いろいろな平均                     戻る

 テストが返されると、生徒たちは友人たちと点数の合計点で競い合い、一喜一憂する。対
して、教える側は、クラスによって人数が違うので、クラスの平均点を計算して、これまでの
指導の成果について自己評価する。
 もちろん、平均点だけでは母集団の特徴がつかめないので標準偏差や分布の状態も参
考にする。表計算ソフトのおかげで、それらの計算が一瞬のうちにできてしまうので大いに
助かっている。
 世の中で、平均といえば算術平均をいうが、平均には他にも幾何平均とか調和平均など
があり、それぞれ用途が異なる。

 算術平均・・・ 2数 a、b に対して、  (相加平均ともいわれる。)
算術平均   算術平均は、左図からも分かるように、でこぼこ
 のものをならす働きがある。
  2数 a、b に対して、その算術平均は次のように
 作図して、幾何的に求めることができる。
    

 幾何平均・・・ 2つの正数 a、b に対して、 (相乗平均ともいわれる。)

  算術平均は、和 a+b の値が、ある数を2回足したものになるときのある数のことをい
 う。数直線上で考えれば、2点P(a)、Q(b)の中点の座標という性格を持っている。
  これに対して、幾何平均は、積 ab の値が、ある数を2回掛けたものになるときのある
 数のことをいう。
  たとえば、普通の辛さのカレーに対して、カレーAは2倍辛く、カレーBは8倍辛いとする。
 この辛さの平均を考えるとき、K×K=2×8 より、K=4 となり、平均の辛さは4倍とな
 る。
 (しかし、これには異論があるかもしれない。推測であるが、2倍辛いとは、普通より2倍唐
 辛子が多く入っている、8倍辛いとは、普通より8倍唐辛子が多く入っているとすると、2つ
 を平均するということは、唐辛子の量が5倍ということで、5倍辛いカレーができてしまうと
 思うのだが、間違っているだろうか?カレーに詳しい方、是非お教えください!!)

  2数 a、b に対して、その幾何平均も簡単に作図することができる。
                               (参考:作図問題における円の役割

 当HPの読者のSさんより、相乗平均の作図方法をご教示頂いた。
                                      (平成23年9月22日付け)

   左図において、AB=a、CD=b とし、AE=√a、

  CF=√b とする。対角線の交点Gを通り、AC⊥IH

  とするとき、IJ= である。



(証明) 点Aを座標軸の原点とし、ACを x 軸の正の向きとする。AC=m とするとき、

    直線BDの方程式は、 y={(b−a)/m}x+a で、点Jの座標は、相似比より

      ( {√a/(√a+√b)}m ,0 )

    このとき、 IJ={(b−a)/m}・{√a/(√a+√b)}m+a

            =(√b−√a)・√a+a

            =  (証終)

(コメント) Sさんに感謝します。


 調和平均・・・ 2数 a、b に対して、逆数の算術平均の逆数

  調和平均の例としては、次が有名である。

 「行きが時速4km、帰りが時速6kmで歩いたとき、平均の速さはいくらか?」

 なんとなく、時速5kmと答えがちであるが、実際は、時速4.8km である。
 (速さ)×(時間)=(距離)の公式を用いて計算すると、自然と調和平均の計算公式に導
 かれる。
  2数 a、b に対して、その調和平均の式から受けるイメージは複雑そうであるが、作図
 することは簡単である。下図のように作図すればよい。

調和平均

  左図において、△ABG∽△DCG より、
      AG:GD=BG:GC= a : b
  △AEG∽△ACD より、GE=ab/(a+b)
  △BFG∽△BDC より、FG=ab/(a+b)
  したがって、
      EF= となり、EFが調和平均を与える。

(参考文献:中村義作・阿邊恵一 著 代数を図形で解く(講談社ブルーバックス))

(追記) 幾何平均について、次のような性質があることを上記書籍により知った。原理は
    単純であるが、とても興味深い事実である。

幾何平均の性質    左図の長方形ABCDにおいて、
   AB=a、AD=b とする。
   いま、2数a、b の幾何平均を一辺とする
   正方形BEFG(GはAD上)を作図する。
    このとき、長方形の1頂点Cは、この正
   方形の辺EF上にある。

    証明は、左図をみれば明らかであろう。
  (長方形から正方形への等積変形である。)





(追記) 平成23年5月8日付け

 平均というと、重さや長さ、点数等が分かり易い題材であるが、面積の平均とはどんなも
のだろう。

 面積という単なる数量の平均には興味はない。図形の形も考慮に入れた平均の方が意
味があるだろう。すなわち、相似な図形同士の面積の平均である。

例 21インチのTVと32インチのTVの画面の面積の平均は何インチのTVであるか。

 TV画面の大きさは、対角線の長さ(21インチ、32インチ)で定まる。2つのTV画面はとも
に、4:3 の画面とする。

 このとき、 21インチのTV画面の縦の長さは、 21×3/5=63/5

                     横の長さは、 21×4/5=84/5

 よって、21インチのTV画面の面積は、 63/5×84/5=5292/25 となる。

  同様にして、 32インチのTV画面の縦の長さは、 32×3/5=96/5

                     横の長さは、 32×4/5=128/5

 よって、21インチのTV画面の面積は、 96/5×128/5=12288/25 となる。

  2つの画面の大きさの平均は、 (5292/25+12288/25)/2=8790/25

 このとき、求めるTV画面が Aインチであるとすると、

     縦の長さは、 A×3/5 、横の長さは、 A×4/5

なので、その面積は、 A2×12/25 である。

 よって、 A2×12/25=8790/25 より、 A2=8790/12=2930/4 なので、

   A=54.12947441・・・/2=27.06473721・・・

 以上から、 およそ27インチのTV画面が2つのTV画面の平均となる。

 単に、(21+32)/2=26.5(インチ)のTVでないところが面白い。

 上記の計算は、次のように一般化できる。

 対角線の長さがそれぞれ a、b の相似な長方形がある。対角線と横のなす角を θ とする。

このとき、2つの長方形の面積は、それぞれ  a2sinθcosθ 、 b2sinθcosθ なので、

 面積の平均は、 (a2sinθcosθ+b2sinθcosθ)/2=(a2+b2)sinθcosθ/2

よって、求める長方形の対角線の長さが Aであるとすると、

     縦の長さは、 Asinθ 、横の長さは、 Acosθ

なので、その面積は、 A2sinθcosθ である。

 したがって、 A2sinθcosθ=(a2+b2)sinθcosθ/2 より、

     

となる。

 同様に、最長対角線の長さが、それぞれ a、b である2つの相似な直方体についても、両
者の平均である直方体の最長対角線の長さ A は、次式で与えられる。

     


 当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんから、「平均の数学的構造」ということで、
次のような関係があることをご教示いただいた。(平成23年5月9日付け)

 a>0、b>0 に対して、
               
とおくと、

   A=M(1)=(a+b)/2 となり、相加平均を表す。

 さらに、t → 0 のとき、 M(t) → G= となり、相乗平均を表す。

実際に、 (log(a+b)−log2)/t は、0/0の不定形の極限で、ロピタルの定理を用いて、

t → 0 のとき、 (aloga+blogb)/(a+b) → (loga+logb)/2=log

 よって、 M(t) → G= である。

 また、 H=M(−1)=2ab/(a+b) となり、調和平均が現れる。

(コメント) 線分から長方形、直方体と相似な図形間の平均を考えてみたのですが、GAI さ
      んからご教示いただいたいろいろな平均の関係から、実は統一的に記述できる数
      式があることに驚かされました。GAI さんに感謝いたします。


 PSPさんからのコメントです。(平成27年3月6日付け)

 2乗平方和平均、相加平均、相乗平均、調和平均の作図に脱帽しました。加重平均も加え
て、作図ソフトを作成してみました。(→ 作図ソフト参考図


(追記) 平成31年2月19日付け

 x1、x2、x3 を正の数とする。このとき、

 x1、x2 の相加平均は、(x1+x2)/2 であり、相乗平均は、√(x12) である。

 x1、x2、x3 の相加平均は、(x1+x2+x3)/3 であり、相乗平均は、 3√(x123) である。

 これらの平均について、京都市在住の永田俊也さんが

    数学セミナー ’19 3月号(日本評論社)

において、次のような関係があることを示されている。(上記では一般的に示されている。)

  2((x1+x2)/2−√(x12))≦3((x1+x2+x3)/3−3√(x123))

 ある意味での「単調性」だという。

(証明) y=x^(1/6) とおき、特に、y1=t とおくと、t の関数Yは、

 Y=右辺−左辺=(2y23)t3−(3y2232)t2+y36

 t で微分して、 Y’=(6y23)t2−(6y2232)t=0 より、 t=0 、y32/y2

 t≧0 の範囲で、Yは、t=y32/y2 で極小かつ最小で、最小値 0 である。

 したがって、Y≧0 で、

 2((x1+x2)/2−√(x12))≦3((x1+x2+x3)/3−3√(x123))

が成り立つ。