高校で扱う3次方程式や4次方程式は、基本的に因数定理やx2=Xなどの置き換えで解
かれるようにできている。しかし、この世にはそれらの甘い解法を受け付けない孤高の問題
たちが存在する。
まずは、因数定理を用いた解法を復習しておこう。
例 方程式 x3−9x2+21x−5=0 を解け。
(解) F(x)=x3−9x2+21x−5 とおくと、F(5)=125−225+105−5=0 なので、
F(x)は、x−5で割り切れる。
よって、F(x)=(x−5)(x2−4x+1)=0 より、 x=5、2± (終)
(コメント) 上記の方程式は、何とか因数定理を用いて解くことが出来た。±(5の約数)を
F(x)のxに代入すればよいことを知っていれば平易な問題だろう。
3次方程式におけるカルダノの方法(チルンハウス変換)を意識して、次のような別解が
考えられる。
(別解) x=y+a を、x3−9x2+21x−5=0 に代入して、
y3+3y2a+3ya2+a3−9(y2+2ya+a2)+21(y+a)−5=0
すなわち、 y3+3(a−3)y2+3(a2−6a+7)y+a3−9a2+21a−5=0
ここで、a=3 とすると、 y3−6y+4=0 で、明らかに、y=2 を解に持つ。
(y−2)(y2+2y−2)=0 より、 y=2、1±
よって、元の方程式の解は、 x=y+3=5、2± (終)
(コメント) 上記の別解は、因数定理を用いた解法に比べ、少しまどろっこしい感じがするか
もしれない。ただ与えられた方程式から新しい方程式を構成するという考え方は、
次の問題を解く上で最強の武器となる。因みに、次の問題は、因数定理では手も
足も出ない。
例 方程式 x4−3x2−6x−2=0 を解け。(→ 参考:「Ferrari の解法」)
(解) x4=3x2+6x+2 の両辺に x2y+(y/2)2 を加えて、
x4+x2y+(y/2)2 =(y+3)x2+6x+2+(y/2)2 を
すなわち、 (x2+y/2)2=(y+3)x2+6x+2+(y/2)2
左辺を開平するためには、右辺が完全平方式になればよいので、
判別式 D/4=9−(y+3)(2+(y/2)2)=0
よって、 y3+3y2+8y−12=0 (← 分解方程式と言われる。)
この3次方程式は明らかに y=1 を解に持つので、
(x2+1/2)2=4x2+6x+9/4=(2x+3/2)2 より、
x2+1/2=2x+3/2 、x2+1/2=−2x−3/2
よって、 x2−2x−1=0 、x2+2x+2=0 を解いて、求める方程式の解は、
x=1± 、−1±i となる。 (終)
(コメント) 因数定理で、1±、−1±i のうちの1つでも発見したら相当の猛者でしょう。
平成30年7月23日付けのS(H)さんからのコメントをもとに、
x4−3x2−6x−2=(x−α)(x3+ax2+bx+c) と因数分解できたものとして、
右辺=x4+(a−α)x3+(b−aα)x2+(c−bα)x−cα より、
a−α=0 、b−aα=−3 、c−bα=−6 、cα=2
と、してはみたものの後は堂々巡りで、一気呵成には求まりそうにないので、発想を変えて
みた。
x4−3x2−6x−2=x4−3(x+1)2+1=0 で、x=y−1 とおくと、
y4−4y3+3y2−4y+2=0 ・・・(*) を得る。
この方程式において、yに i を代入してみると、 左辺=1+4i−3−4i+2=0 なので、
(*)の左辺は、y−i で割り切れる。すなわち、x4−3x2−6x−2=0 は、i−1を解に持つ。
実数係数の方程式なので、その共役複素数 −i−1 も解となる。
i−1 と −i−1 を解に持つ2次方程式は、 x2+2x+2=0 なので、
x4−3x2−6x−2 は、x2+2x+2 で割り切れ、
x4−3x2−6x−2=(x2+2x+2)(x2−2x−1)
と因数分解される。よって、残りの他の解は、 x=1±
(コメント) x4−3x2−6x−2 の x に、たとえば、i−1 を代入するという発想は全く起こら
ないが、y4−4y3+3y2−4y+2 の y に i を代入するという発想は少なからず
あり得るのかな?と思う。
次の問題も上記と同じタイプの問題である。
例 方程式 x4+4=0 を解け。
(解) x4+4x2+4−4x2=0 から、 (x2+2)2−4x2=0
よって、 (x2+2x+2)(x2−2x+2)=0 より、 x=−1±i 、1±i (終)
読者のために練習問題を残しておこう。
練習問題 方程式 x4+4x3−8x+4=0 を解け。
(解) 解は、−1+ (重解) 、−1− (重解) (終)