オメガ(ω)の真実
「オメガ」というと、一般の方が真っ先に思い浮かぶイメージは時計かな?世界的に有名
なスイスの高級腕時計ブランド名なので当然かも...。20世紀初頭に、『我社の時計は究
極だ』という自負から、「究極」、「最高」を意味するギリシャ語の最終文字「Ω=オメガ」をブ
ランド名としたとのことである。
このページで扱う「ω」は、1 の3乗根の方で、しかも、因数分解の究極の武器という意味
合いで、時計のブランド名に相通じるものがあるような...そんな雰囲気にしたいと思う。
因数分解の問題で、「x4+x2+1 を因数分解せよ。」はよくある問題である。
x4+x2+1=x4+2x2+1−x2=(x2+1)2−x2=(x2+x+1)(x2−x+1)
このように、複2次式の因数分解は、「平方の差」の形に式変形することがポイントだろう。
複2次式の因数分解ではないが、次の式の因数分解を問われたら、多分多くの初心者
の方は頭を抱えることになるだろう。
問 題 x5+x+1 を因数分解せよ。
これらの問題に対する有効な方法として、1 の3乗根 ω を用いる解法が知られている。
3次方程式 x3=1 の3つの解の内、虚数解の1つを ω で表す。
ω の定義から、次の性質が成り立つ。
(1)
(2) ω3=1
(3) ω2+ω+1=0
これらの基本的な性質を用いると、上記の問題は鮮やかに解かれうる。
(解) F(x)=x5+x+1 とおくと、
F(ω)=ω5+ω+1=ω2+ω+1=0
F(ω2)=ω10+ω2+1=ω2+ω+1=0
よって、 F(x)は、 (x−ω)(x−ω2)=x2+x+1 で割り切れる。
このとき、 x5+x+1=(x2+x+1)(x3−x2+1) と書ける。 (終)
この手法を、「x4+x2+1」の因数分解に適用すると次のようである。
(解) F(x)=x4+x2+1 とおくと、
F(ω)=ω4+ω2+1=ω2+ω+1=0
F(ω2)=ω8+ω4+1=ω2+ω+1=0
よって、 F(x)は、 (x−ω)(x−ω2)=x2+x+1 で割り切れる。
このとき、 x4+x2+1=(x2+x+1)(x2−x+1) と書ける。 (終)
(コメント) 高校時代に教わった複2次式の因数分解の手法は、とても技巧的な感じがして
美しさが感じられなかったが、因数定理を活用したこの手法は、自然で感動的です
ね!
この手法に病みつきになった方のために練習問題を残しておこう。
練習問題 次の式を因数分解せよ。
(1) x7+x2+1
(2) x8+x+1
(3) x10+x2+1
(4) x11+x+1
・・・・・ 熱帯夜の一服の清涼剤になったでしょうか?
(追記) 平成20年9月2日付け
x2+x+1 と ω の関係に注目する問題が、平成15年度入試 京都大学 理系 で出題
された。
(x100+1)100+(x2+1)100+1 は、x2+x+1 で割り切れるか?
(解) F(x)=(x100+1)100+(x2+1)100+1 とおき、さらに、1 の3乗根を ω とおく。
このとき、 ω3=1 、 ω2+ω+1=0 なので、
F(ω)=(ω100+1)100+(ω2+1)100+1
=(ω+1)100+(−ω)100+1
=(−ω2)100+(−ω)100+1=ω200+ω100+1=ω2+ω+1=0
同様にして、
F(ω2)=(ω200+1)100+(ω4+1)100+1
=(ω2+1)100+(ω+1)100+1
=(−ω)100+(−ω2)100+1=ω200+ω100+1=ω2+ω+1=0
よって、 F(x)は、 (x−ω)(x−ω2)=x2+x+1 で割り切れる。 (終)
(コメント) 京都大学は、「ωの真実」に触れたいい問題を出題しましたね!現役の高校生
にとっては、数学がよく分かっている者と分かっていない者の、ちょうど境界線くらい
に位置する問題でしょうか?京大を受験される方にとっては、もちろん「易」に分類さ
れる問題ですね...。
(追記) 平成25年4月12日付け
某大学の理学部に在籍のHN「s2064」さんからの質問です。上記の例題と似たような問題
で、x10+x5+1 を因数分解せよ、という問題を見たことがあります。自分が思いついた解法
は、上記に書かれていた通り、これが x2+x+1 で割り切れることを示し、割り算を実行する
というもので、答えは、(x2+x+1)(x8−x7+x5−x4+x3−x+1) だったかと思いますが、
(1) 二つ目の( )内の次数の並び方(8,7,5,4,3,1)には何か意味があるのでしょうか?
(2) そもそも、有理数係数で因数分解とするとき、二つ目の( )内がこれ以上因数分解で
きないことはどうやって証明するのでしょうか?
円分数に近いものがあるので、360度を30分割くらいして証明しようとしたことがあるので
すが、ぐちゃぐちゃになって自分の腕力ではできませんでした・・・。
らすかるさんからのコメントです。(平成25年4月12日付け)
x10+x5+1=(x5+1/2)2+3/4>0 なので、x10+x5+1 の因数は任意のxに対して正
の値をとる。よって奇数次の因数は持たない。
f(x)=x8-x7+x5-x4+x3-x+1 として、f(x)=g(x)h(x) (g(x)は2次式) と因数分解できたとすると、
f(-1)=f(0)=f(1)=1 なので、g(-1)=g(0)=g(1)=1 となるが、g(x)は2次式なので矛盾。従って、2
次の因数は持たない。
f(x)=g(x)h(x) (g(x)とh(x)は4次式) と因数分解できたとすると、f(-1)=f(0)=f(1)=1 なので、
g(-1)=g(0)=g(1)=1 、h(-1)=h(0)=h(1)=1
また、 f(-2)=331、 f(2)=151、 f(3)=4561 はいずれも素数なので、
g(-2)=1 または h(-2)=1 、g(2)=1 または h(2)=1 、g(3)=1 または h(3)=1
従って、 g(-2)、g(2)、g(3) のうち2つ以上が1であるか、
または、 h(-2)、h(2)、h(3) のうち2つ以上が1である。
すると、 g(-2)、g(-1)、g(0)、g(1)、g(2)、g(3) のうち5つ以上が1であるか、
または、 h(-2)、h(-1)、h(0)、h(1)、h(2)、h(3) のうち5つ以上が1となる。
しかるに、g(x)とh(x)は4次式なのでこれは矛盾。
よって、 x8-x7+x5-x4+x3-x+1 はこれ以上因数分解できない。
空舟さんからのコメントです。(平成25年4月12日付け)
x10+x5+1= (x15−1)/(x5−1) 、x2+x+1= (x3−1)/(x−1)
円分多項式の性質より、
x15−1=Φ[1]Φ[3]Φ[5]Φ[15] 、x5−1=Φ[1]Φ[5] 、x3−1=Φ[1]Φ[3] 、x−1=Φ[1]
すなわち、x8-x7+x5-x4+x3-x+1 は、15次の円分多項式Φ[15]です。
円分多項式が既約であることは、それはそんなには自明ではないけど、一般の証明が
存在すると思います。
s2064さんからのコメントです。(平成25年4月13日付け)
らすかるさん、解答ありがとうございます。いくつか質問があるのですが、
・奇数次の因数であっても、零点が同じになるような奇数次の因数を二つ並べれば、任意の
xに対して、x10+x5+1が正になることはできると思うのですが・・・。
・gとhが常に正である必要はないと思うので、g(-1)=h(-1)=-1 、g(0)=h(0)=-1 、g(1)=h(1)=1
というような場合も考えられるのではないでしょうか。
・f(x)=g(x)h(x) (g(x)とh(x)は4次式)と因数分解できたとする場合も、2次式の場合と同じよう
な疑問があります。
・ g(-2)=1 または h(-2)=1、・・・の部分も、どこかが-1になりうる気がするのですが・・。
空舟さん、解答ありがとうございます。
なるほど、そんなものがあるのですね。勉強になります。6次の項や2次の項がないのは、
単なる偶然ということですかね・・・。一般の証明は確かにされているようですね。この場合の
証明を高校数学でするのは難しいでしょうか・・・?
らすかるさんからのコメントです。(平成25年4月13日付け)
奇数次の因数があれば必ず零点があります。x10+x5+1は常に正で零点がありませんか
ら、s2064さんが心配されることは起こり得ません。
また、ちょっと説明が足りなかったかも知れませんが、通常の因数分解のように、g(x)、h(x)
は最高次の係数が正と仮定していて各因数は零点を持ちませんので、負の値を取ることは
ありません。
x10+x5+1は常に正ですから、最高次の係数が正であるように因数分解できたとしたら、
すべての因数が正の値しかとりませんね。
空舟さんからのコメントです。(平成25年4月13日付け)
円分多項式の既約性の証明については私自身実はあまりしっかり理解してないので、それ
を理解できれば高校数学範囲で理解できるように説明できる可能性はあります。
(・・・やっぱり難しいかもしれません。)
150次までの円分多項式を公開してるページがあります。
3*37=111次の円分多項式の係数を見ると、係数の様子にある規則性がありますね。それ
を元に考察してみました。
x8-x7+x5-x4+x3-x+1 に x3-1 を掛けると、(x10+x5+1)(x-1)=x11-x10+x6-x5+x-1
Φ[111](x) に、x3-1 を掛けると同様に考えて、x75-x74+x38-x37+x-1 となるはず。
ということは、割り算でΦ[111](x) を求めることを考えると、
上の方は、x72 から3つおきに正の項が現れて、x71 から3つおきに負の項が現れて
下の方は、x、x4、x7、・・・ が負の項となり、1、x3、x6、・・・ が正の項となる
ことに納得すると思います。Φ[15](x) についても、これに従って
x8、x5、x3、1 が正の項、x7、x4、x が負の項
となっています。「数字が大きい方が規則性が分かりやすい」
空舟さんからのコメントです。(平成25年4月14日付け)
一般の円分多項式に対する証明ではなく、今回の場合に特化した別解です。
実数係数多項式だったら「解の共役も解」ですが、今回の場合「複素絶対値=1」なので
「解の共役=解の逆数」です。すなわち、f(1/x)とf(x)が同じ形になる相反方程式というやつ
である。
相反方程式では、 y=x+1/x とおくと次数を半分にした方程式を得られる。
f(x)=x8-x7+x5-x4+x3-x+1=0 に対して、 x+1/x = y とおくと、方程式g(y)=y4-y3-4y2+4y+1=0
が得られる。
f(x)が分解できるなら、g(y)も分解できるはずである。
h(y)=g(y-1)=y4-5y3+5y2+5y-5 を考えると、アイゼンシュタインの定理というのが使える形
になります。
h(y)=(a0+a1y+a2y2+..)(b0+b1y+b2y2+...) とおく。a0とb0のうち片方だけが5の倍数である。
a0が5の倍数でb0が5の倍数でないとする。
1次の係数に注目すると、a1が5の倍数とわかる
2次の係数に注目すると、a2が5の倍数と分かる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
k次の係数に注目すると、akが5の倍数と分かる。
因数が3次以下なら全部5の倍数になってしまい矛盾。
s2064さんからのコメントです。(平成25年4月16日付け)
「 f(x)が分解できるならg(y)も分解できるはずである。」のくだりだけ、たぶんそうだとは思う
けどちょっと納得できないのですが・・。
なお、後半部分で、なるほど、こんな定理があったのですか・・すごい発想ですね!感動し
ました。
空舟さんからのコメントです。(平成25年4月16日付け)
確かにいくつか段階があるので自明ではなかったかもしれません。ちゃんと説明すれば多
分納得されると思います。2段階で説明されると思います。
1段階目は、f(x)=g(x)h(x)としたら、g(x)、h(x)も相反方程式となること
2段階目は、その時、x+1/x=y とおいたとき、f(x)、g(x)、h(x) に相当するyの方程式を
F(y),G(y),H(y)とおくと、F(y)=G(y)H(y) となること
を説明する。
(1段階目) f(x)は相反方程式である。f(x)を複素数の範囲で因数分解するなら、a、b、c、d
は複素数として、f(x)=(x-a)(x-1/a)(x-b)(x-1/b)(x-c)(x-1/c)(x-d)(x-1/d) と書ける。
aと1/a、 bと1/b などは共役複素数の関係である。
f(x)=g(x)h(x) と2つの有理数係数多項式に分解されたとする。
g(x)は、例えば、 (x-a)(x-1/a)(x-b)(x-1/b) などと仮定できる。
g(x)が例えば (x-a)(x-1/b)(x-c)(x-1/c) となることはない。
なぜなら、g(x)=0がx=aを解に持つとしたら、g(x)は実数係数なので、aの共役も解とならなけ
ればいけない。aの共役=1/a であったから、g(x)=0は x=1/aも必ず解に持つ。これを考える
と g(x)=0 は相反方程式になる。h(x)も同様である。
(2段階目) 4次方程式 F(y)=0 の解は、 y=a+1/a、 b+1/b、 c+1/c、 d+1/d である。分解さ
れた G(y)=0 の解は、g(x)の解による。例えば、g(x)= (x-a)(x-1/a)(x-b)(x-1/b) だったら
G(y)=0 の解は、 y=a+1/a、 b+1/b になり、そのとき、 H(y)=0 の解は y=c+1/c、 d+1/d と
なるでしょう。どんな組み合わせだとしても、F(y)=G(y)H(y)が分かると思います。
(追記) 平成26年7月5日付け
整除問題で、次のような問題が自治医科大学(2013)で出題されている。
x6+2x5+4x4+ax3+bx2+8x+6 が、x3+2で割り切れるとき、a+bの値を求めよ。
現役の高校生なら、直接的に割り算を実行して、余りが、(b−4)x2+10−2a となり、割
り切れることから、b−4=0 、10−2a=0 即ち、a=5 、b=4 を導きだし、 a+b=9
という結論に至るのだろう。
これに対して、剰余定理の考え方で、Q[x]/(x3+2)Q[x] の世界で考えると、x3=−2
としてよいので、
4−4x2−8x−2a+bx2+8x+6=(b−4)x2−2a+10=0
よって、 b−4=0 、−2a+10=0 すなわち、 a=5 、b=4 より、 a+b=9 が
直ちに得られる。
(コメント) 実際に割り算を実行してみて、上記の解が計算の負担を大いに減じていること
が実感できるはずである。
(追記) 平成26年7月28日付け
秋田大学医学部(2014)では、1の6乗根を用いる問題が出題された。−1の3乗根とい
う視点で解いてみた。ω同様に、解答が美しく書けますね!
nを自然数、A、Bを整数とする。多項式 x2n−4x8+Ax+B が x2−x+1で割り切
れるように、A、Bの値を定めよ。
(解) x2−x+1=0 の解の一つをαとおくと、
α2−α+1=0 、α3=−1 、α6=1 が成り立つ。
n=3k (kは自然数) のとき、
α6k−4α8+Aα+B=1−4α2+Aα+B=1−4(α−1)+Aα+B=0
すなわち、 (A−4)α+B+5=0 より、 A=4 、B=−5
n=3k+1 (kは自然数) のとき、
α6k+2−4α8+Aα+B=−3α2+Aα+B=−3(α−1)+Aα+B=0
すなわち、 (A−3)α+B+3=0 より、 A=3 、B=−3
n=3k+2 (kは自然数) のとき、
α6k+4−4α8+Aα+B=−α−4α2+Aα+B=−α−4(α−1)+Aα+B=0
すなわち、 (A−5)α+B+4=0 より、 A=5 、B=−4 (終)
(追記) 平成27年11月8日付け
最近、次のような問題に出会った。
x15−1を、
(1)整数係数の範囲で、 (2)実数係数の範囲で、 (3)複素数係数の範囲で、
それぞれ因数分解せよ。
多分、(3)が一番易しく、(1)がもっとも難しい。(1)については、このページで既に話題に
なっていて、らすかるさんの結果を用いれば、
x15−1=(x5)3−1=(x5−1)(x10+x5+1)
=(x−1)(x4+x3+x2+x+1)(x2+x+1)(x8−x7+x5−x4+x3−x+1)
と因数分解され、もうこれ以上因数分解されないことが示されている。
実は、(2)も結構難しい。先に、(3)の解を確定させよう。
1の15乗根として、αk=cos{(2/15)kπ}+i・sin{(2/15)kπ} (k=0、1、・・・、14)
とおくと、 x15−1=Πk=0〜14(x−αk) と因数分解される。
ここで、 x−α0=x−1 、(x−α5)(x−α10)=x2+x+1 である。
また、
x4+x3+x2+x+1
=x2(x2+x+1+1/x+1/x2)=x2((x+1/x)2+(x+1/x)−1)
=x2{x+1/x−(−1+)/2}{x+1/x−(−1−)/2}
=x2{x+1/x+(1−)/2}{x+1/x+(1+)/2}
=[x2+{(1−)/2}x+1][x2+{(1+)/2}+1]
であるが、x4+x3+x2+x+1=0 の解は、1の5乗根であるので、
(x−α3)(x−α12)=x2+{(1−)/2}x+1
(x−α6)(x−α9)=x2+{(1+)/2}x+1
残りの因数について、
(x−α1)(x−α14)、(x−α2)(x−α13)、(x−α4)(x−α11)、(x−α7)(x−α8)
のそれぞれを展開すると、実数係数の多項式となる。どのような表現になるのだろうか?
具体的には、
(x−α1)(x−α14)=x2−2xcos{(2/15)π}+1
(x−α2)(x−α13)=x2−2xcos{(4/15)π}+1
(x−α4)(x−α11)=x2−2xcos{(8/15)π}+1=x2+2xcos{(7/15)π}+1
(x−α7)(x−α8)=x2−2xcos{(14/15)π}+1=x2+2xcos{(1/15)π}+1
の諸式の計算である。Wolfram によれば、
cos{(1/15)π}=(√(30+6)+−1)/8
cos{(2/15)π}=(√(30−6)++1)/8
cos{(4/15)π}=(√(30+6)−+1)/8
cos{(7/15)π}=(√(30−6)−−1)/8
という結果であるが、これを手計算で求めることは大変そうな雰囲気である。
(追記) よおすけさんから問題をいただきました。(令和5年2月1日付け)
九州大学後期理系(2021)で出題された問題です。
問題 F(x)を、次の条件を満たす3次の多項式とする。
(a) x^3の係数は1である。
(b) 0、1、−1ではない複素数ωが存在して、全ての自然数nについて、F(ω^n)=0 となる。
以下の問いに答えよ。
(1) ω=(−1+・i)/2 または、ω=(−1−・i)/2 であることを示せ。ただし、i は
虚数単位とする。
(2) F(x) を求めよ。
(3) G(x)=Σ[n=0,2021]x^n=x^2021+x^2020+・・・+1 とする。
このとき、G(x)をF(x)で割ったときの余りを求めよ。
(解)(1) ω≠0、1、−1 より、ω、ω^2、ω^3 はすべて異なる複素数である。
F(x)は3次の多項式なので、ω、ω^2、ω^3 は、F(x)=0の解である。
よって、ω^4 は、ω、ω^2、ω^3 の何れかに等しい。
ω^4 =ω のとき、 ω≠0、1 より、 ω=(−1±・i)/2
ω^4 =ω^2 のとき、 ω≠0、1、−1 より、 解なし
ω^4 =ω^3 のとき、 ω≠1 より、 解なし
以上から、 ω=(−1±・i)/2 で、このとき、 ω^3=1 である。
(2) (a) より、 F(x)=(x−1)(x−ω)(x−ω^2)=x^3−1 であることが分かる。
(3) 題意より、 G(x)=F(x)Q(x)+ax^2+bx+c とおける。
G(1)=2022 、G(ω)=0、G(ω^2)=0 で、 F(1)=F(ω)=F(ω^2)=0 なので、
a+b+c=2022 、aω^2+bω+c=0 、aω+bω^2+c=0 より、
3c=2022 すなわち、 c=674 よって、 a+b=1348
a(ω^2−ω)+b(ω−ω^2)=0 より、 a=b なので、 a=b=674
以上から、G(x)をF(x)で割ったときの余りは、 674x^2+674x+674 (終)
(追記) 令和6年7月22日付け
次は、東北大学 文理共通(1972)の入試問題である。虚2次体Q(ω)における整数に
関する話題である。
第1問 方程式 x2+x+1=0 の1根をωとし、集合 R={p+qω|p、q は整数} を考え
る。Rの要素 α=p+qω (p、q は整数) に対して、N(α)=N(p+qω)=p2+q2−pq
と定める。
(1) α、βをRの要素とするとき、N(αβ)−N(α)N((β) を求めよ。
(2) Rの要素αが N(α)=1 を満たすという。αを求めよ。
(3) Rの要素αの逆数1/αがまたRの要素であるという。αを求めよ。
(解)(1) α=p+qω (p、q は整数) 、β=r+sω (r、s は整数) に対し、
αβ=(p+qω)(r+sω)=pr+(ps+qr)ω+qsω2
ω2+ω+1=0 より、 ω2=−ω−1 なので、
αβ=pr−qs+(ps+qr−qs)ω
p、q 、r、s は整数なので、 pr−qs、ps+qr−qs も整数
よって、αβは、Rの要素である。このとき、
N(αβ)=(pr−qs)2+(ps+qr−qs)2−(pr−qs)(ps+qr−qs)
=p2(r2+s2−rs)+q2(r2+s2−rs)−pq(r2+s2−rs)
=(p2+q2−pq)(r2+s2−rs)=N(α)N((β)
以上から、 N(αβ)−N(α)N((β)=0 である。
(2) α=p+qω (p、q は整数) とすると、N(α)=1 より、 p2+q2−pq=1
すなわち、p の2次方程式 p2−pq+q2−1=0 の解は、整数より、判別式をDとおくと、
D=q2−4(q2−1)=4−3q2≧0 で、q は整数より、 q=0、±1 となる。
q=0 のとき、 p=±1 なので、 α=±1
q=1 のとき、 p=0、1 なので、 α=ω、1+ω
q=−1 のとき、 p=0、−1 なので、 α=−ω、−1−ω
以上から、求めるαは、 α=±1、±ω、±(1+ω)
(3) α=p+qω (p、q は整数) とすると、(1)より、 N(1)=N(α)N((1/α)
ここで、N(1)=1 なので、 N(α)N((1/α)=1
N(α)、N((1/α) は正の整数なので、 N(α)=1
よって、(2)より、 α=±1、±ω、±(1+ω) (終)
(コメント) 定義から、N(α)=α なので、N(αβ)=αβ=αβ=N(α)N((β)
が成り立つことは自明だろう。
(追記) よおすけさんから問題をいただきました。(令和6年8月2日付け)
とし、複素数 z (z≠0)に対して、F(z)=ωz 、G(z)=1/z とするとき、次の問いに答えよ。
ただし、i = である。
(1) F(G(z))=G(F(F(z))) 、G(F(z))=F(F(G(z))) が成り立つことを示せ。
(2) G(z) 、G(F(z)) 、G(F(F(z))) は異なる3点であることを示せ。
(3) 集合 {G(z),G(F(z)),G(F(F(z))),F(z),F(G(z)),F(F(G(z)))} が3個の元からなるとき、
z を求めよ。
(出典) 高知大学理学部前期(1998) ※理学部は、2017年に理工学部へ改組
(解)(1) ω3=1 なので、
F(G(z))=F(1/z)=ω/z 、G(F(F(z)))=G(ω2z)=1/(ω2z)=ω/z
G(F(z))=G(ωz)=1/(ωz) 、F(F(G(z)))=F(F(1/z))=ω2/z=1/(ωz)
以上から、 F(G(z))=G(F(F(z))) 、G(F(z))=F(F(G(z))) が成り立つ。
(2) G(z)=1/z 、G(F(z))=1/(ωz) 、G(F(F(z)))=ω/z において、
1 、1/ω 、ω
は相異なるので、G(z) 、G(F(z)) 、G(F(F(z))) は異なる3点である。
(3) G(z)=1/z 、G(F(z))=1/(ωz) 、G(F(F(z)))=ω/z
F(z)=ωz 、F(G(z))=ω/z 、F(F(G(z)))=1/(ωz) より、
集合 {G(z),G(F(z)),G(F(F(z))),F(z),F(G(z)),F(F(G(z)))} が3個の元からなるためには、
ωz=1/z
が成り立つときである。
すなわち、 ωz2=1 から、 z2=1/ω=ω2 より、z=±ω (終)
以下、工事中