順列・組合せの問題に挑戦!
順列・組合せの問題は、確率論、計算数学、オートマトンの理論および数理経済学において
きわめて重要である。しかし、現行の教育課程においては、深く考えさせる問題が少なく、十
分な訓練ができる状況にはない。ここでは、より進んだ方のために、いくつかの良問を用意し
た。是非、チャレンジしてほしいと思う。
1. 1から100までの全ての正の整数を同時に印刷するには、何個の活字が必要か?但し、
1つの活字には1つの数字のみとする。
2. さいころを4回振って、出た目の数を順に並べて、4桁の数を作るとき、各位の数字に同
じ数字をちょうど3個含む数はいくつできるか?
3. 91より小さくて、91と互いに素な自然数は何個あるか?
4. 5個の数字1,2,3,4,5 のうちから相異なるもの3個をとって、3桁の正の整数を作る
とき、その全ての正の整数の和を求めよ。
5. 4桁の正の整数のうちで、1234より大きいものは何個あるか。但し、各位の数字は全て
相異なるものとする。
6. 循環節が4個の数字1,3,5,7からできている純循環小数 の総和を求めよ。ただし、循環する小数だけからなるものを純 循環小数という。 7. 右図のような2本の棒にそれぞれ3個の玉を通したおもちゃ がある。(上下、左右、表裏の区別はしない) この6個の玉を3個は赤く塗り、3個は白く塗るものとすると、 何通りの塗り方があるか? 8. 1から100までの自然数のうちで、各桁に5という数字が少 なくとも1つあるものは、いくつあるか。 |
9. 右図のように、正方形の周上に等間隔に並べられた12個の 点がある。 (1) 少なくとも2点を通る直線の数を求めよ。 (2) 互いに平行でないものは何本あるか。 |
10. 10人の選挙人が5人の候補者を2名連記で無記名投票するとき、票の分かれ方は何
通りあるか。但し、選挙人は必ず異なる2名の候補者名を書くものとする。
11. 7通の手紙とそれに対応した7枚の封筒がある。手紙を封筒に1つずつ入れる時、全て
の手紙が対応する封筒に1つも入らない場合の数を求めよ。
12. A,A,A,B,B,C の7文字から4文字とる順列の数を求めよ。
(答)1. 192個 2. 120個 3. 72個 4. 19980 5. 4471個 6. 32/3
7. 6通り 8. 19個 9.(1) 46本 (2) 16本 10. 7051通り
11. 1854通り 12. 38通り ( → 略解へ進む!)
(問題補充) 最近、関西在住の高校生から面白い問題を頂戴しました。順列・組合せの練習
問題として、良問と判断しましたので、解答を添えての掲載です。
13. 相異なる形をしたカードが全部で6枚あり、1枚のカードには、アルファベットが 1つだけ
記入されている。アルファベットの「A」、「B」、「C」が記入されたカードは、それぞれ1枚、
2枚、3枚あるとする。この6枚のカードを一列に並べるとき、次のような並べ方は何通り
あるか。
(1) A と C が隣り合わない並べ方
(2) どのカードも、隣のカードとアルファベットが違う並べ方
(1)の(答): 問題の条件から、6枚のカードは、A、B1、B2、C1、C2、C3 としてよい。
まず、C1、C2、C3 の並べ方の数は、3!=6通り。
そのうちの1通りに対して、たとえば、C2 C3 C1
とする。このCの並びに
対して、今度は、A の入れ方を考える。可能性として、その入れ方は全部で、
4通り ある。
各場合について、今度は、Bの入れ方を考える。
(イ) A B* C2 C3 C1 の場合 (*は、1,2の何れか)
この場合は、A と C の間に必ず、B が1個以上入る。
今、上図のように、Bが1個入るとして、その選び方は、2通り。
そのうちの1通りに対して、たとえば、
A B2 C2 C3 C1
とする。残りの B1 の入れ方は、
^ A B2 ^ C2 ^ C3 ^ C1 ^
の、5通りある。したがって、この場合の数は、2×5=10通り。
(ロ) C2 C3 C1 B* A の場合 (*は、1,2の何れか)
この場合は、上の場合と同様にして、2×5=10通り。
(ハ) C2 B* A B* C3 C1 (*は、1,2の何れか)
この場合は、A の左右は必ず B となる。B の入れ方は、2!=2通り。
(ニ) C2 C3 B* A B* C1 (*は、1,2の何れか)
この場合は、上の場合と同様にして、2!=2通り。
以上から、求める場合の数は、
3!×(10+10+2+2)=144通り
(2)の(答): まず、C1、C2、C3 の並べ方の数は、3!=6通り。
そのうちの1通りに対して、たとえば、C2 C3 C1
とする。この C の並び
に対して、今度は A と B の入れ方を考える。可能性として、次のように入
れる場合(イ)〜(ニ)があります。
(イ) ◎ C2 ◎ C3 ◎ C1 (◎は、A または
B)
この場合、◎に A と B を並べる方法の数は、3!=6通り。
(ロ) C2 ◎ C3 ◎ C1 ◎ (◎は、A
または B)
この場合、◎に A と B を並べる方法の数は、3!=6通り。
(ハ) C2 ◎◎ C3 ◎ C1(◎◎は必ず、
A と B のペア!)
この場合、まず、A は考えないで、B 2個を並べる。その方法の数は、
2!=2通り。そのうちの1通り、たとえば、
C2 B2 C3 B1 C1
とする。A は、B2の左または右に入ることになる。
C2 ○ B2 ○ C3 B1 C1
その場合の数は、2通りとなる。
よって、この場合の並べ方の数は、2!×2=4通り。
(ニ) C2 ◎ C3 ◎◎ C1(◎◎は必ず、A
と B のペア!)
この場合、上の場合と同様にして、2!×2=4通り。
以上から、求める場合の数は、
3!×(3!+3!+2!×2+2!×2)=120通り
(追記) 最近、冒頭の問題1.〜12.を解かれた方から解答の誤りがある旨、ご教示いた
だいた。今から、2年9ヶ月前ほどにアップロードしたものだが、その間、解答が誤っ
たままだったわけで、大変申し訳なく思う。(上記の解答は、訂正済み!)
私自身の確認の意味も込めて、略解を提示することとした。この略解が読者の学
習の一助になれば幸いである。
1. 9+2×10×9+3=192(個)
2. 6×5×4!/3!=120(個)
3. 91=7×13 なので、91と公約数を持つものは、6+12+1=19(個)
したがって、91と互いに素な自然数は、91−19=72(個)
4. (1+2+3+4+5)×111×4P2=19980
5. 1234 より小さいものは、 1+7+8P2=64(個) なので、
求める個数は、 9×9P3−1−64=4471(個)
6. 循環小数を x とおくと、 9999・x=(1、3、5、7 を並べた整数) なので、
求める総和は、 (1+3+5+7)×1111×3!÷9999=32/3
7. 上段が全て赤の場合は、1通り。上段が赤2個の場合、下段のパターンは、5通り。
よって、求める場合の数は、 1+5=6(通り)
8. 5が各桁に全く含まれない自然数は、 8+8×9+1=81(個)あるので、
求める場合の数は、 100−81=19(個)
9.(1) 12C2−4C2×4+4=46(本)
(2) 傾きに注目して、0、±1/3、±1/2、±2/3、±1、±3/2、±2、±3、∞ の
16(本)
10. A+B+C+D+E=20 (0≦ A、B、C、D、E ≦10) となる解の組の個数を
求めればよい。
そのためには、A+B+C+D+E=20 (0≦ A、B、C、D、E ≦20) となる
解の組の個数から、A、B、C、D、E が11以上となる場合の数を求めればよい。
Aが11以上のとき、まずAに11を留保し、残りの9をA、B、C、D、E に分ければ
よい。その場合の数は、5H9=13C9=13C4=715(通り)
B、C、D、E が11以上となる場合の数も同様で、これらは全て重複しない。
したがって、求める場合の数は、
5H20−715×5=10626−3575=7051(通り)
11. n 通の手紙が n 枚のそれぞれが対応する封筒に1つも入らない場合の数を
F(n)
とおくと、F(1)=0、F(2)=1、n が3以上のとき F(n)=(n−1)(F(n−2)+F(n−1))
が成り立つ。このとき、F(3)=2、F(4)=9、F(5)=44、F(6)=265 より、
F(7)=1854 となり、求める場合の数は、1854 通りである。
12. AAABの並べ方は、4通り、AAACの並べ方は、4通り、AABBの並べ方は、6通り、
AABCの並べ方は、12通り、ABBCの並べ方は、12通り。
よって、求める場合の数は、 4+4+6+12+12=38(通り)
(問題補充2) 順列・組合せの問題として、興味ある解法に出会ったので紹介したい。
14. 凸 n 角形の頂点を頂点とし、対角線を辺とする三角形は、全部で何個あるか?
左図のような凸6角形には、問題の条件を満たす三角形は、2個しか
ない。
n の値が小さければ数える気力も起こるが、一般の n なので、途方に
暮れてしまう人がいるかもしれない。
高校では、このような問題は次のように解かれるのが普通だろう。
n 個の頂点から3個の頂点を選ぶ場合の数は、nC3 =n(n−1)(n−2)/6 (個)
このうち、凸 n 角形と 1 辺を共有するものは、n(n−4) (個)
凸 n 角形と 2 辺を共有するものは、n (個)
したがって、求める場合の数は、
n(n−1)(n−2)/6−n(n−4)−n =n(n−4)(n−5)/6
(個)
である。
(コメント: (n−4)(n−5)/6=n−4C2/3 であることを考えると、別解の存在に気づかさ
れる。)
上記では、三角形の個数なので、比較的容易であったが、もし、凸四角形とか一般の凸
m 角形の個数となると、俄然難しくなる。
しかし、このような一見難しそうな場合についても、実は、有効な計算方法がある。
一般に、
凸 n 角形の頂点を頂点とし、対角線を辺とする凸 m 角形は、全部で何個あるか?
という問題は、ケリーの問題といわれる。
(Arthur Cayley 1821〜1895 英国)
まず、問題の条件を満たすような凸 m 角形が存在するためには、凸6角形の場合から
も分かるように、
n ≧ 2m
でなければならない。
いま、凸 n 角形の n 個の頂点を、 1、2、3、・・・、n と番号で明示する。
そこで、凸 n 角形の頂点のうち、たとえば、n−1 が、凸 m 角形の1つの頂点になって
いる場合を考える。
残りの m−1 個の頂点を番号の若い順に、k1、k2、・・・、km−1 とおく。
このとき、 1 ≦ k1 < k2 < ・・・ < km−1 ≦ n−3 であるが、
k1、k2、・・・、km−1 は、さらに次の条件を満たさなければならない。
k1 +1 < k2
k2 +1 < k3 より、 k1 +2 < k3 よって、 k1 < k3−2
k3 +1 < k4 より、 k1 +3 < k4 よって、 k1 < k4−3
・・・・・・・・・・
km−2 +1 < km−1 より、 k1 +m−2 < km−1 よって、 k1 < km−1−m+2
よって、
1 ≦ k1 < k2−1 < k3−2 < ・・・ < km−1−m+2 ≦ n−3−m+2
となるように、k1、k2、・・・、km−1 を選べばよい。
このとき、条件を満たすような k1、k2、・・・、km−1 の選び方は、
1 から n−m−1(=n−3−m+2)までの自然数から、異なる m−1 個の自然
数を選ぶ場合の数に等しい
ので、凸 n 角形の頂点 n−1 が、凸 m 角形の1つの頂点になっているような場合の数は、
n−m−1Cm−1
で与えられる。このことを、凸 n 角形のすべての頂点で考えると、m 個ずつ重複して数え
ているので、求める場合の数は、
(個) |
となる。
実際に、m=3 の場合に公式を適用すると、 n・n−4C2/3 となって当初の示唆に一致
することが確かめられた。
(問題補充3) 当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんが、当HPの掲示板「出会
いの泉」に『微妙な違い』と題して次のような問題を出題された。
(平成22年3月28日付け)
ちょっとした条件の違いで考え方が異なってくる感覚を鍛えていただければ幸いである。
このような問題を整理していただいた GAI さんに感謝します。
【 問 題 群 】
(1)相異なる3個の球を、相異なる7個の箱に自由に配る(空き箱を許す)方法は何通り?
(解) 重複順列。 7×7×7=73 (通り)
(2)相異なる3個の球を、相異なる7個の箱に高々1個配る方法は何通り?
(解) 順列。 7P3 (通り)
(3)相異なる7個の球を、相異なる3個の箱に少なくとも1個配る方法は何通り?
(解) 重複順列の応用。 37−3C1(27−2)−3C2=37−3・27+3 (通り)
(4)区別できない3個の球を、相異なる7個の箱に自由に配る方法は何通り?
(解) 重複組合せ。 7H3 (通り)
(5)区別できない3個の球を、相異なる7個の箱に高々1個配る配り方は何通り?
(解) 組合せ。 7C3 (通り)
(6)区別できない7個の球を、相異なる3個の箱に少なくとも1個配る配り方は何通り?
(解) 重複組合せの応用。 3H4 (通り)
(7)相異なる3個の球を、区別できない7個の箱に自由に配る配り方は何通り?
(解) 3個、2個1個、1個1個1個より、 1+3C2+1=5 (通り)
(8)相異なる3個の球を、区別できない7個の箱に高々1個配る配り方は何通り?
(解) 明らかに、1通りしかない。
(9)相異なる7個の球を、区別できない3個の箱に少なくとも1個配る配り方は何通り?
(解) 重複順列の応用。 (37−3・27+3)/3! (通り)
(10)区別できない3個の球を、区別できない7個の箱に自由に配る方法は何通り?
(解) 3=2+1=1+1+1 の3通り。
(11)区別できない3個の球を、区別できない7個の箱に高々1個配る配り方は何通り?
(解) 明らかに、1通りしかない。
(12)区別できない7個の球を、区別できない3個の箱に少なくとも1個配る配り方は何通り?
(解) 4=3+1=2+2=2+1+1 の4通り。
(コメント) 答えは合っているかな?
(問題補充4) 順列・組合せの問題は、答えを見るまで安心できない危うさがまた一つの魅
力でもある。答えが合っているときの嬉しさと言ったら半端ない。普通の演習問
題としては、それほど意識しないが、受験時の問題に順列・組合せの問題を見
るとイヤ〜な雰囲気が漂い出す。(平成26年5月25日付け)
次は、東北大学後期理系(2014)の問題である。
縦横の長さの比が1:3の長方形の板がある。この板を両面とも下図のように線で区切り、
できた6つの正方形のそれぞれに赤または白の色を塗ることにする。塗り終えた板におい
て回転や裏返しで同じ塗り方になるものは区別しないとするとき、塗り方は何通りあるか求
めよ。ただし、各正方形には1つの色を塗るものとする。
(表面) (裏面)
(解) 表面左から、123、裏面左から、456として、123456の順列を考える。
・6ヶ所すべて同じ色のとき、 赤赤赤赤赤赤、白白白白白白 の2通り
・5ヶ所のみ同じ色のとき、
赤赤赤赤赤白、赤赤赤赤白赤、白白白白白赤、白白白白白赤白 の4通り
・4ヶ所のみ同じ色のとき、
赤赤赤赤白白、赤赤赤白赤白、赤赤白赤赤白、
赤白赤赤赤白、白赤赤赤赤白、赤白赤赤白赤、
白白白白赤赤、白白白赤白赤、白白赤白白赤、
白赤白白白赤、赤白白白白赤、白赤白白赤白 の12通り
・3ヶ所のみ同じ色のとき、
赤赤赤白白白、赤赤白赤白白、赤白赤赤白白、
白赤赤赤白白、赤赤白白赤白、赤白赤白赤白 の6通り
以上から、 2+4+12+6=24通り
(問題補充5) 順列・組合せの問題で、次のような問題がある。(平成27年2月15日付け)
S、U、G、A、K、Uの6文字を一列に並べるとき、S、G、Kがこの順にあるものは何通り
あるか。
この問題に対して、次の解はよく知られたものだろう。
(解) S、G、Kの3文字を同じ文字○とみなして、○、U、○、A、○、Uの順列を考えればよ
いので、
6!/(3!2!)=60(通り) (終)
これに対して、次のような別解があることを最近知ることが出来た。
(別解) 1、2、3、4、5、6 の6個の番号からS、G、Kの3つを入れる番号を選ぶとき、
6C3=20(通り) このうちの1通りに対して、残りのU、A、Uの並べ方は、
3!/2!=3(通り)
よって、求める場合の数は、 20×3=60(通り) (終)