台形の性質                               戻る 

 四角形のうちで、一組の対辺が平行なものが台形である。

    台形の面積 S の公式として次が知られている。

           

   『 (上底+下底)×高さ÷2 』と、そらんじておられ

  る方も多いだろう。


 教科書等では、通常、次のような形で説明されている。

 同じ台形を2つ用意し、下図のように組み合わせて平行四辺形を作る。

        

  平行四辺形の面積の公式から、    2S=(a+b)h

   よって、
           

 今まで、
         

の部分の理解を上記のように考え、あまり深入りして考えることはなかったが、最近、異な
る理解があることを知る機会があった。

  左図において、2点 P、Q は、それぞれAB、CDの中点

 である。線分ACと線分PQの交点を、Rとする。このとき、

 △ABCにおいて、中点連結の定理より、BC=2PR で

 ある。△ACDにおいても同様にして、AD=2QR である。



 したがって、 AD+BC=2QR+2PR=2PQ  より、 PQ=(AD+BC)/2

  すなわち、   PQ=  が成り立つ。

 このことから、台形の面積を求める場合に次のような求め方もあるということである。

 台形を、平行線に沿って進む道と考え、

    (台形の面積)=(道の中央線の長さ)×(道幅)

 このことは、次の図を見れば明らかだろう。

        

 さて、上記のように、中央線の長さから台形の面積を求められる訳だが、この中央線は
当然ながら台形の面積を等分に分けてはいない。

  左図のように、AD に平行な線分 PQ で、台形の面積が
 等分されるとき、3つの数 a 、b 、x には、どのような関係
 式が成り立つのだろうか?

  この問いかけに対して、高校1年の「数学T」で学習する
      「面積比は相似比の2乗に等しい
 という事実を用いれば解決される。
                 (→ 参考 : 相似比の真実 )

 右図において、△EAD∽△EPQ∽△EBC で、

相似比は、 a : x : b より、

    △EAD : △EPQ : △EBC=a2 : x2 : b2

が成り立つ。

 よって、  x2 − a2 = b2 − x2 より、

線分 PQ の長さ x は、

         となる。
   

 例えば、 a=1 、 b=7 のとき、 x=5 となり、3つの数 a 、b 、x は、ともに自然数
となる。

 3つの数 a 、b 、x が、ともに自然数になる場合を考えることは、とても興味あることであ
る。

   x2 − a2 = b2 − x2  より、  a2 + b2 = 2x2 となるが、

       (s−t)2+(s+t)2=2(s2+t2

であることを考えると、 s2+t2=x2 となるような自然数解( s , t , x )を探せばよいこと
になる。

 これは、ピタゴラス数を求めることに等しく、

      s=m2−n2 、 t=2mn 、 x=m2+n2

と書かれる。
 ただし、m、n は、互いに素な自然数で、どちらかは偶数、かつ、m>n とする。
(詳しくは、こちらを参照)

 次の表は、ピタゴラス数をいくつかまとめたものである。

15 21 35 11 45 33 13
12 24 20 40 12 60 28 56 84
13 17 25 29 41 37 61 53 65 85

 この表から、3つの数 a 、b 、x が、ともに自然数になる場合の表が得られる。

     a=|s−t| 、 b=s+t

17 31 23 49 17 23 71
17 23 31 41 49 47 71 73 89 97
13 17 25 29 41 37 61 53 65 85

 上記の表で、問題設定で違和感なく使えるのは、( a 、b 、x )=( 7 、17 、13 )ぐらいか
な?


    左図の台形の面積を等分する

   赤線の長さは、 13 である。





(追記) 平成19年4月3日付け

 上記で、台形の面積の公式の求め方を2つ見た。私自身、台形というと、

        

という図がトラウマのように脳裏にこびり付いている。(小学5年生以来かな?)

 最近、次のように求める方法があることを知った。

  辺CDの中点Pをとり、APの延長とBCの
 延長との交点をQとする。

  このとき、2角夾辺相当により、

     △APD≡△QPC

  よって、台形の面積は、△ABQの面積に
 等しく、
        

 面積計算をするとき、この「中点を考える」というテクニックは意外に効果的である。

 「平成教育委員会2007 入試直前スペシャル」(フジTV系 平成19年1月4日放映)とい
う特番で、次のような問題が出題された。

    左図のように、一部長方形の穴のあいた長方
   形のケーキがある。
    (こんなケーキは実在しないかな...!)

    このケーキをある一つの直線に沿って切ると、
   丁度半分に分けられるという。

    どのように切ればいいだろうか?



 ただ、闇雲に切っても半分にはならないので、数学的に考えよう。

 ヒントは、長方形の対角線の交点を通る直線は、必ず長方形の面積を2等分するという
事実である。

 このことに気がつけば、次のように切ればよいことは明らかだろう。

        


 当HPがいつもお世話になっているHN「よおすけ」さんから、台形の性質に関する話題を
頂きました。(平成24年4月15日付け)

 以下の問題は、僕が中学3年の時に使っていた問題集のマイ・アプローチに載っていた問
題です。

  左図において、△ABCは、AB=BC=x(cm)、∠B=90°の
 直角二等辺三角形である。辺AB、AC上に2点D、Eをとり、
 DE//BC、AD=a(cm)とする。

  このとき、台形DBCEの面積を、2通りの方法で表わして、
    x2−a2=(x+a)(x−a)
 が成り立つことを証明しなさい。

(証明) 台形DBCEの面積をSとする。DE=AD=a(cm)なので、

  S=△ABC-△ADE=(1/2)(AB・BC)-(1/2)(AD・DE)=(1/2)(x2-a2) ・・・ (1)

 また、台形DBCEより、

  S=(1/2)(DE+BC)・(AB-AD)=(1/2)(x+a)(x-a) ・・・ (2)

(1)、(2)より、 (1/2)(x2-a2)=(1/2)(x+a)(x-a) すなわち、 x2-a2=(x+a)(x-a)  (証終)


 当時は全く分からなかったのですが、今となっては非常によい問題だと思います。証明自
体は、行列式などでもできます。


(コメント) 因数分解の公式を幾何的にとらえると、印象に残りますね!