Nesbitt の不等式                         戻る

 世の中に、「・・・の不等式」と言われるものは多々ある。次の不等式は、以前、問題集で
解いたような覚えがあるのだが、それが、「Nesbitt の不等式」であるということを最近知っ
た。

Nesbitt の不等式

    a>0 、b>0 、c>0 のとき、

            

  等号成立は、 a=b=c の場合に限る。


(証明) 相加平均と相乗平均の関係から、

         

         

   2式を辺々掛けて整理すると、

         

   左辺を展開して、

         

    よって、
           

   が成り立つ。

    等号成立は上記より、 a+b=b+c=c+a すなわち、 a=b=c の場合に限る。
                                                  (証終)

 上記証明は、少し技巧的かもしれない。もう少し素直な証明を考えてみよう。

(別証) b+c=x 、c+a=y 、a+b=z 、 とおくと、 a+b+c=(x+y+z)/2

   このとき、 a=(x+y+z)/2−x=(−x+y+z)/2

          b=(x−y+z)/2  、 c=(x+y−z)/2

   よって、 a/(b+c)+b/(c+a)+c/(a+b)

       =(−1+y/x+z/x)/2+(x/y−1+z/y)/2+(x/z+y/z−1)/2

       =(x/y+y/x)/2+(y/z+z/y)/2+(z/x+x/z)/2−3/2

       ≧1+1+1−3/2=3/2

   等号成立は、 x/y=y/x 、y/z=z/y 、z/x=x/z すなわち、 x=y=z より、

   a=b=c の場合に限る。  (別証終)

(コメント) この別証だと、十分高校2年生レベル相当ですね!


 上記不等式において、さらに、a、b、c が三角形の三辺の長さであるとき、次の不等式

         

が成り立つ。

 一見して自明ではないので、証明を与えておこう。

(証明) 2s=a+b+c とおくと、a、b、c は三角形の3辺の長さなので、 a<b+c より、

     2s=a+b+c<2(b+c) すなわち、 s<b+c が成り立つ。

    同様にして、 s<c+a 、 s<a+b も成り立つ。

    よって、
           

    が成り立つ。(証終)


 図形とも関連があるようで、1997年数学オリンピックの問題では次のような形で出題さ
れている。

 凸6角形ABCDEFにおいて、AB=BC、CD=DE、EF=FA とする。

  このとき、

     BC/BE+DE/DA+FA/FC≧3/2

  が成り立つことを示せ。

   また、等号が成り立つのはどのような場合か
  答えよ。









(証明) 四辺形EABCにおいて、トレミーの不等式から、

       AE・BC + AB・CE ≧ AC・BE

   等号成立は、四辺形EABCが円に内接するときに限る。

  問題の条件より、 AB=BC なので、 BC・(AE+CE) ≧ AC・BE

   ここで、AC = a 、CE = b 、AE = c とおくと、  BC/BE ≧ a/(b+c)

  同様にして、 DE/DA ≧ b/(c+a) 、FA/FC ≧ c/(a+b)

 よって、 BC/BE+DE/DA+FA/FC≧

 等号成立は、 a=b=c かつ B=D=F=120° の場合に限る。

 すなわち、凸6角形が正6角形の場合に限る。 (証終)


(コメント) 上記証明とは異なる、もっと初等的な解法を発見された方、是非こちらまでご教
      示下さい。

(追記) 平成18年8月23日付け

 Nesbitt の不等式を一般化したものとして、次の「Shapiro inequality」が知られてい
る。(Koro(2002年))

    1>0 、x2>0 、 ・・・ 、xn>0 で、

  n≦12 または n は奇数で n≦23 のとき、

            


(コメント) 不等式は美しいのに、n の条件が少し意味深...ですね!