曲線・曲面の分類                          戻る

 数学を始め、いろいろなところで様々な曲線や曲面を目にする。その全てをあるルール
に従って分類することは、数学における一つの研究テーマとなりうる。既に、2次曲線や2
次曲面などは、高校から大学初年級の知識があれば分類可能で、その図形が持つ特徴
を理解する一助にもなることだろう。

 このページでは現在知られている、いろいろな図形の分類について、まとめていこうと思
う。

A.2次曲線の分類

 2次曲線については、現在の学習指導要領では、高校3年で学ぶ「数学C」で完結する。

2次曲線の一般形は、

  F( x , y )=ax2+2hxy+by2+2fx+2gy+c=0

で与えられる。ただし、a、b、h は同時に0にならないものとする。

 F( x , y )=0 で与えられる曲線の概形には次のようなものがある。
                                    (→参考:「いろいろな曲線」)

     

 上段の図形は左側から順に、楕円、双曲線、放物線であるが、下段の平行な2直線とい
う場合もあることが意外に見逃しやすい。ましてや最後の重なった2直線という場合も...。

 次の問題は、この2直線になる場合を話題にした高校数学の有名問題である。

 x 、y についての2次式 x2−xy−6y2+9x+ky+20 が2つの1次式の積に分解
されるように、定数 k の値を定めよ。


(解) x についての2次方程式 x2−(y−9)x−6y2+ky+20=0 を考える。

   判別式を D とすると、

     D=(y−9)2−4(−6y2+ky+20)=25y2−2(2k+9)y+1

   題意を満たすためには、y についての2次方程式 D=0 が重解を持てばよい。

   よって、 (判別式)/4=(2k+9)2−25=0 より、 k=−2、−7 (終)


 このような解に私が初めて出会ったのは高校1年のときであった。判別式の判別式...
という点に最初戸惑ったが、その美しい解の調べに直ちに虜になってしまった。

 もちろん上記の問題については、次のように解いてもよい。

(別解) y を含まない部分 x2+9x+20=(x+4)(x+5) なので、

    x2−xy−6y2+9x+ky+20=(x+ay+4)(x+by+5) とおける。

   このとき、

    (x+ay+4)(x+by+5)=x2+(a+b)xy+aby2+9x+(5a+4b)y+20

   なので、係数を比較して、 a+b=−1 、ab=−6 、 k=5a+4b

     a+b=−1 、ab=−6 より、 a 、b は2次方程式 t2+t−6=0 の解で、

   (t+3)(t−2)=0 より、 t=−3 、2 となる。

   よって、 a=−3 、b=2 のとき、 k=5a+4b=−7

         a=2 、b=−3 のとき、 k=5a+4b=−2  (終)

(コメント) x2−xy−6y2=(x−3y)(x+2y) を用いても同様にできる。

 また、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんは次のように解くのがお気に入りとい
う。(平成21年2月22日付け)

(別解)  F( x , y )=x2−xy−6y2+9x+ky+20=0 とおく。

     このとき、 F( x , y )が2つの1次式の積に分解されるということは、その交点で

    特異点を持つということである。

     よって、 F( x , y )=2x−y+9=0 、F( x , y )=−x−12y+k=0

    k=x+12y を、 F( x , y )=0 に代入して、

     x2−xy−6y2+9x+(x+12y)y+20=0  即ち、 x2+6y2+9x+20=0

    さらに、 y=2x+9 を代入して整理すると、 25x2+225x+506=0

     (5x+22)(5x+23)=0 より、 x=−22/5 、−23/5

      x=−22/5 のとき、 k=25x+108=−2

        このとき、 F( x , y )=(x+2y+4)(x−3y+5) である。

      x=−23/5 のとき、 k=25x+108=−7

        このとき、 F( x , y )=(x−3y+4)(x+2y+5) である。 (終)

(コメント) この手の問題は、判別式を使うか、未定係数法を使うかのどちらかだと思って
      いましたが、特異点と考えても計算できるという新しい視点を得て、感動しました。
       このような視座をご教示頂いたS(H)さんに感謝します。

 さて、
      F( x , y )=ax2+2hxy+by2+2fx+2gy+c=0

において、適当に平行移動 : ( x , y ) → ( X , Y )

        X=x+α 、 Y=y+β  (x 軸方向に α 、y 軸方向に β だけ平行移動

を施すことにより、

      G( x , y )=ax2+2hxy+by2+C=0

の形に必ず変形することが出来る。ここで、Cは定数で、

        C=−f・α−g・β+c

となることは覚えていて損にはならないだろう。

 また、どれだけ平行移動するかは、次の連立方程式を解けばよい。

    ax+hy−f=0 、 hx+by−g=0

例 曲線 5x2−6xy+5y2−14x+2y+5=0 において、

      5x−3y+7=0 、 −3x+5y−1=0

 を解くと、 x=−2 、y=−1 なので、 α=−2 、β=−1

  よって、 C=7・(−2)−1・(−1)+5=−8 より、

 x 軸方向に −2 、y 軸方向に −1 だけ平行移動すると、もとの曲線は、

      5x2−6xy+5y2−8=0

に変換される。(→ 参考:「いろいろな曲線」)


 HN「土筆の子」さんが、上記話題について考察されました。(平成24年3月26付け)

 Mathmaticaで計算してみます。±の関係が微妙ではありますが、すっきりしました。

 F (x,y)=ax2+2hxy+by2+2fx+2gy+c=0  (a,h,b)≠0 において、

これを射影化すると、 ax2+2hxy+by2+2fxz+2gyz+cz2=0

 左辺は、 {x, y, z} {{a, h, f}, {h, b, g}, {f, g, c}} {x, y, z} と変形できる。

 F (x,y)に対して、平行移動 :(x ,y)→(X ,Y) X=x+α、Y=y+β を施すことにより、

   G( x , y )=ax2+2hxy+by2+C=0

の形に必ず変形することが出来る。ここで、Cは定数で、C=−f・α−g・β+c

このとき、F (x,y)の左辺を、 {{a, h, 0}, {h, b, 0}, {0, 0, C}} にする操作を行っている

 上の例によれば、 {{5, -3, -7}, {-3, 5, 1}, {-7, 1, 5}} において、

   C = 5 - (-7) (-2) - (1) (-1) = 5 - 14 + 1 = -8

で、 {{5, -3, 0}, {-3, 5, 0}, {0, 0, -8}} となる。

(コメント) 土筆の子さんに追認していただき、ありがとうございます。


 HN「土筆の子」さんが、円の標準形について考察されました。(平成24年3月29付け)

 先日、代数幾何学の2次超曲面の幾何あたりを勉強しましたので、少し、展開してみます。

 x2 + y2 + 6x + 4y - 12 = 0 を射影化して、 x2 + y2 + 6xz + 4yz - 12z2 = 0
                              (* あとで、z=1 と戻す*)

 3×3行列 A1 = {{1, 0, 3}, {0, 1, 2}, {3, 2, -12}} として、その行列式 Det[A1] = -25

 また、2×2行列 A = {{1, 0}, {0, 1}} として、その行列式 Det[A] = 1

 このとき、 Det[A1]/Det[A] = -25

 ここで、 Det[A1]/Det[A] = c - fα - gβ が成り立つ。 (→ 参考文献)

     ただし、X = x + α、Y = y + β とすると、α、βは、連立方程式
    ax+hy−f=0 、 hx+by−g=0 の解。

 上記に適用すると、α = 3 、β = 2 で、 x2 + y2 - 25 = 0 となる。

 (参考文献: 硲 文夫(はざまふみお)著  代数幾何学 (森北出版))


(コメント) 単に平行移動だけだったら、定数項は、Det[A1]/Det[A] の計算で得られること
      に感動しました。


 次に、xy の項を消去するには、原点中心に角θの回転移動を施せばよい。

ただし、角θは下記の式を満たす鋭角とするのが普通!

       

  特に上式で、 a=b のときは、 θ=45°と考える。

例 曲線 5x2−6xy+5y2−8=0 を、原点中心に角45°回転させると、

    4x2+y2−4=0 という楕円の方程式が得られる。

 このように、平行移動と回転移動を施さないと、曲線の概形が判断できないかというと、
実はそうでもない。次のような公式が知られている。

 ab−h2>0 のとき、 楕円(楕円、円、点の場合を含む)

 ab−h2<0 のとき、 双曲線(双曲線、交わる2直線の場合を含む)

 ab−h2=0 のとき、 放物線(放物線、平行な2直線の場合を含む)



例 曲線 5x2−6xy+5y2−14x+2y+5=0 において、

  ab−h2=25−9=16>0 なので、楕円になるだろうことが予想される。


(追記) 平成24年3月26日付け

 上記の公式をもう少し精密化した公式が知られている。

一般の2次曲線の分類

 ax2+2hxy+by2+2fx+2gy+c=0  (a,h,b)≠0 において、

 Δ=ab−h2 、τ=a+b

 

とおく。

(1) Δ>0 のとき

  τD<0 ・・・ 楕円(円を含む) 、 D=0 ・・・ 1点 、

  τD>0 ・・・ 図形無し

(2) Δ<0 のとき

  D≠0 ・・・ 双曲線 、 D=0 ・・・ 交わる2直線

(3) Δ=0 のとき、合同変換して、 b’y2+2f’x+2g’y+c’=0

  D≠0 ・・・ 放物線 、 D=0 ・・・ b’c’−g’2<0 平行2直線
                         b’c’−g’2=0 1直線
                         b’c’−g’2>0 図形無し



 土筆の子さんが、「2次曲線の分類」について考察されました。(平成24年4月8日付け)

 ax2+2hxy+by2+2fx+2gy+c=0 を射影化すると、

  a(x/z)2 + 2h(x/z)(y/z) + b(y/z)2 + 2f(x/z) + 2g(y/z) + c = 0

 上の式に、z2をかけて、(あとで、z=1にもどす。)

  ax2+2hxy+by2+2fxz+2gyz+cz2=0

 行列  {{a, h, f}, {h, b, g}, {f, g, c}}を考えるが、以下のように一般化しておく。

  A= {{a11, a12, a13}, {a21, a22, a23}, {a31, a32, a33}}

 また、{x,y,z}を、{x1,x2,x3}としておく。以下のように、X1、X2、X3及びD1、D2、D3をとる。

  X1 = x1 + (a12/a11) x2 + (a13/a11) x3
  X2 = x2 + {(a23a11 - a12a13)/(a22a11 - a12a21)} x3
  X3 = x3

  D1 = a11
  D2 = a22a11 - a12a21
  D3 = Det[A]

 すると、 D1X12+(D2/D1)X22+(D3/D2)X32 と表せる。

 具体例を考える。

例1: 5-14x+5x2+2y-6xy+5y2 = 0 を射影化すると、5z2-14xz+5x2+2yz-6xy+5y2 =0

 A={{5,-3,-7},{-3,5,1},{-7,1,5}} で、D1 = 5 、D2 = 16 、D3 = -128

 このとき、 5X12+(16/5)X22-8X32 と表せる。ここで、X3 に 1 を代入して、

    5X12+(16/5)X22-8

例2: x2+y2+6x+4y-12=0 を射影化すると、x2+y2+6xz+4yz-12z2=0

 A={{1,0,3},{0,1,2},{3,2,-12}} で、D1 = 1 、D2 = 1 、D3 = -25

 このとき、 X12+X22-25X32 と表せる。ここで、X3 に 1 を代入して、X12+X22-25

 ここのD1、D2、D3は、それぞれ、1×1、2×2、3×3行列の行列式です。

 これと行列の固有値の関係は、考察中です。

参考:硲文夫著、代数幾何学、4章


 さて、回転移動により変換される方程式を求めることは、計算が煩雑で面倒である。もう
少し楽ができないものだろうか?

 まず、次の事実が知られている。

 2次式 ax2+2hxy+by2 に、変換 ( x , y ) → ( X , Y )

        

を施して得られる2次式 Ax2+2Hxy+By2 について、次が成り立つ。

  (1) A+B=a+b

  (2) AB−H2=ab−h2


(すなわち、回転により、a+b 、ab−h2 は不変な値となる!)

(証明) x=Xcosθ+Ysinθ 、y=−Xsinθ+Ycosθ を、ax2+2hxy+by2 に代入して、

a(Xcosθ+Ysinθ)2+2h(Xcosθ+Ysinθ)(−Xsinθ+Ycosθ)+b(−Xsinθ+Ycosθ)2

=(acos2θ−2hsinθcosθ+bsin2θ)X2
     +(2asinθcosθ+2h(cos2θ−sin2θ)−2bsinθcosθ)XY
          +(asin2θ+2hsinθcosθ+bcos2θ)Y2

=(acos2θ−hsin2θ+bsin2θ)X2
     +(asin2θ+2hcos2θ−bsin2θ)XY
          +(asin2θ+hsin2θ+bcos2θ)Y2

 よって、  A=acos2θ−hsin2θ+bsin2θ

       2H=asin2θ+2hcos2θ−bsin2θ=(a−b)sin2θ+2hcos2θ

        B=asin2θ+hsin2θ+bcos2θ

となる。このとき、

 (1) A+B=acos2θ−hsin2θ+bsin2θ+asin2θ+hsin2θ+bcos2θ=a+b

 (2) ここで、 A−B=acos2θ−hsin2θ+bsin2θ−asin2θ−hsin2θ−bcos2θ

              =(a−b)(cos2θ−sin2θ)−2hsin2θ

              =(a−b)cos2θ−2hsin2θ

  なので、 4AB=(A+B)2−(A−B)2

           =(a+b)2−((a−b)cos2θ−2hsin2θ)2

           =(a+b)2−(a−b)2cos22θ+4h(a−b)sin2θcos2θ−4h2sin22θ

よって、

  4(AB−H2)=(a+b)2−(a−b)2cos22θ+4h(a−b)sin2θcos2θ−4h2sin22θ
                 −(a−b)2sin22θ−4h(a−b)sin2θcos2θ−4h2cos22θ

          =(a+b)2−(a−b)2−4h2

          =4(ab−h2

 より、 AB−H2=ab−h2 が成り立つ。 (証終)

(コメント) AB−H2 に直に代入してもよいが、計算が少し大変かな?

 上記の事実から、

 回転移動により、 ax2+2hxy+by2 → Ax2+By2 と変換されるとき、

  A、B は、 2次方程式 t2−(a+b)t+ab−h2=0 の解である


という公式が得られる。これも知っていれば便利な公式となるだろう。

例 曲線 5x2−6xy+5y2−8=0 において、

  2次方程式 t2−10t+16=0 の解は、 8 と 2

  よって、 回転により、 8x2+2y2−8=0 または、 2x2+8y2−8=0

 すなわち、 4x2+y2−4=0 または、 x2+4y2−4=0 に変換される。

(コメント) ほとんど暗算で変換後の方程式が得られるなんて、アンビリーバブルです!私
      が高校生のときは、地道に計算していたのですが...。多分数学科の先生方は、
      この公式をご存じで、上と同じように暗算で検算していたのでしょうね!


 ところで、2次方程式 t2−(a+b)t+ab−h2=0 は、2次の正方行列

       

の固有方程式である。(→ 参考:「固有ベクトルを求める」)

 実際に、固有方程式 det(A−tE)=0 を計算すると、

      t2−(a+b)t+ab−h2=0

が得られる。 2次曲線:

   F( x , y )=ax2+2hxy+by2+2fx+2gy+c=0

は、上記の係数行列 A を用いて、

      px+c=0

と書ける。ただし、 =( x   y ) 、=( 2f   2g ) とする。

 上記で見たように適当に平行移動することにより、 px の項は消滅させることが出来る。

 よって、与えられた2次曲線を +C=0 と考え、一般性を失うことなく、その形状
を分類してもよいだろう。

 ここで、係数行列 A は、実対称行列であるので、直交行列 P により対角化される。

すなわち、
         

と書ける。ここで、α 、 β は、係数行列 A の固有値である。



  以下、工事中