・ヘロン三角形                    ABCDEF氏

 3辺の長さと面積が整数であるような三角形は、ヘロン三角形と言われる。このとき、

  ヘロン三角形の面積は、6の倍数である

 これはどのようにすれば証明できるでしょうか。Wikipediaにあるヘロン三角形の3辺の長さ
の一般形を使えば証明できますが、これを使わない証明を考えています。

 3の倍数であることは証明できました。(平成26年4月7日付け)

 ヘロンの公式を使います。ただし、s=(a+b+c)/2 は使わないで、a、b、c のみで表す形です。
即ち、
   16S2=2(a2・b2+b2・c2+c2・a2)-(a4+b4+c4)  (→ 参考:「三角形の面積の公式」)

 Sが3の倍数でないとすると、この式は、mod 3で成立しない。

 実際に、Sが3の倍数でないとして、移項して、mod 3 で考える。16S2≡1、-2≡1だから

   1+a2・b2+b2・c2+c2・a2+a4+b4+c4≡0 (mod 3)

 mod 3で、a2、b2、c2 は、0か1にしかなれないから次の4通りがありうる。

 (a) a2、b2、c2 は、すべて0
 (b) a2、b2、c2 は、すべて1
 (c) a2、b2、c2 は、のうち2つが0で1つが1
 (d) a2、b2、c2 は、のうち2つが1で1つが0

 それぞれの場合で、左辺(mod 3)の値は、(a)のとき1、(b)のとき1、(c)のとき2、(d)のとき1
いずれの場合も0にはならない。

 よって、ヘロン三角形の面積は3の倍数である。

※Sが偶数であることの証明は、もっと細かく調べる必要があるようです。Sが奇数であると
 すると、16S2≡16 (mod 64)です。右辺≡16 (mod 64)は成り立たないと言えるのかなと思い
ますができてません。

 偶数であることの証明はできませんでした。(平成26年4月9日付け)

 例えば、32を法としてすべての場合を調べればもちろんできるでしょうが、証明と言えるか
どうかという気がします。


 DD++さんからのコメントです。(平成26年4月9日付け)

 証明はできていましたが、もっと綺麗なやり方がありそうかなと考え直していました。かっこ
悪い証明かもしれませんが、以下に書いておきます。

 先に、5つほど自然数や有理数についての補題を証明しておきます。有名なものもあります
が一応...。

(補1) 正の実数 a、b について、
    a2、b2、a+b(≠0) が全て有理数ならば、a、b はともに有理数。


(証明) a={(a+b)2+a2-b2}/2(a+b) は有理数。よって、b=(a+b)-a も有理数。 (証終)

(補2) 正の有理数 a、b について、a2+b2 が自然数ならば、a、b を既約分数で書いた分母
    は一致する。


(証明) a=p/q(p、q は互いに素な自然数)、b=r/s(r、s は互いに素な自然数)とすると、

 a2+b2 = (p/q)2+(r/s)2 は自然数で、これに、自然数 q2 をかけると、 p2+(qr/s)2 は自然

数で、p2は自然数だから、(qr/s)2も自然数。r、s は互いに素であったから、(q/s)2 は自然

数。一方で、これに自然数 s2 をかけると、 (ps/q)2+r2 は自然数で、r2は自然数だから、

(ps/q)2も自然数。p、q は互いに素であったから、(s/q)2 は自然数。

 よって、 (q/s)2=(s/q)2=1 より、q=s  (証終)

(補3) 自然数 a、b、c について、a2+b2=c2 ならば、a、b のいずれかは3の倍数。

(証明) 合同式は全て mod 3 とする。任意の自然数nについて、n2≡0、1 である。

    a2≡1 かつ b2≡1 とすると、c2≡2 となり、矛盾。

  よって、 a2≡0 または b2≡0 より、a≡0 または b≡0  (証終)

(補4) 自然数 a、b、c について、a2+b2=c2 ならば、a、b のいずれかは4の倍数。

(証明) 合同式は断りのない限り全て、mod 16 とする。任意の自然数nについて、

    n2≡0、1、4、9 である。

  a2≡1、4、9 かつ b2≡1、4、9 とすると、c2≡2、5、8、10、13 となり、矛盾。

 よって、 a2≡0 または b2≡0 (mod 16)より、a≡0 または b≡0 (mod 4)  (証終)

(補5) 3辺の長さが自然数である直角三角形の面積は、6の倍数。

(証明) 三平方の定理と(補3)、(補4)より、直角を挟む2辺のいずれかは3の倍数でいずれ

  かは4の倍数。したがって、その積は12の倍数なので、面積は、6の倍数。  (証終)

 いよいよ本題です。 「ヘロン三角形の面積は6の倍数である」の証明です。

(証明) 三角形の最大角をA、他の2つの角をB、Cとし、△ABCの面積をSとする。△ABCが

 ヘロン三角形であるとき、AB、BC、CA、Sは全て自然数である。

AからBCに引いた垂線の足を点Dとする。AD=2S/BC で、SとBCは整数だから、ADは有理数。

このとき、BD2=AB2-AD2は有理数、CD2=AC2-AD2は有理数、BD+CD=BCは有理数、

 よって、(補1)より、BDとCDは、ともに有理数。

そして、AD2+BD2=AB2 と AD2+CD2=AC2 は自然数なので、(補2)より、AD、BD、CD を既約

分数で書いた分母は全て一致する。この分母を r とする。

 △ABCをr倍に拡大した△A’B’C’を考え、点Dと対応する点D’もとる。

 A’B’=rAB 、B’C’=rBC 、C’A’=rCA は、全て自然数。

また、A’D’=rAD 、B’D’=rBD 、C’D’=rCD はそれぞれAD、BD、CD を既約分数で書いた

ときの分子なので、これらは全て r と互いに素な自然数。

 ここで、 A’D’2+B’D’2=A’B’2 について、(補3)から、A’D’とB’D’のいずれかは3の倍数。

しかし、r は、A’D’とB’D’のいずれとも互いに素であるから、r は3の倍数ではない。

 同様に、A’D’2+B’D’2=A’B’2 について、(補4)から、A’D’とB’D’のいずれかは4の倍数。

しかし、r は、A’D’とB’D’のいずれとも互いに素であるから、r は、2の倍数ではない。

 また、(補5)より、△A’B’D’の面積と△A’C’D’の面積はどちらも6の倍数なので、

△A’B’C’の面積 S’=r2・S は、6の倍数となる。

 しかし、r は、2の倍数でも3の倍数でもないのだから、Sが6の倍数となる。  (証終)


(コメント) なるほど!分かりやすい証明ですね。DD++さんに感謝します。


 ABCDEFさんからのコメントです。(平成26年4月10日付け)

 有難うございます。



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