ジャンケンの確率                           戻る

 当HPで、ジャンケンに関する話題を拾ってみると、

     「電話でジャンケン」     「ジャンケンの極意

があげられる。ジャンケンは、誰もなり手のない係を決めるときや掃除の後のゴミ捨て、片
付けをする人などを決めるときによく利用される方法である。

 ジャンケンにも、「気持ちのいいジャンケン」というものがあるように思う。

 ジャンケンは、「あいこ」になると再度ジャンケンとなるが、ある瞬間、「一人だけ勝ち抜け」
という場合が往々にして起こる。それまで混沌として、ある瞬間混沌に終止符が打たれる様
はとても美しく感じられる。

 このページでは、その美しい瞬間がどのような確率で起こり得るのかを計算したいと思う。

 問 題 設 定

  3人がジャンケンを繰り返し、k 回目に初めてちょうど1人が勝つ確率を求めよ。
 ただし、途中で負けた人は、次回のジャンケンには参加しないものとする。



 3人が1回ジャンケンをして、1人だけ勝つ確率は、(誰が勝つのか)、(勝ちパターン)を
考えて、
       3×3/33=9/27=1/3

 2人だけ勝つ確率は、1人だけ負ける確率に等しく、 1/3

 勝負が決まらず、次回に勝敗が持ち越される場合(あいこ)は、 1−1/3−1/3=1/3

 以上から、1回目に初めてちょうど1人が勝つ確率は、1/3 となる。

 問題設定では、これが、 2回目、3回目、4回目、・・・ で初めてちょうど1人が勝つ確率
を求めたいということである。

 急所は、ジャンケンの途中で、最初の3人から2人または1人になる瞬間があるという点
である。

 2人が1回ジャンケンをして、1人だけ勝つ確率は、(誰が勝つのか)、(勝ちパターン)を
考えて、
       2×3/32=6/9=2/3
である。

 勝負が決まらず、次回に勝敗が持ち越される場合(あいこ)は、 1−2/3=1/3 となる。

 次に、2回目に初めてちょうど1人が勝つ確率を求めてみよう。

 2つの場合が考えられる。

(1) 1回目があいこで、2回目に1人だけ勝つ場合

     その確率は、 1/3×1/3=1/9

(2) 1回目のジャンケンで1人が負け、2回目に1人が勝つ場合

     その確率は、 1/3×2/3=2/9

 したがって、2回目に初めてちょうど1人が勝つ確率は、 1/9+2/9=1/3

 上記の計算を一般化するのは容易だろう。

(解) k回目に初めてちょうど1人が勝つ場合は、2つの場合が考えられる。

(1) k−1回まであいこで、k回目に1人だけ勝つ場合

     その確率は、 1/3k-1×1/3=1/3

(2) 途中の h回目(1≦h≦k−1)のジャンケンで1人が負け、k回目に1人が勝つ場合

     その確率は、

       h=1 のとき、 1/3×1/3k-2×2/3=2/3

       h=2 のとき、 1/3×1/3×1/3k-3×2/3=2/3

       h=3 のとき、 1/3×1/3×1/3×1/3k-4×2/3=2/3

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

       h=k−1 のとき、 1/3k-2×1/3×2/3=2/3

    より、 2(k−1)3 となる。

 以上から、求める確率は、 2(k−1)3+1/3=(2k−1)/3 である。 (終)


(追記) 平成22年9月13日付け

 当HPの掲示板「出会いの泉」に、HN「Σ」さんから、

 『A、B、Cの三人でジャンケンをする。負けたものは次回から除外するが、じゃんけんの
回数は最大でn回である。この時A一人が勝ち残る確率は?』という問題に手も足もでま
せん。


という書き込みがあった。この書き込みで、このページがすっかり放置されていたことに気
づかされた。Σさんに感謝します。

 この問題について、早速、当HPがいつもお世話になっているHN「らすかる」さんが解か
れた。(平成22年9月14日付け)

 上記で計算されているように、

 3人でジャンケンをすると、一人勝ち、二人勝ち、あいこの確率は、1/3ずつ

 2人でジャンケンをすると、勝負がつく確率は、2/3 で、あいこの確率は、1/3

が、この問題で用いられる基本の確率である。

(解法1)

 ちょうど k 回のジャンケンで誰か一人が勝つ確率は、

  k−1回あいこの後、k回目で一人勝ち : (1/3)k=1/3k

  k−1回目までで二人残り、k回目で一人勝ち :

          (k−1)(1/3)k-1・(2/3)=2(k−1)/3k

  両方合わせて、 (2k−1)/3k なので、Aが勝ち残る確率は、

         

  実際に、 S=1/32+3/33+5/34+・・・+(2n−3)/3+(2n−1)/3n+1 とおくと、

        S/3=1/33+3/34+5/35+・・・+(2n−3)/3n+1+(2n−1)/3n+2

  辺々引いて、 2S/3=1/32+2/33+2/34+・・・+2/3n+1−(2n−1)/3n+2

               =(2/32)(1−1/3)/(1ー1/3)−1/32−(2n−1)/3n+2

               =(2・3−2n−2)/3n+2

  より、
        

  が成り立つ。


(解法2)

 n回のジャンケンで、3人とも残っている確率は、1/3

 n回のジャンケンで、ちょうど2人残っている確率を P(n) とすると、

  n+1回のジャンケンで、ちょうど2人残るのは、

  n回のジャンケンで、ちょうど2人残って、次が引き分け

   または

  n回のジャンケンがすべてあいこで、次がちょうど2人残る

 という場合なので、次の漸化式が成り立つ。

   P(0)=0 、 P(n+1)=P(n)・(1/3)+(1/3)・(1/3)

 このとき、 3n+1P(n+1)=3P(n)+1 より、 3P(n)=3P(1)+n−1=n なので、

   P(n)=n/3 となる。

 n回のジャンケンで、2人以上残っている確率は、1/3+n/3=(n+1)/3

  よってAが勝ち残る確率は、

     (1−(n+1)/3)/3

 すなわち、
        

 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんより別解を頂きました。
                                      (平成22年9月14日付け)

 らすかるさんの解法が本来の解答ですが、別解として次のようなのもあります。

(解法3)

 Aが勝ち残る確率とBが勝ち残る確率、Cが勝ち残る確率は等しい。

 n回終わった時点で、3人とも残っている確率は、 1/3

 n回終わった時点で、2人が残っているのは、1回からn回のうちのどこかで2人が勝ち、

 残りはすべて引き分けのときだからその確率は、n(1/3

  従って、求める確率は、{1−(n+1)(1/3)}/3 すなわち、

                 

 らすかるさんからのコメントです。(平成22年9月14日付け)

 その解法の方がはるかに簡単ですね。私の解法のややこしい計算は不要でした。

(コメント) 確かに漸化式は不要でしたね!でも、漸化式による解法も捨てがたいです。


 また、この問題に関連して、FNさんが次の問題を提起された。(平成22年9月14日付け)

 3人でジャンケンをする。負けたものは次回から除外する。1人が勝ち残るまでジャ
ンケンをするとき、ジャンケンの回数の期待値は?


 ちょうどk回目で1人が勝ち残る確率は、(2k−1)/3k なので、k(2k−1)/3k を k=1
から∞までΣ計算すればいいのですが、面倒だからエクセルを使って数値計算をしました。
2.25になりました。だから、答えは、9/4 だと思われます。上のΣ計算は面倒です。き
れいな数値なのでもっと簡単に出るような気がします。

 これに対して、らすかるさんが解決された。(平成22年9月14日付け)

 3人の時、勝負が付く確率は、2/3なので、最初に勝負が付くまでの回数の期待値は、

 3/2回である。その時に、2人が残る確率は、1/2で、2人の時、勝負が付く確率は、2/3

 なので、2人の時に勝負が付くまでの回数の期待値は、3/2回

  よって求める期待値は、 (3/2)+(1/2)・(3/2)=9/4 である。

※昔考えた覚えがあると思って検索したら、ここにありました。

    http://kakuritsu.hp.infoseek.co.jp/janken2.html

 FNさんからのコメントです。(平成22年9月14日付け)

 やはりΣ計算を真面目にやらなくてもいいということですね。n人でジャンケンをして、あい
こにならない確率が、(2−2)/3(n-1)というのも始めて見ました。以外に簡単できれいな
式であるのに驚きました。(→ 参考

 じゃんけんの回数の期待値について、FNさんより別解を頂いた。
                                      (平成22年9月15日付け)

 次のような考え方でもできました。実質的には、らすかるさんの解答と同じかもしれません
が...。

(別解) 求める期待値を E とし、ジャンケンを1回した後での、残りのじゃんけん回数の期
     待値を考える。

      ジャンケンを1回したとき、

       (1) 1人が勝つ  (2) 2人が勝つ  (3) あいこ

     の各場合があり、確率はいずれも 1/3 である。

      それぞれの場合の残りのジャンケン回数の期待値は、

       (1) 0   (2) 2人でジャンケンするときの期待値で、3/2・・・ (*)  (3) E

   従って、次の式が成り立つ。 E=1+1/3・0+(1/3)・(3/2)+(1/3)・E

      (2/3)E=3/2 より、 E=9/4

   上記の(*)について、(2)のとき、即ち、2人でジャンケンをするときの勝負がつくまでの

   ジャンケン回数の期待値は次のようにして求められたものである。

  ジャンケンを1回したとき、

    (1) どちらかが勝つ  (2) あいこ

  のどちらかで、確率はそれぞれ 2/3  1/3

  また、それぞれの場合の残りのジャンケン回数の期待値は、それぞれ 0  E

  従って、 E=1+2/3・0+(1/3)・E より  (2/3)E=1  ゆえに、E=3/2


 n人のときの漸化式(らすかるさんが参考として書かれたページにある)も同様にできます。
少し変えて、

3人でジャンケンをして1位、2位、3位を決める。このときのジャンケンの回数の期
待値は?


 これもほぼ同様にできますが、答えが、3になります(多分)。3という非常にきれいな答え
なのでほとんど計算しないで説明できるのではないかと思います。いかがでしょうか。数学
的には少々あやしげでもかまいません。


 らすかるさんから解答を頂きました。(平成22年9月15日付け)

 3というきれいな数になるのはたまたまじゃないですかね。

 3人でジャンケンをして勝負がつく確率は、2/3
                      (勝負がつけば1人決まって残り2人になる)

 2人でジャンケンをして勝負がつく確率は、2/3

   ∴ 1/(2/3)+1/(2/3)=3(回)

ですね。

 FNさんからのコメントです。(平成22年9月16日付け)

  1/(2/3)+1/(2/3)=3(回) という式で十分なようですね。3人の場合は、「2人と1人
にわかれて2人で勝負する」順しかないから、2人と1人になるまでの回数 1/(2/3)=3/2
と2人での勝負の回数 1/(2/3)=3/2 の足し算で、3になったということのようです。
3人のとき3回というのは偶然ですね。4人以上だとこんなに単純にはいきません。だから、
あまり簡単な結果にはならないということのようです。


 HN「らい」さんが、この話題について考察されました。(平成23年11月7日付け)

 3人でn回ジャンケンをして、勝者が決まる確率を求める問題が学校の試験で出て、さら
に研究したことがあるのですが、

  n人でジャンケンをして、m回で勝者が決まる確率

について考えました。

 求める確率を P(n,m) とし、一回のジャンケンで、n人のうち k 人が抜ける(負ける)確
率を、P’(n,k)とおく。(P’(n,0)は、あいこを意味する)

 このとき、

  P(n,m)= P’(n,0)m-1 + Σk=1〜n-2j=1〜m-1P’(n,0)j-1・P’(n,k)P(n-k,m-j))

という式が得られました。

これを変形すると、 P(n,m+1) - P’(n,0)P(n,m)=Σk=1〜n-2P’(n,k)P(n-k,m)

ただし、P(2,m)=2/3 、 P(n,1)=n/3n-1

P’(n,0)=(3n-1-2n+2)/3n-1 、 P’(n,k)=nCk/3n-1  (1≦k<n)

 以前研究した時に、これ以上進めることができず、断念してしまったのですが、さらに効率
よく計算できる漸化式にすることはできるでしょうか?


 FNさんからのコメントです。(平成23年11月7日付け)

 最初の式はよくわかりません。普通に考えれば、最後の式がすぐ出ます。1回ジャンケンを
して、k人が負けたとして自然に出ます。ただし、m≧1。

 左辺の第2項は、右辺にあるのが自然です。

 P(n,m+1)=Σk=0〜n-2P’(n,k)P(n-k,m)  (m=0 のときは、Σは、k=0 から n-1まで)

ついでに、P’という記号は、Pに近いというイメージがあります。今の場合、P’とPは相当違
う感じなので、別の文字の方がいいと思います。例えば、Q(n,k)。

 また、初期条件は理論的には、P(1,m)=0 、 P(n,1)=n/3n-1 としたい気もしますが、実
用的には上記の方がいいでしょう。

Q(n,k)=P’(n,k) が具体的に書けてしまうとなると、上の漸化式で十分で、さらに効率がい
い式というのは多分ないでしょう。


(追記) 平成28年11月11日付け(本日は、ポッキーの日!)

 ジャンケンをするとき、経験的に人数が多いとあいこになる確率は大きくなる。そこで、あ
いこになる確率を求めてみたい。

 多人数でジャンケンするとき、「最初はグー!ジャンケンポン」とかけ声をかけて行うのが
全国的に一般的だと思われるが、これはTBS系で一世を風靡した「8時だヨ!全員集合」の
中の志村けんと仲本工事のコントでのジャンケン方法が起源との噂。

 ジャンケンで、「パー、グー、チョキ」の順で出すのが、統計的に最も簡単な必勝法らしい。
(→ 参考:「ジャンケンの極意」)

 何となく「グー」が出しやすいからだし、あいこになったら
、負ける手を次に出せばいいらしい。
ただし、「最初はグー!」でジャンケンを始める場合は、「チョキ、パー、グー」の順で出すとい
いらしい。


問題 n人がジャンケンをするとき、あいこになる確率を求めよ。

(解) n人がジャンケンするとき、手の出し方は、3通り

 手の出し方の種類(グー・チョキ・パー)が1種類または3種類だと必ずあいこになるので、

あいこにならないためには、手の出し方の種類(グー・チョキ・パー)は2通り。

 よって、あいこにならない場合の確率は、 3(2−2)/3=(2−2)/3n-1 なので、

 あいこになる確率は、 1−(2−2)/3n-1 (終)

例 上記の公式を用いて、

 n=2 のとき、あいこになる確率は、
   1−(2−2)/3n-1=1−(4−2)/3=1/3(=0.33)

 n=5 のとき、あいこになる確率は、
   1−(2−2)/3n-1=1−(32−2)/81=1−10/27=17/27(=0.63)


(コメント) 人数が増えると、あいこになる確率が増えるので、早くジャンケンを終わらせよう
      と思えば、次のような「ゲーマーじゃんけん」という方法があるようです。

(ルール1) 3種類の手のうち、少ない人数の方を勝ちとする。

(ルール2) 少ない人数の手が同数のときは、その手に普通のジャンケンのルールを適用
       して勝敗を決める。

 このゲーマーじゃんけんでは、あいこになる場合は全員が同じ手の場合だけなので、早く
勝敗が決まるという利点がある。

 普通のジャンケンで、n=5 のとき、あいこになる確率は、17/27(=0.63)ですが、ゲ
ーマーじゃんけんでは、あいこになる確率は、3/243=1/81(=0.01)で、圧倒的にあい
こになる確率が減り、ジャンケンも早く終わることになります。



    以下、工事中