オイラーの公式                             戻る

 オイラーの公式
             iθ=cosθ+i・sinθ

は、複素数の世界では何かと便利で重要な公式である。(→参考:「虚数の虚数乗?」)

 私は、複素関数論の初歩を、

  Zeev Nehari  ” Introduction to COMPLEX ANALYSIS ”

で学んだが、そこでは、オイラーの公式は指数関数を定義するものとして用いられていた。

 オイラーの公式を示す方法としては、テイラー展開を用いる方法が普通だろう。ただ、そ
の方法を目の当たりにすると、狐につままれたような印象を持つ方も多いだろう。

このページでは、級数展開によらない初歩的な証明について、まとめてみたい。

 一番易しいと思われる証明は、東北工業大学情報通信工学科の中川朋子さんによるも
のだろう。

(証明) 3つの数 eiθ、cosθ、i・sinθ が一次従属であることを示す。

        Aeiθ+Bcosθ+C・i・sinθ=0 (A、B、C は定数)

    において、θに関する微分を繰り返して、

        i・Aeiθ−Bsinθ+C・i・cosθ=0

        −Aeiθ−Bcosθ−C・i・sinθ=0

    このとき、A、B、C に関する3元連立方程式の係数行列の行列式を求めると、0 に

   なる。よって、3つの数 eiθ、cosθ、i・sinθ は一次従属である。

    A≠0 として、 eiθ=acosθ+b・i・sinθ (a、b は定数) と表される。

     θ=0 とおくと、 a=1

    上式を微分して、 i・eiθ=−asinθ+b・i・cosθ

     θ=0 とおくと、 b=1

     したがって、 eiθ=cosθ+i・sinθ  (証終)

 平成20年3月22日付けで、当HPの掲示板「出会いの泉」に、zk43さんが、別証を紹介
された。ある本に書かれていたものだという。

(別証) F(x)=eix は、微分方程式 F’(x)=i・F(x) という関係を満たす。

    x を時間と考え、F(x) は複素平面を運動する点と考えると、F(x) は複素平面上の

    ある曲線上を動くものと考えられる。

     F’(x)=i・F(x) より、F(x) の速度は、位置F(x) に対して反時計まわりに直角な

    i・F(x) であるものと解釈できる。

     ここで、

    (| F(x) |2)’=( F(x)・F~(x))’=F’(x)・F~(x)+F(x)・F~’(x)

                      =i・F(x)・F~(x)+F(x)・(−i・F~(x))=0

    より、| F(x) |2 は定数、すなわち、| F(x) | は定数となる。

     ここで、 F(0)=1 より、 | F(x) | ≡1 となる。

    以上から、F(x) は複素平面上の原点を中心とする単位円周上を、速さ 1 で反時計

   まわりに動いていると考えられるので、x 秒後には、

         F(x)=eix は、cosx+i・sinx の位置にいる

   すなわち、  eix=cosx+i・sinx  が成り立つ。  (証終)

(コメント) zk43さんは、「幾何学的で、分かりやすい」と仰っていますが正にその通りです
      ね。目に焼きついて忘れないように感じます。