軌跡について
当HPの読者のK.S.さんより、平成23年11月11日付けで標記話題をメールで頂いた。
2次曲線のうち、楕円は、「2定点からの距離の和が一定な点の軌跡」として定義される。
その計算は、多くの教科書、書籍に載っているので省略することにしよう。
2次曲線のうち、双曲線は、「2定点からの距離の差が一定な点の軌跡」として定義される。
その計算は、多くの教科書、書籍に載っているので省略することにしよう。
それでは、「2定点からの距離の商が一定な点の軌跡」として定義される曲線はどんな図形
だろうか。
これについても、高校2年生であれば、数学IIの「図形と方程式」の単元で学ぶアポロニウ
スの円となることはご存じだろう。
すなわち、 PA/PB=m のとき、点Pは線分ABを、m : 1 に内分、外分する点を直径
の両端とする円となる。
2次曲線の放物線、楕円、双曲線は、円錐の切断により得られる。
円錐面 x2+y2−z2=0 と平面 ax+by+cz+d=0 の共有点は、
a=b=0 、z=r のとき、 切断面は 円 となる。
a=c=0 、y=r のとき、 切断面は 双曲線 となる。
a=0 、b=±c のとき、 切断面は 放物線 となる。
a=0 、b≠±c のとき、 切断面は 楕円 となる。
「2定点からの距離」の「和」、「差」、「商」ときて、「積」の場合はどんな図形を表すのだろう
か?
2定点を、A(−c,0)、B(c,0)とし、 AP・BP=a2 (一定) とする。
P(x,y) とすると、条件より、 {(x+c)2+y2}{(x−c)2+y2}=a4
このとき、 (x2−c2)2+2(x2+c2)y2+y4=a4 より、
x4+2x2y2+y4−2c2x2+2c2y2+c4−a4=0
よって、 (x2+y2)2−2c2(x2−y2)+c4−a4=0
ここで、 a=c のとき、レムニスケートとなる。(→ 参考:「連珠形」)
これは、トーラス の切断面になる。
(→ 参考「忘れられない先生」)
(追記) 令和6年11月13日付け
次の東北大学 理系(1985)の問題は、なかなかよく練られた問題で感心させられる。
問題5 曲線C:x=t+sint 、y=cost−1 上の媒介変数 t (0<t<π)に対応する点をP
とする。
(1) C上の2点O(0,0)とPの間の弧の長さLを求めよ。
(2) PでのCの接線上に点QをPより左側に、PQ=Lとなるようにとる。Qの座標を求めよ。
(3) Pが 0<t<π の範囲で動くとき、Qの描く曲線はCのπ<t<2πの部分と合同になる
ことを証明せよ。
(解)(1) x’=1+cost 、y’=−sint より、(x’)2+(y’)2=2(1+cost)=4cos2(t/2)
このとき、L=2∫0t cos(t/2)dt=4[sin(t/2)]0t=4sin(t/2)
(2) 接線の方向ベクトルは、(1+cost,−sint)
P(x,y)、Q(X,Y)とおくと、 (X−x,Y−y)=k(1+cost,−sint) で、題意より、k<0
(X−x)2+(Y−y)2=2k2(1+cost)=4k2cos2(t/2)=16sin2(t/2) より、
k=−2tan(t/2) である。
よって、 X=t+sint−2tan(t/2)(1+cost)=t+sint−4tan(t/2)cos2(t/2)=t−sint
Y=cost−1+2tan(t/2)sint=cost−1+4sin2(t/2)=cost−1+2(1−cost))=1−cost
以上から、 Q(t−sint,1−cost) となる。
(3) 曲線C:x=t+sint 、y=cost−1 の π<t<2π の部分をKとおく。
t−π=s とおくと、 0<s<π で、
t+sint=π+s+sin(π+s)=π+s−sins
cost−1=cos(π+s)−1=−coss−1
そこで、Kを x 軸方向に −π、y 軸方向に2だけ平行移動すると、
x=s−sins 、y=1−coss となり、これは、点Qが描く図形を表す。
したがって、Pが 0<t<π の範囲で動くとき、Qの描く曲線は、
Cのπ<t<2πの部分と合同になる。 (終)
(コメント) なかなか含蓄のある良問でした。
以下、工事中!