このページでは、厳密性を無視して、初等的な微分積分を一望しようと思う。極限の定義か
ら始まるのが普通だが、ここでは一切割愛した。微分積分に対する処し方と応用の仕方が分
かることを目標とした。多分3時間ほどで、微分積分のあらましが理解されるものと思う。
1.関数について
このページで扱う関数は、aX
2+bX+c のような多項式関数に限定する。関数は、
F(X) = aX
2+bX+c のように、記号
F(X) を用いて表される。
2.関数の値の計算
関数 F(X) に対して、X=a のときの関数の値を、
F(a) と表す。
(例) F(X) =2 に対しては、F(0) =2 となる。
F(X) =2X+3 に対しては、F(0) =2・0+3=3 となる。
3.導関数と原始関数
関数 G(X) = X
n に対して、関数 F(X) = nX
n−1 を、G(X) の
導関数といい、G(X) に対し
て、F(X) を求めることを、「
微分する」という。導関数 F(X) は G’(X) とも表される。
逆に、G’(X) = F(X) となる関数 G(X) を、関数 F(X) の
原始関数といい、F(X) に対して、
G(X) を求めることを、「
積分する」という。原始関数 G(X) は
不定積分ともいわれ、
と表される。
(例)
(1)’=0 、 (X)’=1 、 (X2)’=2X 、 (X3)’=3X2
4.導関数と原始関数の線形性
和(差)の微分は、微分の和(差)に等しく、実数倍の微分は、微分の実数倍に等しい。
和(差)の積分は、積分の和(差)に等しく、実数倍の積分は、積分の実数倍に等しい。
この性質から、次のような微分積分の計算が可能となる。
(例)
(2X+3)’=(2X)’+(3)’=2(X)’+3(1)’=2・1+3・0=2
5.微分係数の計算
関数 F(X) に対して、その導関数 F’(X) の X=a のときの値
F’(a) を、微分係数という。
(例) 関数 F(X)=X
3−2X に対して、微分係数 F’(−1)は、次の手順で求められる。
関数 F(X) を微分して、導関数 F’(X) は、F’(X)=3X
2−2
この X に −1 を代入して、F’(−1)=3(−1)
2−2 =3−2 =1
6.微分係数の幾何学的意味
関数 F(X) に対して、微分係数 F’(a) は、
曲線 Y= F(X) の、X=a における接線の傾き
を表す。
(例) 放物線 Y=X2 のグラフと、3本の直線
(1) Y=2X
(2) Y=2X−1
(3) Y=2X−2 |
|
 |
のそれぞれとの位置関係から、接する状態というものを理解しよう。 |
 |
Y=X2 のグラフと直線 Y=2X は、
X2=2X から、X=0、2 なので、
異なる2点で交わる。
Y=X2 のグラフと直線 Y=2X−1 は、
X2=2X−1 から、X=1 なので、
1点で接する。
Y=X2 のグラフと直線 Y=2X−2 は、
X2=2X−2 を満たす実数はないので、
交わらない。
以上から、
放物線 Y=X2 のグラフと直線 Y=2X−1 は、
点(1,1)で接し、 Y=2X−1 が接線となる。
ところで、F(X)=X2 とおくと、F’(1)=2 で
ある。これは、接線 Y=2X−1 の傾きに等しい。 |
接線は、接点付近における曲線の状態を、直線として近似するという意味において、大切な
考え方である。微分を学習する前の段階では、放物線の接線は、判別式を活用して求めるの
が普通であるが、一度微分を学習すると、接線は、微分係数の幾何学的意味を利用して、簡
単に求められるようになる。
(例) 放物線 Y=X
2−2X−1 上の点(3,2)における接線の方程式を求めよ。
Y’=2X−2 なので、X=3 のとき、Y’=2・3−2=4
よって、傾き 4 で、点(3,2)を通る直線の方程式は、Y=4(X−3)+2=4X−10
7.関数の増減
接線は、接点付近における曲線の状態を、直線として近似しているので、接線の傾きを表す
微分係数 F’(a) の正負の符号から、 X=a における関数 F(X) の増減の状態を知ることが
できる。すなわち、
F’(a)>0 ならば、X=a の近くで、関数 F(X) は増加の状態
F’(a)<0 ならば、X=a の近くで、関数 F(X) は減少の状態
(例) F(X)=X
2 において、F’(X)=2X
X>0 では、いつも F’(X)=2X>0 なので、X>0 において、F(X)は増加関数
X<0 では、いつも F’(X)=2X<0 なので、X<0 において、F(X)は減少関数
導関数の符号を調べることにより、関数の増減の状態が分かるということは、画期的なこと
である。この場合、増減の変わり目の計算がポイントになる。
上の(例)からも分かるように、X=0 で、減少から増加に状態が変化している。この増減
の変わり目 X=0 は、導関数 F’(X)=2X
=0 とすることにより、求められる。(実際に、
増減が変化しているかどうかは、周りの値の変化を調べる必要がある。)
(例) 関数 F(X)=X
3−3X の増減を調べよ。
F’(X)=3X
2−3=3(X+1)(X−1)=0 より、X=−1、1
F’(X)>0 を解いて、X<−1、1<X F’(X)<0 を解いて、−1<X<1
よって、X<−1、1<X のとき、F’(X)>0 から、F(X)は増加関数
−1<X<1 のとき、F’(X)<0 から、F(X)は減少関数
以上の関数の増減の状態は、次のような
増減表にまとめられる。
増減表において、X=−1 の前後で、増加から減少に変化している。このようなとき、
X=−1 で、関数 F(X)は
極大であるといい、
極大値は、2 となる。
同様に、X=1 の前後で、減少から増加に変化している。このようなとき、
X=1 で、関数 F(X)は
極小であるといい、
極小値は、−2 となる。
極大値・極小値は、局所的な意味での最大値・最小値のことである。極大値・極小値は、
まとめて、
極値といわれる。
(追記) 令和6年11月26日付け
次の東北大学 文系(1986)の問題は、極小値の計算である。
問題 a は実数とし、F(x)=a(x−1)
2(x+1)+x とする。a の関数
G(a)=∫
-11 {F’(x)}
3dx の極小値を求めよ。
(解) F(x)=ax
3−ax
2+(1−a)x+a より、F’(x)=3ax
2−2ax+(1−a)
{F’(x)}
3=(3ax
2−2ax)
3+3(1−a)(3ax
2−2ax)
2+3(1−a)
2(3ax
2−2ax)+(1−a)
3
∫
-11 {F’(x)}
3dx の計算で、∫
-11 (x の奇数次の項)dx =0 なので、{F’(x)}
3 の偶
数次の項だけに注目すればよい。
27a
3x
6+36a
3x
4+27a
2(1−a)x
4+12a
2(1−a)x
2+9a(1−a)
2x
2+(1−a)
3
より、
G(a)=2∫
01 {27a
3x
6+36a
3x
4+27a
2(1−a)x
4+12a
2(1−a)x
2+9a(1−a)
2x
2+(1−a)
3}dx
=2(27a
3/7+36a
3/5+27a
2(1−a)/5+4a
2(1−a)+3a(1−a)
2+(1−a)
3)
=(256/35)a
3+(64/5)a
2+2
G’(a)=(768/35)a
2+(128/5)a=(768/35)a(a+7/6)=0 より、a=−7/6、0
G(a)は、a=0 で極小で、極小値は、G(0)=2 である。 (終)
(コメント) 計算の方針は、単純明快であるが、計算そのものが少し大変である。
8.関数のグラフ
増減表を利用して、関数のグラフを描くことができる。
(例) 関数 F(X)=X3−3X2+2 のグラフをかけ。
F’(X)=3X2−6X =3X(X−2)=0 より、
X=0、2
よって、次の増減表を得る。

したがって、求めるグラフは右上図となる。 |
|
 |
9.面積と定積分
 |
左図の三角形の面積は、(底辺)×(高さ)÷2=1×2÷2=1
である。
ところで、Y=2X の原始関数 G(X) は、G(X)=X2
このとき、G(0)=0、G(1)=1 なので、G(1)−G(0)=1
この2つの計算結果が等しいことに注意する。
上記の計算が示唆するように、積分による面積の計算が可能と
なる。(もう少し一般的な場合は、こちらを参照) |
 |
つまり、左図のような図形の面積は、

により求められる。ただし、G(X) は、F(X) の原始関数と
する。
ここで、Sの式における積分計算を、定積分の計算と
いう。
|
(例) 右図のような図形の面積を求めよ。


(注) 右図の図形は台形なので、面積は、
S=(3+7)×2÷2=10 である。
(例) 下図のような図形の面積を求めよ。
|
|
 |
(別解) 区分求積法的な方法で考える。
 |
左図において、放物線 y=x2 上の点P(x,x2)とちょっとずら
した放物線上の点Q(x+Δ,(x+Δ)2)をとる。
台形ABQPの面積Kは、
Δ(x2+(x+Δ)2)/2=Δ(2x2+2Δx+Δ2)/2
台形CPQDの面積Hは、
((x+Δ)2−x2)(x+(x+Δ))/2=Δ(2x+Δ)2/2 |
そこで、 H/K=(2x+Δ)
2/(2x
2+2Δx+Δ
2) において、Δ≒0とすると、H/K≒2
このことから、 T : S = 2 : 1 すなわち、 S=1/3 が成り立つことが分かる。 (終)
(コメント) この別解の考え方も根底には
カヴァリエリの原理が存在する。
10.定積分の計算
関数 F(X)において、F(X)≧0 のとき、定積分の計算は、面積の計算という意味を持った
が、定積分の計算は、一般の関数に対しても、行うことができる。ただし、その計算結果は、
面積という意味を持たないことに注意する。
(例)
11.面積の計算
ここでは、いくつかの面積の公式を紹介する。
(1)
 |
左図のような、放物線とX軸が囲む図形の面積は、
 |
この面積は、上図の長方形の面積の2/3倍でもある。
この話題が、
東北大学文系(1975)で出題された。
この面積の公式を用いると、下図のような図形の面積は、暗算で求められる。
 |
求める面積は、
S=(3−1)×3×(2/3) =4
|
(2)
 |
左図のような場合、求める面積は、
 |
また、この計算は、次のように解釈される。
 |
一般に、左図のような図形に対して、
求める面積は、

で与えられる。 |
(例)
 |
放物線 Y=X2 と直線 Y=2X+3 が囲む図形の面積を
求めよ。
X2 =2X+3 より、(X−3)(X+1)=0 よって、X=3、−1
したがって、求める面積は、 |
12.卒業試験問題
曲線 Y=X
3 について、次の問に答えよ。
(1) 曲線上の点(1,1)における接線の方程式を求めよ。
(2) 曲線と(1)の接線との交点のX座標を求めよ。
(3) 曲線と接線で囲まれた図形の面積を求めよ。
(答) (1) Y=3X−2 (2) X=−2、1 (3) 27/4
みなさん、無事に卒業できたでしょうか?
(お願い) このページのタイトル通り、微分積分が3時間でマスターできたかどうかについて、
アンケートを取りたいと思います。所要時間を、
こちらまでメールでお願いします。アンケ
ートの結果によっては、もしかしたらタイトルが変更になるかもしれません.....
f(^_^) 。
(追記) HN「コルム」さんから、微分積分について、「体積」がないよ、とのご指摘を頂いた。
以下、コルムさんによるものです。(一部文言等を修正させていただきました。)
(平成27年12月1日付け)
以下の記述は、直感的な理解を助けるものであって厳密な説明ではないことを予めお断り
しておきます。
13.体積
x軸に垂直な2平面α、βに挟まれた立体の体積をVとする。2平面α、βとx軸との交点
の座標をそれぞれa、bとする。ただし、a<bとする。座標がxである点を通り、x軸に垂直な
平面での立体の切り口の面積をS(x)とする。xの増分凾に対するVの増分を儼とする。
凾が十分小さいときは、儼≒S(x)凾 なので、区分求積法の考えにより
V=lim
凾→0 ΣS(x)凾=∫
ab S(x)dx
と考えられる。
例 底面の半径 r 、高さ h の直円錐の体積を求めよ。
直円錐の頂点を原点とし、頂点から直円錐の底面の中心に向かう直線を x 軸とする。
平面 x=t で切断した切り口の図形は円で、その面積は、 S(t)=π(r/h)
2t
2
よって、求める立体の体積は、
∫
0h S(x)dx=∫
0h π(r/h)
2t
2dx=π(r/h)
2・(h
3/3)=πr
2h/3
となり、よく知られた公式を得る。
(追記) 令和7年1月12日付け
14.速さ・道のりの問題
次の東北大学 理系(1989)の問題は、物理への応用問題である。
問題3 曲線 x=F(y) (0≦y≦30) をy軸のまわりに回転してできる底の平らな空の容
器がある。以下、長さの単位を1cmとする。この容器に毎秒 a cm
3の割合で水を入れ
るとき、あふれ出すまでは t 秒後の水面の上昇速度が 1/√(1+t) cm/秒であるとす
る。
(1) 何秒後に水面の高さが18cmになるか。
(2) 関数F(y)を求めよ。ただし、F(y)は正の値をとるものとする。
(解)(1) t 秒後の水面の高さを y(cm)とおくと、 題意より、 dy/dt=1/√(1+t)
このとき、 y=2√(1+t)+C (Cは積分定数)
t=0 のとき、y=0 なので、 C=−2 より、 y=2√(1+t)−2
y=18 のとき、 2√(1+t)−2=18 より、 1+t=100 すなわち、 t=99(秒後)
(2) t 秒後の容器の体積をVとおくと、 V=π∫
0y x
2dy=π∫
0y F
2(y)dy
よって、 dV/dt=(dV/dy)・(dy/dt)=πF
2(y)・1/√(1+t)=a より、
F
2(y)={a√(1+t)}/π=a(y+2)/(2π)
したがって、 F(y)=√{a(y+2)/(2π)} (終)
以下、工事中!