スチュワートの定理
初等幾何でよく使われる定理と言えば、ピタゴラスの定理に並んで中線定理だろう。
中線定理 ・・・ △ABCにおいて、辺BCの中点をMとする。このとき、
AB2+AC2=2(AM2+BM2)
(証明は、「適切な座標系」を参照)
この中線定理では、「辺BCの中点をM」という非常に窮屈な形になっていると日頃より気
になっていた。
中線定理を次のように拡張した定理があることを知り、ようやく安堵した次第である。
定理(Stewart)
△ABCにおいて、辺BCを m : n に内分する点を P とする。 このとき、 が成り立つ。 |
上記の公式で、 m=n の場合が中線定理である。
通常、スチュアートの定理は、
n・AB2+m・AC2=(m+n)・AP2+n・BP2+m・CP2
の形で世に知られているようだ。上記の式では覚えにくいので、分点の公式になぞらえて
定理のような形に変形した。
(証明) A(a,b)、B(−mk,0)、C(nk,0)、P(0,0) と座標を定める。(
k は比例定数)
このとき、 AB2=(a+mk)2+b2 、 AC2=(a−nk)2+b2
BP2=m2k2 、 CP2=n2k2
なので、 n・AB2+m・AC2−n・BP2−m・CP2
=n・{(a+mk)2+b2}+m{(a−nk)2+b2}−n・m2k2−m・n2k2
=(m+n)(a2+b2)
=(m+n)AP2
よって、 n・AB2+m・AC2=(m+n)AP2+n・BP2+m・CP2 が成り立つ。 (証終)
上記では座標幾何により証明したが、余弦定理を用いても証明される。
(別証) △ABPと△ACPにおいて、余弦定理より、 AB2=AP2+BP2−2AP・BP・cos∠APB AC2=AP2+CP2−2AP・CP・cos∠APC cos∠APB=−cos∠APC で、n・BP=m・CP より |
n・AB2+m・AC2=n・(AP2+BP2−2AP・BP・cos∠APB)
+m・(AP2+CP2−2AP・CP・cos∠APC)
=n・(AP2+BP2)+2AP・n・BP・cos∠APC)
+m・(AP2+CP2)−2AP・m・CP・cos∠APC)
=n・(AP2+BP2)+2AP・m・CP・cos∠APC)
+m・(AP2+CP2)−2AP・m・CP・cos∠APC)
=n・(AP2+BP2)+m・(AP2+CP2)
=(m+n)AP2+n・BP2+m・CP2 (別証終)
(コメント) どちらの証明がより簡単か、いろいろ意見の分かれるところだろう...。