不等式に遊ぶ(2)
高校に入学して数学を学習していく中で、中学校数学との大きな違いは、不等式の扱い
だろう。中学校では、昔に比べ不等式の扱いは軽視される傾向にあるので、高校で、巧妙
な不等式の使い回しに直面すると、意外に戸惑ってしまう生徒が多い。
まずは、軽い準備運動から。
問題 4つの実数 a、b、c、d に対して、a+b+c+d=4 が成り立つとき、少なく
とも一つは 1 以上であることを示せ。
(解) すべてが 1 より小さい、すなわち、a <1、b <1、c <1、d
<1 と仮定すると、
a + b + c + d <4 となるが、これは、条件に矛盾する。
よって、少なくとも一つは 1 以上である。 (終)
(コメント) 以前、東京女子大学の入試問題に同様の問題が出題された。背理法で考える
ことは、ごく自然な発想だろう。
それでは、次の問題はどうだろうか?
問題 すべてが 0 でない n 個の実数 a1 ≦ a2 ≦・・・≦ an が、
a1+ a2+ a3 +・・・ + an = 0
を満たすとき、 a1+ 2a2+ 3a3 + ・・・ + nan>0 が成り立つことを示せ。
上の問題で、 「 a1 、 a2 、・・・ が十分小さかったら、言えない場合があるのでは?」と思
ってしまうが、a1+ a2+ a3 +・・・ + an = 0 という条件が意外に厳しく、「そんなことはな
く、必ず成り立つ!」ことが次のようにして示される。
(解) a1 ≦ a2 ≦・・・≦ an かつ a1+ a2+ a3 +・・・ + an = 0 が成り立つので、
ある数 k ( 2≦ k ≦ n )が存在して、
a1 <0 、 a1 ≦ a2 ≦・・・≦ ak-1≦ 0 < ak≦・・・≦ an
そこで、 Am=am+ am+1 +・・・ + an ( 1≦ m ≦ n ) とおくと、
a1+ 2a2+ 3a3 + ・・・ + nan = A1+ A2+ A3+・・・+ An
= A2+ A3+・・・+ An (← A1=0 )
と書ける。
したがって、題意を示すためには、Am>0 ( 2≦ m ≦ n )を示せばよい。
2 ≦ m ≦ k−1 のとき、 Am=−(a1+ a2+ ・・・ + am-1)> 0
k ≦ m ≦ n のとき、 Am=am+ am+1 +・・・ + an> 0
以上から、 Am>0 ( 2≦ m ≦ n ) が示された。
よって、 a1+ 2a2+ 3a3 + ・・・ + nan>0 が成り立つ。 (終)
(コメント) 上記の解の中で、「Am=am+ am+1 +・・・ + an ( 1≦ m ≦ n )」を考える
ことがポイントになっている。
a1+ 2a2+ 3a3 + ・・・ + nan =a1+ a2+ a3 + ・・・ + an
+ a2+ a3 + ・・・ + an
・・・・・・・・・・・・・
+ an
という自然な発想が基本だろうが、アーベルの総和公式を用いても、自然に「Am」
が出現することが分かる。すなわち、
a1+ 2a2+ 3a3 + ・・・ + nan
=(a1+ a2+ a3 + ・・・ + an)n
−a1
−a1− a2
・・・・・・・・・・・
−a1− a2− a3 − ・・・ − an-1
=A2+ A3+・・・+ An
である。この関係を用いて、上記と同様に不等式の成り立つことが示される。
次の問題も興味深い。
問題 n 個の実数 a1 、a2 、・・・ 、an が、 a1+ a2+ a3 +・・・ + an = n を
満たすとき、 a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2 ≧ n が成り立つことを示せ。
上の問題も、 「 a1+ a2+ a3 +・・・ + an = n 」が非常に厳しい条件で、和が n だっ
たら、それぞれの平方の和は必ず、n 以上でなければならないということを示している。
0 ≦ ak ≦ 1 に対しては、 ak2 ≦ ak が成り立つので、0 ≦ ak ≦ 1 を満たす数が
相当数含まれれば、「言えない場合があるのでは?」と思ってしまうが、「そんなことはなく、
必ず成り立つ!」ことが次のようにして示される。
(解) n(a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2)−(a1+ a2+ a3 +・・・ + an)2
=(n−1)( a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2)
−2(a1,a2,・・・,an の相異なる2項の積の和)
={ (am− an)2 (但し、m≠n) の和 }≧0
よって、
n(a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2)≧(a1+ a2+ a3 +・・・ + an)2
より、 a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2 ≧ n が成り立つ。 (終)
(コメント) この問題を、数学的帰納法で証明しようとしたが、挫折してしまった!
また、シュワルツの不等式:
(a12+a22+・・・+an2)(X12+X22+・・・+Xn2)≧(a1X1+a2X2+ ・・・+anXn)2
を知っていれば、X1=X2=・・・=Xn=1 として、直ちに上記の不等式は示される。
シュワルツの不等式は、
ベクトル α =(a1,a2,・・・,an)、β =(X1,X2,・・・,Xn) において、
内積 : α ・ β =| α || β |cosθ ( θ は、 α 、 β のなす角)を用いて、
| α || β |≧| α ・ β |
と表される。
(参考文献:田島 稔 著 田島の数学T (旺文社))
シュワルツの不等式 (Σαk2)(Σβk2)≧(Σαkβk)2 を示すには、
Lagrangeの恒等式 任意の実数αk、βkに対して、
(Σαk2)(Σβk2)−(Σαkβk)2=Σ(αjβk−αkβj)2
等が用いられる。また、実数tについて、定符号の絶対不等式 | tα−β |2≧0 で判別
式を用いても簡単に示される。
Lagrangeの恒等式を証明する場合、行列式を用いて示すと見通しよく証明できる。
a=(αk)、b=(βk)とすると、Lagrangeの恒等式は、
左辺=det({a・a a・b},{b・a b・b})=Σdet({αj αk},{βj βk})2=右辺
と示される。
上記の解に対して、平成21年8月30日付けで、H.I.さんに次のような別解があることを
ご教示いただいた。H.I.さんに感謝します。(多少、文言等は修正させていただきました。)
(別解) a1、 a2、 a3、・・・、 an は実数なので、明らかに
(a1−1)2+( a2−1)2+( a3−1)2 +・・・ +( an−1)2 ≧ 0
が成り立つ。 ここで、 a1+ a2+ a3 +・・・ + an = n なので、
左辺=a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2−2(a1+ a2+ a3 +・・・ + an)+n
=a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2−n である。
よって、 a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2−n≧0 から、
a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2 ≧ n が成り立つ。 (終)
(コメント) (a1−1)2+( a2−1)2+( a3−1)2 +・・・ +( an−1)2 ≧ 0 を思いつかれ
たことに感動しました。この不等式の存在で、以後の証明が全く自然で、その美
しさは計り知れないですね!
(追記) 平成26年11月30日付け
イェンゼンの不等式のことを知っていれば、次のような別解も可能だろう。
(別解) F(x)=x2 は下に凸の関数なので、イェンゼンの不等式より、
{f(a1)+f(a2)+・・・+f(an)}/n≧f((a1+a2+・・・+an)/n)
すなわち、 (a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2)/n≧((a1+a2+・・・+an)/n)2
a1+ a2+ a3 +・・・ + an=n より、(a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2)/n≧1
よって、 a12+ a22+ a32 + ・・・ + an2 ≧ n が成り立つ。 (終)
(追記) 平成20年12月25日付け
上記の問題に関連して、次のような問題も興味深い。
問題 実数 a、b、c に対して、 a + b + c = 2 、 a2 + b2+ c2 = 4
が成り立つとき、a の最大値を求めよ。
(解) b + c = 2 − a 、 b2+ c2 = 4 − a2 なので、シュワルツの不等式より、
(12+ 12)(b2+ c2)≧(b + c)2
よって、 2(4 − a2)≧(2 − a)2 より、 3a2 − 4a −4 ≦ 0
(3a−2)(a−2)≦0 を解いて、2/3≦a≦2 より、a
の最大値は、2 (終)
(コメント) 上記のように、シュワルツの不等式を用いた解法は、変数の個数がいくつ
でも有効な方法である。
変数の個数が3個なので、次のような解法もあるが、その優劣は明らかだろう。
(別解) b2+ c2 = (b + c)2 − 2bc = 4 − a2 より、
2bc = (2 − a)2 − 4 + a2 = 2a2 − 4a
すなわち、 bc = a2 − 2a
このとき、 b 、c は、2次方程式
t2−(2−a)t+a2−2a=0
の実数解となる。よって、判別式をDとすると、
D=(2 − a)2−4(a2−2a)≧0
よって、 3a2 − 4a −4 ≦ 0 から、 2/3≦a≦2
したがって、 a の最大値は、2 (終)
(追々記) 一見して正しいかどうか判然としないが、意味が分かると正しいことが鮮やかに
理解できる次の不等式は皆さんもどこかでお目にかかっていることだろう。
問題 a≧b>0 、X≧Y>0 のとき、 aX+bY≧aY+bX が成り立つことを示せ。
また、等号が成り立つのは、 a=b または X=Y のときに限ることを示せ。
<図を用いた直感的説明> 下図をじっと見つめていると、不等式の意味が鮮やかに
理解できることでしょう。
この図を用いた証明をみたら、次のような代数的な証明は、とても味気なく感じられる。
(証明) (aX+bY)−(aY+bX)=a(X−Y)−b(X−Y)=(a−b)(X−Y)≧0
等号成立は、a−b=0 または X−Y=0 のときに限る。
代数的な証明は、紛れがない確実な証明方法だが、いろいろな人を説得するには馴染ま
ないし、その不等式の真の意味が理解されたかどうかも分からない。図で示されると、「うん、
そうだね!」と心と身体が瞬時に合点してしまうところが、図の持つ魅力なのだろう。
なお、この不等式において、 a=X 、b=Y とおくと、
a2+b2≧2ab
が得られる。これは、相加平均と相乗平均の関係式で、このことから、 aX+bY≧aY+bX
という不等式の、不等式の世界における位置づけが分かるのではないだろうか?
(参考文献: 西元教善 著
相加相乗平均の不等式を産み出す根源的不等式について (数研通信))
(追々々記) 平成19年7月7日付け
今日は七夕。習い事の上達を願った行事も今ではすっかり商業イベントと化している。小
学校時代、笹の葉に願い事を書いた短冊をくくりつけたのが懐かしい。(閑話休題)
実数 x、y、z に対して、不等式 x2+y2+z2≧xy+yz+zx が成り立つことは、受
験問題集を紐解いた方なら誰でも1度はお目にかかっていると思う。
証明は易しいが、初めてその証明に触れる方には若干敷居が高いかもしれない。
2(x2+y2+z2−xy−yz−zx)=(x−y)2+(y−z)2+(z−x)2≧0 より、
x2+y2+z2≧xy+yz+zx
が成り立つ。特に、上記の証明から明らかなように、等号が成り立つのは、x=y=zのとき
に限る。
最近、この有名な不等式の隙間を埋める式があることを知った。
実数 x、y、z に対して、
前半の不等号は、シュワルツの不等式
(a2+b2+c2)(x2+y2+z2)≧(ax+by+cz)2
から自明だろう。( a=b=c=1 とおけばよい。)
後半の不等号は、不等式
x2+y2+z2≧xy+yz+zx そのものである。
上記の不等式の前半部分を書き直すと、
すなわち、
であるが、さらに、実数 x、y、z を正の数に限定すると、
が成り立つので、結局、正の数 x、y、z に対して
であることが分かる。
上記の推論の流れの中で、
という不等式は自明とは言えないだろう。
(証明) 3(x3+y3+z3)−(x2+y2+z2)(x+y+z)
=2x3+2y3+2z3−x2y−xy2−y2z−yz2−z2x−zx2
=(x3−x2y−xy2+y3)+(y3−y2z−yz2+z3)+(z3−z2x−zx2+x3)
=(x−y)(x2−y2)+(y−z)(y2−z2)+(z−x)(z2−x2)
=(x−y)2(x+y)+(y−z)2(y+z)+(z−x)2(z+x)≧0
より、不等式の成り立つことが示された。
等号が成立するのは、x=y=z のときに限る。 (証終)
(追記) 平成26年11月30日付け
上記の不等式
は、イェンゼンの不等式より自明であろうが、次のような示し方もある。
x、y、z が正数のとき、 9(x3+y3+z3)≧(x+y+z)3 が成り立つ。
(証明) シュワルツの不等式 (a2+b2+c2)(x2+y2+z2)≧(ax+by+cz)2 で、
a=b=c=1 とおけば、 3(x2+y2+z2)≧(x+y+z)2
さらに、シュワルツの不等式 (a2+b2+c2)(x2+y2+z2)≧(ax+by+cz)2 で、
a、b、c に、x3/2、y3/2、z3/2 を代入、x、y、z に、√x、√y、√z を代入して、
(x3+y3+z3)(x+y+z)≧(x2+y2+z2)2
よって、 (x3+y3+z3)(x+y+z)≧(x+y+z)4/9 より、
9(x3+y3+z3)≧(x+y+z)3 (証終)
この不等式は、次のように一般化される。
正の数 x、y、z と自然数 m、n に対して
証明は上記と同様である。
(証明) 3(xm+n+ym+n+zm+n)−(xm+ym+zm)(xn+yn+zn)
=2xm+n+2ym+n+2zm+n−xmyn−xnym−ymzn−ynzm−zmxn−znxm
=(xm+n−xmyn−xnym+ym+n)+(ym+n−ymzn−ynzm+zm+n)
+(zm+n−zmxn−znxm+xm+n)
=(xn−yn)(xm−ym)+(yn−zn)(ym−zm)+(zn−xn)(zm−xm)
ここで、証明すべき不等式は、 x、y、z に対して対称なので、 x≧y≧z としても
一般性を失わない。このとき、 xm≧ym≧zm 、xn≧yn≧zn なので、
(xn−yn)(xm−ym)+(yn−zn)(ym−zm)+(zn−xn)(zm−xm)≧0
より、不等式の成り立つことが示された。
等号が成立するのは、x=y=z のときに限る。 (証終)
(コメント) 均整のとれた美しい不等式ですね!
上記で示した不等式: 正の数 x、y、z に対して
を一般化すれば、
正の数 x、y、z と自然数 n に対して
となる。(←とても美しい不等式ですね!)
この事実は、関数 F(x)=xn (n>1)が凸関数であることを用いて示される。
まず、凸関数のことをまとめておこう。
関数 y=F(x) が凸関数であるとは、そのグラフが凸図形のときをいう。直観的には、グ
ラフ上の任意の点で、その点を通る直線を引き、グラフがその直線の片方にのみあるよう
に出来る場合をいう。(→ 参照 : 凸図形の基礎知識)
また、凸関数のグラフは次の性質を持つ。
グラフ上の任意の2点 A、B を結ぶ線分ABにおいて、線分AB上の任意の点
P はグラフ
上または上方(グラフ上または下方)にある。
放物線 y=x2 や y=−x2 のグラフをイメージすれば理解しやすいだろう。
y=x2 は、下に凸な関数、y=−x2 は、上に凸な関数である。
このことを不等式を用いて表せば以下のようになる。
y=F(x) が下に凸な関数であるとき、
グラフ上の任意の2点 A(a,F(a))、B(b,F(b)) と実数 t (0≦t≦1)に対して、
(1−t)・F(a)+t・F(a)≧F((1−t)a+tb)
が成り立つ。(上に凸な関数も同様で、この場合は不等号は逆向きになる。)
例 不等式 |x+y|≦|x|+|y| が成り立つことを示せ。
この不等式は通常は両辺の平方の差をとることにより示されるが、凸関数の性質を用い
れば、その意味が明らかとなる。
(証明) 関数 F(x)=|x|は下に凸な関数なので、実数 t (0≦t≦1)に対して、
(1−t)|x|+t|y|≧|(1−t)x+ty|
ここで、 t=1/2 とすれば、明らかに、
|x|+|y|≧|x+y|が成り立つ。 (証終)
(コメント) 単なる代数の問題と思いきや関数の性質と密接に関係しているとは数学は奥
が深いですね。
上記では、凸関数のグラフ上の2点に関する不等式を示したが、3点の場合は次のよう
になる。(→ 参考 : イェンゼンの不等式)
y=F(x) が下に凸な関数であるとき、
グラフ上の任意の3点 A(a,F(a))、B(b,F(b))、B(b,F(b))
に対して、
実数 p、q、r が、 p、q、r≧0 、p+q+r≠0 を満たすとき、
が成り立つ。
p+q=1、r=0 の場合が丁度2点の場合である。
証明は、下図
において、△ABCの内部および周上の点Pの座標が
(ただし、 p、q、r≧0 、p+q+r≠0 )
と表されることから明らかであろう。
この公式を用いれば、正の数 x、y、z と自然数 n に対して、関数 F(x)=xn は下に凸
な関数なので、
となることが容易に分かる。
さて、不等式 |x+y|≦|x|+|y| を用いた応用で、次の不等式は面白い。
a、b が実数のとき、
この証明を代数的に処理するのは大変そうなので、やはり関数の性質のご厄介になった
方がよさそうだ。
(証明) 関数 F(x)=x/(1+x) に対して、その導関数 F’(x)=1/(1+x)2>0 なので
単調に増加する。 よって、 |a+b|≦|a|+|b| なので、
が成り立つ。
また、関数 G(x)=1/(1+x) に対して、その導関数 G’(x)=−1/(1+x)2<0
なので単調に減少する。
よって、|a|≦|a|+|b|、|b|≦|a|+|b|なので、
が成り立つ。 このとき、
なので、
が成り立つ。 (証終)
(コメント) 証明の方法がとても新鮮ですね!
当HPがいつもお世話になっているHN「よおすけ」さんからの出題です。
(平成24年1月16日付け)
問題 x、y、z は正の実数で、xyz=4 のとき、
(x+y+z){x3/(x+y)+y3/(y+z)+z3/(z+x)}≧18
を証明しなさい。
xyz=1 ならば、「Nesbitt の不等式」で紹介されている不等式の解法真似たらできるかも
しれませんが、ここの式には、x3 があったり、xyz=4 だからどうやったらいいのか分からず
...。
FNさんが証明されました。(平成24年1月17日付け)
「相加平均≧相乗平均」だけでできます。
(解) x+y+z=s、xyz=t とおく。
P=x3/(x+y)+y3/(y+z)+z3/(z+x) とおくと、「相加平均≧相乗平均」より、
P≧3{x3y3z3/(x+y)(y+z)(z+x)}1/3=3xyz/{(x+y)(y+z)(z+x)}1/3
=3t/{(x+y)(y+z)(z+x)}1/3
再び、「相加平均≧相乗平均」より、
{(x+y)(y+z)(z+x)}1/3≦{(x+y)+(y+z)+(z+x)}/3=2s/3
逆数をとって、 1/{(x+y)(y+z)(z+x)}1/3≦3/(2s)
よって、 左辺=sP≧s・9t/(2s)=9t/2
t=4 なので、 左辺≧18 (終)
(※) xyz=4 というのはちょっと変な設定ですね。xyz=1かxyz=2でいいと思います。
よおすけさんからのコメントです。(平成24年1月17日付け)
FNさん、解答ありがとうございます。あの問題は、2007年ごろ当時高校1年生だった子が
運営していたサイトで紹介された自作問題の1つです。正解の場合は経験値10を与える、
というものでした。現在はリンク切れか閉鎖のためサイトは消えてしまいました。作った本人
によると解くのに3日かかったとのことです。
よおすけさんからのコメントです。(平成24年1月17日付け)
FNさんの解答を見て、「Nesbitt の不等式」のページの解法の過程を見ていたら、次のよう
にできました。
(解) 「相加平均≧相乗平均」の関係より、
2(x+y+z)=(x+y)+(y+z)+(z+x)≧3{(x+y)(y+z)(z+x)}1/3
x3/(x+y)+y3/(y+z)+z3/(z+x)≧3xyz/{(x+y)(y+z)(z+x)}1/3
両辺をそれぞれかけて、
2(x+y+z){x3/(x+y)+y3/(y+z)+z3/(z+x)}≧9xyz
なので、 (x+y+z){x3/(x+y)+y3/(y+z)+z3/(z+x)}≧(9/2)xyz
よって、 xyz=4 を代入すると、
(x+y+z){x3/(x+y)+y3/(y+z)+z3/(z+x)}≧18
等号成立は、x+y=y+z=z+x すなわち、 x=y=z のとき成り立つ。
ここでは、x=y=z=41/3 (終)
FNさんからのコメントです。(平成24年1月18日付け)
よおすけさんの解法の方が自然でいいですね。
x+y+z というのは、(x+y)+(y+z)+(z+x) の半分だったのですね。このことに気がつ
けば簡単ですが、気がつきませんでした。
(A+B+C)(x3/A+y3/B+z3/C)≧9xyz
と書いてみると、ほとんど明らかに見えます。コーシー・シュワルツの感じもしますが、「相加
平均≧相乗平均」の関係を2回の方がいいようです。
どうでもいいことですが、xyz=4 という条件が謎です。xyz=1 か
2 とするか、右辺が、
(9/2)xyz の式のままかが普通でしょう。あるいは、x+y+z=1 のときをつけて左辺を
もう少し見やすくするか...。