最近、直角双曲線 | ![]() |
について、次のような性質があることを知った。 |
ただし、a、b、k は任意の正の数である。
定積分の公式を用いれば、直ちに上記性質が成り立つことは了解されるが、ここでは、
面積概念をもとにして上記性質を直感的に把握してみよう。
いま、a<b の場合に限定して考える。
証明すべき等式の左辺は、図形Aの面積を表し、右辺は図形Bの面積を表す。
ところで、図形Bは図形Aを横方向に、k倍の拡大・縮小、縦方向に、1/k倍の拡大・縮
小したものなので、面積は不変である。したがって、等式の左辺と右辺は等しい。
(厳密には、区分求積法を用いて証明される。)
また、a=b のときは、等式が成り立つことは自明である。 さらに、a>b のときも、
a<b の場合と同様に示される。(定積分の上端・下端を交換する公式が用いられる。)
ところで、自然対数 を定義する方法はいろいろあるが、次のような定義
は、とても新鮮である。
冒頭で掲げた等式を用いると、対数に関する種々の公式が、ある意味で明快に説明さ
れる。
面積ということを考えれば、N >1 のとき、log N >0 であることは明らかである。
また、 N =1 のとき、定積分の性質から、log N =0 が成り立つ。
さらに、N <1 のとき、
が成り立つ。
対数の性質で重要なものは、次にあげられるものであろう。
M>0、N>0 で、r は有理数とする。このとき、
(1) log MN = log M + log N
(2) log M/N = log M − log N
(3) log Mr = r・log M
が成り立つ。
(上記で、r は有理数としたが、もちろん、r は実数でも成り立つ。しかし、定積分で上記性質
を証明するとした場合、やむなく、「r は有理数」という条件に甘んじなければならないところが、
少し辛いところだ。高校レベルを超える微分積分学(連続関数の性質)を用いれば、r が実数
でも成り立つことが示される。)
実際に、上記性質を、定積分の考え方を用いて証明してみよう。
(1)の証明:
(2)の証明:
なので、
log M/N = log M + log 1/N = log M − log N
(3)の証明: r が自然数のとき、
r =0 のときは、明らか。
r が負の整数のとき、r =−s (s は自然数)とおける。
このとき、 log Mr = log M-s = log 1/Ms = −log Ms = −slog M = r・log M
以上から、 r が整数のとき、(3)は成り立つ。
r が有理数のとき、r =p/q (pは整数、q は自然数で、p と q は互いに素)とおける。
このとき、 q・log Mr = q・log Mp/q = log Mq(p/q) = log Mp = p・log M より、
log Mr = (p/q)log M = r・log M
以上から、 r が有理数のときも、(3)は成り立つ。
ところで、10 を底とする常用対数 log10 2、log10 3 の値は、近似値で、
log10 2=0.3010 、 log10 3=0.4771
であることは、よく知られているが、自然対数 log 2、log 3 の値が、近似値で、
log 2=0.6932 、 log 3=1.0986
であることは、あまり知られていない。(私だけが覚えていないだけかも... (-_-;) )
自然対数の底 e は、
となる N として定義される。
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左図から明らかなように、長方形の面積と比較して、 log 2 < 1 であることは明らか。 log 3 については、区間 [1,3] を8等分して柱状の 長方形を作り、値を評価すれば、 log 3 > 28271/27720 > 1 したがって、 2 < e <3 であることが分かる。 |
(参考文献:ア・イ・マルクシェヴィチ 著 宮本敏雄・北原泰彦 訳 面積と対数 (東京図書))