整数値多項式                       戻る

 どんな整数に対しても整数値が対応するという性質をもつ多項式を、整数値多項式という。
このページでは、ある特別な整数値多項式を紹介し、その性質を調べたいと思う。

多項式 (X)=X(X−1)(X−2)(X−3)・・・(X−k+1)/k!は整数値多項式である。 

 実際に、X が正の整数であるとき、

     F(X)=(異なるX個のものから、k 個取る組合せの数)

   なので、明らかである。

  X が負の整数のとき、X=−T とすれば、T は正の整数で同様に示される。

  X=0 のときは、自明である。

 この整数値多項式の特徴から、連続する k 個の整数の積が、k!で割り切れることも分
かる。

定理  n次の整数値多項式F(X)は、整数 A,A,A,・・・,A を適当に選ぶこと

    により、 F(X)=A+A(X)+A(X)+・・・+A(X)

   と書ける。

 
証明は、易しい。

 F(X) を X で割り、その商を X−1 で割り、その商を X−2 で割り、・・・・と順次割ってい

けばよい。そのときの余りを用いて、A,A,A,・・・,A が表される。

 一般に、次のポリアの定理があることを、当HPがいつもお世話になっているS(H)さん
よりご教示いただいた。(→ 参考:「倍数の問題」)

ポリアの定理  すべての整数 x に対して、多項式 P(x) が整数値をとるための

         必要十分条件は、整数 A0,A1,A2,・・・,A を適当に選び、

     P(x)=A0+A11(x)+A22(x)+・・・+A(x)

   と書けることである。ただし、

     F(x)=x(x−1)(x−2)(x−3)・・・(x−k+1)/k! とする。



例 どんな整数 X に対しても、X4−2X3+11X2+14X は、24で割り切れる。

 この事実は、整数値多項式を用いると、次のように示される。

  X4−2X3+11X2+14X = X( (X−1)( (X−2)( (X−3)・1+4)+12)+24)

                 = 24F1(X)+24F2(X)+24F3(X)+24F4(X)
  
 F1(X)、F2(X)、F3(X)、F4(X) は、整数 X に対して、いつも整数なので、明らかに、求める

ものは、24の倍数である。

 この問題に対して、受験参考書では、次のように解かれる。(私が久しく親しんだ方法で
もある。)

 X4−2X3+11X2+14X = (X−2)(X−1)X(X+1)+12X(X+1) と式変形される。

連続する n 個の整数の積は、n!で割り切れるので、

   前者は24の倍数 、 後者は12×2=24の倍数

となり、全体として24の倍数となる。

 整数値多項式を用いる方法は、実戦的ではないかもしれない。しかし、理論的には完全
な方法で、あらゆる場合に適用することができる。この点が優れている所である。

 読者のために、演習問題を残しておこう。

問題 連続する3整数 a,b,c に対して、

      (a+b+c)3−3(a3+b3+c3) は、108で割り切れることを示せ。


(解) a,b,c は連続する3整数なので、 a=n−1 、b=n 、c=n+1 (nは整数) と

   おける。このとき、

    (a+b+c)3−3(a3+b3+c3)=27n3−3(3n3+6n)=18(n−1)n(n+1)

   (n−1)n(n+1)は連続する3整数の積なので、6で割り切れる。

   よって、 18(n−1)n(n+1)は、108で割り切れる。 (終)


(参考文献:淡中忠郎 著 数学の学校(東京図書)
       宮原 繁 著 整数(科学新興社モノグラフ))

(追記)・・・ 当塾宛の質問メールに対する回答です。

 上記の計算で、連続する k 個の整数の積が、k!で割り切れることを、組合せの理論に
より確認したが、もちろん、数学的帰納法を用いても示される。

(証明) まず、X は正の整数として考える。

 『全ての自然数 n に対して、F(X) は、n!で割り切れる』ということを、数学的帰納法に

より示す。

 いま、F(X)=X(X+1)(X+2)(X+3)・・・(X+n−1)  (n は自然数)とおく。

n=1 のとき、F(X)=X は、n!=1!=1 で割り切れるので、n=1 のとき成り立つ。

(X) が、n!で割り切れると仮定して、F+1(X) が、(n+1)!で割り切れることを示す。

 ここで、F+1(X)=X(X+1)(X+2)(X+3)・・・(X+n) である。

いま、F+1(X+1)−F+1(X)=(X+1)(X+2)(X+3)・・・(X+n+1)
                               −X(X+1)(X+2)(X+3)・・・(X+n)

                  =(X+n+1−X)(X+1)(X+2)(X+3)・・・(X+n)

                  =(n+1)(X+1)(X+2)(X+3)・・・(X+n)

                  =(n+1)F(X+1)

数学的帰納法の仮定から、F(X+1) は、n!で割り切れ、(n+1)・n!=(n+1)!より、

     F+1(X+1)−F+1(X) は、(n+1)!で割り切れる。

このことから、

     F+1(X)−F+1(X−1) は、(n+1)!で割り切れる。

     F+1(X−1)−F+1(X−2) は、(n+1)!で割り切れる。

     F+1(X−2)−F+1(X−3) は、(n+1)!で割り切れる。

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     F+1(2)−F+1(1) は、(n+1)!で割り切れる。

以上の X−1 個の式を、辺々加えて、

     F+1(X)−F+1(1) は、(n+1)!で割り切れることが分かる。

ところで、F+1(1)=1・2・3・・・・・・n・(n+1)=(n+1)! である。

 したがって、 F+1(X) は、(n+1)!で割り切れる。

以上から、

  X が正の整数のとき、全ての自然数 n に対して、F(X) は、n!で割り切れる

ことが示された。

次に、X=0 のとき、上記命題は自明である。

さらに、X が負の整数のとき、

     F+1(X)−F+1(0)=−(F+1(X+1)−F+1(X))
                       −(F+1(X+2)−F+1(X+1))
                          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
                             −(F+1(0)−F+1(−1))

    と変形することにより、左辺は、(n+1)!で割り切れることが分かる。

ところで、F+1(0)=0 は、(n+1)!で割り切れる。

 したがって、 F+1(X) は、(n+1)!で割り切れる。

以上から、

  X が整数のとき、全ての自然数 n に対して、F(X) は、n!で割り切れる

ことが示された。(終)

(コメント) 質問者によれば、
   F(X)=X(X+1)(X+2)(X+3)・・・(X+n−1)  (n は自然数)に対して、

        

  ということを証明したいとのことであった。この命題の仮定(結論も同様)は、

           (X) は、n!で割り切れる

ということと同値なので、上記のような証明となった。

 質問の意図に合致しているかどうか少し不安ですが、一応の回答とさせていただきます。
                                                  (塾長)


(追記) 多項式ではないが、整数値をとる関数の問題として、次の問題がある。
                                     (平成26年10月29日付け)

 x が整数のとき、関数 F(x)=(x3+ax2+bx+1)/(x2+1)の値がいつも整数になるの
は、係数a、bがどんな値のときか。(昭和46年学習院大学理学部入試問題)

(解) x3+ax2+bx+1=(x2+1)(x+a)+(b−1)x−a+1

  よって、題意を満たすためには、 a=b=1 で、 F(x)=x+1  (終)

 ...と解答を書いてはみたものの、実は上記の解答は完全解答にはなっていない。上記
では、題意を満たすために「 x3+ax2+bx+1 が x2+1 で割り切れる」として「余り=0」か
ら求めているが、この論理は不確かである。すなわち、

 F(x)が、xが整数のとき、いつも整数になることと、3+ax2+bx+1 が x2+1 で
割り切れる
 ことは必要十分ではないということである。

 もちろん、x3+ax2+bx+1 が x2+1 で割り切れるときは、x が整数のとき、関数 F(x)
の値が整数になることは自明だろうが、逆はなりたたないということだ。

例  G(x)=(x3+2)/(x2+1) において、G(2)=10/5=2 である。
  このことから、G(2)は整数であるが、x3+2 は、x2+1 で割り切れない。

 以上から、割り切れていなくても整数値をとる可能性を否定できない。

(解の修正) x3+ax2+bx+1=(x2+1)(x+a)+(b−1)x−a+1 なので、

     F(x)=x+a+{(b−1)x−a+1}/(x2+1)

  x2+1 は、(b−1)x−a+1 より高位の無限大なので、十分大きな自然数 n に対して、

  −1<{(b−1)n−a+1}/(n2+1)<1 とできる。

 このとき、F(n)が整数であることから、 a+{(b−1)n−a+1}/(n2+1) も整数でなけ
ればならない。

 よって、 a は整数で、かつ、 (b−1)n−a+1=0 が十分大きな自然数 n のすべてに
対して、成り立つ。

 このことから、 b−1=0、−a+1=0 すなわち、 a=b=1  (終)


 昭和56年度の学習院大学法学部で次のような入試問題が出題されている。

 F(x)=ax3+bx2+cx+d は有理数を係数とする多項式であって、任意の整数nに対し、
F(n)は常に整数になるとする。このとき、F(x)の係数の6倍は整数であることを証明せよ。

 この問題は、ポリアの定理を知っていれば自明だろうが、入試問題なので、ポリアの定理
を持ち出すことは出来ないが、定理を意識すれば次のような解答になるだろう。

(解) F(x)=ax3+bx2+cx+d に対して、

   F(x)=x(x−1)(x−2)(x−3)・・・(x−k+1)/k! (k=1、2、3) とおく。

  F1(x)=x 、F2(x)=x(x−1)/2 、F3(x)=x(x−1)(x−2)/6

である。このとき、

   F(x)=A0+A11(x)+A22(x)+A33(x)  (Aは有理数)

とおける。題意より、

 F(0)=A0+A11(0)+A22(0)+A33(0)=A0 は整数
 F(1)=A0+A11(1)+A22(1)+A33(1)=A0+A1 は整数
 F(2)=A0+A11(2)+A22(2)+A33(2)=A0+2A1+A2 は整数
 F(3)=A0+A11(3)+A22(3)+A33(3)=A0+3A1+3A2+A3 は整数

なので、

 A0=F(0)
 A1=F(1)−A0
 A2=F(2)−(A0+2A1
 A3=F(3)−(A0+3A1+3A2

はすべて整数となる。したがって、

 6F(x)=6A0+6A1x+3A2x(x−1)+A3x(x−1)(x−2)

において、6F(x)の係数はすべて整数となる。

 よって、F(x)の係数の6倍は整数である。  (終)


(追記) 整数として割り切れることと、整式として割り切れることの区別が必要なことは、忘
    れてはいけない大切なことである。(→ 参考:「割り切れない割り切り問題」)
                                       (平成27年8月28日付け)

 平成28年度入試で京都大学前期理系で次の問題が出題された。

 a、b、c、d、e を正の実数として、等式 f(x)=ax2+bx+c、g(x)=dx+e を考
える。

 すべての正の整数nに対して、f(n)/g(n)は整数であるとする。このとき、f(x)は
g(x)で割り切れることを示せ。



(解) 題意より、 f(x)=g(x)(px+q)+r (p≠0) とおける。

  正の整数nに対して、 f(n)/g(n)=pn+q+r/g(n)

                f(n+1)/g(n+1)=p(n+1)+q+r/g(n+1)

 辺々引いて、
 f(n+1)/g(n+1)−f(n)/g(n)
=p+r/g(n+1)−r/g(n)
=p+r(dn+e−d(n+1)−e)/g(n)g(n+1)
=p−dr/g(n)g(n+1)

 題意より、p−dr/g(n)g(n+1)=h(n)は整数なので、

 h(n+1)−h(n)=dr/g(n)g(n+1)−dr/g(n+1)g(n+2)
            =dr(g(n+2)−g(n))/g(n)g(n+1)g(n+2)
            =2d2r/g(n)g(n+1)g(n+2)

も整数である。ここで、r≠0 と仮定すると、2d2r/g(n)g(n+1)g(n+2)は絶対値が1以
上の整数でなければならない。

 ところが、nを限りなく大きくすると、2d2r/g(n)g(n+1)g(n+2)は限りなく0に近づく。

 これは矛盾である。よって、r=0 となり、f(x)はg(x)で割り切れる。  (終)



  以下、工事中!