はさみうちの原理
数列{an}の極限値が直接には求めがたい時に、「はさみうちの原理」のお世話になること
が多い。
例 三角関数の大小
このページでは、「はさみうちの原理」が活躍する問題を集めていこうと思う。
東北大学 理系(1969) で、次の問題が出題された。
第4問 初項 a1 が正である数列{an}において、an+1 (n≧1)は、
方程式 anx2+2x−an=0 の絶対値が1より小さい根とする。
(1) an+1 を an で表せ。
(2) 数列{an}の収束、発散を調べ、収束する場合は、その極限値を求めよ。
(解)(1) 今、an=0 とすると、解 x は、0のみとなり、初項 a1 が正であることに矛盾する。
よって、an≠0 である。このとき、方程式 anx2+2x−an=0 は2次方程式となる。
判別式をDとすると、 D/4=1+an2 である。初項 a1 が正であるので、a2 は実数とな
る。このとき、a22≧0 から、D>0 となり、a3 は実数となる。以下同様にして、an は実数
となる。
解の公式より、 x=(−1±√(1+an2))/an
F(x)=anx2+2x−an とおく。
an>0 のとき、 F(1)=2>0 、F(0)=−an<0 、F(−1)=−2<0 なので、
方程式 F(x)=0 は、0<x<1に解を持つ。
よって、an+1=(−1+√(1+an2))/an (他の解は、1より大きい)
an<0 のとき、 F(1)=2>0 、F(0)=−an>0 、F(−1)=−2<0 なので、
方程式 F(x)=0 は、−1<x<0に解を持つ。
よって、an+1=(−1+√(1+an2))/an (他の解は、−1より小さい)
以上から、何れにしても、 an+1=(−1+√(1+an2))/an と書ける。
(2) 初項 a1 が正なので、(1)より、a2 も正となり、以下同様にして、an>0 となる。
また、an=(−1+√(1+an-12))/an-1=an-1/(1+√(1+an-12))<(1/2)an-1
よって、 0<an<(1/2)n-1a1 で、n → ∞ のとき、(1/2)n-1 → 0 なので、
はさみうちの原理より、数列{an}は収束し、 極限値は、0 である。 (終)
(追記) 令和6年8月1日付け
東北大学 理系(1977) で、次の問題が出題された。
第4問 (1) x≧1 のとき、log(1+x)<2√x が成り立つことを示せ。ただし、対数は
自然対数とする。
(2) 0≦t≦1 のとき、 2t≦1+sin(πt/2)≦2 が成り立つことを示せ。
(3) limn→∞ (∫01 (1+sin(πt/2))ndt)1/n を求めよ。
(解)(1) F(x)=log(1+x)−2√x とおくと、
F’(x)=1/(1+x)−1/√x=(√x−(1+x))/{(1+x)/√x}
ここで、G(x)=√x−(1+x) とおくと、 G’(x)=1/(2√x)−1=(1−2√x)/(2√x)
x≧1 のとき、1−2√x<0 なので、 G’(x)<0 から、 G(x)は単調に減少する。
G(1)=−1 なので、 G(x)<0 である。
このとき、 F’(x)<0 から、F(x)は単調に減少する。
F(1)=log2−2<1−2=−1<0 より、 F(x)<0 である。
以上から、 log(1+x)<2√x が成り立つ。
(2) 0≦sin(πt/2)≦1 より、 1+sin(πt/2)≦2 が成り立つ。
y=1+sin(πt/2)−2t とおくと、
y’=(π/2)cos(πt/2)−2 、y”=−(π/2)2sin(πt/2)≦0 なので、
y’は単調減少で、t=0 のとき、y’=(π/2)−2<0 から、0≦t≦1 のとき、 y’<0
このとき、yは単調減少で、t=1 のとき、y=0 なので、0≦t≦1 のとき、 y≧0
以上から、 2t≦1+sin(πt/2)≦2 が成り立つ。
(3) (2)より、2t≦1+sin(πt/2)≦2 が成り立つので、
(2t)n≦(1+sin(πt/2))n≦2n
よって、 (∫01 (2t)ndt)1/n≦(∫01 (1+sin(πt/2))n)1/ndt≦2
ここで、 (∫01 (2t)ndt)1/n=2・(1/(n+1))1/n=2・(1/(n+1)1/n) において、
y=(n+1)1/n とおくと、 log y=(1/n)log(n+1)
(1)より、 log(1+n)<2√n なので、 0<log y<2/√n において、n→∞ とすると、
はさみうちの原理より、 log y → 0 すなわち、 y → 1 である。
したがって、はさみうちの原理より、
limn→∞ (∫01 (1+sin(πt/2))ndt)1/n =2 (終)
(追記) 令和7年8月2日付け
次の東北大学 後期理系(1997)の問題は、基本的な問題である。
問題 (1) すべての自然数nに対して、不等式 3n>n2 が成り立つことを、数学的帰納
法を用いて証明せよ。
(2) Sn=Σk=1n (k/3k) (n=1、2、3、・・・) とおく。このとき、
(2/3)Sn−Σk=1n (1/3k)=−n/3n+1
が成り立つことを示せ。
(3) 極限値 limn→∞ Sn を求めよ。
(解)(1) n=1 のとき、 31>12 は成り立つ。
n=2 のとき、 32>22 は成り立つ。
n=k(k≧2) のとき、成り立つと仮定する。すなわち、 3k>k2
このとき、 3k+1>3k2 で、 3k2−(k+1)2=2k2−2k−1=2(k−1/2)2−3/2
k≧2 より、 k−1/2≧3/2 なので、 2(k−1/2)2−3/2≧9/2−3/2=3>0
よって、 3k+1>3k2>(k+1)2 となり、n=k+1 のときも成り立つ。
したがって、 すべての自然数nに対して、 3n>n2 が成り立つ。
(2) (1/3)Sn=Σk=1n (1/3k+1) を辺々引いて、
(2/3)Sn=Σk=1n (1/3k)−n/3n+1 即ち、(2/3)Sn−Σk=1n (1/3k)=−n/3n+1
が成り立つ。
(3) Sn=(3/2)(Σk=1n (1/3k)−n/3n+1) において、 Σk=1∞ (1/3k)=1/2
(1)より、 3n>n2 なので、 3n+1>3n2 より、 0<n/3n+1<1/(3n)
n → ∞ のとき、はさみうちの原理により、 n/3n+1 → 0
以上から、 limn→∞ Sn=3/4 (終)
以下、工事中!