・ これも三平方?                   S.H氏
直角三角形
   直角三角形においては、a2+b2=c2 が成り立つ。(三平方の定理)
  (a,b,c)=(3,4,5)、(5,12,13)、(7,24,25)、・・・などが、よ
  く知られたピタゴラス数である。
   この式と似たような現象が、内角120度の鈍角三角形でも起こる。


内角120度の鈍角三角形   左図において、2+a・b+b2=c2 が成り立つ。
  (証明は、余弦定理から明らか)

     32+3・5+52=72
     2+7・8+82=132
    132+13・35+352=432

  など、美しい数の配列が続くと、思わず感動してしまう。


 攻略法さんが、この話題を一般化された。(平成23年8月8日付け)

問 題 2+a・b+b2=c2 を満たす自然数の組 (a,b,c) を求めよ。

答えは、(a,b,c)=(3,5,7)、(7,8,13)、 (13,35,43)、・・・ など

(解) 「特殊なピタゴラス数」のように、2数を限定させる。

  a=x−1、b=x+1 とすると、与式は、 (x−1)2+(x−1)(x+1)+(x+1)2=c2

  よって、 c2=3x2+1 より、 c2−3x2=1 ← ペル方程式2−N・y2=±1

 これを解いて、 (c,x)=(2,1)、(7,4)、(26,15)、(97,56)、・・・

 これから、(a,b,c)を求めると、

(c,x)=(7,4) のとき、 (a,b,c)=(3,5,7)

(c,x)=(26,15) のとき、 (a,b,c)=(14,16,26) → (7,8,13)

(c,x)=(97,56) のとき、 (a,b,c)=(55,57,97)

(→ 参考:「辺と角の美しい関係U」、「ピタゴラス数の発見」)


 FNさんも、この話題を一般化された。(平成23年8月8日付け)

 ピタゴラス数の場合(→「ピタゴラス数の発見」に概略がある)と同様にして、一般解を求め
ることがほぼできるようです。

 2+a・b+b2=c2 ・・・(1) の両辺を c2 で割って、a/c=x、b/c=y と置くと、

   2+x・y+y2=1 ・・・(2)

 まず、(2)の有理数解を求める。

 (2)上の点 (−1,0)を通る傾き t の直線 y=t(x+1) と(2)との交点を求める。

代入して、 2+x・t(x+1)+t2(x+1)2=1 より、

   (t2+t+1)2+(2t2+t)x+t2−1=0

 これが、x=−1を解に持つことはわかっているので、因数分解して、

   (x+1){(t2+t+1)x+t2−1}=0

よって、x=−1以外の解として、 x=(1−2)/(t2+t+1)

 このとき、 y=(2+2t)/(t2+t+1)

 これはもちろん(2)の解で、t を有理数にすれば、x、y も有理数になる。

 逆に、(2)を満たす有理数 x、y に対して、 t=y/(x+1) とおけば、x、y は上記の式で得

られるから、すべての有理数解はこのようにして得られる。

 ただし、(x,y)=(−1,0)、(−1,−2)は除く。

 上の x、y に、t2+t+1 をかけると、それぞれ 1−2 、2+2t となる。

これらを a、b とし、c=t2+t+1 とおけば、a、b、c は、(1)を満たす。

 t=n/m とおいて、a、b、c に代入し、これらに m2 をかけたものを改めて a、b、c とする

と、 a=m2−n2 、b=n2+2mn 、c=n2+mn+m2 (0<n<m)

 これらは、(1)の自然数解である。

 m、n が小さい値のときの a、b、c は、次のようになる。

13
16 19
15 21  → 3で割ると、 5 3 7
33 37

 上の m=4、n=1 のときのように、m、n が互いに素であっても a、b、c が公約数をもつ
ことがあります。ピタゴラス数の場合も同じことはおきますが、m、n の一方は偶数とすること
によって回避できます。

 (A) m、n は互いに素な整数とする。

     a=m2−n2 、b=n2+2mn 、c=n2+mn+m2

   の最大公約数は、1または3である。


 これは正しいでしょうか。もし正しければ、どういう場合に 1、3 になるかを含めて証明して
ください。正しくないなら反例を挙げて下さい。


 FNさんからの続報です。(平成23年8月25日付け)

 まず、「素数 p が、a、b の公約数であれば、p=3」を証明する。

 a=m2−n2=(m+n)(m−n)≡0 (mod p) より、

    m≡n (mod p) または m≡−n (mod p)

 b=n2+2mn=n(n+2m)≡0 (mod p) より、

    n≡0 (mod p) または n≡−2m (mod p)

 可能性は4通りあるが、

   m≡n (mod p) 、n≡−2m (mod p)

のとき以外は、m≡n≡0 (mod p)となり矛盾。

 m≡n (mod p) 、n≡−2m (mod p)のときは、3m≡0 (mod p)となるが、

m≡0 (mod p)のときは上と同様に矛盾。

 よって、p=3 でなければならない。

次に、「9は、a、b の公約数ではない」を証明する。

 9が、a、b の公約数であるとする。もちろん、3は、a、b の公約数である。

先の証明と同様にして、 m≡n (mod 9) 、n≡−2m (mod 9) で、これより、

3m≡0 (mod 9) から、 m≡0 (mod 3) 即ち、 m≡n≡0 (mod 3)となり矛盾。

 以上より、a、b の最大公約数は、1か3であり、3になるのは、

    m≡n (mod 3)で、≡0 (mod 3)ではないとき。

このとき、c=n2+mn+m2≡3n2≡0 (mod 3)であるから、a、b、c の最大公約数も3

だから、a、b、c の最大公約数は、1か3であり、3になるのは、

  m−nが3の倍数であるとき(もちろん、m、nは3の倍数ではないものとする。)


 以上から、(A)は肯定的に解けました。これを使って、もともとの問題に対する解は得られ
ます。もちろん、a、b、c の最大公約数が1であるものだけで十分です。

 a2+a・b+b2=c2 を満たす自然数の組(a,b,c)で最大公約数が1であるものは、

   a=m2−n2 、b=n2+2mn 、c=n2+mn+m2

で与えられる。

 ただし、m、nは互いに素な自然数で、m>n かつ m−n は、3の倍数でないとする。


 今までに示したことではまだ不十分で、もう少し証明すべきことがあります。それと

2+a・b+b2=c2 は、a、bに関して対称なので、(a,b,c)が解なら、(b,a,c)も解です。

上の式は一方しか表しません。

 例えば、(a,b,c)=(3,5,7)は、m=2、n=1として得られますが、(a,b,c)=(5,3,7)
はこの形では得られません。

 この問題は、言い換えれば、1つの角が120度で、3辺が整数である三角形(3辺の最大
公約数が1であるもの)をすべて求めよというものです。

 そういう意味では、(3,5,7)と(5,3,7)は同じ三角形なので一方だけでいいと言えます。


(コメント) 攻略法さん、FNさん、この話題の一般化に感謝します。



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