割り切れない割り切り問題
当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんからの出題です。
(平成27年8月15日付け)
[1] a、b(ただし、a≦b)を正整数とするとき、a2+b2をab+1が割り切るとき、a、bは?
[2] 1<a<b<c なる整数a、b、cについて、abc-1を(a-1)(b-1)(c-1)が割り切るとき、a、b、
cは?
(コメント) 面白そうなので考えてみた。(平成27年8月15日付け)
[1] 形式的に計算すると、 a2+b2=(ab+1)(ab-1)/b2+(b4+1)/b2 となり、(b4+1)/b2≠0 より
割り切れない?
DD++さんからのコメントです。(平成27年8月17日付け)
[1]は、a=2、b=8 とか a=3、b=27 とか a=10、b=1000 とか無限に解があるんで、「実は割り
切れることはない」というオチにはならないんですよねコレ。正攻法で解こうとしても、けっこ
う難しいので何か抜け道がないか考えてはいるんですが……。
[2]の方が、割り切れたとして商は2か3しかあり得ないとすぐにわかり、それぞれ解けばい
いだけなので簡単そう。
(コメント) a2+b2=(ab+1)(ab-1)/b2+(b4+1)/b2 に、a=2、b=8 を代入してみると、
22+82=(2・8+1)(2・8-1)/82+(84+1)/82
すなわち、 22+82=17・15/64+4097/64=17・15/64+17・241/64=17・4
なるほど〜、割り切れますね! でも、不思議ですね。
DD++さんからのコメントです。(平成28年10月3日付け)
難敵でした。
[1] 証明がややこしいので先に結論を。
商をq、つまり、a2+b2=(ab+1)q とします。
解は、a=b=q=1 もしくは 2つの整数k≧2およびn≧1を用いて、
a = k ( (k2+√(k4-4))n - (k2-√(k4-4))n ) / ( 2n √(k4-4) )
b = k ( (k2+√(k4-4))n+1 - (k2+√(k4-4))n+1 ) / ( 2n+1 √(k4-4) )
q=k2
で、全てです。1つめの式をもう少しイメージしやすく書くのであれば、
(a,b,q) = (k,k3,k2), (k3,k5-k,k2), (k5-k,k7-2k3,k2), (k7-2k3,k9-3k5+k,k2), ……
## この、x, x3, x5-x, x7-2x3, x9-3x5+x, ……という関数列、あるいは、
1, x, x2-1, x3-2x, x4-3x2+1, …… って何か有名な関数列だったりしませんかね?
これ以外に解がない証明。
(1) b≧aq を満たす解は、k=1 のときを含めて (a,b,q) = (k,k3,k2) に限られることを示します。
条件より、b(b-aq) = b2 - abq = q - a2 < q ≦ aq ≦ b よって、0≦b-aq<1
つまり、これが成立するのは、b-aq=0 かつ q-a2=0 の場合に限り、a=k とすれば、
(a,b,q) = (k,k3,k2)
(2) b<aq を満たす解が、k≧2に対し、
(a,b,q) = (k3,k5-k,k2), (k5-k,k7-2k3,k2), (k7-2k3,k9-3k5+k,k2), ……
に限られることを示します。
いま、(a,b,q)=(M,N,Q) (ただしM≦N<MQ)が解、つまり、M2+N2 = (MN+1)Q とします。
このとき、L = MQ-N とおくと、これは自然数で、
L2+M2 = (MQ-N)2+M2 = (MQ)2-2MNQ+(MN+1)Q = (MQ-N)MQ+Q = (LM+1)Q
となり、また、LN = MNQ-N2 = M2-Q<M2 より L<M
よって、(a,b,q)=(L,M,Q) も解となります。つまり、b<aq を満たす解は、より小さな解
(a,b,q)=(L,M,Q) から、N = MQ-L として (a,b,q)=(M,N,Q) と生成できるものに限られます。
(a,b,q)=(L,M,Q) もまた M<LQ を満たすならば、さらにその前があるはずで、それを繰り返
していくと、途中で(1)の解にたどり着くもの以外は無限降下法により存在しないことが示され
ます。つまり、b<aq を満たす解は、(1)の解から再帰的に生成されるもので全てです。
k=1 のときの解(a,b,q) = (1,1,1) からは、次の解が構成できないので、k≧2 の場合に限って、
(a,b,q) = (k3,k5-k,k2), (k5-k,k7-2k3,k2), (k7-2k3,k9-3k5+k,k2), ……
という解が得られます。
(1)(2)両方の解を合わせ、数列の三項間漸化式を作って解くことにより、最初に書いた式
が得られます。
[2] (abc-1) - (a-1)(b-1)(c-1) = a(b-1) + b(c-1) + c(a-1)> 0 より、商は1より大きいとい
えます。
a≧2, b≧3, c≧4 なので、
(a-1)(b-1)(c-1) ≧ (1/2)a (2/3)b (3/4)c = abc/4>(abc-1)/4
よって、商は4より小さいといえます。
したがって、商は2または3であるとわかります。
(1) 商が2の場合、abc-1 は偶数なので、a,b,c はいずれも奇数です。
a≧3, b≧7 とすると、c≧9 なので、
(a-1)(b-1)(c-1) ≧ (2/3)a (6/7)b (8/9)c = (32/63)abc>abc/2>(abc-1)/2 より不適
a=3, b=5 のときは、abc-1 = 2(a-1)(b-1)(c-1) を解くと、c=15
(2) 商が3の場合、abc-1 は3の倍数なので、a,b,c はいずれも3の倍数ではありません。
a≧2, b≧5 とすると、c≧7 なので、
(a-1)(b-1)(c-1) ≧ (1/2)a (4/5)b (6/7)c = (12/35)abc>abc/3>(abc-1)/3 より不適
a=2, b=4 のときは、abc-1 = 3(a-1)(b-1)(c-1) を解くと、c=8
以上(1)(2)により、条件を満たすのは、
a=3, b=5, c=15 で商は2 、a=2, b=4, c=8 で商は3
のみとなります。