四面体の求積
1辺の長さが a の正四面体 OABC の体積 V は、よく知られているように、
で与えられる。
一応、証明しておこう。
(証明) 底面の正三角形ABCの面積は、 (1/2)a2・(/2)=(/4)a2
△ABCの重心をGとおくと、正四面体の高さは、OGで与えられる。
ここで、 AG=(/2)a×(2/3)=(/3)a なので、三平方の定理より、
OG2=a2−(1/3)a2=(2/3)a2 なので、 OG=(/3)a
以上から、正四面体 OABC の体積 V は、
V=(/4)a2×(/3)a×(1/3)=(/12)a3 (証終)
今まで上記の証明で満足していたが、次のような別証があることを最近知ることが出来た。
(令和3年3月28日付け)
(別証) 辺OCの中点をMとおくと、辺OC⊥平面MAB である。
MA=MB=(/2)a で、辺ABの中点をNとおくと、MN⊥AB である。
このとき、 MN2=(3/4)a2−(1/4)a2=(1/2)a2 より、 MN=(/2)a
以上から、正四面体 OABC の体積 V は、
V=a×(/2)a×(1/2)×(1/2)a×(1/3)×2=(/12)a3 (証終)
また、1次独立な3つのベクトル OA 、OB 、OC により、
V=|( OA ,OB×OC )/6 |
で与えられることも有名だろう。 ( , )は内積であり、×は外積である。
(→ 参考:「垂直を求める」)
このページでは、一般の四面体について、いろいろな諸条件から、その体積を求める方
法について、まとめようと思う。
(1) 四面体 OABC の各頂点の座標が与えられる場合
O( 0 , 0 , 0 ) 、 A( x1 , y1 , z1 ) 、 B( x2 , y2 , z2 )、C( x3 , y3 , z3 )
を4頂点とする四面体 OABC の体積 V は、
で与えられる。
(証明) OA=( x1 , y1 , z1 ) 、OB=( x2 , y2 , z2 ) 、OC=( x3 , y3 , z3 )
において、 OB×OC=( y2z3−y3z2 , z2x3−z3x2 , x2y3−x3y2 ) である。
ところで、行列式
において、OB×OC の x 座標 y2z3−y3z2 は、D の x1 に関する余因子
であり、OB×OC の y 座標 z2x3−z3x2 は、D の y1 に関する余因子
であり、OB×OC の z 座標 x2y3−x3y2 は、D の z1 に関する余因子
である。
従って、 ( OA ,OB×OC )=x1X1 + y1Y1 + z1Z1=D である。
このことから、与式が成り立つことは明らかだろう。 (証終)
(2) 四面体 OABC の各辺の長さが与えられる場合
OA = a 、 OB = b 、 OC = c 、 AB = p 、 AC = q 、 BC = r とする。
このとき、四面体 OABC の体積 V は、
で与えられる。
(証明) 条件より、 a =|OA| 、 b =|OB| 、 c =|OC| である。
また、 p2=|AB|2=|OB|2−2(OA ,OB)+|OA|2 より、
(OA ,OB)=(a2+b2−p2)/2
となる。同様にして、
(OA ,OC)=(a2+c2−q2)/2 、(OB ,OC)=(b2+c2−r2)/2
いま、 OA=( x1 , y1 , z1 ) 、OB=( x2 , y2 , z2 ) 、OC=( x3 , y3 , z3 )
とすると、
なので、
が成り立つ。 明らかに、左辺は、 −(6V)2=−36V2 に等しい。
右辺は、
となり、
から、与式の成り立つことは明らかだろう。 (証終)
(コメント) 正四面体 OABC の体積 V を、この公式を用いて求めることは、あまり賢明な
方法とは言えない。実際に計算してみて大変だったもので...。
(3) 四面体 OABC の各面の方程式が与えられる場合
△OAB、△OBC、△OCA、△ABC の各面の方程式を、
a1x+b1y+c1z+d1=0
a2x+b2y+c2z+d2=0
a3x+b3y+c3z+d3=0
a4x+b4y+c4z+d4=0
とする。 行列式
の、各 dk (k=1,2,3,4)に関する余因子を、Dk とおく。
このとき、四面体 OABC の体積 V は、
で与えられる。
(証明) 行列式 D の 各 ak 、bk 、ck (k=1,2,3,4)に関する余因子を、それぞれ
Ak 、Bk 、Ck とおく。
連立一次方程式におけるクラーメルの公式から、四面体 OABC の4頂点の座標は、
O( A4/D4 , B4/D4 , C4/D4 ) 、 A( A2/D2 , B2/D2 , C2/D2 ) 、
B( A3/D3 , B3/D3 , C3/D3 ) 、 C( A1/D1 , B1/D1 , C1/D1 )
となる。 したがって、
ところで、
なので、与式の成り立つことは明らかだろう。 (証終)
(追記) 平成20年9月10日付け
最近、次のような四面体の体積を求める機会があった。
体積が5の四面体ABCDにおいて、辺AB
の中点をP、辺ACを 2 : 1 に内分する点を
Q、辺ADを 3 : 1 に内分する点をRとする。
△PQRの重心Gと頂点Aを通る直線が底
面BCDと交わる点をSとする。
このとき、四面体PQRSの体積を求めよ。
この問題は空間把握に弱い現役の受験生にとって良問の部類に入る問題と言える。
線分の比の計算には、ベクトルの概念(したがって、数学Bの範疇!)が用いられるが、
実際の体積の計算の本質的な部分は数学Tの範疇である。
(解) AP=(1/2)AB 、AQ=(2/3)AC 、AR=(3/4)AD なので、
AG=(AP+AQ+AR)/3=(1/6)AB+(2/9)AC+(1/4)AD
AS=kAG=k{(1/6)AB+(2/9)AC+(1/4)AD} において、
点Sは平面BCD上の点であるので、
k{(1/6)+(2/9)+(1/4)}=1 (← 参考 : 「斜交座標系」)
すなわち、 (23/36)k=1 より、 k=36/23 となる。
よって、 AG : GS = 23 : 13 であることが分かる。
また、 △AQR : △ACD = 1 : 2 であるので、
四面体APQR : 四面体ABCD = AP×△AQR : AB×△ACD
= 1 : 4
よって、 四面体APQRの体積は、1 となる。
また、 四面体APQR : 四面体SPQR = AG : AS = 23 : 13 なので、
四面体SPQRの体積は、13/23 となる。 (終)
(コメント) 線分の長さを使わず、比だけを用いて体積を求めているところがエレガントで
すね!
以下、工事中