最短経路問題                                  戻る

 下図のような市街路において、AからBへ遠回りをしないで行く方法の数を考える。

   最短経路問題      

  通常、この問題に対しては、次のように説明され解かれる。

 右図において、そのような道順の総数は、横3本、縦3本の
順列の数に等しいので、

  
  最短経路問題考え方

 このような問題に対して、次のような裏技がある。この裏技は、上のような解法が困難な
場合に対しても万能であることを特に強調したいと思う。

  最短経路の裏技 
    左図において、AからQへ至る道順は 1通りなので、
   Q地点に 1 と書く。AからPへ至る道順は、2通りな
   ので、P地点に 2 と書く。他も同様である。ところで、
   この 2 という数は、1+1 という計算で求められる。

   このようにして計算したものが、左図の赤字である。
   したがって、AからBへ遠回りをしないで行く方法の
   数は、20通りであることが分かる。 

 この裏技を、他の場合についても適用してみよう。

最短経路問題応用1     左図は、普通次のように解かれる。

     

   裏技を使えば、次の通り。
   最短経路問題応用1解答

 次の左下図は、普通次のように解かれる。

  

最短経路問題応用2      裏技を使えば、次の通り。

     最短経路問題応用2解答
 

 読者のために、練習問題を置いておこう。

練習問題  下図の市街路で、AからBまで行く最短経路の場合の数を求めよ。ただし、
       地点Cおよび地点Dは通らないものとする。

  

(解) A→Bの行き方は、 12!/(7!5!)=792(通り)

 A→C→Bの行き方は、 5!/(3!2!)×7!/(4!3!)=350(通り)

 A→D→Bの行き方は、 8!/(5!3!)×4!/(2!2!)=336(通り)

 A→C→D→Bの行き方は、

  5!/(3!2!)×3!/(2!1!)×4!/(2!2!)=180(通り)

したがって、求める場合の数は、 792−350−336+180=286(通り)  (終)


問題  下図の市街路で、AからBまで行く最短経路の場合の数を求めよ。

  

 上記の練習問題のように、A→Bの行き方の総数から、あり得ない行き方の総数を引いて
も出来ないことはないが、大変だろう。このような場合は、チェックポイント法が有効である。

(解) 下図において、

  

 A→Bの行き方は、必ず、C、D、E、Fの何れかを通る。(← チェックポイント)

 A→C→Bの行き方は、 6!/(1!5!)×1=6(通り)

 A→D→Bの行き方は、 6!/(2!4!)×6!/(5!1!)=90(通り)

 A→E→Bの行き方は、 7!/(6!1!)×5!/(1!4!)=35(通り)

 A→F→Bの行き方は、 1通り

したがって、求める場合の数は、 6+90+35+1=132(通り)  (終)


 この問題についても、裏技を使えば、次の通り。

(別解)
      (終)


 左下図のような場合、普通の解法では、少し工夫が必要になる。

最短経路問題応用3     下図のように、仮想の市街路を考える。
       最短経路問題応用3の考え方
 

 AからBへ遠回りをしないで行く方法のうち、黄緑の線を通るものは実際の道ではない。
そのような道順の総数は、A’からBへ遠回りをしないで行く方法の数に等しい。

 したがって、求める道順の総数は、  である。

( → 参考:「カタラン数」)


 この問題に対しても、裏技は特別な工夫なしで、次のように統一的に解かれる。

最短経路問題応用3解答    この裏技を会得された方は、最短経路の問題に対して、
  向う所、敵なしであろう。塾生たちの今後の健闘に期待し
  たいと思う。


(追記) 平成26年3月5日付け

 北海道大学 前期理系(2014)入試で、最短経路問題が出題された。問題レベルは標準
である。

   左図のような格子状の道路がある。S地点を出発して、
  遠回りをしないでG地点に到達する経路を考える。

   ただし、太い実線で描かれた区間ABを通り抜けるの
  に1分、二重線で描かれた区間CDを通り抜けるのに8
  分、それ以外の各区間を通り抜けるのに2分かかるも
  のとする。

   このとき、次の問いに答えよ。

(1) 区間ABを通り抜ける経路は何通りあるか。

(2) 区間ABを通り抜けずに区間CDを通り抜ける経路は何通りあるか。

(3) すべての経路から任意に1つ選んだとき、S地点からG地点に到達するのにかかる時間
  の期待値を求めよ。

(解) (1) (2!/1!1!)×(5!/2!3!)=2×10=20(通り)

(2) 1×1×1+2×1×1+1×(4!/2!2!)×1=1+2+6=9(通り)

(3) 区間AB、区間CDをともに通り抜ける場合(所要時間 16−1+6=21分)

   2×3=6(通り)

  区間ABを通り抜けるが、区間CDは通り抜けない場合(所要時間 16−1=15分)

   2×(1×3+2×2)=14(通り)

  区間CDを通り抜けるが、区間ABは通り抜けない場合(所要時間 16+6=22分)

   上記の(1)の場合で、9通り

  区間AB、区間CDをともに通り抜けない場合(所要時間 16分)

   8!/(4!4!)−6−14−9=70−29=41(通り)

 したがって、求める期待値は、

 (21×6+15×14+22×9+16×41)/70=1190/70=17(分)


(コメント) 最短経路問題に確率が絡んでくると、一瞬「ドキッ!」。平易な問題なので受験
      生は確実に完答しなければならない。最後の期待値が整数になることに思わず
      感動。相当に数値が工夫されていますね!作問者の受験生に対する愛情をひし
      ひしと感じます。ただ、上記の解答はすべての経路が同様に確からしいとして計
      算していますが、経路によって所要時間が異なるので、同様に確からしいと考え
      ることにちょっと違和感を覚える!


(追記) GAI さんより、問題をいただきました。(平成29年6月28日付け)

 それぞれの経路の取り方は何通りでしょう?

[A] (0,0)を出発点とし、座標平面上の格子点(5,5)をゴールとする格子点を経由していく散歩
  道を考える。ただし、ある格子点から次の格子点への道の取り方は、

  U(上の格子点へ向かう。  (0,0)→(0,1)での進み方)
  D(右の格子点へ向かう。  (0,0)→(1,0)での進み方)
  S(右上の格子点へ向かう。 (0,0)→(1,1)での進み方)

 のいずれかを選んで進んでいくものとする。

[B] (0,0)を出発点とし、座標平面上の格子点(10,0)をゴールとする格子点を経由していく散
  歩道を考える。ただし、ある格子点から次の格子点への道の取り方は、

  S(右上の格子点へ向かう。 (0,0)→(1,1)での進み方)
  T(右下の格子点へ向かう。 (0,0)→(1,-1)での進み方)
  H(2つ右の格子点へ向かう。 (0,0)→(2,0)での進み方)

 のいずれかを選んで進んでいくものとする。


 らすかるさんからのコメントです。(平成29年6月28日付け)

[A] 右上が0回・上が5回・右が5回 → 10C0×10C5=252通り
  右上が1回・上が4回・右が4回 → 9C1×8C4=630通り
  右上が2回・上が3回・右が3回 → 8C2×6C3=560通り
  右上が3回・上が2回・右が2回 → 7C3×4C2=210通り
  右上が4回・上が1回・右が1回 → 6C4×2C1=30通り
  右上が5回・上が0回・右が0回 → 5C5×0C0=1通り   計 1683通り

[B] X=(x-y)/2 、Y=(x+y)/2 と座標変換すれば、[A]と全く同じ。


 GAI さんからのコメントです。(平成29年6月28日付け)

<問題出題の経緯> パスカルの三角形で、

1
1 1
1 2 1
1 3 3 1
1 4 6 4 1
1 5 10 10 5 1
・・・・・・・・・・   に対し、その平方数での

1
1 1
1 4 1
1 9 9 1
1 16 36 16 1
1 25 100 100 25 1
・・・・・・・・・・      を作り出す母関数ってなんだろう?と疑問に感じ、いろいろ調べてたら

  G(x,t)=1/sqrt(1-2*(1+t)*x+(1-t)^2*x^2)

なる不思議なものに出会った。計算機の助けを受けて展開させてみると、

G(x,t)= 1 +
  (t + 1)*x +
  (t^2 + 4*t + 1)*x^2 +
  (t^3 + 9*t^2 + 9*t + 1)*x^3 +
  (t^4 + 16*t^3 + 36*t^2 + 16*t + 1)*x^4 +
  (t^5 + 25*t^4 + 100*t^3 + 100*t^2 + 25*t + 1)*x^5 +
  (t^6 + 36*t^5 + 225*t^4 + 400*t^3 + 225*t^2 + 36*t + 1)*x^6 +
  (t^7 + 49*t^6 + 441*t^5 + 1225*t^4 + 1225*t^3 + 441*t^2 + 49*t + 1)*x^7 +
    ・・・・・・・・・・

と、見事に、t の多項式の係数にこの平方数が現れてくるではないか!しかも例えば3行目
の「1 9 9 1」の解釈は、(0,0)から(3,3)への格子路をドライブするとき右折する回数が0,1,2,3回
である経路数に相当する。

 そこで、この母関数にちょっといたずらをして、

  G1(x,t)=1/sqrt(1-2*(2+t)*x+(2-t)^2*x^2)

とすれば何が起こるのだろう?と再び展開してみると、

G1(x,t) = 1 +
   (t + 2)*x +
   (t^2 + 8*t + 4)*x^2 +
   (t^3 + 18*t^2 + 36*t + 8)*x^3 +
   (t^4 + 32*t^3 + 144*t^2 + 128*t + 16)*x^4 +
   (t^5 + 50*t^4 + 400*t^3 + 800*t^2 + 400*t + 32)*x^5 +
   (t^6 + 72*t^5 + 900*t^4 + 3200*t^3 + 3600*t^2 + 1152*t + 64)*x^6 +
   (t^7 + 98*t^6 + 1764*t^5 + 9800*t^4 + 19600*t^3 + 14112*t^2 + 3136*t + 128)*x^7 +
     ・・・・・・・・・・

なるものに変化した。そこで、これに対する t の係数を取り出すと、

1
1 2
1 8 4
1 18 36 8
1 32 144 12 16
1 50 400 800 400 32
1 72 900 3200 3600 1152 64
1 98 164 9800 19600 14112 3136 128
・・・・・・・・・・・・・

を調べてみたら、「A133214」がヒットし、その数字の解釈を見ていたら、出題問題[B]に対応
する総数を与えることがわかった。ただし、S、T または H を用いた個数を、i (i=0,1,2,・・・,n)と
したときの行き方が列に並ぶ数を与えている。

 行は、n:0,1,2,3,4,5,・・・

 これを、n=5 の行で見てみると経路の総数は、 1+50+400+800+400+32=1683(通り) となる
ことになる。

 そこで、各行での総和を計算させてみたら、

1
3
13
63
321
1683
8989
48639
・・・

 これは、また、「A001850」がヒットして、その部分のいろいろな解釈を読んでいたら、これは
出題問題の[A]の経路を与えることが述べられていた。

 従って、この2つの経路では全く同じ総数が発生することを示すことを意味していた。これ
は面白いと感じ出題していたのでした。

 それを、らすかるさんは、いとも簡単にそれを計算することなく見破られていることにびっく
りです。でも、最後の X=(x-y)/2、Y=(x+y)/2 と座標変換すれば、[A]と全く同じが解釈できま
せん。これをもう少し解説して頂けませんか?


 らすかるさんからのコメントです。(平成29年6月28日付け)

  X=(x-y)/2、Y=(x+y)/2と座標変換すれば[A]と全く同じ
(0,0)を出発点とし、座標平面上の格子点(10,0)をゴールとする

(x,y)=(0,0)のとき、(X,Y)=(0,0)
(x,y)=(10,0)のとき、(X,Y)=(5,5)

 S(右上の格子点へ向かう。 (0,0)→(1,1)での進み方)

(x,y)=(1,1)のとき、(X,Y)=(0,1)

  T(右下の格子点へ向かう。 (0,0)→(1,-1)での進み方)

(x,y)=(1,-1)のとき、(X,Y)=(1,0)

  H(2つ右の格子点へ向かう。 (0,0)→(2,0)での進み方)

(x,y)=(2,0)のとき、(X,Y)=(1,1)

 従って、出発点が(x,y)=(0,0)、ゴールが(x,y)=(10,0)で進み方が

(1) (x,y)=(+1,+1) 、(2) (x,y)=(+1,-1) 、(3) (x,y)=(+2,0)

である経路は、出発点が(X,Y)=(0,0)、ゴールが(X,Y)=(5,5)で進み方が

(1) (X,Y)=(0,+1) 、(2) (X,Y)=(+1,0) 、(3) (X,Y)=(+1,+1)

である経路と同じですね。

[B]の座標平面の上に、

 X軸がy=-xで原点が共通、(1,-1)がX=1、(2,-2)がX=2、…
 Y軸がy=xで原点が共通、(1,1)がY=1、(2,2)がY=2、…

となるように、XY座標軸を重ねて描けば、XY座標では[A]の動きになります。
(つまり、45°右に傾いた格子点間隔が倍の座標平面)

# 座標平面を変えるだけで全く同じ問題になる、というのを見破るのがこの問題の主旨だと
 思っていました。