・直接計算                         S.H氏

 数学の問題で、公式を使わないで直接的に手計算で解ききる強者を時々見かける。公
式を用いれば短時間で済むのに、「やってみよう」という好奇心から大変な直接計算を楽
しむという「ゆとり」に感動したという記事(朝日新聞 平成22年4月27日付け朝刊の「声」
欄)を見て、日本の高校生も捨てたものではないなと感じ入った。

 次のような問題だったらしい。 「63 を3で割った余りを求めよ。

 263=(3−1)63≡(−1)63=−1≡2 (mod 3) なので、答えが「2」であることは、ほ
とんど暗算であるが、その生徒は、

 263=9223372036854775808

と計算しきったという。これだけ計算が出来る生徒だったら、「3で割った余り」を求めること
も容易いかな?

 このことについて、よおすけさんは(4月27日付け)

 「63 を手計算って・・・僕も困難です。因みに、関数電卓で表示できるのは、
 233(=8589934592) までです。


 また、zk43さんは(4月28日付け)

 「log102=0.3010 だから、 log1063=18.・・・ で、 263 は19桁の数ですか。
 mod を使えば一瞬で分かりますが、いろいろ考えるのも面白いですね。しかし、計算を実
 行する気にはなりませんが…、若者のパワーはすごいですね。


 らすかるさんは、別解を考えられた。(4月28日付け)

  63 の直接計算も、2進法なら簡単です。

 263 を2進法で表すと、 1000…000(63個の0)

 これを3で割った余りを求めるには、2進数 11000…000 (←3の倍数)を次々と引い
ていけばよい。

 まず、 1000…000 (63個の0)
 110…000 (61個の0)

において、2数の差は、 1000…000(61個の0) となり、2桁減る。

 この演算を続けると、「263→261→259→…→21」となり、余りは、2と分かる。


(コメント) 2進数で、3の倍数「11000…000」を順次引くという手法にしびれました!


 また、FNさんも、263 の直接計算をやられたそうである。(4月28日付け)

 「まずごく素直に、2、4、8、16、・・・・と順に2倍していく。15分強かかりました。結果は
 間違ってました。次は、210 =1024 からスタートして、220 、240 、223 と計算して、
 263 に至る。10分弱でしたが、やはり間違ってました。間違わないように確認しながら
 やれば、20分以上かかりそうです。因みに確認は「Maxima」を使いました。



 上記のように、いろいろな方が、「263 の直接計算」に果敢に挑戦されました。皆さんに
感謝します。

 それでは「私は...?」というと、「263 の直接計算」は「やりたくないな...」というのが
本音です。

 問題の趣旨が、「263 の直接計算」にあるのではなく、その結果を「3で割った余り」を求
めることが眼目なので、その解法に当然目がいってしまいます。「直接計算」ももちろん大
切なことですが、もう一歩足を踏み込んで、3でわった余りを求める工夫を考えることも高
校生に身につけて欲しい課題解決能力と考えます。

 冒頭にある mod を用いる解法は高校ではあまりお目にかからないことなので、もっと素
朴な解法を考えてみました。

 210=1024 は、3で割ると 1 余る数である。

 そこで、 210=3n+1 (n は自然数) とおく。

 このとき、 220=(3n+1)2=9n2+6n+1=3n(3n+2)+1 より、220 も3で割ると

1 余る数である。そこで、 220=3m+1 (m は自然数) とおく。

 このとき、 260=(3m+1)3=27m3+27m2+9m+1=9m(3m2+3m+1)+1

 より、260 も3で割ると 1 余る数である。そこで、 260=3k+1 (k は自然数) とおく。

 このとき、 263=23×260=8(3k+1)=24k+8=3(8k+2)+2 となり、

      263 を 3 で割った余りは、 2

である。


 「一の位の数字」と題して、HN「よおすけ」さんからの投稿です。(平成25年6月9日付け)

 1、2の数字を全部使って作られる2桁の数のすべての和は、12+21=33 となり、そ
の数の一の位の数字は「3」となります。

 また、1、2、3の数字を全部使って作られる3桁の数のすべての和は、

 123+132+213+231+312+321=1332

となり、その数の一の位の数字は「2」となります。

 同じようにして、1〜9の数字を全部使って作られる9桁の数をすべて足したとき、その数
の一の位にくる数字を答えなさい。


 らすかるさんからのコメントです。(平成25年6月9日付け)

 全部で9!通りで、一の位が1〜9となるのがそれぞれ8!=40320通りだから、合計の
一の位は、0。


 よおすけさんからのコメントです。(平成25年6月9日付け)

 らすかるさん、解答ありがとうございます。この問題は、数学感動秘話の「直接計算」を読
んだのがきっかけで投稿しました。ただ、あちらが「余り」に対し、こちらは「一の位の数字」
ですが・・・。


(コメント) 1、2、3の数字を全部使って作られる3桁の数のすべての和は、

      (100+200+300)・2!+(10+20+30)・2!+(1+2+3)・2!

     =666×2=1332 となり、その一の位の数字は、「2」となります。

    でも、このような解き方は、よおすけさんの趣旨に反するのかな?3桁の数を直接的
   に書き上げて、それらを足すみたいな...。


 よおすけさんからのコメントです。(平成25年6月11日付け)

 自分が投稿した問題は簡単にいえば「一の位の数字を答えろ」ですから、ヤマ勘でも答え
られるような設定にしてあります。問題の趣旨などは関係ありません。問題文に「!」を使わ
なかったのは単に「!」を使える問題とは知らなかった・・・というだけの話なので… 。


 攻略法さんからのコメントです。(平成25年6月11日付け)

 1〜N (N=1、2、・・・、9)の数字を全部使って作られる9桁の数をすべて足したとき、そ
の数の一の位にくる数字を計算してみました。

  1: 1  → 一の位は「1」
  2: 33  → 一の位は「3」
  3: 1332  → 一の位は「2」
  4: 66660  → 一の位は「0」
  5: 3999960  → 一の位は「0」
  6: 279999720  → 一の位は「0」
  7: 22399997760  → 一の位は「0」
  8: 2015999979840  → 一の位は「0」
  9: 201599999798400  → 一の位は「0」


 この発展問題が、問題集「順列・組合せの問題に挑戦!」の第4問、第6問にあります。


(コメント) N=4〜9 については全て一の位は「0」になるんですね!

 N=4のときは、 1+2+3+4=10 だから。
 N=5のときは、 1+2+3+4+5=15 が5の倍数で、4!=24が2の倍数だから。
 N=6のときは、 5!=120 だから。
 N=7のときは、 6!=720 だから。
 N=8のときは、 7!=5040 だから。
 N=9のときは、 8!=40320 だから。

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