026 | 平成21年度前期 | 静岡大学 | 理系 | ・・・ | 行列のn乗(数学C) | 標準 |
この問題は行列の n 乗の典型問題だろう。数学Tにおける式の値の問題の行列版であ
る。
静岡大学 前期理系(2009)
行列 | について、次の問いに答えよ。 |
(1) A+A2+A3 を求めよ。
(2) 自然数 n
に対して、 A+A2+A3+・・・+A3n-1+A3n を求めよ。
(解)(1) Cayley-Hamilton
の定理より、 A2+2A+4E=O
このとき、 A+A2+A3=(A−E)(A2+2A+4E)−A+4E
=−A+4E
よって、
(2) A+A2+A3+・・・+A3n-1+A3n
=(A+A2+A3)+(A+A2+A3)A3+・・・+(A+A2+A3)A3n-3
=(A+A2+A3)(E+A3+・・・+A3n-3)
ここで、 A3=A(−2A−4E)=−2A2−4A=−2(−2A−4E)−4A=8E なので、
A+A2+A3+・・・+A3n-1+A3n
=(1+8+82+・・・+8n-1)(−A+4E)=(8n−1)(−A+4E)/7
よって、
(終)
(コメント) 解答自体は易しい!河合塾の問題分析では「標準」となっているが、これはあく
までも静岡大学受験生レベルによるもので、問題レベルとしては「やや易」だろう。
行列の成分を見た瞬間に、
A=2R(2π/3) (原点中心、2π/3の回転移動後、2倍の相似拡大)
と気がつかれた読者の方も多いだろう。行列
A の固有多項式は、 x2+2x+4=0 であ
るが、その解を求めると、 x=−1±i なので、1の3乗根 ω
を用いれば、方程式の
解が、 2ω 、 2ω2 であることも見えてくる。
このことに、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんが着目され、次のような問いか
けをなされている。(平成21年3月11日付け)
2次の正方行列 A が A2+A+E=O を満たすとき、A
をすべて求めよ。
(解) 実数成分の、2次の正方行列
に対して、Cayley-Hamilton
の定理より、 A2−(a+d)A+(ad−bc)E=O
A2+A+E=O より、 (a+d+1)A=(ad−bc−1)E
a+d+1≠0 のとき、 A=kE (k
は実数) とおける。
このとき、 A2+A+E=O に代入して、 (k2+k+1)E=O より、
k2+k+1=0 この方程式を満たす実数解は存在しない。
よって、 a+d+1=0 で、このとき、 ad−bc−1=0
ここで、 d=−a−1 を第2式に代入して整理すると、
−a2−a−bc−1=0 より、 bc=−a2−a−1
b=0 とすると、方程式 a2+a+1=0 を満たす実数解は存在しないので不適。
よって、 b≠0 で、 c=−(a2+a+1)/b となる。
以上から、求める行列は、2つのパラメータ
a 、b により、
この問題は、平成15年度入試 京都大学 理系の問題(→参考:「オメガ(ω)の真実」)
を意識して、行列の問題にすり替えることができる。
2次の正方行列 A が A2+A+E=O
を満たすとき、
(A100+E)100+(A2+E)100+E=O
を示せ。
(解) A3=E 、 A2+A+E=O なので、
(A100+E)100+(A2+E)100+E=(A+E)100+(−A)100+E
=(−A2)100+A100+E
=A200+A100+E
=A2+A+E=O
(コメント) S(H)さんの出題では、
(A100+E)100+(A+E)100+E=O
を満たせば証明
となっているが、上式は成り立たないので、多分「ミスプリ」?