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擺線
    媒介変数表示は、   

 この曲線は、サイクロイドと普通いわれる。

 定直線に沿って円が滑らずに回転するときの、円周上の定点の軌跡である。

 下図は、a=1 としたときのサイクロイドである。



 サイクロイドを手書きで厳密に描くことは難しいが、その近似形は次のようにして求められ
る。

 まず、a=1 のとき、半径1の円周の長さは、 2π≒6.28 であるので、この長さを8等
分する。(8等分することは、容易である)

 半径1の円周を8等分し、上記の8等分点で接する円を描き、順次、円周の8等分点を滑
らかに結んでいくと、サイクロイドを近似的に描くことができる。

 


性質 1.円が1回転してできる弧の長さは、円の直径の4倍

        
                         

    2.円が1回転してできる弧とX軸で囲まれた部分の面積は、円の面積の3倍

   


(追記) 上記では定積分を用いて面積を求めたが、カヴァリエリの原理を用いると簡単に求
     められる。筑波大学附属駒場高校の更科先生、鈴木先生からご教授いただいた方
     法である。両先生に感謝したい。(平成29年2月27日付け)

    

 上図の左側の部分(黄色)を x 軸に平行な線分AA’で切ったとき、 AA’=(π−θ)a

同様に、x 軸に平行な線分BB’で切ったとき、 BB’=(π−(π−θ))a=θa

 よって、左側の部分(黄色)の面積は、カヴァリエリの原理より、

  AA’×a+BB’×a=(AA’+BB’)×a=πa×a=πa2

 以上から、サイクロイドと x 軸で囲まれた部分の面積は、

  πa2+πa2+πa2=3πa2

となる。


性質  3.サイクロイドの縮閉線もまたサイクロイドである(→ 参考


(追記) サイクロイドは、1501年シャルル・ブヴェルが円積問題に関連して述べたのが最初
     である。その後、ガリレオらが研究し、橋のアーチとしてその使用法が示唆された。

 サイクロイドのアーチは、建築学上他のどんな曲線よりも優れているという。ホイヘンス
(1629〜1695)は、サイクロイドを上下逆にした曲線が等時降下線になることを示し、振子
時計の製作に用いた。

 等時降下線・・・曲線上の質点が重力のみによって曲線上を降下するとき、曲線上どこにあっても同じ時間で最下点
           に到達するという曲線


 サイクロイドは、その特殊な美しさ・優雅な性質から『幾何学のヘレン』とも呼ばれるそう
だ。
   ヘレン・・・トロイのヘレンは、戦争が起こってしまうほどの歴史上に残る美女である。

(参考文献:E.T.ベル 著 田中 勇・銀林 浩 訳 数学をつくった人々(T) (東京図書))


(追記) 平成19年4月1日付け

 3月31日、何とはなしにTVを見ていたら、「世界一受けたい授業!!SP」(NTV系)で面白
い問題を紹介していた。

     

 直線、サイクロイド、楕円のそれぞれの曲線上に沿って、点Aから青球を転がり落とすと
き、どの場合が最も速く点Bに到達するだろうか?

 サイクロイドが最速降下線という事実を知っている方は何でもない問題であるが、知らな
い方はかなり迷うだろう。(直線の場合は最も距離が短いし、楕円の場合は点Aから急降
下していて速そうに見えるし、...。)

#サイクロイドは、「ブラヒストクローネ」という別名を持つ。ギリシア語で、ブラヒスト(最短の)
 クローネ(時間)という意味である。

 AからBまでの最短距離は、もちろん、「直線AB」であるが、問題は、AからBまでの最短
時間で、青球の速さが関係してくる。

 最初の部分で急降下させれば、最後の部分では、どうしてもゆるやかな傾斜となってしまう。
そのいい塩梅の曲線が、サイクロイドとなる。

 サイクロイドが最速降下線であることを初めて証明したのは、スイスの数学者ベルヌーイ
兄弟(ヤコブ・ベルヌーイ、ヨハン・ベルヌーイ)である(1697年)。

    サイクロイドの媒介変数表示    

から、サイクロイド上の任意の点における速度ベクトルは、 θ=ωt として、

    ( dx/dt , dy/dt ) =( aω(1−cosθ) , aωsinθ )

で与えられるから、接線と x 軸の正の向きとなす角を α とすると、

     tan α = dy/dx =sinθ/(1−cosθ)=cot(θ/2)=tan(π/2−θ/2)

 よって、 α=π/2−θ/2 が成り立つ。

 このとき、 y = a(1−cosθ) = 2asin2(θ/2) = 2acos2α となるので、

        

が成り立つ。 この式こそが、サイクロイドが内面で持つ性質を特徴づけている。

 上図において点Aを原点とし、水平方向左向きに x 軸を取り、鉛直下向きに y 軸を取る。

初速度が 0 で、質点に働く力が重力のみの場合、質点の速さ v は、質点の y 座標を y と
して、力学的エネルギー保存の法則から、 v2 = 2gy ( g は、重力加速度) により与え
られる。

 いま、質点を「光」と考え、光の速さが v2 = 2gy で与えられるような媒質の中を進むも
のとすると、光は、光学的に最短の経路を進み、屈折の法則から、

        

が成り立つ。ところで、  を上式に代入すると、

        

が成り立ち、光は、サイクロイドに沿って進むことになる。

 このことは、サイクロイドが最速降下線であることを示している。


(コメント) 上記は厳密とは言えないが、だいたいの雰囲気はあっているのかな?


(追記) 上図でチラッと見た楕円とサイクロイドの位置関係を探究してみよう。

 サイクロイド x=θ−sinθ、y=1−cosθ (0≦θ≦2π) の概形

   

と、楕円 (x−π)2/(4π2)+y2/4=1 (y≧0) の概形

   

は上図のようである。

 どっちがどっちか分からないほど、本当にそっくりさんですね!気持ち的に楕円の両端が
少しふっくらした感じなのかな...。

 両者を一つの座標系に書き込んでみると、違いがよく分かる。これはパソコンの描画ソフト
に書かせたもので、これを手書きで書くのは至難の技でしょう。

   

 サイクロイドとx軸で囲まれた面積は、3π、楕円とx軸で囲まれた面積は、π2 であること
から、
       π2>3π

なので、楕円の方が少しふっくらしていることは推察される。

 実際に、x=θ−sinθ、y2=1−cosθ (0≦θ≦2π)

      x=π+πcost、y1=2sint (0≦t≦π)

において、 θ=2π−2t に注意して、

 y1−y2=2sint−1+cosθ=2sint−1+cos2t=−2sin2t+2sint

 ここで、sint=X とおくと、 0≦t≦π より、 0≦X≦1

 このとき、 y1−y2=−2X2+2X=−2(X−1/2)2+1/2 なので、

   0≦y1−y2≦1/2 すなわち、 y1≧y2

 このことから、楕円は3つの共有点を除いて、いつもサイクロイドの上方にあることが分か
る。



  以下、工事中!