正5角形の数理                   戻る

 当HPでは、「正5角形の作図と折り紙」と題して正5角形において成り立つ性質を調べた。

 そこでは、相似な三角形、例えば、△ACD∽△DFC を見つけて、AC=+1 である
ことを求めている。ただし、正5角形の一辺の長さを2とする。

   また、左図のように、

    FA=a 、 FC=b 、 FE=c

  とおくと、「 a : b 」が黄金比であることは、よく
  知られているし、

      2+b2=c2

  が成り立つという事実も面白い。

 このように、正5角形には、いろいろな数理が隠
れているように感じる。  

 このページでは、正5角形の係わるいろいろな数理を調べてみたいと思う。

    左図のように、正5角形の5頂点を、

       1 、2 、3 、4 、5

   とし、正5角形の外接円の弧15上の任意の点P

   に対し、各頂点と点Pの距離を、

     x1 、x2 、x3 、x4 、x5

   とおく。このとき、

      1 + x3 + x5 = x2 + x4

   という等式が成り立つらしい。

 これは、数学セミナー ’10 1月号 「エレガントな解答をもとむ」で問われている問題で
ある。本当に成り立つのかな?という思いから、まず特別な場合を考えてみた。

    左図は、点Pが頂点 1 に重なっている場合で
   ある。正5角形の一辺の長さを2とする。

    このとき、 x1 = 0 で、

     x2 = x5 = 2 、 x3 = x4+1

   より、  x1 + x3 + x5+3

        x2 + x4+3

   なので、 x1 + x3 + x5 = x2 + x4

 同様に、点Pが頂点 5 に重なっている場合も、 x5 = 0 で、

 x1 = x4 = 2 、 x2 = x3+1

より、  x1 + x3 + x5+3 、 x2 + x4+3 なので、

 x1 + x3 + x5 = x2 + x4 が成り立つ。


 「x1+x3+x5 = x2+x4」という等式が、正5角形の外接円の弧15上の任意の点Pに対し
て成り立つとは驚きだ!

 この問題について、当HPがいつもお世話になっているHN「凡人」さんから解答をお寄せい
ただいた。(平成22年1月14日付け・・・一部文言等を修正させていただきました!)

(解) 円の中心を O、半径を 1、弧P1に対する中心
   角を 2θ とおく。( 0°≦θ≦36°)

  各頂点とO、Pで作る二等辺三角形を考えると、

   x1=2sinθ

   x2=2sin(θ+36°)

   x3=2sin(θ+72°)

   x4=2sin(θ+108°)=2sin(72°−θ)

   x5=2sin(θ+144°)=2sin(36°−θ)

 である。
 このとき、

1 + x3 + x5 − x2 − x4

=2sinθ+2sin(θ+72°)+2sin(36°−θ)−2sin(θ+36°)−2sin(72°−θ)

=2{sinθ+sin(θ+72°)−sin(72°−θ)+sin(36°−θ)−sin(θ+36°)}

=2(sinθ+2cos72°sinθ−2cos36°sinθ)

=2sinθ(1+2cos72°−2cos36°)

 ここで、 φ=36°とおくと、 5φ=180° から、 3φ=180°−2φ

 よって、 sin3φ=sin(180°−2φ)=sin2φ より、

  3sinφ−4sin3φ=2sinφcosφ

このとき、 3sinφ−2sinφ(1−cos2φ)=2sinφcosφ より、

  sinφ+2sinφcos2φ=2sinφcosφ

 したがって、 sinφ(1+2cos2φ−2cosφ)=0 が成り立つ。

 すなわち、 sinφ≠0 なので、 1+2cos72°−2cos36°=0 が成り立つ。

 以上から、  x1 + x3 + x5 = x2 + x4 が成り立つ。  (終) 



(コメント) 「凡人」さんの素晴らしい解答に感動しました。凡人さんに感謝します。
      ただ、もっと初等的な証明がありそうな...予感!


 三角関数を用いて、別な視点で解いてみよう。

(証明) 下図において、外接円の直径を1とする。

  

 ∠APB=θ=π/5 とおく。このとき、5θ=π である。

 ∠PAE=φ とおくと、∠PEA=θ−φ である。

 △PAE において、正弦定理より、 PA=sin(θ−φ) 、PE=sinφ

また、四角形PCDEにおいて、∠CPE=2θ より、∠PDC+φ=π−2θ

 よって、 ∠PDC=π−2θ−φ なので、△PCD において、正弦定理より、

 PC=sin(π−2θ−φ)=sin(2θ+φ)

 △PAB において、正弦定理より、 PB=sin(3θ+φ)=sin(2θ−φ)

 △PDE において、正弦定理より、 PD=sin(4θ−φ)=sin(θ+φ)

このとき、

PA+PC+PE−PB−PD

=sin(θ−φ)+sin(2θ+φ)+sinφ−sin(2θ−φ)−sin(θ+φ)

=(sin(θ−φ)−sin(θ+φ))+(sin(2θ+φ)−sin(2θ−φ))+sinφ

=−2cosθsinφ+2cos2θsinφ+sinφ

=sinφ(2cos2θ−2cosθ+1)

 ここで、 2cos2θ−2cosθ+1=4cos2θ−2cosθ−1 より、

 (cosθ+1)(4cos2θ−2cosθ−1)

=4cos3θ−3cosθ+2cos2θ−1=cos3θ+cos2θ=2cos(5θ/2)cos(θ/2)

 5θ=π なので、cos(5θ/2)=0 から、(cosθ+1)(4cos2θ−2cosθ−1)=0

 cosθ+1≠0 なので、 4cos2θ−2cosθ−1=0

 よって、 PA+PC+PE−PB−PD=0 から、PA+PC+PE=PB+PD  (終)


 平成22年1月18日付けで、HN「名無し」さんより、「トレミーの定理」を用いて解ける旨の
ご教示を頂きました。

 1辺の長さが2の正5角形において、対角線の長さは、+1 であることに注意する。

円に内接する四角形P125において、 2x2=2x5+(+1)x1 ・・・・ (1)

円に内接する四角形P135において、 2x3=(+1)x1+(+1)x5 ・・・ (2)

円に内接する四角形P145 において、 2x4=(+1)x5+2x1 ・・・ (3)

 よって、 (1)−(2) より、 2x2−2x3=(−+1)x5 ・・・ (4)

 (3)+(4) より、 2x2−2x3+2x4=2x5++2x1

 したがって、 x1 + x3 + x5 = x2 + x4 が成り立つ。 


(コメント) 鮮やかですね!「名無し」さんに感謝します。


 この問題については、他にもいろいろな解が知られている。数学セミナー ’10 4月号
「エレガントな解答をもとむ」の解答を参考にしてまとめておこう。

(別解その1)
   左図において、円周角

    ∠1P2、∠2P3、∠3P4、∠4P5

  は全て等しく、 2π÷5÷2=π/5 である。

   さらに、左図のように色分けされた6個の小図形を

  組み合わせて、左下図のような図形を作る。

  (P1から数えて、偶数番目だけが裏返されているこ
  とに注意)

  このとき、円周角

   ∠PAB、∠ABC、∠BCD、∠CDE

 は全て等しく、 2π÷5÷2=π/5 である。

  さらに、左図において、 ∠APQ=2π/5 なので、

 ∠AQP=π−2π/5−π/5=2π/5 である。

  よって、△APQは2等辺三角形となる。

 同様に、△BQR、△CRS、△DSEも2等辺三角形。

 以上から、

 x1 + x3 + x5 = (x2 − BQ) + (BQ + CS) + (x4 − CS)= x2 + x4

が成り立つ。  (終)


(コメント) 鮮やかですね!図形を組み替えて2等辺三角形を見出すというアイデアは思い
      つきません...。横浜市の山田正昭さんに感謝します。


(追記) 平成22年10月10日付け

 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、上記の性質

  正5角形ABCDEが、円に内接しているとする。弧AE上の任意の点Pに対して、
 PA+PC+PE=PB+PDが成り立つ。


の一般化を考えられた。

 上記の性質に相当することが、正 n 角形で成り立つかどうかを考えてみよう。n が偶数で
あれば成り立たないから、n は奇数とする。

 まず、n=3 の場合を考える。

 正3角形ABCが円に内接しているとする。

 弧AC上の任意の点Pに対して、PA+PC=PB が成り立つ。


  

 これは、四角形PABCにトレミーの定理を適用すればただちに得られる。

 実際に、正3角形ABCの一辺を 1 とすれば、PA・1+PC・1=PB・1 が成り立つことか
ら明らかだろう。


 正5角形のときの証明は既に与えられている。トレミーの定理を使うのがもっとも簡単であ
る。

 一辺の長さを2として、対角線の長さが +1 であることを使っているが、これもトレミ
ーで出るから、トレミーの定理だけでやってみよう。

  

(別証) 一辺の長さを1とし対角線の長さを a として、次の四角形にトレミーの定理を使う。

 四角形ABCDについて、 1・1+1・a=a・a より、 1+a=a2 ・・・(1)

 四角形PABCについて、 PA・1+PC・1=PB・a より、 PA+PC=a・PB ・・・(2)

 四角形PBCDについて、 PB・1+PD・1=PC・a より、 PB+PD=a・PC ・・・(3)

 四角形PCDEについて、 PC・1+PE・1=PD・a より、 PC+PE=a・PD ・・・(4)

 (2)+(4)より、 PA+2PC+PE=a・(PB+PD)

 (3)を代入して、 PA+2PC+PE=a2・PC より、 PA+PC+PE=(a2−1)・PC

 (1)より、 a2−1=a なので、 (3)より、 PA+PC+PE=a・PC=PB+PD が成り

 立つ。  (証終)


(別証) 一辺の長さを1とし対角線の長さを x とする。

そのとき、 1 : x−1= x : 1 より、 x2−x=1 なので、 x−1/x=1 が成り立つ。

 四角形ABCP において、トレミーの定理より、 PA・1+PC・1=x・PB ・・・ @

 四角形PBCDについて、 PB・1+PD・1=x・PC ・・・ A

 四角形PCDEについて、 PC・1+PE・1=x・PD ・・・ B

 @+B より、 PA+2PC+PE=x・(PB+PD) すなわち、

 PA+PC+PE=x・(PB+PD)−PC

 Aより、 PC=(1/x)(PB+PD) なので、 PA+PC+PE=(x−1/x)・(PB+PD)

ここで、x−1/x=1 なので、 PA+PC+PE=PB+PD  (証終)


 さて、FNさんからの出題です。正7角形の場合に次の命題を証明してください。

 正7角形ABCDEFGが円に内接しているとする。弧AG上の任意の点Pに対して、
PA+PC+PE+PG=PB+PD+PF が成り立つ。


  


 平成22年10月10日付けで、HN「ぽっぽ」さんから、

 正5角形の場合をトレミーの定理を使わず初等的に証明することができました

との報告を頂いた。応用すれば正7角形以上の場合でもできそうということで、次の証明を
頂いた。

(別証) まず次の補題を示す。

 円Oの内部に弦ABがあり、弧ABの中点をC、Cを通らない方の弧AB上を自由に動
く点をDとするとき、DA+DBとDCは比例する。


  

 実際に、トレミーの定理により、 DC・AB=DA・CB+DB・CA

 ここで、 CA=CB で、 AB/CA=k とおくと、kは定数で、DA+DB=k・DC となる。

すなわち、 DA+DB と DC は比例する。


 この補題により、 PA+PC=a・PB 、 PC+PE=a・PD 、 PE+PG=a・PF

 PA+PG=b・PD 、 PB+PF=c・PD  ( a、b、c は定数)

  

 したがって、 2PA+2PC+2PE+2PG=a(PB+PD+PF)+b・PD

 また、 PB+PF=c・PD より、 2PA+2PC+2PE+2PG=(a+b+ac)PD

 よって、 PA+PC+PE+PG と PD は比例する。

 また、PD と PB+PF は比例するので、 PD と PB+PD+PF は比例する。

 よって、 PA+PC+PE+PG と PB+PD+PF も比例するので、

  PA+PC+PE+PG=k(PB+PD+PF)  (k は定数)

 特に、P=A のとき、 PA+PC+PE+PG=PB+PD+PF なので、 k=1

従って、常に、k=1 で、PA+PC+PE+PG=PB+PD+PF が成り立つ。  (証終)


 ぽっぽさんの別証に対して、らすかるさんからのコメントです。(平成22年10月11日付け)

 ぽっぽさんの計算を単に短縮しただけですが...次のようにしてもいいですね。。

  PA+PC=a・PB 、 PE+PG=a・PF 、 PB+PF=c・PD の3式から

  PA+PC+PE+PG=a(PB+PF)=ac・PD

 また、 PB+PD+PF=(c+1)PD

 よって、 PA+PC+PE+PG と PB+PD+PF は比例する。



(コメント) FNさん、ぽっぽさん、らすかるさん、ありがとうございます。


 ぽっぽさんの補題を、正5角形の場合に適用してみました。

(証明)
  

 補題により、a、b は定数として、

 PA+PC=a・PB 、PB+PD=a・PC 、PC+PE=a・PD 、 PA+PE=b・PC

より、 2(PA+PC+PE)=a・(PB+PD)+b・PC=(a2+b)・PC

 よって、PB+PD=a・PC なので、PA+PC+PE=k・(PB+PD) (kは定数) とおける。

 ここで、P=A のとき、 AC+AE=k・(AB+AD) で、AC+AE=AB+AD から、

k=1 で、 PA+PC+PE=PB+PD が成り立つ。  (証終)


 らすかるさんは、正2n+1角形についても同様の命題が成り立つことを示された。
                                     (平成22年10月11日付け)

(証明) 正2n+1角形 A01・・・A2n について、ぽっぽさんの補題より、

  PA+PA2n-i=kPA (k は定数) が成り立つ。このとき、

 PA1+PA3+PA5+・・・+PA2n-1=(k1+k3+・・・+kn-1)PA

 また、 PA0+PA2+・・・+PA2n=(k0+k2+・・・+kn-2+1)PA

 よって、

 PA1+PA3+PA5+・・・+PA2n-1 は、 PA0+PA2+・・・+PA2n に比例する。

 P=A0 とおいて、比例定数は、1 となる。したがって、

  PA1+PA3+PA5+・・・+PA2n-1=PA0+PA2+・・・+PA2n (証終)


 さて、FNさんは、この命題の逆が成り立つかどうかに関心を持たれた。
                                     (平成22年10月11日付け)

 逆は成り立つたつだろうか。即ち、次の命題が成り立つだろうか。

 5角形ABCDEが円に内接している。弧AE上の任意の点Pに対して、

    PA+PC+PE=PB+PD

 が成り立てば、5角形ABCDEは、正5角形である。


 点Pを3角形の頂点と一致させることにより、正3角形であることが示されるので、3角形
の場合は成り立つ。

 また、3角形の場合はもっと強く次の命題が成り立つだろうか。

 3角形ABCが円に内接している。弧AC上の異なる2点Pに対して

  PA+PC=PB

 が成り立てばABCは正3角形である。


 このFNさんの問題について、らすかるさんが代数的に解かれた。
                                    (平成22年10月11日付け)

(解) 円を単位円とし、A( cosu ,sinu )、C( cosu ,−sinu )、B( cosv ,sinv ) とする。

 ただし、 −u≦x≦u<v≦π である。このとき、P( cosx ,sinx ) として、

PA+PC=PB を定義域に注意しながら和積の公式などを使って整理すると、

 2sin{(u−x)/2}+2sin{(u+x)/2}=2sin{(v−x)/2} より

  sin{(u−x)/2}+sin{(u+x)/2}=sin{(v−x)/2}

 2sin(u/2)cos(x/2)=sin(v/2)cos(x/2)−cos(v/2)sin(x/2)

 2sin(u/2)=sin(v/2)−cos(v/2)tan(x/2)

よって、 cos(v/2)tan(x/2)=sin(v/2)−2sin(u/2)

 ここで、 v=π とすると、 0=1−2sin(u/2) より、 sin(u/2)=1/2

よって、 u/2=π/6 より、 u=π/3

 これは正三角形の場合で、任意の x に対して、PA+PC=PB が成り立つ。
 (v=π、u≠π/3 ならば、PA+PC=PB となるPは存在しない。)

 v<πのとき、 tan(x/2)={sin(v/2)−2sin(u/2)}/cos(v/2)

 右辺は定数で、−π/2<x/2<π/2 だから、x は唯一に決まる。

 |x|≦u ならば解は一つ、|x|>u ならば解なしなので、PA+PC=PB となるPは高々1個。

よって、解が2個以上あるのは正三角形の場合のみ。 (終)


 らすかるさんの証明に対して、FNさんからのコメントです。(平成22年10月12日付け)

 きれいな証明ですね。一番最初の PA=2sin((u−x)/2)) は図を書けば計算なしで出
ますね。初等幾何の命題ですから初等幾何的な証明にこだわりたくなるのですが、簡単に
はできないのでしょう。次の形で問題として残しておきます。

 5角形ABCPQ円に内接していて、PA+PC=PB、QA+QC=QB が成り立っている。
このとき、△ABCが正三角形であることを初等幾何的に証明せよ。



 FNさんが、「5角形では逆は成立しない」ことを示された。(平成22年10月11日付け)

(証明) Cを通る直径に関してAとE、BとDが対称になるように取る。

 らすかるさんの証明と同様にして、PA+PE=kPC 、 PB+PD=mPC

従って、 PA+PC+PE=(k+1)PC 、PB+PD=mPC となり、PA+PC+PE と

PB+PD は比例する。だから、P=A のときに等しくなれば、常に成り立つ。

 そこで、 AC+AE=AB+AD となるように、A、B、D、E を取れればよい。

 CとA、Eを固定し、BをAからCまで動かす。(もちろんDも対称になるように動かす)

 左辺の AC+AE は一定であり、右辺のAB+AD はBがAのとき、AE、BがCのとき、

2AC (AE<AC) にとっておけば、AE<AC+AE<2AC であるから、

 あるB、Dについて、AC+AE=AB+ADにできる。

 以上から、正5角形以外に条件を満たすものはたくさんある。 (証終)


 らすかるさんが、PA+PC+PE=PB+PD を満たす5角形を具体的に構成された。
                                    (平成22年10月11日付け)

 五角形ABCDEにおいて、

 A(41/50,3√91/50) 、B(-7/25,24/25) 、C(-1、0) 、D(-7/25,-24/25) 、

 E(41/50,-3√91/50)

とすればよい。


(追記) 平成27年9月3日付け

 弦の長さの和に関する考察と題して、筑波大学付属駒場高校2年の林 俊介さんが、マス・
フェスタ(平成25年8月、エルおおさか)で研究発表された。

 円に内接している正2n+1角形A1A2A3・・・A2nA2n+1があり、弧A1A2n+1上に点Pをとる。

線分PAの長さをxとするとき、次の等式

 1+x3+x5+…+x2n-1+x2n+1=x2+x4+x6+…+x2n-2+x2n

が成立することを示す。n=1 即ち、正三角形の場合に上式が成り立つことはよく知られた
事実である。トレミーの定理から明らかである。

# 上記で既に、らすかるさんにより証明が与えられているが、林さんの証明は別証となる
  だろう。

(証明) 点Pと正2n+1角形の連続した3頂点からなる四角形を考える。このような四角形

 は、全部で 2n+1個ある。A1A2=a、A1A3=b として、それぞれについて、トレミーの定

理より、 a(x1+x3)=bx2 、a(x2+x4)=bx3 、・・・・・

 これらの等式を整理して、

 a(x1+x3)=bx2 、a(x3+x5)=bx4 、 ・・・・・・ 、a(x2n-1+x1)=bx2n

 bx3=a(x2+x4) 、bx5=a(x4+x6) 、 ・・・・・・ 、bx2n-1=a(x2n-2+x2n

 さらに、bx2n+1+ax1=ax2n 、bx1+ax2n+1=ax2

 これらを辺々加えて、

 (2a+b)(x1+x3+x5+…+x2n-1+x2n+1)=(2a+b)(x2+x4+x6+…+x2n-2+x2n

 よって、 x1+x3+x5+…+x2n-1+x2n+1=x2+x4+x6+…+x2n-2+x2n

が成り立つ。  (証終)


(追記) 令和5年6月9日付け

 たまたま次の図形を考察しているときに、面白い関係式が潜んでいることに気づいた。

 正5角形の一辺の長さを2とすると、
  AF=FD=CD=2 である。

 そこで、FCをXとすると、比例式

   2+X : 2 = 2 : X

 が成り立つことから、X=−1となる。

 従って、AC=+1 である。

 このとき、 2cos36°=(+1)/2 から、 cos36°=(+1)/4 である。

また、同様にして、 2cos72°=(−1)/2 から、 cos72°=(−1)/4 である。

 このことから、 cos36°・cos72°=(+1)/4・(−1)/4=1/4 である。

さらに、 cos36°−cos72°=(+1)/4−(−1)/4=1/2 である。

 また、

 cos236°+cos272°=(cos36°−cos72°)2+2cos36°・cos72°=3/4

 cos336°−cos372°

=(cos36°−cos72°)3+3cos36°・cos72°(cos36°−cos72°)=1/2

などが成り立つ。

 計算結果がすべて有理数になるという点が美しい。将棋の飯島八段風に言えば、「これっ
て、スゴくないですか〜。」となるのかな?


(コメント) 具体的に cos36°やcos72°の値を求めなくても、

 cos36°×cos72°=1/4

であることは、上図から明らかだろう。

 実際に、ACの中点をMとし、Mから辺CDに垂線を下ろし、その足をNとおくと、

 MC=2cos36°、CN=MC・cos72°なので、 CN=2cos36°・cos72°

 ところで、CN=1/2 なので、 cos36°・cos72°=1/4 である。



   以下、工事中