3等分可能な角
任意の角度は定規とコンパスで3等分できないことは証明されているが、3等分できる角
度もある。例えば、90°を3等分することは容易である。
では、0°以上、360°未満のどんな角度ならば3等分できるのだろうか?こんな疑問を
HN「H.I.」さんが当HPの掲示板「出会いの泉」(平成22年2月27日付け)に書き込まれ
た。(→参考 : 「3次方程式と作図の問題」)
以下は、HN「H.I.」さん自身による解法である。(平成22年3月1日付け)
補題1 任意の大きさの円とそれに接する接線について、接点の平角を n 等分する
線分と円との交点同士を円に沿って結ぶと、正 n 角形が作られる
証明は、円周角と接弦定理から明らかだろう。
補題2 目盛りのない定規とコンパスのみ作図可能な正 n 角形は、
n=2k・F (Fは互いに異なるフェルマー素数同士の積)
だけである
ここで、補題1で示した円周角の大きさθは、 θ=180°/n=180°/(2k・F) と表せ
るので、これを3倍した角度を θ3 と表すと、
θ3=540°/(2k・F)
2倍の角度、あるいは半分の角度は任意に作り出せるので、2の素因数をすべて消去して
整理すると以下のようになる。
θ3=2m・33・5 / ( 3a・5b・17c・257d・65537e )
ただし、m は整数で、a〜e は、すべて 0 または 1
これをより一般化していくと、
k等分出来る角度θkは以下のように表せる。
θk=2m・32・5・k / ( 3a・5b・17c・257d・65537e )
ただし、kは2の累乗数でない正の整数、mは整数、a〜eは、すべて 0 または 1
これをエクセルで計算したところ、度数法表記で整数となる角度(0°〜360°)となるの
は以下のようである。
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よく知られている 60°の3等分ができない事実も一応確認できたが・・・本当にk等分で
きる角度はこれしかないのだろうか?今ひとつ確証が持てない。
この話題に関連して、らすかるさんからご教示いただきました。(平成22年3月1日付け)
3度の倍数は作図できるので、63、81、99、・・・ などの9の倍数は、すべて3等分でき
ると思う。5等分、7等分も同様である。
HN「H.I.」さんによれば(平成22年3月1日付け)、円を利用してるので、正 n 角形にな
らない角度が漏れているとのこと。整数で表せない角の方が多いので、結局多くの角が漏
れているらしいとのことである。
「いつ、角の3等分が可能か?」という問いかけに対して、次の事実が知られている。
定 理 n が3で割り切れない自然数のとき、角 180°/n は定木・コンパスのみ
を用いて、3等分できる
(証明) n は、3で割り切れないので、ある整数 a 、b が存在して、 na+3b=1
このとき、両辺に 60°/n を掛けて、 60°a+(180°/n)b=60°/n
ここで、 60°は作図可能な角度であり、180°/n は与えられた角度であることに注意
すると、上式は、60°/n の作図方法を示している。 (証終)
例 36°は3等分可能であることを示せ。(因みに、36°は正5角形が作図可能より作図可能!)
(解) 5×(−1)+3×2=1 の両辺に、12°を掛けて、
60°×(−1)+36°×2=12°
よって、∠AOBが与えられた角度36°を表すとすると、
その2倍の角度72°は、∠AOCで与えられる。
点Cは、A、Bを通る円Oと、点Bを中心とする半径ABの
円との交点として作図される。
そこで、正三角形OCDを作図すれば、∠AODが求める
∠AOBの3等分になっている。 (終)
上記より、12°は作図可能なので、その4等分である3°も作図可能である。このことか
ら、3°の倍数もすべて作図可能である。(らすかるさんが言われていたことの確認)
(参考文献: ローレン・C・ラーソン 著 秋山 仁・飯田博和 訳
数学発想ゼミナール 1 (シュプリンガー・フェアラーク東京))
以下、工事中