・Ravi変換                              S.H 氏

 「三角形の辺の長さをa、b、cとするとき」という条件がある問題を解くとき、その背後には、
3つの不等式が仮定される。(三角形の存在条件)

  a+b−c>0 、b+c−a>0 、c+a−b>0

 あと、もちろん、 a>0、b>0、c>0 も必要だが、これは、上記の3つの不等式から導か
れる。

 このようなとき、次のような変換をすると問題が解きやすくなるということを、

  d松 祐介 著 「三角形に潜む不等式の一般化」 数研通信 No.97 (数研出版)

で知ることが出来た。

  a+b−c=2y、b+c−a=2z、c+a−b=2x とおくと、 x>0、y>0、z>0 という

単純な条件に置換できる。

 このとき、 a=x+y 、b=y+z 、c=z+x なる変換を、Ravi変換というようだ。

 このRavi変換の幾何学的意味は、三角形の内接円を考えるとき、各頂点からの接線の
長さ x、y、z で、三角形の3辺の長さを表すことに等しい。

例(ヘロンの公式) 三角形の三辺 a 、b 、c が分かっているとき、

   ヘロンの公式    ただし、2s=a+b+c

は、とても複雑そうに見えるが、Ravi変換をすると、とても簡単な形になる。

 2s=2(x+y+z) より、 s=x+y+z で、さらに、

 s−a=(b+c−a)/2=z 、s−b=(c+a−b)/2=x 、s−c=(a+b−c)/2=y

なので、ヘロンの公式は、 S=√(xyz(x+y+z)) と書ける。


問題  三角形の辺の長さをa、b、cとし、a+b+c=2s とおくとき、次の不等式を証明せ
    よ。

      a/(s−a)+b/(sーb)+c/(s−c)≧6

(出典:大分医科大学(現大分大学医学部))

(解) a=x+y 、b=y+z 、c=z+x とおくと、三角形が存在する条件は、

    x>0 、y>0 、z>0

 このとき、 s=x+y+z で、 s−a=z 、s−b=x 、s−c=y より、

 左辺=(x+y)/z+(y+z)/x+(z+x)/y

    =(x/y+y/x)+(y/z+z/y)+(z/x+x/z)

 相加平均と相乗平均の関係より、 x/y+y/x≧2 、y/z+z/y≧2 、z/x+x/z≧2

 よって、 (x/y+y/x)+(y/z+z/y)+(z/x+x/z)≧6 すなわち、

   a/(s−a)+b/(sーb)+c/(s−c)≧6

が成り立つ。等号成立は、 x=y=z すなわち、 a=b=c のときに限る。  (終)


(コメント) Ravi変換を用いると、簡単に解けてしまいましたね!感動です。


問題  三角形の周の長さが一定のとき、面積が最大となるのは正三角形であることを示
    せ。(→ 参考:「周の長さ一定な図形」)

(解) 三角形の辺の長さをa、b、cとし、周の長さ a+b+c=2s が一定であるとする。

 a=x+y 、b=y+z 、c=z+x とおくと、三角形が存在する条件は、

    x>0 、y>0 、z>0

 このとき、 s=x+y+z で、 s−a=z 、s−b=x 、s−c=y より、

 三角形の面積をSとおくと、 S2=sxyz

 相加平均と相乗平均の関係から、 s=x+y+z≧33√(xyz)

 すなわち、 s3/27≧xyz=S2/s から、 s4/27≧S2

 よって、面積Sの最大値は、 s2/(3) で、等号が成立するとき、最大。

 このとき、 x=y=z すなわち、 a=b=c のときで、正三角形である。  (終)



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