ヤング図形は、(212

kmn の係数は、基本となるヤング図形から(1)、(2)、(3)を順次差し引いて、ヤング図形は、(21)

kn2 の係数は、基本となるヤング図形から(1)、(32)を順次差し引いて、ヤング図形は、(2)

3 の係数は、基本となるヤング図形から(23)を差し引いて、ヤング図形は、(13

2n の係数は、基本となるヤング図形から(22)、(3)を順次差し引いて、ヤング図形は、(12

mn2 の係数は、基本となるヤング図形から(2)、(32)を順次差し引いて、ヤング図形は、(1)

3 の係数は、基本となるヤング図形から(33)を差し引いて何も残らないので係数は、1 と考える。

以上から、

R(F,G)

=(33)+(322)k+(321)m+(32)n+(322)k2

  +(321)km+(32)kn+(312)m2+(31)mn+(3)n2

  +(23)k3+(221)k2m+(22)k2n+(212)km2+(21)kmn

  +(2)kn2+(13)m3+(12)m2n+(1) mn2+ n3


(コメント) 果たして、この計算は正しいのだろうか?ちょっと自信がない!!
                                   (...ケド、多分合っているカナ?
      ちょっと病みつきになりそうな計算ですね...。

でも、個人的な感想ながら、展開する因数を縦に並べて、

 (α3+kα2+mα+n)
 (β3+kβ2+mβ+n)
 (γ3+kγ2+mγ+n)

 順次展開の項とその係数の型(←ヤング図形)を一緒に計算した方が速いような気がする。

 終結式の計算と言えば、シルベスター(Sylvester)の行列式が有名だろう。

例  F(x)=x2+ax+b 、G(x)=x2+mx+n に対して、その終結式 R(F,G) は、

  R(F,G)=na2−mab+b2−mna+m2b−2nb+n2

であったが、これは、次のシルベスター(Sylvester)の行列式を計算しても求められる。

 

 終結式から高校数学でお馴染みの判別式が導かれる。

 2次式 F(x)=x2+ax+b に対して、終結式 R(F,F’)を計算すると、

 F(x)=x2+ax+b=(x−α)(x−β) で、 F’(x)=2x+a

よって、 R(F,F’)=(2α+a)(2β+a)=4(12)+2a(1)+a2

 (↑ せっかくなのでヤング図形を用いた...f(^^;) )

(1)=−a 、(12)=b なので、 R(F,F’)=4b−2a2+a2=4b−a2=−(a2−4b)

 そこで、2次式 F(x)=x2+ax+b の判別式を、 D(F)=−R(F,F’) と定義すれば、

 D(F)=a2−4b

となり、よく知った式を得て一安心!

 上記で述べた2つの事実 :

(1) 方程式 F(x)=0 が重解 α を持つための必要十分条件は、

  F(α)=F’(α)=0    (ただし、 F(x) は多項式)



(2) 方程式 F(x)=0 、G(x)=0 が共通解を持つための必要十分条件は
  R(F,G)=0 である。


から、 2次方程式 x2+ax+b=0 が重解を持つための必要十分条件は、

  判別式 a2−4b=0

であることも確かめられた。


(追記) 平成20年1月7日付け

 対称式を基本対称式で表す問題は種々あるが、次の対称式について非常に斬新的な別
解があることを最近知ることが出来た。

  22+x22+x22+y22+y22+z22 を基本対称式で表せ。

 ここで、基本対称式とは、

 1=x+y+z+w

 2=xy+xz+xw+yz+yw+zw

 3=xyz+xyw+xzw+yzw

 4=xyzw

であることを確認しておく。

 その別解の素晴らしさを理解するために、いくつかの解法を眺めておこう。

(その1) 単項式の順序を考えて式変形 (→ 参考:「グレブナー基底」)

22+x22+x22+y22+y22+z22−s22

=x22+x22+x22+y22+y22+z22−(xy+xz+xw+yz+yw+zw)2

=−2(x2yz+x2yw+x2zw+xy2z+xy2w+xyz2+xz2w+xyw2+xzw2
     +3xyzw+y2zw+yz2w+yzw2

 よって、

 x22+x22+x22+y22+y22+z22−s22+2s13=2xyzw=2s4

したがって、 x22+x22+x22+y22+y22+z22=s22−2s13+2s4


(コメント) 基本対称式で表すアルゴリズムに従って計算してはみたものの煩雑な計算で
      全く美しくない!

(その2) ヤング図形による式変形

  対称式 x22+x22+x22+y22+y22+z22 のヤング図形は、(22) すなわち、

 

 である。したがって、このヤング図形を作るために、

     と      の積

 を考える。

   の係数は、 22=1
 
     の係数は、 11×21=2
 
   の係数は、42=6 

よって、 (12)×(12)=(22)+2(212)+6(14) より、

  (22)=(12)×(12)−2(212)−6(14

 同様にして、

    と      の積

 を考える。

     の係数は、 11=1
 
   の係数は、41=4 

よって、 (13)×(1)=(212)+4(14) より、 (212)=(13)×(1)−4(14

 以上から、

(22)=(12)×(12)−2{(13)×(1)−4(14)}−6(14

  =(12)×(12)−2(13)×(1)+2(14

 すなわち、 x22+x22+x22+y22+y22+z22=s22−2s13+2s4


(コメント) ヤング図形は計算していて楽しいのだが、計算規則を忘れやすく、あまり実戦
      的ではないような...感じ。私も上記の計算をするために復習してしまった!


 いよいよ斬新な別解を紹介する準備が整った。とてもアドホックな解法であるが、多分見
るものを魅了するであろう。
アドホック(adhoc)という言葉は、「特にそのための」という意味。最近ある方とのメールのやりとりの中にあっ
 たもので一度使ってみたかった...(^_^)v


(その3) 係数比較による計算

 次の2式が成り立つことは明らかだろう。

 (1+x)(1+y)(1+z)(1+w)=1+s1+s2+s3+s4

 (1−x)(1−y)(1−z)(1ーw)=1−s1+s2−s3+s4

したがって、辺々かけて、

 (1−x2)(1−y2)(1−z2)(1ーw2)=(1+s1+s2+s3+s4)(1−s1+s2−s3+s4

左辺を展開して、次数が4となるものをまとめたものが、

 x22+x22+x22+y22+y22+z22

右辺を展開して、次数が4となるものをまとめると、

 1・s4−s1・s3+s2・s2−s3・s1+s4・1=s22−2s13+2s4

よって、 x22+x22+x22+y22+y22+z22=s22−2s13+2s4


(コメント) 初等的すぎる位初等的で、その分かりやすさに脱帽しました!


(参考文献: 硲 文夫 著  代数学  数と式の現代的理論  (森北出版)
        三村征雄 他 著  代数学と幾何学  (裳華房)
        永田雅宜 著  線形代数の基礎  (紀伊國屋書店)
        数学セミナー 1999年6〜8月号  (日本評論社))


(追記) 当HPの掲示板「出会いの泉」に、平成25年4月17日付けでHN「V」さんより、対
    称式の計算方法についての書き込みがあった。

 他のサイトに下記のような質問があり、以下のように回答しました。対称式の計算を簡単
かつ確実に行うための手順や表記方法があれば教えてください。

(元の質問) 次の5次の対称式の関係式のエレガントな証明の仕方が解りません。教えて
       下さい。

 (x5+y5+z5+w5+v5)
-(x4+y4+z4+w4+v4)(x+y+z+w+v)
+(x3+y3+z3+w3+v3)(xy+xz+xw+xv+yz+yw+yv+zw+zv+wv)
-(x2+y2+z2+w2+v2)(xyz+xyw+xyv+xzw+xzv+xwv+yzw+yzv+ywv+zwv)
+(x+y+z+w+v)(xyzw+xyzv+xywv+xzwv+yzwv)
-5xyzwv=0

(私の解答) 与式は、x、y、z、w、v の対称式で、かつ展開後の各項はすべて5次式なので

各項の次数の x、y、z、w、v への分配のパターンは、次数が大きい順に

  (5,0,0,0,0) (4,1,0,0,0) (3,2,0,0,0) (3,1,1,0,0) (2,2,1,0,0) (2,1,1,1,0) (1,1,1,1,1)

よって、x5、x4y、x3y2、x3yz、x2y2z、x2yzw、xyzwv のそれぞれの係数が0になることを示せ

ばよい。与式の

x5の係数 =1-1+0+0+0+0=0、x4yの係数 =0-1+1+0+0+0=0、x3y2の係数 =0+0+0+0+0+0=0

x3yzの係数 =0+0+1-1+0+0=0、x2y2zの係数=0+0+0+0+0+0=0、x2yzwの係数 =0+0+0-1+1+0=0

xyzwvの係数 =0+0+0+0+5-5=0

 よって、与式=0

※ なお元の質問には解と係数の関係を使ったエレガントな証明の回答もありました。


 空舟さんからのコメントです。(平成25年4月17日付け)

 上記に便利な表記が紹介されていますネ。

  対称式で、x・・・z (a≧b≧・・・≧c≧0)の形の単項式を含むものを、記号で

        (ab・・・c)
と表す。


 この表記を使うと問題の式は、 (5)-(1)(4)+(11)(3)-(111)(2)+(1111)(1)-(11111) と書かれ
ます。それぞれの積を展開することを考えると以下のようになります。

 (11111) = (11111) 、(1111)(1) = (2111)+(11111) 、(111)(2)=(311)+(2111) 、

 (11)(3)=(41)+(311) 、(1)(4)=(5)+(41) 、(5) = (5)

 交互に足し引きすれば0になることが分かりました。


(コメント) ヤング図形が活躍する問題ですね!


(追記) 平成25年8月10日付けで、K.S.さんより、対称式についての話題をメールで頂
    いた。K.S.さんに感謝します。

 基本対称式

1=x1+x2+・・・+xn 、2=x12+x13+・・・+xn-1n 、・・・、=x12・・・xn

に対して、同次対称式

1=x1+x2+・・・+xn 、2=x12+x22+・・・+xn2 、・・・ 、=x1n+x2n+・・・+xnn

を考える。このとき、ニュートンの多項式

 −s1n-1+s2n-2−・・・+(−1)n-1n-11+(−1)ns=0

が成り立つ。

例 受験数学では有名な恒等式

  x13+x23+・・・+xn3−3x123
 =(x1+x2+x3)(x12+x22+・・・+xn2−x12−x23−x31

から、 t3−3s3=s1(t2−s2) すなわち、 t3−s12+s21−3s3=0 が成り立つ。


 ニュートンの多項式を証明してみよう。(平成26年3月4日付け)

(証明) E(x)=1+s1x+s22+・・・+s とおくと、E(x)=(1+x1x)(1+x2x)・・・(1+xx)

 両辺の自然対数をとって、 log E(x)=log(1+x1x)+log(1+x2x)+・・・+log(1+xx)

両辺を x で微分して、 E’(x)/E(x)=x1/(1+x1x)+x2/(1+x2x)+・・・+x/(1+xx)

よって、 x(E’(x)/E(x))=x1x/(1+x1x)+x2x/(1+x2x)+・・・+xx/(1+xx)

ここで、 xx/(1+xx)=xx・Σk=1〜∞ (−1)k-1(xx)k-1=Σk=1〜∞ (−1)k-1(xx)

なので、

x(E’(x)/E(x))=Σk=1〜∞ (−1)k-1(x1+x2+・・・+x)x=Σk=1〜∞ (−1)k-1

すなわち、 xE’(x)=E(x)(t1x−t22+・・・+(−1)n-1+・・・) において、

両辺の x の係数を比較して、 ns=(−1)n-1+s1・(−1)n-2n-1+・・・+sn-1・t1

両辺に、(−1)を掛けて、 (−1)ns=−t+s1n-1−・・・+(−1)n-11

 これより、ニュートンの多項式

 −s1n-1+s2n-2−・・・+(−1)n-1n-11+(−1)ns=0

を得る。  (証終)


 K.S.さんからのコメントです。(平成26年7月7日付け)

 ニュートンの多項式は、微分を用いなくても示される。

 F(X)=(X−x1)(X−x2)・・・(X−xn) とおくと、 F(x)=0 (k=1〜n)

一方、展開した式 F(X)=Xn−S1Xn-1+・・・+(−1)Sn なので、

F(x1) から F(x) をすべて加えると、

 Tn−Tn-1S1+・・・+(−1)・n・Sn=0

を得ることができる。


 このことから、全ての対称式は基本対称式 s で表すことができるのとは逆に、同次対称
式 t で基本対称式 s を表すことができる。

 実際に、例えば、 t1=s1 、 t2=s12−2s2 、 t3=s13−3s12+3s3 から、

 s1=t1

 t2=s12−2s2=t12−2s2 から、 s2=(1/2)t12−(1/2)t2

 t3=s13−3s12+3s3=t13−3t1{(1/2)t12−(1/2)t2}+3s3 から、

 s3=(1/6)t13−(1/2)t12+(1/3)t3

 係数のみを取り出して行列として表すと、

 

が成り立っている。さらに、

 t4=s14−4s122+4s13−4s4+2s22

 t5=s15−5s132+5s123−5s14+5s5+5s122−5s23

から、

  s1=t1 、 s2=(1/2)(t12−t2) 、s3=(1/3)(t3−t12)+(1/6)(t13−t12

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 上記の基本対称式を同次対称式を用いて表す問題が、実際の大学入試に出題された。

横浜市立大学医学部(2013)

 a、b、c を定数として、A、B、C を

 A=a+b+c 、B=a2+b2+c2 、C=a3+b3+c3

とおく。このとき、abc をA、B、C を用いて表せ。

(解) a3+b3+c3−3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2−ab−bc−ca) より、

  C−3abc=A(B−ab−bc−ca)

 ここで、 (a+b+c)2=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca より、

  A2=B+2(ab+bc+ca)

 よって、 ab+bc+ca=(A2−B)/2 なので、 3abc=C−A(B−(A2−B)/2)

 従って、 abc=(A3−3AB+2C)/6 となる。  (終)


(追記) 平成25年9月5日付けで、K.S.さんより、同次対称式についての続報をメール
    で頂いた。文言等を補充して、その続報を読み解くことにしよう。このような機会を与
    えていただいたK.S.さんに感謝します。

 同次対称式を基本対称式で表すことは、ニュートンの多項式

 −s1n-1+s2n-2−・・・+(−1)n-1n-11+(−1)ns=0

から、順次解いていけばよい。

例 t−s1n-1+s2n-2−・・・+(−1)n-1n-11+(−1)ns=0 について、

 n=2 のとき、 t2−s11+2s2=0 で、 t1=s1 なので、 t2=s12−2s2

 n=3 のとき、 t3−s12+s21−3s3=0 で、 t1=s1 、t2=s12−2s2 なので、

   t3=s12−s21+3s3=s1(s12−2s2)−s12+3s3=s13−3s12+3s3

 n=4 のとき、 t4−s13+s22−・・・+(−1)n-1n-11+(−1)ns=0 で、

   t1=s1 、t2=s12−2s2 、t3=s13−3s12+3s3 なので、

   t4=s13−s22+s31−4s4

    =s1(s13−3s12+3s3)−s2(s12−2s2)+s13−4s4

    =s14−3s122+3s13−s122+2s22+s13−4s4

    =s14−4s122+4s13+2s22−4s4

 この計算を、ヤング図形を用いて考えてみよう。このページの練習問題に次のものがあった。

問 題  ヤング図形 (4) を、基本対称式を表すヤング図形の多項式で表せ。

(解) (3)×(1)=(4)+(31) より、 (4)=(3)×(1)−(31)

 (3)=(1)×(1)×(1)−3(1)×(12)+3(13) なので、

 (3)×(1)=(1)×(1)×(1)×(1)−3(1)×(1)×(12)+3(13)×(1)

また、(21)×(1)=(31)+2(22)+2(212) より、(31)=(21)×(1)−2(22)−2(212

ここで、(21)=(12)×(1)−3(13) より、(21)×(1)=(12)×(1)×(1)−3(13)×(1)

また、(12)×(12)=(22)+2(211)+6(14) より、(22)=(12)×(12)−2(211)−6(14

ここで、 (13)×(1)=(211)+4(14) より、(211)=(13)×(1)−4(14) なので、

(22)=(12)×(12)−2((13)×(1)−4(14))−6(14)=(12)×(12)−2(13)×(1)+2(14

また、 (13)×(1)=(212)+4(14) より、 (212)=(13)×(1)−4(14

よって、

 (31)

=(12)×(1)×(1)−3(13)×(1)
  −2((12)×(12)−2(13)×(1)+2(14))−2((13)×(1)−4(14))

=(12)×(1)×(1)−3(13)×(1)
  −2(12)×(12)+4(13)×(1)−4(14)−2(13)×(1)+8(14

=(12)×(1)×(1)−(13)×(1)−2(12)×(12)+4(14

以上から、

 (4)

=(1)×(1)×(1)×(1)−3(1)×(1)×(12)+3(13)×(1)
  −((12)×(1)×(1)−(13)×(1)−2(12)×(12)+4(14))

=(1)×(1)×(1)×(1)−3(1)×(1)×(12)+3(13)×(1)
  −(12)×(1)×(1)+(13)×(1)+2(12)×(12)−4(14

=(1)×(1)×(1)×(1)−4(1)×(1)×(12
  +4(13)×(1)+2(12)×(12)−4(14)  (終)

 よって、少し煩雑だが、 t4=s14−4s122+4s13+2s22−4s4 が求められる。


 K.S.さんは、この計算について、直接、n次の同次式を求める方法を考察された。

 次数の形を降順に並べて以下の規則で倍数の比で分ける。

 2→11は2倍、

 3→21は3倍、21→111は2倍

 4→31は4倍、31→22は1.5倍、22→211は2倍

 5→41は5倍、41→32は2倍、32→311は2倍、311→2111は1.5倍

 6→51は6倍、51→42は2.5倍、42→411は2倍、411→33は2/3倍

例 「2→11は2倍」というルールは、ヤング図形の計算: (1)×(1)=(2)+2(12) から
  くるのだろうか?


 帰納的に、同次多項式が、ニュートンの多項式から次のように表されることが分かるので、

  t440(4個)−41(3個)+42(2個)−43(1個)

   =s14−4s122+6(s22,s13)−4s4

   =s14−4s122+2s22+4s13−4s4

同様に、

  t550(5個)−51(4個)+52(3個)−53(2個)+54(1個)

   =s15−5s132+10(s123,s122)−10(s14,s23)+5s5

   =s15−5s132+5s123+5s122−5s14−5s23+5s5

  t660(6個)−61(5個)+62(4個)−63(3個)+64(2個)−65(1個)

   =s16−6s142+15(s1222,s133)−20(s23,s124,s123
     +15(s32,s15,s24)−6s6

   =s16−6s142+6s133+9s1222−2s23−6s124−12s123
     +3s32+6s15+6s24−6s6

  t770(7個)−71(6個)+72(5個)−73(4個)
                            +74(3個)−75(2個)+76(1個)

   =s17−7s152+21(s143,s1322)−35(s134,s123,s1223
    +35(s125,s132,s223,s124)−21(s16,s25,s34)+7s7

   =s17−7s152+7s143+14s1322−7s134−7s123−21s1223
    +7s125+7s132+7s223+14s124−7s16−7s25−7s34+7s7

  t880(8個)−81(7個)+82(6個)−83(5個)
                   +84(4個)−85(3個)+86(2個)−87(1個)

   =s18−8s162+28(s153,s1422)−56(s144,s1223,s1323
    +70(s24,s135,s1232,s1224,s1223
    −56(s126,s224,s232,s125,s134)+28(s42,s17,s26,s35)−8s8

   =s18−8s162+8s153+20s1422−8s144−16s1223−32s1323
    +2s24+8s135+12s1232+24s1224+24s1223−8s126−8s224
    −8s232−16s125−16s134+4s42+8s17+s26+8s35−8s8

  t990(9個)−91(8個)+92(7個)−93(6個)
           +94(5個)−95(4個)+96(3個)−97(2個)+98(1個)

   =s19−9s172+9s163+27s1522−9s154−45s1423−30s1323+9s124
    +18s1332+36s1324+54s12223−9s136−9s233−27s1225
    −27s1234−27s1224−27s1232+3s33+9s127+9s142+9s225
    +18s126+18s135+18s234−9s18−9s27−9s36−9s45+9s9


 規則性に、うまい説明ができないものかと検討したところ、「同次対称式の簡明な求め方」
の倍率が、文字の並べ方の場合の数と完全に一致することが分かり証明することができま
した。(平成25年9月15日付け)

 例えば、6次の同次対称式を展開するとき、先ず、二項係数を利用し、

666(6項の積の単項式)−65(5個)+64(4個)−63(3個)+62(2個)−61(1個)

   =s16−6s142+15(s133,s1222)−20(s23,s124,s123
     +15(s32,s15,s24)−6s6

 次に、括弧の中を展開する。展開の仕方は、例えば、3個の積の部分について、文字の
並べる場合の数を計算すると、倍数比が分かります。

 
23 124 123
3 2 abc

 s124 の係数を6とすると、s23 の係数は、その1/3で2、s123 の係数は、その2倍で12

 つまり、 20(s23,s124,s123)=6s124+2s23+12s123

 他も同様にして、

6=s16−6s142+6s133+9s1222−2s23−6s124−12s123
     +3s32+6s15+6s24−6s6

と展開できます。

 2→11は2倍(1→2)

 3→21は3倍、21→111は2倍(1→3→6)

 4→31は4倍、31→22は1.5倍、22→211は2倍(1→4→6→12)

 5→41は5倍、41→32は2倍、32→311は2倍、311→221は1.5倍(1→5→10→20→30)

 6→51は6倍、51→42は2.5倍、42→411は2倍、411→33は2/3倍(1→6→15→30→20)

 7→61は7倍、61→52は3倍、52→511は5/3倍、511→43は1倍(1→7→21→35→35)

 括弧(  )の中は、文字の並べ方の場合の数

 このように求めると、速く簡明に求めることができます。

 「行列式を展開する方法」

 

 例えば、n=3 のとき、

 

 よって、 t3=s13+3s3−s12−2s12=s13−3s12+3s3


(追記) 令和5年4月23日付け

 大学入試問題で、「t」が話題の問題に遭遇したので挑戦してみました。解と係数の関係
に関連する基本的な問題でした。


 東北大学 前期文系(1999)

 pは0でない定数とし、2次方程式 x2−px+5p=0 を考える。

(1) x2−px+5p=0 の解α、βが、α5+β5=p5 をみたすとする。このときのp
  の値を求めよ

(2) x2−px+5p=0 は虚数解をもち、その5乗が実数であるとき、pの値を求めよ。


(解)(1) 解と係数の関係から、 α+β=p 、αβ=5p

 α5+β5=(α2+β2)(α3+β3)−α2β2(α+β) なので、

 (p2−10p)(p3−15p2)−25p3=p5 すなわち、 p=5

(2) 判別式=p2−20p<0 より、 0<p<20

 x2=px−5p 、x3=px2−5px=p(px−5p)−5px=(p2−5p)x−5p2

 x4=(p2−5p)x2−5p2x=(p2−5p)(px−5p)−5p2x=(p3−10p2)x−5p3+25p2

 x5=(p3−10p2)x2−(5p3−25p2)x

  =(p3−10p2)(px−5p)−(5p3−25p2)x=p2{(p2−15p+25)x−5p2+50}

題意より、虚数解 x の5乗 x5 が実数なので、 p2−15p+25=0 でなければならない。

これを解いて、 p=(15±5)/2

これは、0<p<20 を満たすので、ともに解である。  (終)


(別解)(1) x2=px−5p から、 xn+2=pxn+1−5px であるので、

 漸化式 tn+2=ptn+1−5pt (n=1、2、・・・) が成り立つ。

ただし、 t=α+β とおき 、t1=α+β=p 、αβ=5p である。

 よって、 t2=α2+β2=(α+β)2−2αβ=p2−10p

このとき、 t3=pt2−5pt1=p3−10p2−5p2=p3−15p2

 t4=pt3−5pt2=p4−15p3−5p3+50p2=p4−20p3+50p2

 t5=pt4−5pt3=p5−20p4+50p3−5p4+75p3=p5−25p4+125p3

題意より、 p5−25p4+125p3=p5 なので、 25p3(p−5)=0

 p≠0 なので、 p=5  (終)


(コメント) 今更ながら、 α5+β5=(α2+β2)(α3+β3)−α2β2(α+β) という
      式変形の優秀さが感じられた。



   以下、工事中!