ピタゴラス数とは、直角三角形の三辺の長さで、自然数となるものをいいます。その特別
な場合である三辺が3,4,5の比率の三角形が直角三角形になるということは、古く四千
年以上前からエジプト・バビロニア・インド・中国などで、その定理は証明されなくても、その
事実は知られていたといわれています。ピタゴラスの定理「直角三角形の直角をはさむ二
辺をそれぞれ辺としてもつ正方形の面積の和は、斜辺を一辺としてもつ正方形の面積に等
しい」において、この三辺の長さが自然数になる場合があり、それがピタゴラス数といわれ
るものです。この定理は、ギリシャの数学者であるピタゴラス(572?〜492?B.C.)に
より初めて証明されたので、ピタゴラスの定理または三平方の定理と呼ばれています。しか
し、この定理は、ピタゴラス自身が発見したものか門弟が発見したものか不明とされていま
す。
私がこの定理を初めて教わったときの証明は、等積変形を用いる初等的なものでした。
その他に、比例を用いて証明する方法や2つの正方形を切断して1つの正方形を組み立
てるものなど100に余る証明が考案されているそうです。
さて、私は、このピタゴラスの定理に関して次の公式を見つけました。
定理 直角三角形の斜辺の長さ a に対して、他の一辺の長さが a−1 のとき、残りの一
辺の長さは、a+(a−1) の平方根である。
(例) a=5 のとき、5+4=9 の平方根は、3 よって、3,4,5
a=13 のとき、13+12=25 の平方根は5 よって、5,12,13
この公式は、中学3年生の時にピタゴラスの定理を習ってしばらくたち、2乗計算などもう
少し楽にできないものかと思いながら、ノートや問題集などを見ていた時に、ふと思いつい
たものです。前々から、3,4,5のきれいな整数になる三角形が気になっていて、その後、
5,12,13のもう一つの整数の三角形を見つけました。この2つの三角形を見比べていて、
一番大きい値と次に大きい値が1つ違いの数になっていることに気づき、その隣り合わせ
の2つの数を足すと残りの辺の長さの2乗になることを発見したのです。他の値でもピタゴラ
スの定理と合わせて計算してみたところ、この考えは合っていることを確信しました。
この公式を発見して以来今日まで、この公式が使える他の値の三角形が問題として出て
こなく、ただ私の見つけた公式を使いたいという空しい気持ちがつのるばかりでした。今回
この公式を発表する機会を得て、少しは晴れ晴れした気持ちになれました。
(追記) 平成24年3月28日付け
職場の同僚と「ピタゴラス数」を話題にしているとき、同僚の息子さん(小学6年生)が、上
記の定理を独自に開発して、ピタゴラス数を瞬時に生み出すという話を聞いて驚いた。
次のように計算するのだという。
奇数Nの平方に1を足して2で割った数をAとすると、ピタゴラス数は、
N 、 A−1 、 A
で与えられる。
実際に、上記定理より、直角三角形の斜辺の長さ A に対して、他の一辺の長さが
A−1
のとき、残りの一辺の長さNについて、 A+(A−1)=N2 すなわち、
A=(N2+1)/2
が成り立つ。
例 N=3 のとき、 A=(32+1)/2=5 より、ピタゴラス数は、 3、4、5
N=5 のとき、 A=(52+1)/2=13 より、ピタゴラス数は、 5、12、13
N=7 のとき、 A=(72+1)/2=25 より、ピタゴラス数は、 7、24、25
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(追記) 当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんから、「一つ違いのピタゴラス数」
と題してご投稿いただいた。(平成27年12月10日付け)
ピタゴラス数(x2+y2=z2 を満たす(x,y,z)の組合せ、ただし、x<y)について調べると
(x、y、z)=(3,4,5)、(5,12,13)、(7,24,25)、(8,15,17)、(9,40,41)、(11,60,61)、(12,25,37)、・・・
など数多く見出されるが、中でも「z=y+1」のパターンが多く発見できる率が高い。
xを100までに限定して調べたら100パターン中49個が該当した。
3^2+4^2=5^2 、5^2+12^2=13^2 、7^2+24^2=25^2 、9^2+40^2=41^2
11^2+60^2=61^2 、13^2+84^2=85^2 、・・・・・・・・・ 、99^2+4900^2=4901^2
これらを一般に表す方法がないかあれこれ工夫していたら、連続する2つの自然数
n、n+1 を用いると、
{n+(n+1)}2+{2n(n+1)}2={2n(n+1)+1}2
すなわち、 {n+(n+1)}2+{2n*(n+1)}2={n2+(n+1)2}2
で一括して式(→一覧)に表せた。
一つ違いのピタゴラス数の組合せが、一つ違いの自然数から構成できたことが興味を引い
た。
問題を創作するとき、ピタゴラス数の組合せが欲しかったりするときに役立つかも?
(追記) 令和3年10月18日付け
特殊なピタゴラス数として、直角を挟む2辺の長さの差が1となる場合がある。
例 (3,4,5)、(20,21,29)、(119,120,169)、(696,697,985)、
(4059,4060,5741)、(23660,23661,33461)、・・・・・
「ヘロン数とピタゴラス数」によれば、任意の自然数 m>n に対して、ピタゴラス数は、次
の3つの数の組で与えられる。
a=m2−n2 、 b=2mn 、 c=m2+n2
例えば、m=2、n=1 とすれば、a=3 、b=4 、c=5 だし、
m=3、n=2 とすれば、a=5 、b=12 、c=13 が得られる。
ここで話題にすることは、 a と b の差が1であるときのピタゴラス数の求め方である。
a2+b2=(a−b)2+2ab=2ab+1=c2 より、c2は奇数、すなわち、cは奇数となる。
ただ、これでは目的のピタゴラス数を捕捉することはできない。
そこで、m=x+y 、n=y とおくと、
a=(m+n)(m−n)=x(x+2y) 、b=2y(x+y) 、c=(x+y)2+y2
と書ける。ここで、仮定より、 a−b=±1 である。この式に a、b を代入して、
x(x+2y)−2y(x+y)=±1 すなわち、 x2−2y2=±1
これは、ペル方程式である。(→ 参考:「平方根2を求める数列」)
この解のうち、自明な解(x=1、y=0)を持つことはもちろん、自明でない解(x=1、y=1)
を持つことが直ぐ分かる。このとき、ペル方程式の理論により、k番目の整数解は、
(1+)k=xk+yk
により与えられる。
例 (1+)1=x1+y1 より、x1=1、y1=1 で、このとき、
a=1・(1+2・1)=3 、b=2・1(1+1)=4 → (3,4,5)
(1+)2=x2+y2 より、3+2=x2+y2 なので、 x2=3、y2=2
このとき、a=3・(3+2・2)=21 、b=2・2(3+2)=20 → (20,21,29)
(1+)3=x3+y3 より、7+5=x3+y3 なので、 x3=7、y3=5
このとき、a=7・(7+2・5)=119 、b=2・5(7+5)=120 → (119,120,169)
(1+)4=x4+y4 より、17+12=x4+y4 なので、 x4=17、y4=12
このとき、a=17・(17+2・12)=697 、b=2・12(17+12)=696
→ (696,697,985)
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と、順次、所要の性質を持つピタゴラス数が求められる。