自然対数表を作ろう                         戻る

 底が 10 の常用対数だと、 log102=0.3010 、log103=0.4771 、 ・・・ という
風に、すらすらそらんじていられる方も多いと思うが、底が Napier の数 e の自然対数だ
と、log2 の値すら、1より小さそうという実感はあるが、その値を常用対数並みにそらん
じていられる方は多分そんなにはいないだろうと思う。

       log2 =0.693146・・・

という値であるが、この値は、実際どんな方法で求めているのであろうか?

 その方法が分かれば、自然対数表を自前で作成することも可能となる。

このページでは、次のような数表(小数第3位まで正しい値)

log log
0.000 11 2.397
0.693 12 2.484
1.098 13 2.564
1.386 14 2.639
1.609 15 2.708
1.791 16 2.772
1.945 17 2.833
2.079 18 2.890
2.197 19 2.944
10 2.302 20 2.995

の作成を試みるつもりである。

 関数電卓を用いれば数表を作ることは簡単であるが、もちろん、それは本意ではない。
関数電卓を用いないで、手計算で求めることを主眼とする。

 log x (底 e は省略)の値は、定積分

          

の値として計算される。( → (参考) 直角双曲線の面白い性質 )

 上記の定義を用いて、log2 の値を求める場合、通常定積分の近似計算が有効だろう。
台形公式やシンプソンの公式などがよく知られた方法である。
                                  ( → (参考) モンテカルロ法 )

 区間 [1,2] を10等分して、実際に、台形公式から、log2 の近似値を求めると、

log 2 ≒ (0.1)(1/2)(1+2(0.909+0.833+0.769+0.714+0.667

                      +0.625+0.588+0.556+0.526)+0.5)

より、    log 2 ≒ 0.6937   となる。

 台形公式の特徴から、この値は、log2 の真の値よりも若干大きめの値となっている。

計算量が少なく、できるだけ誤差を抑えた形で求める方法が必要とされる。

 計算の見通しをよくするために、定積分で定義された対数の式を次のように変形する。

         

 ここで、
       
なので、
       
よって、
      
となる。

 右辺にある定積分の被積分関数は、十分小さい x に対しては、無視できる値であること
が予想される。

 実際に、例えば、n=6 の場合について、グラフを考察すると、

          

となっている。ただ、どこまで無視できる値かは直ぐには分からないし、もっとも定積分の値
の計算が結構大変そうである。

 例えば、x=1 のとき、

      なので、

よって、
      

で、log 2 の近似値を計算する場合、その誤差を、0.01以内の範囲で収めようとすれば、

           

から、n ≧50 となる。

 わずか小数点以下第2位まで求める場合でも、n=50 程度の計算が必要になり、手
計算で求めようとするこのページの趣旨からすれば、ちょっと「違うな〜!」という印象を
拭えない。

 今度は、x=−1/2 としてみよう。

     なので、

 よって、n =3 とすると、誤差は、

        

の範囲に収まる。

 このとき、

 

から、 log 2 ≒ 0.69・・・・・・・・ であることが分かる。

 n =4 とすれば、誤差は、0.001の範囲に収まり、log 2 ≒ 0.693・・・ である。

(ちょっと、手計算では、分数の計算が大変ですね!)

 そこで、もっと計算が少なくて済むような、自然対数の実用的な計算方法が求められる。

 上記と同様な計算をして、



      誤差の絶対値は、
                  

     より小さい。



      誤差の絶対値は、
                

     より小さい。

2つの式を辺々引いて、

   

  

ここで、
    

であるので、

  

この近似式の誤差の絶対値は、

  

より小さい。   であるので、誤差の絶対値は、

   

より小さいとしてよい。

 この近似式を用いると、順次 log 2 、log 3 、log 4 、・・・ が求められる。

 数表は、小数点以下第3位まで正しく求まればよいというスタンスなので、各分数の小数
表示は、小数点以下第5位まで求めればよい。
 そうすれば、小数計算による誤差は、0.000005 以内に抑えられる。

m=1 のとき、n=4 とすれば、誤差は、1/(9・38) ≒ 0.0000169 程度である。

 このとき、



で、誤差は、 0.0000169+0.000005×4=0.0000369 程度に抑えられる。

 したがって、 log 2 ≒ 0.693 であるとしてよい。

m=2 のとき、n=3 とすれば、誤差は、1/(2・7・56) ≒ 0.00000457 程度である。

 このとき、

   

で、誤差は、 0.00000457+0.000005×3=0.00001957 程度に抑えられる。

 したがって、

 log 3 ≒ log 2 +0.40545=1.09845 で、誤差は、0.00005647 以内である。

これより、  log 3 ≒ 1.098  であるとしてよい。

 以下同様にして、3個程度の分数計算で、順次に自然数の自然対数が求められる。

 計算精度を高めるには、n の値を大きくすればよいが、log 2 の計算のところで、n =5
位にしておけば十分であると思う。

(参考文献:マルクシェヴィチ 著 宮本敏雄・北原 泰 訳 面積と対数 (東京図書))