・n乗の和                            GAI 氏

 a+b+c=4 、a2+b2+c2=6 、a3+b3+c3=7 であるとき、F(n)=an+bn+cn とする。

 このとき、F(4)、F(5)、・・・、F(10) の値を求む。

 この問いに対する皆さんのアプローチの仕方を紹介願う。もし、計算機でやられる場合に
はそのプログラムを示してもらうと有難いです。

 また、自然数 p<q<r≦10 で、

 a+b+c=p 、a2+b2+c2=q 、a3+b3+c3=r であるとき、F(4)、F(5)、・・・、F(10) がすべて整

数になるための(p,q,r)の組み合わせは何か?


(コメント) GAIさんの「対称式もどき」が参考になりそうですね!また、「対称式の真実」や
      「淡い期待」などでも同様の話題が取り上げられていますね。(S(H)さんより、ご
      教示いただきました。


 らすかるさんからのコメントです。(平成30年5月19日付け)

 a+b+c=p

 q=a2+b2+c2=(a+b+c)2-2(ab+bc+ca)=p2-2(ab+bc+ca) から、ab+bc+ca=(p2-q)/2

 r=a3+b3+c3=(a+b+c){(a+b+c)2-3(ab+bc+ca)}+3abc=p{p2-3(p2-q)/2}+3abc から

 abc=(p3-3pq+2r)/6

 また、F(n)=(a+b+c)F(n-1)-(ab+bc+ca)F(n-2)+abcF(n-3)

       =pF(n-1)-{(p2-q)/2}F(n-2)+{(p3-3pq+2r)/6}F(n-3)

 p=4、q=6、r=7 のときは、a+b+c=4、ab+bc+ca=5、abc=1 なので、

漸化式 F(n)=4F(n-1)-5F(n-2)+F(n-3) により全解を得る。

(mod3) p3-3pq+2r が3の倍数でないとすると、F(n-3)が3の倍数でなければならないので

    pもqもrも3の倍数でなければならない。

    よって、p3-3pq+2r も3の倍数となり矛盾。

   従って、p3-3pq+2r は3の倍数である必要があるので、p3+2r が3の倍数でなければな
  らない。

(mod2) pとqの偶奇が等しい場合、p2-q と p3-3pq は偶数なので条件を満たす。

    pが奇数、qが偶数の場合は、p2-q と p3-3pq は奇数なので、F(n-2)とF(n-3)の偶奇

    が等しくなければならないが、pが奇数、qが偶数なので矛盾。

    pが偶数、qが奇数の場合は、p2-q は奇数、p3-3pq は偶数なので、F(n-2)が偶数で

    なければならないが、qが奇数なので矛盾。

   従って、pとqの偶奇が等しくなければならない。

 以上をまとめると、F(10)まで整数であるための必要十分条件は、

  p≡q (mod2) かつ p≡r (mod3)

 1≦p<q<r≦10 ならば、

(p,q,r)=(1,3,4),(1,3,7),(1,3,10),(1,5,7),(1,5,10),(1,7,10),(1,9,10),(2,4,5),(2,4,8),(2,6,8),(3,5,6),(3,5,9),
    (3,7,9),(4,6,7),(4,6,10),(4,8,10),(5,7,8),(6,8,9),(7,9,10)

の19組。


(コメント) F(n)=(a+b+c)F(n-1)-(ab+bc+ca)F(n-2)+abcF(n-3)

     は美しい関係式ですね!数学T、数学Uにおける有名公式が、こんな風に一般化
     されるとは感動ものです。

      2文字の場合に還元すると、F(n)=an+bn に対して、

        F(n)=(a+b)F(n-1)-abF(n-2)

     例えば、 a3+b3=(a+b)(a2+b2)-ab(a+b)=(a+b)(a2-ab+b2) ・・・ 3乗の和の公式
               =(a+b)3-3ab(a+b)

           a2+b2=(a+b)(a+b)-2ab=(a+b)2-2ab ・・・ 平方の和の公式


 GAI さんからのコメントです。(平成30年5月20日付け)

 元々、a+b+c=3、a2+b2+c2=6、a3+b3+c3=7 ならば、a4+b4+c4=9 であることを示せ。また、
a5+b5+c5、a6+b6+c6 を求めよ、の問題にあたったのが疑問のきっかけでした。

 それは、計算ソフトRisa/Asirでのグレブナー基底の計算方法についての本を読んでいると
きのことだったので、その計算ソフト(オープンソースで入手でき、代数計算、特に有限体、
代数体、グレブナー基底計算を得意分野とする。)を使って、この問題にプログラム的に求
めることをやっていました。

 グレブナー基底を求め(これの発想がまた面白く次元を一つ高い所から見る視点)

[u6-6*u4+9*u2+8,u4-5*u2+6*c-2,-u4+5*u2-6*u+12*b-16,-u4+5*u2-6*u+12*a-16]

がその基底で、第1成分の式=0 でのuの解をパラメータとすることで、

 第2成分=0 からc、第3成分=0 からb、第4成分=0 からa

を求めて行く手法で、これから確かに、

 a4+b4+c4=9 が起こり、a5+b5+c5=29/3、a6+b6+c6=19/3
(a5+b5+c5=11、a6+b6+c6=13 とそう上手く問屋は卸さない!)

であることもまさに計算を厭わない機械任せの手法に頼っていました。

 ふと元の式から3つの基本対称式の値が手に入れられると気付き、a、b、cは、t の3次式

  t3-3*t2+2*t+2/3=0

の3根であることを使えば、漸化式的に求まっていくことが出来ると分かりました。

 さらに、このテーマは300年以上前ニュートンによる手法で、一般に、

 f(x)=a0*xn+a1*xn-1+・・・+an=0

のn個の解に対し、そのべき乗和を算出する方法が編み出されていることを知り、たまたま
計算ソフトPARI/GPにコマンドpolsym(f,{n})が整備されていることに気付きました。

 そこで、PARIでのソフトで、

gp > polsym(3*t^3-9*t^2+6*t+2,10)

とするだけで、

%=[3,3,5,7,9,29/3,19/3,-19/3,-343/9,-953/9,-2135/9]

と、an+bn+cn (n=0、1、2、・・・、10) までの値が一気にでてきました。

 従って、「これらがすべて整数となれるものは何だろうか?」の疑問が湧き、またまたこの
コマンド利用での検索作業を実施して、0<p<q<r≦10 での調査をやってみました。

 すると、らすかるさんが正に出された(p,q,r)の19組のみがその条件を満たしておりました。

 結果を見ても(120通りの出力中)飛び飛びの部分しか条件を満たすものは無く、これが

  p≡q (mod2) かつ p≡r (mod3)

の条件を満たしている共通の性質のものとは思ってもいませんでした。

 改めて、人の思考方法は如何に計算を厭わない計算ソフトでも敵わない力を有しているも
のかと感じ入ります。



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