電卓による3乗根の計算
電卓には必ずといっていいほど平方根の計算ができるように、√キーが付いている。
ところで、+、−、×、÷、√ を用いて表される数は、定木・コンパスを用いて作図可能であ
ることが知られている。(詳しくは、こちらを参照)
ということは、我々は、作図可能な世界と常に接しているわけで、毎日数学の世界と関わり
の機会を持ちながら、生きていることになる。そう考えると、何か不思議な気分だ。
最近、その平方根を用いて、3乗根を求める方法があることを知った。
普通は、関数電卓やパソコンの表計算ソフトを利用して、3乗根の計算はなされる。あるいは、
Horner の方法などが知られている。
ここでは、手もとにある、どこにでもあるような普通の電卓を利用して、3乗根を求める方法を
紹介しようと思う。
数列{an}において、漸化式
a1=a、4an+1=an+1 (n≧1)
を考える。
このとき、この漸化式は、4(an+1−1/3)=an−1/3 と変形できるので、一般項 an は、
an=1/3+(1/4)n-1(a−1/3)
となる。
したがって、
n → ∞ のとき、 an → 1/3
となる。
この漸化式を用いると、平方根を利用して、3乗根(の近似値)が求められる。
3乗根を求めたい数を、N とする。このとき、次の式が成り立つ。
ここで、 とおくと、
となる。
この式が、Nの3乗根を求めるプロセスを与える。
ところで、 n → ∞ のとき、 an → 1/3 なので、確かに が成り立つ。
例 2 の 3 乗根 を求めよ。
まず、X1 = 2 として、(← ここは任意に適当な数を選ぶ)
X2 = ( X1 に、N=2 を掛けて、平方根を2回とる)=1.41421356237
X3 = ( X2 に、N=2 を掛けて、平方根を2回とる)=1.29683955464
X4 = ( X3 に、N=2 を掛けて、平方根を2回とる)=1.26905095718
以下同様にして、
X5 =1.26219735038
X6 =1.26048973986
X7 =1.26006319832
X8 =1.25995658549
X9 =1.25992993369
X10 =1.25992327083
X11 =1.25992160512
X12 =1.25992118869
X13 =1.25992108459
X14 =1.25992105856
X15 =1.25992105205
X16 =1.25992105043
X17 =1.25992105002
X18 =1.25992104992
X19 =1.25992104989
X20 =1.25992104989 (← そろそろ計算が安定してきた!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上の計算から、
≒ 1.25992104989
であることが分かる。
因みに、関数電卓を用いれば、2の3乗根は、1.25992105 と瞬時に求めることができ
るが、上記の方法で感心するのは、簡易な電卓でも、時間をかければ、十分3乗根も計算が
可能であるという点である。
(参考文献:野崎昭弘・何森 仁・伊藤潤一・小沢健一 著
数と計算の意味がわかる (ベレ出版))
(追記) 同様の手法で、5乗根、7乗根も求められる。
例 2 の 5 乗根 を求めよ。
数列{an}において、漸化式
a1=a、16an+1=an+3 (n≧1)
を考える。
このとき、この漸化式は、16(an+1−1/5)=an−1/5 と変形できるので、一般項 an は、
an=1/5+(1/16)n-1(a−1/5)
となる。
したがって、
n → ∞ のとき、 an → 1/5
となる。
この漸化式を用いると、平方根を利用して、5乗根(の近似値)が求められる。
5乗根を求めたい数を、N とする。このとき、次の式が成り立つ。
ここで、 とおくと、
となる。
この式が、Nの5乗根を求めるプロセスを与える。
ところで、 n → ∞ のとき、 an → 1/5 なので、確かに が成り立つ。
まず、X1 = 2 として、(← ここは任意に適当な数を選ぶ)
X2 = ( X1 に、N=23=8 を掛けて、平方根を4回とる)=1.189207115
X3 = ( X2 に、N=8 を掛けて、平方根を4回とる)=1.15118922994
X4 = ( X3 に、N=8 を掛けて、平方根を4回とる)=1.14885387665
以下同様にして、
X5 =1.14870807448
X6 =1.14869896245
X7 =1.14869839296
X8 =1.14869835736
X9 =1.14869835513
X10 =1.14869835500
X11 =1.14869835499
X12 =1.14869835499 (← そろそろ計算が安定してきた!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上の計算から、
≒ 1.14869835499
であることが分かる。
例 2 の 7 乗根 を求めよ。
数列{an}において、漸化式
a1=a、8an+1=an+1 (n≧1)
を考える。
このとき、この漸化式は、8(an+1−1/7)=an−1/7 と変形できるので、一般項 an は、
an=1/7+(1/8)n-1(a−1/7)
となる。
したがって、
n → ∞ のとき、 an → 1/7
となる。
この漸化式を用いると、平方根を利用して、7乗根(の近似値)が求められる。
7乗根を求めたい数を、N とする。このとき、次の式が成り立つ。
ここで、 とおくと、
となる。
この式が、Nの7乗根を求めるプロセスを与える。
ところで、 n → ∞ のとき、 an → 1/7 なので、確かに が成り立つ。
まず、X1 = 2 として、(← ここは任意に適当な数を選ぶ)
X2 = ( X1 に、N=2 を掛けて、平方根を3回とる)=1.189207115
X3 = ( X2 に、N=2 を掛けて、平方根を3回とる)=1.11438674259
X4 = ( X3 に、N=2 を掛けて、平方根を3回とる)=1.10537144569
以下同様にして、
X5 =1.10424967383
X6 =1.10410953241
X7 =1.10409201599
X8 =1.10408982645
X9 =1.10408955276
X10 =1.10408951855
X11 =1.10408951427
X12 =1.10408951374
X13 =1.10408951368
X14 =1.10408951367
X15 =1.10408951367 (← そろそろ計算が安定してきた!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上の計算から、
≒ 1.10408951367
であることが分かる。