和が10
平成20年9月8日付けで当HPの掲示板「出会いの泉」に、当HPがいつもお世話になっ
ているHN「zk43」さんが、次のような問題を出題された。
20=x1+x2+・・・+x11 (xk≧1)と、20を11個の自然数の和に分解するとき、
必ず、{xk}の部分集合で和が10になるものが存在することを示せ。
この問題に対して、当HPがいつもお世話になっているらすかるさんが、速攻で解かれた。
(多少文言を補充させていただきました。)
(解) 11個の数について、
(1) 1が10個の場合 ・・・ 残りの1個が10なので、それを採用すればよい。
(2) 1が9個の場合 ・・・ 残りの2数の組合せは、
2+9 、 3+8 、 4+7 、5+6
の何れかである。何れにしても、1は4個以上あるので、和が10となる組を作ることが
できる。
(3) 1が8個の場合 ・・・ 残りの3数の組合せは、
2+2+8 、 2+3+7 、 2+4+6 、3+3+6 、2+5+5 、3+4+5 、
4+4+4
の何れかである。何れにしても、1は6個以上あるので、和が10となる組を作ることが
できる。
(4) 1が7個の場合 ・・・ 残りの4数の組合せで、最大の数は、 4 、5 、6 、7 の
何れかを取り得る。何れにしても、1は6個以上あるので、和が10となる組を作ること
ができる。
(5) 1が6個の場合 ・・・ 残りの5数の組合せで、最大の数は、 3 、4 、5 、6 の
何れかを取り得て、さらに、最小の数は、2 である。このとき、最大の数と最小の数の
和は、 5 、6 、7 、8 の何れかである。何れにしても、1は5個以上あるので、和
が10となる組を作ることができる。
(6) 1が5個の場合 ・・・ 残りの6数の組合せで、最大の数は、 3 、4 、5 の何れ
かを取り得て、さらに、最小の数は、2 である。このとき、最大の数と最小の数の和
は、 5 、6 、7 の何れかである。何れにしても、1は5個以上あるので、和が10
となる組を作ることができる。
(7) 1が4個の場合 ・・・ 残りの7数の組合せで、必ず2は、5個または6個ある。
よって、2を5個組み合わせて、和が10となる組を作ることができる。
(8) 1が3個の場合 ・・・ 残りの8数の中に、2は、7個ある。
よって、2を5個組み合わせて、和が10となる組を作ることができる。
(9) 1が2個の場合 ・・・ 残りの9数は全て、2となる。
よって、2を5個組み合わせて、和が10となる組を作ることができる。
(10) 1が1個以下の場合は起こり得ない。
以上から、必ず和が10となる組を作ることができる。 (終)
次のように、全ての可能性を書きだしても示される。
10 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 5 | 3 | 3 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
9 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 5 | 3 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
8 | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 5 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
8 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 4 | 4 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
7 | 4 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 4 | 3 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
7 | 3 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 4 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
7 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 3 | 3 | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
6 | 5 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 3 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
6 | 4 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
6 | 3 | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
6 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
6 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 3 | 3 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
5 | 5 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | |
5 | 4 | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 3 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | |
5 | 4 | 2 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 |
和が10となる組合せは、赤色の数字で示される。(組合せは一意には定まらない。)
多分「zk43」さんの真意は、「もっとエレガントな解法を...」ということなのだろうが、こ
れは今後の研究課題としておこう。
(追記) 平成20年9月12日付け
「zk43」さんからの情報によると、この問題は、「鳩ノ巣原理」を用いて解けるらしいが、
まだ、その方針が不明なままである。(→ 解決しました!)
当HPがいつもお世話になっている加俊さんが、次のような解法を当HPの掲示板「出会
いの泉」に寄せられた。(平成20年9月11日付け)
多少、文言を加筆修正して紹介したいと思う。
自然数 a1、a2、・・・、an を用いて、 10 = a1 + a2 + ・・・ + an と、10 をいくつか
の自然数の和に分解することができる。このとき、n は、 1 以上10以下の自然数である。
そこで、 m=11−n とおくと、 m も 1 以上10以下の自然数である。
このとき、 10 = b1 + b2 + ・・・ + bm となる自然数 b1、b2、・・・、bm が存在する。
実際に、10を、10個の1と考え、 b1、b2、・・・、bm、b1、b2、・・・、bm、・・・・ という数
列の最初から順次10個の1を割り振っていけばよい。
よって、 20 = a1+a2+・・・+an+b1+b2+・・・+bm において、n+m=11 であり、
20=x1+x2+・・・+x11 (xk≧1)と、20 を11個の自然数の和に分解するとき、必ず、
{xk}の部分集合で和が 10 になるものが存在することが示された。
(コメント) 当HPの掲示板「出会いの泉」の平成20年9月12日付けで、らすかるさんが
指摘されているように、11項の一部の項の和で10となるものがあるかという問
題に対して、加俊さんの解答では、和が10となる場合があることを前提にしたも
のでした。(私もウッカリしました...f(^^;) )
構成的な方法でいいアイデアだと思ったのですが...。
(追記) 平成20年9月13日付け
当HPの掲示板「出会いの泉」に、この話題についてのある解法をHN「3156」さんが書
き込まれた。多少、文言を加筆修正して紹介したいと思う。
20を11個の自然数に分解したときに出来る項の中で最大の数を、n とする。このとき、
分解された項の中には、少なくとも n 個の 1 が存在する。
(まず、1 を11個並べ、それに残りの9個の 1 を加えるという発想を用いれば明らかだろう。)
そこで、
(1) n ≧ 5 のとき、 n に 10−n 個(10−n≦5)の 1 を加えれば、10
となる。
(2) n = 4 のとき、 少なくとも1個の4と少なくとも4個の1で、8を作ることが出来る。
上記で用いた1個の4と4個の1を除いた残りの6項について同様に考えて、
最大数が4の場合、残りは1が2個なので、この1が2個と上記の8を加えて10となる。
最大数3が1個の場合、残りは2が4個と1が1個なので、この2と上記の8を加えて10
となる。
最大数3が2個の場合、残りは2が2個と1が2個なので、この2と上記の8を加えて10
となる。
最大数3が3個の場合、残りは1が3個なので、このうちの1を2個と上記の8を加えて
10となる。
(3) n = 3 のとき、 少なくとも1個の3と少なくとも3個の1で、6を作ることが出来る。
上記で用いた1個の3と3個の1を除いた残りの7項について同様に考えて、
最大数3が0個の場合、7項すべてが2なので、この2を2個と上記の6を加えて10とな
る。
最大数3が1個以上3個以下の場合、必ず1が1個出来るので、この1と3と上記の6を
加えて10となる。
(4) n = 2 のとき、 9個の2と2個の1に分解されるので、5個の2で、10を作ることが出
来る。
(コメント) 「3156」さん、証明をお寄せいただきありがとうございます。最大数に着目した
点、感動しました!
(追記) 平成20年9月14日付け
当HPがいつもお世話になっているらすかるさんが、別解を考えられた。
(多少文言を補充させていただきました。)
(解) 20=x1+x2+・・・+x11 ( x1≧x2≧・・・≧x10≧x11 で、xk は自然数) と分解され
ているものとする。
まず、 x1≦10 である。
実際に、x1≧11 とすると、 x2、x3、・・・、x10、x11 は自然数なので、
x1+x2+・・・+x11≧11+1×10=21 で矛盾である。よって、 x1≦10
また、 x11=1 である。
実際に、x11≧2 とすると、 x1、x2、・・・、x9、x10 は2以上の自然数となり、
x1+x2+・・・+x11≧2×11=22 で矛盾である。よって、 x11=1
また、 x10=1 である。
実際に、x10≧2 とすると、 x1、x2、・・・、x8、x9 は2以上の自然数となり、
x1+x2+・・・+x11≧2×10+1=21 で矛盾である。よって、 x10=1
次に、 x2+x3+x4≦10 である。
実際に、x2+x3+x4≧11 とすると、 3x2≧x2+x3+x4≧11 から、
x2≧11/3 すなわち、 x2≧4 となる。
このとき、 x1≧x2 より、 x1≧4 でなければならない。
しかるに、 x1+x2+・・・+x11≧x1+(x2+x3+x4)+(x5+・・・+x11)
≧4+11+1×7=22 で矛盾である。
よって、 x2+x3+x4≦10 である。
次に、 x5≦2 である。
実際に、x5≧3 とすると、 x1+x2+・・・+x11≧(x1+・・・+x5)+(x6+・・・+x11)
≧3×5+1×6=21 で矛盾である。
よって、 x5≦2 である。
このとき、 x6≦2 、x7≦2 、x8≦2 、x9≦2 となる。
そこで、
x2+x3+x4=10 ならば、 x2、x3、x4 が求めるものである。
x2+x3+x4=9 ならば、 x2、x3、x4、x11 が求めるものである。
x2+x3+x4=8 ならば、 x2+x3+x4+x5 は、9または10である。
x2+x3+x4+x5=10 ならば、 x2、x3、x4、x5 が求めるものである。
x2+x3+x4+x5=9 ならば、 x2、x3、x4、x5、x11 が求めるものである。
以下同様にして、x2+x3+x4 に順次、2以下の自然数 x5、x6、x7、x8、x9、x10 を加
えることにより、途中の和で必ず、9または10となる場合がある。
和が10であれば、その数列が求めるものである。
和が9であれば、その数列に x11 を加えたものが求めるものである。
したがって、 20=x1+x2+・・・+x11 (xk≧1)と、20 を11個の自然数の和に分解
するとき、必ず、{xk}の部分集合で和が 10 になるものが存在する。 (終)
(コメント) らすかる様、いつも解答をお寄せいただきありがとうございます。
20という数の分解に現れる項のいろいろな性質を調べられて、和が10となるもの
を構成していくという手法に感動しました。
(追記) 平成22年5月16日付け
この話題について、当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが一般化を考えられ
た。(当HP掲示板「出会いの泉」 平成22年5月11日付け)
多少文言等を補足・修正して紹介したいと思う。
n+1 個の自然数の和が 2n であるとき、そのうちの何個かを取りだして和を n に
できる。
(証明) n に関する数学的帰納法による。
n=1 のときは明らかである。
n−1 以下では成り立つものと仮定して、n (n ≧2)のときを考える。
n+1 個の自然数のうち、最大のものを M とする。 明らかに、M≧2 である。
このとき、1は、M個以上あることを確認する。
いま、1 が k 個あるとする。
k 個の1と、1個のM以外をすべて2に変えると、
k+2(n−k)+M=2n−k+M≦2n より、 k≧M である。
n+1 個の自然数から、1個のMとM−2個の1を取り除いたもの(A)を考える。
Aに含まれる要素の個数は、
n+1−(1+M−2)=n−M+2=(n−M+1)+1 で、
その和は、 2n−(M+M−2)=2n−2M+2=2(n−M+1) である。
M≧2 より、n−M+1≦n−1 なので、帰納法の仮定より
A から何個かを取りだして、その和を n−M+1 にできる。
このとき残ったものの和も、 n−M+1 である。
ところで、Aには少なくとも2個の1があるから、必要なら取りだしたものと残ったものを
入れ替えることで残ったものの中に1があるようにできる。
あとは、取りだしたもの(和が n−M+1)に、M−1個の1を加えれば和は
n になる。
(はじめに、M−2個の1を取り除いていて、残った中に1が少なくとも1個あるから、こ
れは可能である。)
(証終)
さらに、FNさんによれば、次の形に一般化したほうがいいかもしれないとのこと。
n+1 個の自然数の和が 2n であるとき、そのうちの何個かを取りだして和を 1 以
上 2n 以下の任意の自然数にできる。
「重さが1gの整数倍の分銅をうまく使って、1 gから n g まですべて測れるようにせよ。」
といった形の問題があるが相当へたな選び方をしても、和が n g で、個数が
n/2+1 個
ほどであれば、1gから ng まですべて測れるということを示しているとのことである。
さらにFNさんは、上記を一般化して、(平成22年5月12日付け)
n 個の自然数の和Sが 2n−1 以下であるとき、そのうちの何個かを取りだして和
を S 以下の任意の自然数にできる。
とのこと。
(コメント) 証明がとても分かり易かったです。FNさんに感謝します。
(追記) 平成27年5月2日付け
当HP読者のHN「Seiichi Manyama」さんが、上記の一般化された問題について、数学的
帰納法を使わない証明を考えられた。(一部文言等を加筆修正させていただきました。)
n = 1 のときは自明なので、n≧2 のときを考える。 x1 ≦ x2 ≦ … ≦ xn としてもよい。
n 以下の任意の自然数 t に対し、 0 < x1 + x2 + … + xt < 2t …(*) が成立。
(∵ 0 < x1 + x2 + … + xt ≦ t/n × (x1 + x2 + … + xn) = 2t - t/n < 2t)
1≦i≦t に対し、A(i) ≡ x1 + x2 + … + xi (mod t) と定める。
あるt0に対し、A(t0) ≡ 0 (mod t) となるならば、(*)より、x1 + x2 + … + xt0 = t となり、
命題は成立。そうでないならば、A(1)〜A(t)はいずれも 1〜t - 1 のいずれかなので、
A(t1) = A(t2) (t1 < t2) なる t1、t2 が存在。よって、A(t2) - A(t1) = 0。
(*)より、 0 < x(t1+ 1) + … + xt2 < x1 + … + xt2 < 2t2 ≦ 2t
ゆえに、 x(t1+ 1) + … + xt2 = t となり、命題は成立。
(コメント) Seiichi Manyamaさん、証明をご投稿いただき、ありがとうございます。証明の基
本的なアイデアは、下記でFNさんが示された鳩ノ巣原理を用いた証明と相通じる
ものがありますね!
(追記) 平成22年10月6日付け
FNさんが、冒頭の問題について、鳩ノ巣原理を用いて解決された。次の形の鳩ノ巣原理
を用いるとのこと。
鳩ノ巣原理
10個の巣に10匹の鳩を入れれば、すべての巣に鳩が入るか、どれかの巣に2匹
以上入る。
この原理を用いて、次の問題
20=x1+x2+・・・+x11 (xk≧1)と、20を11個の自然数の和に分解するとき、
必ず、{xk}の部分集合で和が10になるものが存在することを示せ。
を考える。
(解) 11個の自然数
x1、x2、・・・、x11 の和が20であるとする。1以上10以下の自然数
k
に対して、 x1+x2+・・・+xk
を10で割った余りをS(k)とする。
S(1)、S(2)、・・・、S(10)は、0、1、2、・・・、9のどれかであるから、鳩ノ巣原理により、
(1) S(1)、S(2)、・・・、S(10)はすべて異なる場合
(2) 異なる k、j に対して、 S(k)=S(j)となる場合
のどちらかである。
(1)のときは、ある k
について、S(k)=0 となる。
ここで、 1≦x1+x2+・・・+xk ≦19 より、10で割った余りが0になるのは、
x1+x2+・・・+xk=10
(2)のときは、 k<j とすると、 S(k)=S(j) は、10で割り切れる。すなわち、
1≦xk+1+xk+2+・・・+xj ≦19 で、これを10で割った余りが0であるから、
xk+1+xk+2+・・・+xj=10 (終)
FNさんによれば、一般化した次の命題も全く同じでできるとのこと。
命題
n+1個の自然数の和が2nであるとき、そのうちの何個かを取りだして和を
nにできる。
上の証明を見ると、和が20は和が20以下でいいし、x11 はほとんど役割を持たないので
次の形に一般化した方がよさそうです。
命題
n個の自然数の和が2n−1以下であるとき、そのうちの何個かを取りだして
和をnにできる。
(コメント) 鳩ノ巣原理を用いた証明、簡明で分かり易いですね!感動しました。FNさんに
感謝します。